本記事ではアスクルにて販売中のオフィス家具シリーズ「PREDONA」をご紹介します。PREDONAはデスク、OAチェア、収納のラインナップとなっており、リモートワークにマッチするホームライクなデザインが特長のオフィス家具シリーズです。開発したサプライヤーは、独自の企画製造販売ノウハウ、世界各国の協力工場との関係性を活かして多くのオリジナル家具を手がけている株式会社スマイル。そこで今回は、スマイルのデザイナーとアスクルの家具MDからお話を伺いながら、デザイン面、機能面でのこだわりを紹介していただくことにしました。
・サプライヤーは株式会社スマイル
・PREDONAの前身は「ニューノーマルなオフィス家具」
・「女性にとって居心地のいい家具」というコンセプト
・PREDONAのこだわり[1]~デスクとサイドキャビネット
・PREDONAのこだわり[2]~収納
・PREDONAのこだわり[3]~テーブル
・PREDONAのこだわり[4]~チェア
・オフィスのデザインが変わると家具のデザインも変わる
左:海老野公彦さん(生活用品営業本部 物資部 生活物資2課 課長)右:小畑貴司さん(生活用品営業本部 物資部 プロデューサー)
株式会社スマイルは、包装資材、酒類、生活用品、グローバル、開発などの事業を展開しており、オフィス家具や店舗什器、ホテルや学校などの家具までトータルなソリューション事業を提供しています。
アスクルでの家具販売を開始したのは1999年のことで、当時は珍しかった日本向けに仕様をモディファイした欧州の家具の販売を開始し、アスクルとともに成長してきました。当時のオフィス家具はグレー一色で、組み立て済みのものを配送するのがメインの中、組み立て式のホワイトスチールを提供する独自路線を確立しました。
家具の仕様はヨーロッパと日本では異なりますが、同社が扱うものは、独自基準できちんと日本の基準に合わせた家具です。また、昨今でこそ家具の環境認証も当たり前になっていますが、同社では2000年初期からALAN WORLDなどイタリアのFSC認証家具をアスクルで販売しています。
小畑貴司さん(株式会社スマイル 生活用品営業本部 物資部 プロデューサー)
― PREDONAは、もともとスマイルさんが企画していたものですか?
小畑(スマイル) PREDONAは、我々の「Presence Furniture Laboratory」というオリジナル家具のラインが前身で、その派生ラインという位置づけです。「Presence Furniture Laboratory」のコンセプトはニューノーマルということです。「新しい当たり前」というオフィスのあり方を考えた表現という思いがありました。
株式会社スマイル「Presence Furniture Laboratory」カタログより(※)
― Presence Furniture Laboratoryは、コロナ禍以降に企画されたシリーズですか?
小畑 まさにコロナ中に開発を進めていたブランドです。コロナによって働き方が劇的に変わるのを目の当たりにして、オフィスの形は絶対変わると考え、今後ニューノーマルとなる家具を発信しようと決めました。
このブランドは、6~8人が働く10坪程度の小オフィスに置く家具です。たとえばJUDEというデスクは、サイドテーブルを伸ばして広く使えて、退社するときに畳めば、奥行600mmになります。全員が出勤すると場所を取りますが、10人中5人しか出社しなかったら、サイドテーブルを広げて、書類などを置いてパソコンを操作しながら仕事ができる。通常のオフィスでは、一般の社員はサイドデスクなんて持っていませんので、こういうもので、あとはセンターテーブルさえあれば、これを壁面につけて8人ぐらい働ける、ということを一つのアイデアとして提案したわけです。
「Presence Furniture Laboratory」の高機能デスク「JUDE」(※)
小畑 他社のオフィス家具はスチール製が中心ですが、当社は木工が得意なので、木工の良さを出そうということでスチールとの木金混合を特長にしています。この次のステップとしてPREDONAを企画しました。
海老野 今回、アスクルさんから次世代ファニチャーを作りたいという宿題をいただき、「Presence Furniture Laboratory」でフォーカスしたところと近かったので、ご意向を踏まえて我々の独自性をモディファイし、価格帯もアスクルさんのマーケットに合わせていこうということになったのがPREDONAです。
海老野公彦さん(株式会社スマイル 生活用品営業本部 物資部 生活物資2課 課長)
― アスクルからはどのような要望を伝えたのですか?
