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世界に通用するものづくり!岡村製作所 オフィスチェア「サブリナ(Sabrina)」の魅力を探る [その3] (ものづくりのこだわり編)

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世界に通用するものづくり!岡村製作所 オフィスチェア「サブリナ(Sabrina)」の魅力を探る [その2](開発編)」から続き。


(注) 2018年4月1日に「株式会社岡村製作所」から「株式会社オカムラ」に社名変更している。




では、次はサブリナが生まれた背景について探っていきたい。



■サブリナの登場に至る背景

製品が生まれるには必ずそこに時代背景、時代の要請が存在する。そこで、サブリナが登場するまでの背景について伺った。

製品が生まれるには必ずそこに時代背景、時代の要請が存在する。そこで、サブリナが登場するまでの背景について、前出の眞田氏と五十嵐氏に伺った。



私たち岡村製作所は、1990年代以前から、ワークスタイルや、人間工学的なトライアルは行ってきていました。例えば、座面の下に圧力検知シートを敷いて体圧分散を研究したり、背面のカーブを研究したり。千葉大学の先生と共同で研究させていただいたり、かなり昔から人間工学面でオフィスチェアづくりに取り組んでいます。


2010年代というサブリナの出てきた時代は、オフィスをもう少し軽快に、明るく、オーガニック、ホームインテリアよりにという時代の要請がありました。2017年の今となると、さらにオフィスがホームインテリアに寄ってきているのですが、当時はその走りのような形です。そのため、フレームもホワイト、メッシュ生地もホワイトカラーのフレームに合わせたソフトな色を用意するなど今までと違ったアプローチをしています。


また、姿勢に追従するという点ですが、オフィス中での姿勢変化は、この開発を進める中で間違いなく起こっていまして、今までPCが出てきた時に、後傾姿勢に対応する為に、背中を大きくしようという椅子のデザインの流れがありました。今回は、スマートフォンやタブレットが出てきて、そこだけで操作するという今までにない体の動きをサポートするというニーズが出て来たんですね。素材の進歩もあったなかで、強く、しなやかなチェアを実現していかないといけないという認識もありました。


岡村製作所にはコンテッサというフラッグシップがあり、その弟分のバロンがあり、その中で、次世代のオフィスというのはどういったものか、となったときに、フラッグシップのコンテッサ、その下のバロンチェアとの間にサブリナ スマートオペレーションという位置づけです。コンテッサまでハイスペックな製品というより、もう少し落ち着いた形で高機能の美しい椅子ということでサブリナ スマートオペレーションを開発しました。また、もう少しボリュームゾーンのほうにフォーカスしたのが、サブリナ スタンダードになります。


(同社マーケティング本部 オフィス製品部 コミュニケーションファニチュアグループ 次長 眞田 弘行氏)




サブリナで実現したリング構造のリングはデザイナーとしては描きたい形なんですよね。今まで実現が難しくて夢物語だったものを、素材や技術の進歩という土壌が整うことで、開発に向けて現実的なアプローチすることできるようになってきたんです。時代がマッチしたんですね。


先行したコンテッサとは、1つはデザイン性の違いもありますし、技術が少しずつ進歩していますので、コンテッサやバロンになかった、人の動きに対して追従していくという機能を持たせることができました。


(同社 デザイン本部 製品デザイン部 第一デザイン室次長(兼)室長 五十嵐 僚氏)




■岡村製作所の持つ「ものづくりのこだわり」

写真は岡村製作所によるオートマチック車「ミカサ ツーリング」

画像提供: 株式会社岡村製作所 (※)

写真は岡村製作所によるオートマチック車「ミカサ ツーリング」(*1)


*1) 国内初のトルクコンバータ式オートマチック車「ミカサ」と「ミカサ ツーリング」
1951年、岡村製作所は純国産トルクコンバータの開発に成功し(2015年 機械遺産に登録)、1955年には国内初のトルクコンバータ式オートマチック自動車試作第一号車が「ミカサ」と名付けられた。その翌年にはスポーツモデル「ミカサ ツーリング」(上写真)を発表する。その後自動車事業からは撤退するが、トルコンは今に至るまで製造されており、岡村製作所のひとつのルーツとなっている。ちなみに、「ミカサ ツーリング」は岡村製作所の「いすの博物館」(東京都千代田区)の1階に展示されている。



岡村製作所の中で脈々とあるのは、ものづくりへのこだわりです。「ミカサ」といった自動車を作ってきたことが開発者のマインドの中にあります。もちろん、ビジネスとして価格が合わないと成り立たないということはありますけれども、ものづくりのこだわりは重要だと考えています。


私たちの考える理想の椅子の動きをすることができるメカニズムを実現するために、シンクロロッキング機構の自社開発や、座面や背面メッシュの設計を行っていまして、それが最終的に椅子の座り心地に繋がってきます。岡村製作所のオフィスチェアは、下のクラスから上のクラスまで一貫した思想で作られています。


