仮眠には、生産性向上などの業務上メリットがあります。本記事では、オフィスに仮眠室を設けるメリットとデメリット、レイアウトを考える際のポイントを解説。導入事例やおすすめのオフィス家具・設備も紹介します。
・仮眠室はオフィスに必要?設置義務と考え方
・オフィスに仮眠室を設ける3つのメリット
・一方で課題も? オフィスに仮眠室を設けるデメリット
・【3選】仮眠室・仮眠スペースのおしゃれな導入事例
・仮眠室のレイアウトを考える際のポイント
・失敗しない、仮眠室での"昼寝"制度運用のコツ
・仮眠室作りにおすすめのオフィス家具・設備7選
一定の条件に該当する場合には、オフィスに仮眠室を設置する必要があります。労働関係の法令である労働安全衛生規則と事務所衛生基準規則では「仮眠の場所」(安衛則第616条第1項・事務所則第20条第1項)という言葉が用いられていますが、両規則では、以下の場合、仮眠の場所を設けなければならないと定めています。
・夜間に労働者に睡眠を与える必要のあるとき
・労働者が就業の途中に仮眠することのできる機会があるとき
同様に、両規則には、「休養室」(安衛則第618条・事務所則第21条)に関する定めがあります。休養室とは労働者が「が床」できる、すなわち横になれる部屋のことです。仮眠室に類似したスペースと捉えてかまいません。
さらに、以下の場合には男女用を区別した休養室の設置義務を定めています。
・常時50人以上または常時女性30人以上の労働者を使用するとき
以上の条件に該当しない場合、法令上での仮眠室の設置義務はありません。ただし、現在は、短時間の仮眠(昼寝)が生産性の向上やストレスの軽減に寄与することが実証されており、義務がない場合でも、仮眠室を設ける企業が増加傾向にあります。
会社に仮眠室を設置する具体的なメリットとして、次の3つが挙げられます。
・生産性やクリエイティビティの向上
・従業員の健康維持・増進
・企業ブランドの価値やイメージの向上
昼間に仮眠をとることで作業能率の低下が防がれ、結果として生産性の向上につながります。
厚生労働省が公表している「健康づくりのための睡眠指針 2014」では、健康な成人を対象とした研究の結果が示されています。同指針によれば、覚醒状態で作業能率を維持できるのは、起床後12~13時間が限界で、さらに起床後15時間以上では酒気帯び運転と同程度の作業能率まで低下するとのことです。
さらに別の研究では、連日の睡眠不足により、作業能率が一層低下する可能性も示唆されています。忙しい職場では、睡眠時間を削って働くこともあるかもしれませんが、そのような状況が続くと、知らず知らずのうちに作業能率が低下しているおそれがあります。
人によっては、仕事や生活の都合上、夜間に必要な睡眠時間を確保できない日もあるはずです。そうしたときに、昼間の仮眠はその後の覚醒レベルを上げ、作業能率の改善をもたらす可能性があります。
参考:健康づくりのための睡眠指針 2014|厚生労働省健康局(P.43)
また、1998年にはアメリカの社会心理学者ジェームス・マース氏も、短時間で効率的な疲労回復ができる昼寝「パワーナップ(Power Nap:12時から15時くらいの間に取る15分~30分程度の睡眠のこと)」を提唱しています。昼寝によって脳の疲労やストレスが軽減され、仕事の能率や脳のクリエイティビティの向上が期待できます。
仮眠室を設置し、不足している睡眠を補うことは、従業員の健康維持・増進につながります。見方を変えれば、従業員の不調に起因する企業の経済的損失も防げるということです。
睡眠不足は、心や体の健康にさまざまな悪影響を与えます。上掲の厚生労働省の資料によれば、生活習慣病やうつ病になる危険性の増大、日中の注意力・集中力の低下に加え、頭痛その他のからだの痛み、消化器系の不調などが挙げられます。
こうした悪影響は、作業能率や生産性の低下のみならず、ヒューマンエラーや重大な事故すら招きかねないものです。仮眠による睡眠不足への対策は、おろそかにできません。
仮眠の効果や重要性が広く認識されつつあるのに対し、実際に仮眠室や仮眠制度を導入している企業は、まだまだ多いとはいえないのが現状です。
しかし、これは他の会社と差別化を図るチャンスでもあります。仮眠の奨励に取り組んでいる会社が少ない中で仮眠室を設置し、それをアピールすれば、従業員の健康増進に意欲的な企業というイメージがもたれ、企業ブランディングにつながるはずです。
学生や求職者から従業員の健康に配慮している企業だと認識されれば、優秀な人材も集まりやすくなります。こうした採用面でのメリットも見逃せません。
仮眠室を設けるデメリットは、仮眠が長時間化すると往々にして発生します。具体的には、以下です。
・生産性の低下