鈴木(アスクル) オフィス家具のニーズ動向としては、これまでホワイトのスチール家具をベースに、少しずつカラーリングやデザインも、木目やブラックなどが増えてきているのがトレンドです。お客様のアンケート結果などからも、いわゆるカフェ風のような温かみのある木目調や北欧風の家具の要望も高く、BtoCとBtoBの垣根がなくなりつつある印象を持っています。そこで、今回のPREDONAも、そういったニーズを満たすための家具としてスマイルさんにコンセプトをお伝えしました。
鈴木翔子さん(アスクル デスク担当MD)
海老野(スマイル) コロナをきっかけに働き方も変わり、堅苦しいイメージだったオフィスから、オフィスに行きたくなるような場所へと変わりました。確かに、リラックスできたり、緑を感じられたりということから、ホーム家具寄りのニーズが出てきていると実感しています。
鈴木 機能面でも、従来はデスクトップPCを使っていたのが、ノートPC一台で仕事をするスタイルに変わったことで、デスクもコンパクトになり、スマートフォンやタブレットなどの小物系のオプションも意識した仕様が求められています。
金森(アスクル) 従来、デスクは個人の所有物でしたから、いろいろなものを保存する機能が重要だったのですが、デスクが個人のものではなくなったことで、そこに置くものも減り、サイズ的にもコンパクトになりました。フリーアドレスが導入され、大テーブルで仕事をするなどスタイルが多様化しました。書庫なども、今までは書類やファイルボックスを収納するためのものでしたが、紙の資料をデータ保管するようになったので、保管スペースも省スペース化しています。オフィスの作業性だけでなく、居心地が重視され、コミュニケーションが目的になる流れになっていると感じています。
金森太郎さん(アスクル チェア担当MD)
海老野 ただ、すべての会社がそういう方向に行っているわけではないと思います。たとえば配線関係など、従来のファニチャーシステムならではの機能を必要とするお客様もまだ多いと思います。耐久性なども充足させるべきところは充足させ、カジュアル方面にふるところはカジュアルにふる。そのバランスが重要だと思っています。
― 具体的にはどういうリクエストがあったのでしょうか?
海老野 大きかったのは、「女性にとって居心地のいい家具」というリクエストです。女性の社会進出が増えていく中で、緑であったり、リラックスできたりという要素ですね。
小畑 オフィス家具って男っぽいデザインが多いじゃないですか。今回、自分たちでも不思議なのは、男二人でPREDONAを作ったということです。自分たちも気持ち悪いぐらい、女子力を出せたと思っています(笑)。
鈴木 オフィスでのコミュニケーションというテーマも念頭に置きつつ、柔らかい流線型など女性に気に入っていただけるデザイン性とか、カラーリングについても、従来のホワイト、ブラックの一辺倒だったところに、新しい風を感じさせるもので、女性からの支持を得たいとリクエストしました。木目のデザインなどによる、今までと少し異なる風合い、落ち着くイメージです。
カラーリングなどは、社内では女性スタッフも多くて意見が割れることがあります。女性と男性ではやはり感性が全然違うと感じることがあります。今回は、売れ筋や従来のカラーリングとは別に、ちょっとチャレンジしながらカラーや形を決めていきました。
小畑 いまだにスチールデスクが売れるのは、やはりそれが見慣れているものだからです。従来の環境に馴染むものを入れたら、やはりスチールデスクという発想になると思います。
PREDONAは白とナチュラルをベースにしていますが、我々が一から新しいオフィス家具ブランドで作っていたら、白とナチュラルの構成にはならなかったでしょう。同じナチュラルでも、もうちょっと濃い茶色になったり、男っぽい感じになったりしたのではないでしょうか。木目もチークっぽいウォールナット系の色になって、たぶん「暗い」とか「ダサい」とか「もう見飽きた」と言われていたと思う(笑)。そうならなかったのは、やはり女性の意見があったからだと思います。
今回は、こちら側が出したものに意見をいただき、それを汲み取りながら修正をしたり、かなり細かくすり合わせをしましたね。
鈴木 絵の段階でもこちらから意見を出して、それを修正していただいたり、サンプルが出た後にも、ああでもない、こうでもないとしながら、仕様を細く調整していきました。「ここの色は違う」というような話を最後までやりました。カラーサンプルをたくさんいただいて、今回、木目の転写、ホワイト、モカブラウンという3色をベースにしましたが、実際はもっとグレーっぽい色味がいくつもあって、どれにしようかということを細かく詰めていきました。
海老野 アスクルさんは我々の工場のことをよく知っていらっしゃるので、木転写の技術を活用したいとおっしゃっていただけたのがヒントになりました。木転写というのは、使いようでは普通のものになってしまいますが、うまく使えばちょっとしたアクセントになりますので、ワンポイント木転写を使うことにすごくこだわりました。
たとえばデスクで形は一般的なものでも、脚部に横一本の木を通すと見え方が変わる。でもやりすぎてうるさくなってしまわないよう意識しながら作りました。
― お客様の要望としては、どんな意見を取り入れましたか?
