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世界に通用するものづくり!岡村製作所 オフィスチェア「サブリナ(Sabrina)」の魅力を探る [その2] (開発編)

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世界に通用するものづくり!岡村製作所 オフィスチェア「サブリナ(Sabrina)」の魅力を探る [その1]」から続き。


(注) 2018年4月1日に「株式会社岡村製作所」から「株式会社オカムラ」に社名変更している。




では、インタビューに入っていこう。



■ジウジアーロと協業して開発されたサブリナ

サブリナの開発パートナーは、イタリア・トリノにあるイタルデザイン・ジウジアーロ(Italdesign Giugiaro) 社(*1)だ。2002年発表のコンテッサ(Contessa)チェアなど、岡村製作所はジウジアーロデザインと20年来の協業関係にある。

画像提供: Yayimages / PIXTA(ピクスタ) (※)


サブリナの開発パートナーは、イタリア・トリノにあるイタルデザイン・ジウジアーロ(Italdesign Giugiaro) 社(*1)だ。2002年発表のコンテッサ(Contessa)チェアなど、岡村製作所はジウジアーロと20年来の協業関係にある。



*1) イタルデザイン・ジウジアーロ(Italdesign Giugiaro) 社
1938年イタリア生まれのインダストリアルデザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロ(Giorgetto Giugiaro)氏により設立されたデザインファーム。ジウジアーロ氏は、アルファロメオ、フィアット、BMWなどの自動車デザインを数多く手がけ、カー・デザイナー・オブ・センチュリーに選ばれるなどカーデザイナーとして著名で、それ以外にも、オフィスチェアや一眼レフカメラなど工業デザインも多く手がけている。



■数年かけた開発プロジェクト

(同社 デザイン本部 製品デザイン部 第一デザイン室次長(兼)室長 五十嵐 僚氏)

(同社 デザイン本部 製品デザイン部 第一デザイン室次長(兼)室長 五十嵐 僚氏)


サブリナの最大の特徴になる、背面のリング構造といったスタイリング、チェアのトータルデザインを、岡村製作所とジウジアーロで協業して開発した。


. 海外のデザイン会社(ジウジアーロ)との協業はどのような形で進めたのですか?


開発段階のポイントごとにミーティングをイタリアに行って、また、逆に先方のメンバーに来日してもらって日本でミーティングをするなどして進めました。あとはメールで、ちょこちょこ連絡を取り合いながらですね。デザイナーや設計者が、2週間程度イタリアに出張して進めるなどもしました。


ジウジアーロからの基本スケッチを受けて、製品をどう最終的な形に持っていくかというのが岡村製作所側の役割です。形を実現するところが岡村製作所の技術で、工場の技術者と一緒にトライアルアンドエラーを繰り返しながら作り込んでいきました。


例えば、フレームを適度にしならせて身体をしなやかに受け止めるのですが、そのしなり方を理想とする形になるよう、例えば樹脂フレームの肉厚や材質など様々な箇所に工夫を重ねて、現在の形にしていきました。


(同社 デザイン本部 製品デザイン部 第一デザイン室次長(兼)室長 五十嵐 僚氏)




■当初から世界をターゲットにスタート

(同社マーケティング本部 オフィス製品部 コミュニケーションファニチュアグループ 次長 眞田 弘行氏)

(同社マーケティング本部 オフィス製品部 コミュニケーションファニチュアグループ 次長 眞田 弘行氏)


サブリナは、当初から世界で販売していくことを狙って企画された。
そのため、国内で最初の製品発表を行わず、まずはドイツで行われたのだ。その点も日本の一般的なオフィス家具とは異なるマーケティングだ。その発表は、当時、海外支援の部署にいた眞田氏が担当した。



サブリナのターゲットは、グローバルマーケットです。最初から海外で販売することを前提としてスタートしました。


製品発表の場も、ドイツで2年に1回開催されるヨーロッパ最大のオフィス家具の展示会、オルガテック(*2) を選び、最初から、世界で戦う、グローバルマーケットに出ていくというメッセージを強く出していきました。


(同社マーケティング本部 オフィス製品部 コミュニケーションファニチュアグループ 次長 眞田 弘行氏)



*2) オルガテック(Orgatec : 国際オフィス家具見本市) 詳しくは次項。



【参考】オルガテック(Orgatec : 国際オフィス家具見本市)について

オルガテック2016の会場風景 画像提供: Koelnmesse / Author

画像提供: Koelnmesse / Author (※)

オルガテック2016の会場風景


オルガテックは、オフィスとファシリティをテーマに2年に1回開催されるヨーロッパ最大のオフィス家具関係の国際展示会だ。ドイツ4番目の大都市、ケルンの展示会場ケルンメッセで開かれる。