・人件費などのコスト増加
まず、考えられるのが、仮眠を取るつもりだった従業員が、仮眠室で本格的に眠り込んでしまう可能性です。20~30分を超える仮眠は脳を熟睡モードにさせ、目覚めた後の生産性を低下させるおそれがあります。また、一説によれば、1時間超の昼寝は死亡リスクを3割も高めるとされます。
さらに、従業員の眠り過ぎで残業が増えれば、作業能率が上がったとしても時間外手当などのコストが生じ、仮眠室を導入したメリットが減じます。
ここでは、おしゃれな仮眠室・仮眠スペースをオフィスに設置して、うまく運用している企業の導入事例を3件紹介します。
日東システムテクノロジー社のオフィスは、スキップフロアを採用した5階層からなるユニークな構造です。仮眠が取れるのは、私語厳禁の2階層目にある仮眠室と、5階層目のリラックススペースの2カ所です。仮眠室はラウンジ下の奥まった場所に設置され、もう1つのリラックススペースは観葉植物で仕切られ、ヨギボーが置かれています。タイプの異なる仮眠スペースが用意されているので、従業員が気分にあわせて利用できます。
関連記事:▼群馬県太田市のABW全部入りオフィス~日東システムテクノロジーズ[前編]
代表取締役の杉田氏が「静かにリラックスする場所が欲しかった」ということから設置された和室のたたみ空間が、エムステージ社の仮眠スペースです。電話が引かれておらず、入口の扉も閉じるので、音が完全に遮断されます。オフィス内の「隠れるスペース」として機能しており、ここで仮眠やぼーっとする時間を取ることによって、脳と身体を休めることができます。
関連記事:▼リラックスと高揚感の両方を兼ね備えるエムステージのオフィスの秘密を探る【前編】~株式会社エムステージ 代表取締役 杉田 雄二 氏インタビュー~ (オフィス訪問[3])
「実務×リラックス」をコンセプトにしたKiZUKAI社のオフィスは、パーテーションも置かれていないフルフラットです。会議も会議室ではなく、オフィスの端に設けられたリラックススペースで行われます。同社の仮眠スペースは、このリラックススペースの一角にあり、リラックスできるインテリアなどを設置することによって気分が変えられるようになっています。執務エリアとその他エリアとを共存させて、うまく運用している事例です。
関連記事:▼成長に合わせて移転するベンチャー企業のオフィスづくりとは ~株式会社KiZUKAI
従業員が適切な仮眠を取りやすくするためには、仮眠室のレイアウトが大切です。仮眠室のレイアウトを考える際の2つのポイントを解説します。
まず、第一のポイントが「業務スペースと仮眠室は明確に分ける」ということです。上述した通り、デメリットにつながる仮眠室での熟睡は避けるべきですが、逆に業務スペースの物音が響いて眠れないのでは、仮眠室の要件を満たしていないからです。
個室の設置や防音設備の整備が難しい場合には、パーテーションで区切る、ホワイトノイズ(雑音環境)を流す、耳栓を備えておく、といった工夫でも仮眠室の環境を改善できます。
仮眠室内で目覚めるときのアラーム音は、他の従業員の仮眠や、室外での業務を妨げない程度の大きさを目安に設定することも重要です。
第二のポイントが「仮眠に適した環境を整える」ことです。具体的には以下の3点を意識しましょう。
・完全に横になるのは避ける
これは、深い眠りに落ちるのを避けるためです。ゆったりした椅子にもたれかかるか、デスクに伏せる形がベターですが、ベッドで横になる場合は30度ほどの傾斜をつけるのがポイントです。
・光をシャットアウトする
周りが明るいと入眠が難しくなり、眠りの質も低下します。仮眠室内は薄暗くしておき、専用の仮眠室がない場合でも、窓際やパソコンのディスプレイの近くでの仮眠は避けましょう。
・心地良い雑音環境(ホワイトノイズ)を用意する
騒音・無音の環境下では寝付きにくくなりがちです。そこで、風や雨、焚き火の音といったホワイトノイズを流せば、仮眠の質を上げられます。ホワイトノイズはアプリなどで流すことも可能です。
仮眠室設置のメリットを最大限に生かしつつ、長時間仮眠のデメリットを最小限に抑える方法として、"昼寝"制度を設けて運用する手もあります。
この際の運用ルールとしては、仮眠室の利用時間に制限を設けることをおすすめします。上掲の厚生労働省の資料によれば、仮眠は30分以内が推奨されることから、利用時間の制限も30分以内を基準にするのがベターです。
参考事例として、ある企業のケースをご紹介します。その企業では、個室になっている仮眠室をオンラインで予約できるシステムが採用されており、主に12~16時の間、30分まで利用できるルールを設けています。
こうしたルールを定めておけば、仮眠が長引くという問題を避けることが可能です。