鈴木 従来のデスクは幅1000、1200、1400mmで奥行600か700mmというのが決まったモジュールですが、アスクルのお客様は小規模の会社様が多いので、実際に働いているシーンを考え、少し小ぶりなサイズ展開としました。
外山 収納はアスクルでの売れ筋サイズの幅800mmにして、また、「コンセントと干渉してしまう」というおアンケートなどの意見から、収納と床の間に空間ができるように脚をつけて、お掃除ロボットも下に入れる高さに調整しました。
外山京さん(アスクル 収納担当MD)
鈴木 サイズのラインナップは、幅800・奥行550mmと幅1000/1200・奥行600mmの3種類。
カラーリングは、ここにある天板が木目調で脚がホワイトまたはモカブラウンのものと、ホワイト天板で脚がホワイトの3タイプがあります。
足元を隠す幕板パネルの意匠性が、パンチングのもの(スチールに木目転写)と通常の穴のないもの(木にシート張り)の2タイプあります。
こだわったポイントは、木目転写をうまく使うというところです。幕板やサイドのバーに木目転写が入ることで、他にはないような意匠性で、柔らかい印象になっているかなと思います。
個人的にMDとしてチャレンジしたのは、モカブラウンのスチール色です。このカラーリングは他社にもあまりなく、すごく悩んだのですが、トレンドカラーでもあることも意識して、思い切ってこのカラーを採用しました。ホワイト基調のオフィスにも合うし、ブラック基調のオフィスにも比較的合わせやすいと思います。あと、特にご要望の多い配線周りもいろいろと気を遣いました。
スチール製なので電源タブなどをマグネットで簡単に装着できる。
デスク角がアールのため、デスクを並べた場合でも配線を下に落とせる。
天板端から幕板まで奥行8cmの間隔を設けており、モニターアームやクランプでデスクトップシェルフオプションを取り付けられる。
― よく見ると、このパンチングの穴は丸ではなく六角形。オシャレですね!
海老野 トーネットのラタンチェアの座面のような藤を編んだイメージです。
小畑 天板も木目にだいぶこだわりました。色が暗くすぎるのも嫌だし、白でもないし、ナチュラルっぽくもないし、とかなり考えて、意見交換をさせてもらいました。
「女性の」というキーワードから離れないように行っては戻りしました。「これ以上やるとちょっと男っぽい色になるよね」とか言いながら。だから逆にパンチングのパネルを付けることで、ちょっと優しい印象が残るようにしています。
鈴木 これもスチールに木目転写をしており、その技法でなければ絶対に表現できません。
PREDONA(プレドナ) サイドキャビネット3段タイプ、PREDONA(プレドナ) サイドキャビネット2段タイプ
― キャビネットについては?
鈴木 よくある3段の引き出しタイプと、2段の1枚扉のものがあります。2段タイプは開けると中が二重になっています。奥行きも少し通常よりスリムになっています。
2段のキャビネットは手前に鞄などを入れるイメージ。荷物を置かないルールのオフィスも増えているので、重宝しそうだ。
― キャビネットとしてはちょっとスリムですね。
鈴木 PREDONAはLOHACO(BtoC向けサイト)でも販売しており、家庭でも使えるサイズを考えています。デスクも小ぶりなのでリビングにも収まりやすいし、キャビネットも3段タイプは自宅での使用には少し大きいので、2段タイプはスリムにしました。テレワークでパソコンと書類などを少し入れるくらいなら十分だと思います。
海外の展示会に行くとこのタイプが結構多くて、3段タイプはほとんどなく、2段タイプとか、荷物をボンと置いてパソコンを入れるくらいのサイズ感が流行っているので、そういうところも意識して導入しました。
取っ手のバーもこだわって、本体に合わせて木調を入れています。
海老野 キャッチコピー風に言うと「まるで木の枝のような木目調」(笑)。
オフィスに入ったときに、まずハンドル部分が目に止まり、印象に残るようにしています。
― 木の枝のようで、木ではないのですね。
小畑 天板以外はスチールです。家具で木製のフレームにスチールを入れたり、スチールの家具に木製を入れる木金混合というのはかなり難しいのですが、木の転写を使うことによってスチールの剛性を活かせて、コストも安く済みます。
鈴木 おかげさまでキャビネットの売れ行きは上々です。デスク本体より売れているので、既存のデスクを使っているお客様から意匠性とか2段タイプの機能性をご支持いただけたと思っています。
― どちらの色が売れていますか?