直近に開催されたオルガテック2016では、約13万平方メートルの展示スペースに40ヶ国671社が出展するなど大規模なもの。118ヶ国から5万6千人以上が来場し、そのほとんどはワークプレイスに関係する専門メーカー、卸売業者、建築家、インテリアデザイナー、ファシリティの担当者だ。


ちなみに、日本最大の展示会場である国際展示場「東京ビッグサイト」は、東西合わせた展示面積が約9万平方メートルなので、その広さが分かるというもの。ちなみに、オフィス家具に限定しない場合、もっとも大きな家具関係の展示会は、毎年イタリア・ミラノで開催されるミラノサローネになる。こちらは展示面積が21万平方メートルとさらに大規模で開催されている。


参考リンク: オルガテック(Orgatec : 国際オフィス家具見本市newwindow



■一体成型のリングフレーム構造で、剛性としなやかさを両立させる

では、サブリナの最大の特徴である、背面のリング構造について見ていこう。

では、サブリナの最大の特徴である、背面のリング構造について見ていこう。


背面の中央にあるセンターフレームと、そこから左右に派生したサイドフレームが1つのピースのままリングを形成している。シームレスでフレームをこのような形状にしたチェアはサブリナを措いて世の中にない。優雅な見た目に対して、高い強度を持たせてあり、ここがサブリナをほかのチェアとは際立たせているポイントになっている。リクライニング機能のあるオフィスチェアの背面は、ダイニングチェア等の背面と異なり、リクライニングすると上半身が載ってくるため、実に設計が難しいところなのだ。


椅子の背面に、上半身(つまり全体重の半分以上)が乗ると考えると、それに合わせた剛性が必要になる。サブリナでそこを担当しているのが中央にあるセンターフレームだ。センターフレームでしっかりと上半身の体重を支えつつも、同時に、人の背中に左右の動きにしなやかに追従させたいということから、背面のサイドフレームはセンターフレームよりも柔らかくしなる必要がある。背面のリングフレームは、剛性としなやかさの相反する特性を持たされている。しかも特筆すべきは、これが分割ではなく一体の樹脂成型で行っている点だ。


各部を写真で追ってみよう。


リングフレーム上部。

リングフレーム上部。


センターフレームからサイドフレームへ枝分かれし、曲線を描いて折り曲がる。この美しく描かれた3次元曲面に接合箇所は存在せず、樹脂は一体で形成されている。頂点から折り返しているあたりの絶妙な厚みの設計はもはや芸術的なバランスといっていい。椅子としての快適なしなり具合と、長期の耐久性を踏まえた強度計算が高度なバランスを取ってこの形を実現している。


リングフレーム下部。

リングフレーム下部。


サイドフレームは柔らかく曲面を描いて折り返し、センターフレームへと戻っていき、リング構造を形成している。これが一体の樹脂で成形されているのが驚きだ。


ちなみに、このリングフレームを下から支えているのは、アルミダイキャストフレーム。背面の根元部分は、リクライニングによりテコの原理が働いて体重の何倍かの荷重がかかるため、樹脂ではなくさらに剛性の高いアルミダイキャストを用いている。



■「しっかり身体を支える、しなやかに追従する」コンセプト

上で見た卓越したリングフレーム構造には舌を巻くばかりだが、そのあたりを開発者の五十嵐氏に伺った。



リングフレーム構造がこの椅子の一番のポイントです。 実際に座って寄りかかってみますと、本当に動いているのかな?となるのですが、弊社の狙いも実はそこにあります。


基本的に岡村製作所のオフィスチェアは、「しっかり身体を支えます」ということがコンセプトです。ただ、昔の椅子と違うのは、しっかり支えるということにプラスして、身体が働く中で出る動きに対して、椅子がしなやかな形で変形しながら追従していくところです。これが今回の開発プロジェクトにおける一番のポイントで、「しっかり身体を支えて、しなやかに追従する」ということが、リングフレーム構造でもっとも表現できる形だろうと、ジウジアーロと協業して創り上げました。


背面に寄りかかったとき、しっかり支える機能と、フレキシブルにショックを吸収する機能。その相反する両方の機能を、リングによる1つのパーツで行っているのが特徴で、それが全体のコーディネーションされた中でキレイに繋がっているのです。


それを、お客様には意識させないでどうやって表現するか、創り上げるかというところが、私たち岡村製作所の技術であり手腕です。1つのパーツで背面のフレームを作るというのは大変でした。2つに分ければ材料も変えられるし簡単にできるのですが、工場の技術者と一緒にトライアルアンドエラーを繰り返しながら、ようやく、何とかそれをスタイリングのデザイン性を崩さずに、良いものを作ることができました。ここが開発で最も難しかったところです。