ここでは、従業員の生産性向上や健康の維持・増進につながる、仮眠室への設置に向いたオフィス家具・設備を紹介します。
仮眠には、完全に横にならない、傾斜をつけられるタイプのベッドやリクライニングソファが適しています。通常の業務にも、休憩にも使えるおすすめの商品です。
無段階で固定できるリクライニング機能(最大約130度)や、肘掛け部に付けられたクッションが心地良い仮眠を実現します。収納式オットマンにより、足を伸ばしてリラックスできるのも大きな評価ポイントです。
■本体価格(2024年9月時点)
¥37,000(税込)
※製品本体の価格です。カラー・オプションの有無などによって、価格は変動します。
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ベッドマットレスにも用いられるポケットコイルが座面に使用されており、背もたれも高めで仮眠に適した2人がけのソファです。リクライニングは3段階で、完全にはフラットにならないため、熟睡も防げます。
■本体価格(2024年9月時点)
¥25,346(税込)
※製品本体の価格です。カラー・オプションの有無などによって、価格は変動します。
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背もたれ部分が14段のギヤ式リクライニングとなっており、開けば簡単に仮眠用ベッドとして使えます。張地はPVCレザーで汚れに強く、メンテナンスが楽です。
■本体価格(2024年9月時点)
¥46,900(税込)
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スノービーズを使用した、カラーバリエーションの豊富なビーズクッションです。サイズは約50×50×24cm、重量は750gと簡単に持ち運びができ、いつでもどこでもくつろげます。
■本体価格(2024年9月時点)
¥3,278(税込)
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1人用の仮眠室として独立した空間を確保するのが難しい場合、個室ブースやパーテーションを活用することで、リラックスできる環境が整えられます。ここでは、落ち着いて休むのに適した商品を紹介します。
天井、LEDダウンライト、換気ファン、2個のコンセントが付いた、簡単組み立てのワークブースボックスです。リクライニングチェアを置けば、集中ブース兼仮眠室として活用できます。内側全面に吸音パネルが設置されているため、Web会議などにも使用可能です。
■本体価格(2024年9月時点)
¥302,018(税込)
※製品本体の価格です。カラー・オプションの有無などによって、価格は変動します。
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背の部分と両サイドが高さ1,600mmのパネルになっていて、周囲の視線を適度に遮るソファブースです。1人用と2人用があり、集中ブース兼仮眠スペースとして使えます。2人用を2つ向かい合わせれば、セミクローズドな打ち合わせにも活用できます。さらに、「オカムラ ジャスタス単体置き吸音パネル」やデスクと組み合わせることも可能です。
■本体価格(2024年9月時点)
¥147,000~(税込)
※製品本体の価格です。カラー・オプションの有無などによって、価格は変動します。
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「オカムラ ジャスタスソファブース」と組み合わせるだけでなく、単体でも使用できる吸音パネルです。一般的な素材に比べて吸音性の高いフェルト素材がパネルに採用されています。パネル同士をマジックテープで連結できるため、リラックス空間や集中ブースを自由につくりだせます
■本体価格(2024年9月時点)
¥55,400(税込)
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アスクルでは、企業ブランディングにもつながるおしゃれな休憩室・仮眠室のレイアウトや家具のトータルコーディネイト、内装工事などのご相談も承っております。自社への仮眠室の設置を検討されている方は、お気軽にご相談ください。
編集・文・画像:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
制作日:2024年10月1日
2016年11月17日のリニューアル前の旧コンテンツは
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