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自然豊かなサテライトオフィスで働くことのリアリティ ~セールスフォース・ドットコムと、テレワークを推進する総務省に聞く

Kaspars Grinvalds / AdobeStock

画像: Kaspars Grinvalds / AdobeStock (※)



 ICTを利用し時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方「テレワーク」は、もはやビジネスの現場では珍しくなく、日常的な風景になりました。生産性の向上や、子育て・介護と仕事の両立も図れる働き方の一つとして、働く人の能力を発揮させるものと認知されつつあります。


テレワークには、「在宅勤務」、企業や団体の本拠から離れた所に設置されたオフィスで働く「サテライトオフィス勤務」、営業活動などで外出中に作業する「モバイルワーク勤務」の形態があります。中でも、レンタルオフィスやコワーキングスペースなどのサードワークプレイスを利用する「サテライトオフィス勤務」が注目されています。


 慌ただしく喧騒に満ちた都市部から離れ、働く場所として自然の豊かな地方を選ぶこと。


 地方は物価が安く、住宅費も抑えられる傾向にあり、生活コストを抑えながら仕事と子育てを両立しやすい環境が整っている自治体も多くあります。ワークライフバランスを実現するため地方で働くという選択肢は、意外と現実的なものになっており、取り入れる企業も増えつつあります。


 今回は、地方のサテライトオフィスで働くことについて取材しました。



■セールスフォース・ドットコム白浜オフィス 自然と向き合う仕事環境


 今、全国の自治体は、観光資源なども武器にしながら、都市部企業のサテライトオフィス誘致に積極的に取り組んでいます。


 総務省では、地方のサテライトオフィス等のテレワーク環境を整備することにより、地方でも都市部と同じように働ける環境を実現し、都市部から地方への人や仕事の流れを促進する「ふるさとテレワーク」を推進してきました。「ふるさとテレワーク」事業で整備されたサテライトオフィスを見ると、実際に、窓の外いっぱいに海が広がっていたり、森の中にあったり、豊かな自然環境を享受できるところが少なくありません。


 真っ白な砂浜、美しい海が目前に広がる和歌山県白浜町の町営オフィスにサテライトオフィスを展開している、セールスフォース・ドットコム。家族とともに白浜町に移住した社員もいれば、定期的に長期出張してテレワークを実践する社員もいるとのこと。白浜オフィス長の吉野隆生氏に会議ツール「Meet」でお話を伺ってみました。


 吉野氏は宮崎県のご出身。入社面接で「将来は故郷の九州に支店を」と話したところ、数年後、当時の社長に呼ばれ、総務省の「ふるさとテレワーク」事業でサテライトオフィスを開設することになったそうです。



[インタビュー] セールスフォース・ドットコム 白浜オフィス長 吉野隆生氏


吉野氏 セールスフォース・ドットコムには、社員がお互いどのようなキャリアビジョンを描いているかということを社内で共有する仕組みがあります。そのあたりから、社長が想いを汲んでくれたのかなと推測しています。


記事後半で詳しく紹介しますが、「ふるさとテレワーク」事業は、地方のサテライトオフィス等においてテレワークにより都市部の仕事を行う働き方を推進する総務省の事業です。2015年度に実証事業を行い、セールスフォースも参加しました。



――「ふるさとテレワーク」の実証事業拠点は全国にありますが、その中から白浜町を選んだ決め手は、何だったのですか。


吉野氏 さまざまな自治体に視察に行き、どこもすばらしい取り組みをされていたのですが、白浜町に決めたポイントは3つあります。


まずは、東京の本社と行き来するためのアクセスです。羽田空港から約60分のフライト、南紀白浜空港からオフィスまで車で10分。これほど空港から近いオフィスはなかなかありません。


2点目は地域性です。和歌山県の場合は、誘致を目的として活動するだけではなく、サテライトオフィス誘致後の会社や社員の定着、家族のサポートを前提に活動していらっしゃいました。


3点目はインフラです。白浜オフィスでは自社の専用回線を使っていますが、白浜町には災害時でも途絶えないクロスネットワークが整備されており、平時はフリーWi-Fiとして開放していただいています。このため、オフィス以外の場所でも気軽にWi-Fiにアクセスし、仕事ができる。万一災害が発生しても、本社との連絡が途絶えない。通信のバックアッププランが整備されているという安定したインフラネットワークが魅力でした。



――地元のサポートとは。


吉野氏 白浜町さんには、仕事とプライベート、両面から行き届いたサポートをしていただいており、非常に助かっています。仕事の面では、地元企業との商談を設定していただいたり、企業が参加するイベントを考えてくださったりします。生活の面でも、お店を教えてくれたり、休日のアクティビティをサポートしてくれたり、本当に感謝しています。