また、この椅子はメッシュチェアでもありますので、背面のメッシュでどういう風に身体を支えるかということもリングフレームの設計時に同時に検討しています。両サイドの薄いフレームでメッシュ生地をテンションかけて張っているのですが、実際に座りますと、フレームが内側にわずかに縮むように動きをすることで、真ん中のほうにメッシュがたわんでくるように設計しています。そのことによって包み込み感、ホールド感を表現しているのもポイントです。


(五十嵐氏)



五十嵐氏に、かなり強く身体をひねってもらって、サイドフレームをしならせたところを撮影。

五十嵐氏に、かなり強く身体をひねってもらって、サイドフレームをしならせたところを撮影。なるほど、後ろから観察すると、身体の形に沿ってしなっている。通常の使用では、ここまで見た目でははっきりとしならない。


こちらはちょっと身体をひねった場合(右側)を撮影した。

こちらはちょっと身体をひねった場合(右側)を撮影した。身体の左右の動きにフレームがわずかなしなりで追従しているのが分かる。


「しっかり支える」「しなやかに追従する」というコンセプトは大変興味深いものだ。取材者のように、各社のオフィスチェアをいろいろと座り比べていると、メーカーごとに設計思想があることが感じられるようになる。その中で、取材者は、岡村製作所のチェアには共通して高い剛性感があると感じていたのだが、それが「しっかり支える」というコンセプトがあるという話で裏付けられて、なるほどと納得が行った次第だ。



■コンペで埋もれないデザインであること

こうした高級オフィスチェアは、機能性だけではなく、高いデザイン性も必要とされる。オフィスでの採用に当たっては、建築デザインコンペのように、椅子の採用にあたってもコンペが行われることが多い。その点について、海外マーケティングを担当された眞田氏に伺った。

こうした高級オフィスチェアは、機能性だけではなく、高いデザイン性も必要とされる。オフィスでの採用に当たっては、建築デザインコンペのように、椅子の採用にあたってもコンペが行われることが多い。その点について、海外マーケティングを担当された眞田氏に伺った。



わたしはよく「埋もれないデザイン」と申し上げさせていただくのですが、とかく日本の場合はあまり突出しない、あまりとがらないデザインが好まれる風潮がありますが、逆に海外では、コンペティションのときに、複数台並んだ時でもすぐに目を引くという椅子でなければ勝ち抜けないのかなと感じています。


オフィスチェアのコンペのときの評価要素には、個人的に4つポイントがあると思っています。1つはデザインですね。2つ目が座り心地。3つ目が安全性。4つ目が環境対応です。


素材の分別が可能な分別設計や再生樹脂の積極採用など、環境のことを考えずに今は製品開発できません。また、強度などの安全性が高いことももちろんです。そのうえで、デザインは他と比べて埋もれない、魅力的なものを市場に合わせていろいろとデザインしていくべきだと思います。また、デザインで埋もれないために、日本のデザイン賞だけではなく、海外のデザイン賞にも応募して受賞していくことも行っています。


座り心地はなかなか数字で評価するのが難しい要素ではありますけれども、メッシュの座り心地、座面、ウレタン、岡村製作所独自の異硬度クッションや、リクライニング機構を自分たちで開発して製造していることで、背中、座面、リクライニングと3つの要素を自社で追及して開発しているのもポイントです。


(眞田氏)



前述の五十嵐氏もデザインに関しての個性が必要という発言があった。



数多くの競争相手の椅子があるなかでどうやって戦っていくのかを考えると、個性と言いますか、キャラクターを持った椅子が海外では強いのかなと思っています。サブリナもリングフレームという個性的な形の椅子ですよね。コンテッサもそうですね。


(五十嵐氏)



では、次はサブリナが生まれた背景について探っていきたい。



≪ものづくりのこだわり編に続く≫

世界に通用するものづくり!岡村製作所 オフィスチェア「サブリナ(Sabrina)」の魅力を探る[3] (ものづくりのこだわり編)










取材先

株式会社オカムラnewwindow

日本の家具、産業用機器製造大手。東証一部上場。オフィス家具を中心としたオフィス環境づくりに留まらず、教育・公共・医療・研究・金融・商業施設などの各種什器の設計製造施工でも知られる。

2018年4月1日に「株式会社岡村製作所」から「株式会社オカムラ」に社名変更した。


【参考】「make with オカムラのものづくり」岡村製作所のサイトnewwindow




編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の写真を除く)
取材日:2017年5月16日




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