鈴木 デスクも含めて考えると、ホワイト6:モカブラウンが4くらいで、比較的モカブラウンもご支持いただけているようです。
外山 当初、収納は単体でデザインを考えていたのですが、デスクも一緒に出すことになり、カラーリングなどコーディネートを統一する展開になりました。
サイズは、アスクルの売れ筋である幅800・奥行400mmというサイズをしっかり押さえながら、今回ラインナップの一つとして4人用と2人用のパーソナルタイプのロッカーも品揃えに加えました。
PREDONA スチールシェルフ 両開き 下置き用 ラウンド脚とPREDONA スチール パーソナルロッカー4人用(シリンダー錠) 上置き用
こちらも脚は木目の転写。
外山 収納家具はいかにもオフィスらしいものが多いのですが、PREDONAのベースは木目転写で脚高にしたことで、見た目も柔らかいイメージになりました。
既存の収納家具との違いは、脚高にしたことで壁面のコンセントの邪魔にならないようになった事で、収納自体には穴は設けていませんが、収納下に配線を通すことができるようにしました。また、小規模オフィスやリモートワークでの使用も想定して、お掃除ロボットが収納下に入る事ができる高さにしました。
アスクルでの収納の品揃えは、1段・2段・3段・5段ですが、今回のPREDONAは脚の高さ分があるので、4段で通常の5段と同じくらいの高さになります。棚板を均等に設置した場合でも、1段あたりの高さはA4ファイルを縦に収納してもゆとりがある高さのため、書類やファイル以外のさまざまなものを収納できるサイズ設計になっています。
― こだわりポイントは?
海老野 まずスチールと木脚の組み合わせによってコントラストを作りました。何台か並べると、下が木目で上がスチールというのが単調になってしまうので、木製のオープンのタイプを用意し、それをひとつ入れることで抜け感、立体的を出すようにしています。
海老野 あとは側面の厚みですね。16mmありますが、この厚みとスチールの厚みを合わせることで統一感を出しました。従来のスチール収納は側面がどうしても太く、ポテッと見えてしまうので、シャープな見え方をするようにこだわりました。
海老野 あと、取っ手を付けていません。普通は取っ手でガラガラと開けますが、加工によって扉自体が取手になっています。これにより、まず脚の部分に目がいくようにしました。
外山 扉の種類はオープン、引き違い、両開きのスタンダードな3タイプ、それに加えて、パーソナルロッカーの2人用と4人用、また1段タイプで引き出し2段というものもバリエーションとして揃えました。
鈴木 テーブルの形は丸型とスクエア型があり、天板の色はホワイトのみですが、脚の色は今回のシリーズのこだわりポイントである木目転写とモカブラウンの2色展開です。
脚の形も通常の丸のパイプではなくて、オーバルというか、少しすっきり見えるようなパイプを採用していただきました。丸のパイプだともっさりした見た目になりますが、形を変えたことでどこからもすっきり見えます。工夫をしないと重たい感じのテーブルになってしまうので、脚の形はこだわって作っていただきました。
利用シーンは2~4名のミーティングや商談、休憩スペースなどを想定して、対面でパソコンを使ってもぶつからないサイズ感としました。
鈴木 配線は中央の蓋が取れるので、電源を落としていただいてタップを置いて、という使い方ができるようにしています。
PREDONA タスクチェアと PREDONA カフェチェア
金森 チェアはタスクチェアとカフェチェア、座面はホワイト、ライトブルー、ターコイズブルー、ベージュの4色展開です。最近はハイテクスニーカーのようなゴテゴテしたオフィスチェアもありますが、あえて非常にシンプルな作りにしました。
あとは周辺の商品とのコーディネート性の高さにこだわりました。家具メーカーのチェアでも意外とできていないことなのですが、素材感や質感、色味などをちゃんと揃えています。
カフェチェアの脚は、木目転写ではなく、ソリッドの木を使っています。
海老野 リモートワーク向け、オフィス向けの中間を意識してセレクトしました。こういうチェアには上下昇降(ガスリフト)機能がないものも多く、ありそうでないチェアを表現しています。