■オンオフを簡単に切り替えることができるようになる

セールスフォース・ドットコムの白浜オフィス。窓の外に大パノラマが広がる。(※)

セールスフォース・ドットコムの白浜オフィス。窓の外に大パノラマが広がる。(※)



米ジャーナリストのフローレンス・ウィリアムズは、『NATURE FIX 自然が最高の脳を作る~最新科学で分った創造性と幸福感の高め方』(NHK出版)という著書の中で、自然豊かな環境で数日過ごすことで創造性が50%もアップしたり、緑の中を15分ほど散歩することでストレスが軽減したりするといった各国の科学論文を紹介しています。



――白浜オフィスでは、窓の外全面に海のパノラマが広がる、すばらしい景観を楽しめます。寄せては返す波のリズムの中で働くことは、どんな影響を及ぼすでしょうか。


吉野氏 厳密にデータを計測したわけではありませんが、個人的な経験や、白浜勤務を経験した社員の声を紹介すると、「目の前に自然があることで、集中するときは集中し、リラックスするときは海を眺めてリラックスでききる」「オフィスの空間の中で、オンオフの切り替えが効率的に簡単にできる」という感想でした。白浜オフィスの自然環境の中で働いていると、フローレンス・ウィリアムズが紹介している効果は本当のこととして実感できます。


豊かな自然環境に囲まれているということ以外にも、生産性が上がった要因は2つあります。


ひとつ目は、通勤時間が大幅に短縮され、ストレスが軽減されたということです。東京なら毎日の通勤に2時間かかるのが、白浜オフィスではマイカー通勤で往復20分。すし詰めのストレスもなく、フレッシュな状態で朝の始業を迎えられます。


もうひとつは、社会貢献という切り口が寄与していることです。当社では全社的に社会貢献活動を行っています。白浜町は小さい町ですから、自分たちの活動に対する反応がリアルタイムに返ってきます。小さいことながら、社会的に何か役に立っている、将来・未来を創っていると実感できるわけです。ボランティア活動を通して社員の主体性や自主性もしていきます。


この2点がモチベーションのアップにつながり、生産性の向上につながっていると感じています。



セールスフォースの社会貢献活動の1シーン。鎌倉の面白法人カヤックのCEO 柳澤大輔氏も、著書『鎌倉資本主義』に「地元への貢献は、人の幸福度をより高める」と書いている。(※)

セールスフォースの社会貢献活動の1シーン。鎌倉の面白法人カヤックのCEO 柳澤大輔氏も、著書『鎌倉資本主義』に「地元への貢献は、人の幸福度をより高める」と書いている。(※)



――テレワークでは、対面でのコミュニケーションがないことで支障は出ませんか。


吉野氏 私自身は、東京で働いていたときよりもむしろ会議は増えました。MeetのようなWeb会議ツールを使ってコミュニケーションしたり、Salesforceシステム内の社内SNSチャッターを使ったりしています。


お互いの信頼関係が構築されていることが前提ですが、私はコミュニケーションを回数ではなく、"面積"で考えるようにしています。対面のコミュニケーションの面積を10とすると、質の低い限定的なコミュニケーションを1と考えて、それを10回行えば、同じ面積が担保されるわけです。この考え方をメンバーで共有しているので、コミュニケーションがとれないということはまったくありません。



――最後に、これから地方でのサテライトオフィスを検討している企業にアドバイスを。


吉野氏 豊かな自然環境の地方で働けば、たしかに生産性は上がりますが、それだけでは解決できなこともあります。まず、上司と部下でしっかりと理解を深め合い、お互いが信頼できる環境を作っていくこと。もうひとつは当社のSalesforceのような業務効率化ツールが必要です。この2点が働き方を大きく助けてくれると思います。環境・組織・ツールの3つが一体となって組織を改革していくことで、オフィスの生産性向上がさらに進むのではないでしょうか。



白浜オフィスで飼育している元保護犬のトーマス君。福島で飼育放棄されていたところを保護され、セールスフォースの社会貢献活動の一環として飼育する事に。地元の小学校で

白浜オフィスで飼育している元保護犬のトーマス君。福島で飼育放棄されていたところを保護され、セールスフォースの社会貢献活動の一環として飼育する事に。地元の小学校で"命の授業"へサポート役で出演も。(※)