サブリナについて言うと、こだわりとしての部分は、背面のメッシュということになるんじゃないかと思います。メッシュは柔らかくて非常に心地がよいのですが、理想的な着座姿勢を保持するのは難しい。メッシュを使って沈み込み量の計算をして、姿勢保持をするというのは大変難しくて、岡村製作所でもメッシュに関しては手張りをしていまして、自動化していないところです。いまだにメッシュのテンションをコントロールするのは今のところ職人の手でしかできないというところがありまして、この技術にはこだわりを持っています。メッシュはともすると、枠から外れてしまったり、伸び切ってしまうことがあるなど難しい素材です。柔らかいメッシュ生地で姿勢保持するのは難しく、姿勢保持するためにパンパンに張るとメッシュの柔らかな心地が失われて座り心地が悪くなるなど、私たちはそうした中でいかにメッシュの特性を使いながら座り心地を担保するかというのは、かなり開発を重ねてきました。メッシュという難しい素材を使いながら、快適な椅子の座り心地で、理想とする身体の姿勢を保持するという点において、私たちは世界レベルで戦っているという自信はあります。


(眞田氏)




■良いオフィスチェア、理想のオフィスチェアとは

眞田氏(写真左)  五十嵐氏(写真右)

眞田氏(写真左) 五十嵐氏(写真右)

 

今までインタビューしてきた五十嵐氏と眞田氏に、良いオフィスチェアの条件や理想のオフィスチェアを伺った。



理想のチェアは用途によっていろいろあります。椅子というのは家具の中で特殊な存在で、審美性を要求されたり、身体に近いので愛着があったり、そういうストーリーが語れるものであったり、人それぞれ思い入れが入ってくるのでしょう。作る側としては、使う人に長く付き合っていただける商品づくりをしたいと思っています。


良い椅子の条件は、あくまで椅子は身体を支えるものですので、どれだけ身体を支えられるかが重要になってきます。身体にフィットさせると体圧分散がおこりますので、面積が大きく、1つのポイントに負荷がかからず全体で支えることが実現できます。ただし、それをガチガチにやってしまいますと、動きづらいということになってしまいますので、しなやかに追従するというところを入れながら、基本の姿勢はきっちりサポートしますよ、それでいて、ちょっとした遊び、ゆらぎの部分をいかにつくるか、ということを開発の方ではこだわってやっています。


(五十嵐氏)




理想の椅子は、どんな方にも座っていただいて、一瞬で良いと評価いただけるような椅子です。


良い椅子の条件は、細かく言うといろいろあります。まずは、(理想的な)姿勢の保持が出来ることです。そのために身体への調整機能がいろいろあること。それに加えて、数値的に言いづらい、意味的な価値のあるもの。座り心地、座った瞬間にフィット感がいい、触った感じがいい、そもそも存在感がある、といったことです。


そうしたものは、単純にカタログだけで比較できない要素で、カタログだけで表現しようとすると、カタログスペックだけになってしまいますし、日本の中ではそういう評価も重要とは思いますが、必ずしもカタログスペックだけで埋もれないというものが必要だと思っています。そうでないと、価格の安い品物に競争で負けてしまう、となってしまいますので。


(眞田氏)




■終わりに

今回、オフィスチェアについて、岡村製作所の五十嵐氏、眞田氏の両氏に話を伺ったのだが、興味は尽きず、開発の背景を聞かせていただき、大変勉強になった。それを少しでも読者の皆様に伝えるべく補足を入れつつ構成したが、そのすごさの少しでも多くが読者の皆さんに伝わることを祈っている。



写真はサブリナのアルミダイキャスト脚。

写真はサブリナのアルミダイキャスト脚。


あまり一般には注目されないが、サブリナの脚が実にすごいので最後に触れておきたい。


オフィスチェアのアルミダイキャスト脚ということ自体は高級チェアでは珍しくない。しかし、このサブリナの脚はサブリナのリング構造に合わせて美しく専用にデザインされたものが使われている。上部は美しく鏡面研磨され、その下は、梨地研磨された柔らかなアーチ状の梁で支えられ、これが一体成型で作られている。よくあるアルミダイキャスト脚は角棒状で、裏から見ると肉抜きしてあるものが一般的だが、これはそれらとは全く違う構造で、独自に開発されたものだ。オフィスチェアの脚が裏から見ても美しい。こんなチェアはほかに存在しないと言っていい。こんな細かなところまで入念に手が入れられている。椅子の脚まで曲線で構成され優雅な佇まい。ここに岡村製作所のものづくりのこだわりを見た思いだ。世界水準の高級オフィスチェアの世界で戦うというのはこういうことなのだろう。








取材先

株式会社オカムラnewwindow

日本の家具、産業用機器製造大手。東証一部上場。オフィス家具を中心としたオフィス環境づくりに留まらず、教育・公共・医療・研究・金融・商業施設などの各種什器の設計製造施工でも知られる。

2018年4月1日に「株式会社岡村製作所」から「株式会社オカムラ」に社名変更した。


【参考】「make with オカムラのものづくり」岡村製作所のサイトnewwindow




編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の写真を除く)
取材日:2017年5月16日




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