また、座面にボリューム感をもたせています。ちょっと裏から見えていますよね。そういうちょっとした高級感も見ていただきたいですね。
小畑 座面の受け板の金物がチラッと見えるのが何か色っぽいでしょう。ちょっとヨーロッパっぽい香りを出しています。白い脚とのコーディネートも考えました。
小畑 働く空間のデザインが変われば、家具のデザインも自然に変わります。これまでのオフィスは無機質で落ち着いたデザインだったので、やはり黒一色のデスクも未だに出ています。でも白い壁、明るめの床に黒の家具を持ってくるのは、僕はしんどいと思います。やはり馴染むようなものと考えたら、「女性っぽい」というキーワードで作ったPREDONAがマッチするだろうと思っています。そういう空間にシュッと入り込めるのは、日本人の感覚では、木目なんですよ。結局落ち着くのは木しかない。目に優しいというか、捉え方が優しいんですね。
15年、20年前にカフェブームでオフィスでの働き方も変わり、フリーアドレスが増えたり、休憩スペースがカフェ風になったりと大手家具メーカーが対応しはじめたとき、僕らも椅子やテーブルを開発しました。でも、オフィスそのものの空間が変わらないので、結局何も変わらなかったんです。
シェアオフィスが流行ったとき、その空間に対応できるオフィス家具というものはありませんでした。だからカッシーナなどホーム系の家具でオフィスを作るしかなく、ソファ中心のデザインになっていったんです。結局それが当たり前になった。でも、「ホームユース以上オフィス用未満」みたいな感じがあり、オフィス家具メーカーがソファを作ってもどこかオフィス用っぽいし、ホーム家具のメーカーがオフィス家具を作ると、耐久性とかいろんな問題が出てくる。そういう穴をまだ誰も埋めていないと思うんです。僕らとしては、その穴埋めをアスクルさんがしてくれたらいいと思う。オフィスとホームの中間の空気感の家具を売ってくれたら、僕らは絶対頑張ります。
金森 僕はアロマディフューザーを担当していたことがあるのですが、ホームユースのものが主流で、オフィスのロビーなどに比べると香る範囲がかなり小さい。プロ用もあるのですが、非常に高いし、詰め替え用のリキッドなどメンテナンスもお金がかかる。お客様が欲しいのはその中間なんですが、それを商品化できるメーカーは意外といないんです。
家具でも、例えばボールペンを使っても天板に跡がつかないなどの業務用の仕様をちゃんと担保しつつ、見た目はホームユースという家具は、今ごそっと抜けていると思っています。
小畑 一時、カフェとホームの中間的な家具が伸びたことはありますが、オフィスとホームの中間は誰もやっていない。そこをやってもらいたいなという思いがあります。もし僕らが作れたとしても、それを売ってくれるマーケットがないと不発で終わってしまいますので。
金森 アスクルでは、売上データからどんな商品を開発するか考えるのがセオリーなのですが、データというものが常に過去のものであるのに対し、これから物を作って発売するのは未来ですから、もっと世の中に合わせてタイムリーなものづくりをしたいと思っています。データに依存しすぎてもつまらないものになるというか。我々が何をしたいのかという意思をそこに加えないと、面白いものができない、世に問うものづくりができないと思っています。たぶんこんな風になっていくだろうとか、世の中にないものを作りたいとか。
例えば今回のデスクのパネルの孔が実は六角形になっているのも、縦横に対して斜めに入るラタンのクラフト的なニュアンスは、ちゃんと伝わると思います。そういうことが大切で、大手オフィス家具メーカーとの差別化ポイントだと思います。
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協力 株式会社スマイル
編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
取材日:2024年7月29日
2016年11月17日のリニューアル前の旧コンテンツは
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