■自然豊かな環境の、ふるさとで働くことがプラスになるのか


文中にもあったように、セールスフォース・ドットコムのサテライトオフィスは、総務省の「ふるさとテレワーク」事業に参加した白浜町の町営オフィスの中にあります。


テレワーク推進施策は、総務省が主管庁となり、厚生労働省、経済産業省、国土交通省の関係4省庁をはじめ、関係省庁が一体となって連携して推進しています。総務省では1990年代前半からテレワーク関連施策に取り組み、テレワークセンターの設置や、SOHO(Small Office Home Office)の調査研究等を行ってきました。



齋藤洋一郎氏(総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 課長補佐)と、大石隆之氏(同課 専門職)にお話を伺いました。


齋藤洋一郎氏(左、総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 課長補佐)と、大石隆之氏(右、同課 専門職)。ともに「ふるさとテレワーク」事業を担当。

齋藤洋一郎氏(左、総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 課長補佐)と、大石隆之氏(右、同課 専門職)。ともに「ふるさとテレワーク」事業を担当。



――事業の経緯を教えてください。


吉野氏 総務省では2014年10月より「地方のポテンシャルを引き出すテレワークやWi-Fi等の活用に関する研究会」を設置し、地方でも都市部と同じように働ける環境を実現し、都市部から地方への人や仕事の流れを促進するためのテレワークの在り方について検討を始めました。2015年度に「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」として15の地域で実証を行いました。2016年度からの3年間で「ふるさとテレワーク推進事業」という補助事業で40件のサテライトオフィスを整備しました。これはオフィスを新築したということではなく、既存のオフィスを改修して実現したものです。地方自治体だけでなく、民間企業も主体になれます。5年間は運用状況の報告義務が毎年あります。



ふるさとテレワークポータルサイト

総務省 ふるさとテレワークポータルサイト [外部リンク]



――全国的にばらつきがあるとは思いますが、もし差し支えなければ、3件ほど成功事例をご教示ください。


齋藤氏 オフィス毎に目的や形態が異なるため、一概に「成功事例」を示すことは困難です。特長的なオフィスを3つ紹介します。まずはセールスフォース・ドットコムなどが入居する和歌山県の「白浜町ITビジネスオフィス」です。使われなくなった保養所を2004年に和歌山県と白浜町で改修し企業向けに賃貸していたものの、5年以上にわたりずっと空の状態が続いていたところ、総務省「ふるさとテレワーク」事業(2015年度・2016年度)を活用して整備しました。6社の企業が進出し今では満室です。白浜町が別の独自オフィス「白浜町第2ITビジネスオフィス」を整備したのですが、そちらも満室になっています。豊かな自然やゆとりある生活に魅力を感じ、生産性を向上させたいと考える企業が多いようです。


また、長野県駒ヶ根市では、市が主体となって、駒ヶ根駅前の商店街にある空き店舗をリノベーションし、2017年3月に「駒ヶ根テレワークオフィス(愛称Koto)」を開設しました。サテライトオフィスとテレワークセンターの二つの機能を持つ施設です。サテライトオフィス入居企業の株式会社ステラリンクと株式会社クラウドワークスが、テレワークで行える都市部等の仕事を市民に発注・管理する業務を行い、市民ワーカーが集中してこれらの仕事をテレワークセンターで行っています。子育て世代の女性を中心に200人強が利用登録をして業務を行う拠点としており、オフィス開設を契機に商店街の空き店舗がほかにも20軒近く活用されています。



Koto 駒ヶ根テレワークオフィスのホームページ

Koto 駒ヶ根テレワークオフィスのホームページ [外部リンク]



岐阜県郡上市では、特定非営利活動法人HUB GUJOが、昭和16年に建設された紡績工場をリノベーションし、最新のネットワークデバイスを使える広々としたコワーキングスペースと、シェアオフィス3室を運営しています。窓の外には森が広がり、きれいな水も豊かな環境です。都市部と地方から様々な業種の企業やテレワーカーが集まり、それぞれの事業特性を活かしながら連携し、中山間地域ならではの創造性に富んだプロジェクトに取り組んでいます。このオフィスには現在9社が入っています。働く人の数が多くても一社だけしか入っていない場合はその会社の経営判断で撤退することもあり得ますが、多くの企業が入ればオフィスとしての継続も相対的に安定する面があります。



非特定営利活動法人HUBGUJOのホームページ

非特定営利活動法人HUBGUJOのホームページ [外部リンク]



上手くいっているサテライトオフィスの例では、地元雇用が増えたり、空き家や空き店舗が活用されたりするといった、「地域への波及効果」が見られます。



――対面のコミュニケーションのないテレワークが不便だという声はありませんか。


齋藤氏 総務省としてもテレワークのみが万能の働き方とは考えていません。しかし、Wi-Fi環境や電子機器の発展により、コミュニケーション面の問題はかなり解決されていますので、トライしてみていただくとそのメリットも実感いただけると考えています。同じテレワークでも、在宅勤務だと、例えば「テレビ会議に室内が映ってしまうので、家でも"オフィスカジュアル"に着替えないと」といった対応を迫られることがありますが(笑)、サテライトオフィスのテレワークではそういった心配はないでしょう。対面・在宅・サテライトオフィス等のそれぞれの良し悪しを、労働者が能動的に組み合わせていけるようになるのが望ましい働き方だと思います。



――大石さんは、総務省の方ではなく、地方自治体から出向しているのですね。


大石氏 自治体では、企業に対して「サテライトオフィスを作りませんか」と誘致する仕事にも携わってきました。企業側からすると「北海道でも沖縄でもいい」かもしれませんが、自治体側では新たな人の交流に期待しているので、全国の地方自治体の間では、サテライトオフィスを誘致しようと"熾烈な競争"が起こっています。


また、企業の方とお話をしたところ、「東日本大震災の際、東京では多くの帰宅困難者が出た。従業員の分散という意味で、サテライトオフィスの重要性が見直されてきています。BCPの観点からも、代替拠点を作ることは有効な施策だ」とのことでした。従業員が利用可能な拠点施設や重要なデータのバックアップをサテライトに置くことで、災害時の早期事業復旧も可能になります。



――企業の側でも、地方のサテライトオフィスで働く重要性が高まっているのでしょうか。


齋藤氏 働き方の価値観はここ数年で急速に変化・多様化しつつあるように感じます。特に若者に顕著で、就活中に「今どきテレワーク制度もないのか」とエントリー候補から外してしまうとの話も聞きます。人材確保のためには、働き方改革に対するアンテナを高くして、テレワーク制度を導入・改善するのも一つの手法だと思います。さらに進めて、「地方の自然豊かな環境で生産性を上げよう」という面まで考慮する企業であれば、優秀な人材を確保するための競争優位性は高まるかもしれません。



――今後、事業はどうなっていきますか。


齋藤氏 2019年度からは、「地域IoT実装推進事業」の補助対象分野にテレワークを追加し、「ふるさとテレワーク推進事業」を発展継承しています。


 来年度以降の施策については現時点で確たることは言えませんが、「関係人口を増やす」という方向はあり得ます。「ふるさとテレワーク推進事業」の主眼は地方への人や仕事の移動・移住にありましたが、もう少し緩い関係性を持った往来を増やすということです。時々遊びに来たり、ワーケーションに活用したりといった、人々の選択肢を増やすような施策が、地方創生や働き方改革を達成するための方策の一つになると考えています。



「『テレワークデイズ2019』(7月22日~9月6日)にぜひ参加してください」(齋藤氏)。齋藤氏も、現職に着任してからは月に1、2回テレワークにトライしているそうです。


齋藤氏 『テレワークデイズ2019 [外部リンク]』(7月22日~9月6日)にぜひ参加してください。



齋藤氏も、現職に着任してからは月に1、2回テレワークにトライしているそうです。







「ふるさとテレワーク」を一つの契機として始まった地方でのサテライトオフィス整備の取り組み。


自治体ごとに補助金制度や優遇制度が設けられたり、交通費や宿泊費無料の見学会が定期開催されたり、自治体や企業の競争も激しくなりつつあります。


自然環境と生産性を明確に関係づける研究データは日本ではまだ発表されていないようですが、セールスフォース・ドットコムをはじめ、現地で働く人びとの「ストレスが軽減される」「朝からすがすがしい」という実感は、想像するに難くありません。


働き方が変化したことによって、これまではUターン、Iターン、Jターンなど人生を変えてしまうような選択肢だった"地方で働くこと"が、思ったよりも身近になっていることに驚かされました。


セールスフォース・ドットコムの吉野氏は「地域貢献が仕事にプラスに働く」と指摘しましたが、地方で働くことのリアリティは、"会社で働くこと"を超えたコミュニティ参加にもつながることでしょう。地方創生や働き方改革を実現するためのヒントにもなるように思います。






取材協力

総務省情報流通行政局情報流通振興課

ふるさとテレワークポータルサイト [外部リンク]

株式会社セールスフォース・ドットコム [外部リンク]









編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局(※の画像を除く)
取材日:2019年6月13日、14日




         

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