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利用者が増える「おためし転職」~仕事の魅力を見つめ直せば採用のミスマッチはなくなる

画像:hanack / AdobeStock(※)

画像:hanack / AdobeStock(※)



■拡大する転職市場で「ネック」を解決してくれるサービス


転職市場が拡大しています。2018年に発表された総務省の労働力調査によれば、転職者数は、リーマンショックの影響で2010年には283万人にまで落ち込んだものの、翌年からは増加に転じ、2018年には329万人にまで拡大しています。団塊の世代が職場の第一線を退いた今も、その勢いは留まるところがありません。



総務省「労働力調査(詳細集計)平成30年(2018年)平均(速報)」(PDF)より(※)

総務省「労働力調査(詳細集計)平成30年(2018年)平均(速報)」(PDF)より(※)



年齢階級別転職者率を見ると、15~24歳と25~34歳が高く、以降45~54歳に向かって減少、55~64歳で小高いピークがありますが、やはり若い世代の多さが目立ちます。



同上(※)

同上(※)



仕事旅行社、エン・ジャパンなどが提供する「おためし転職」は、こうした若い世代の「事前に仕事の情報を収集したい」という要望をかなえるものとして、利用者を増やしています。


現職に就いたまま、事前に職業体験をしてから転職を決められる仕組みで、転職を考えている人にとっては、事前に転職先の仕事を体験して適性や会社の雰囲気を把握でき、企業にとっても、適性や人柄にも踏み込んで採用を判断できます。このため、せっかく転職した人がミスマッチで辞めてしまうリスクを抑えることができるわけです。


新卒採用では、会社説明会をはじめ、会社訪問、OB訪問、インターンシップなど、就職先との相性を事前に確認するための機会がそれなりに設けられています。企業側も同様であり、新卒採用にはそれなりのコストをかけて臨んでいます。


それに対して、転職では、求職者が自分で転職先の情報を集めるか、ヘッドハンティングなどの機会を利用するしかありませんでした。とくにこれまで働いていた業界とは異なる業種に飛び込もうと考える人にとっては、どんな仕事をすることになるのか、その中身が分からないことが高いハードルになっています。「おためし転職」は、そうしたハードルを下げるのにとても有効です。



今回は、この「おためし転職」のサービスを提供する側と、サービスを利用して実際に人を採用している企業にお話を伺いました。



■言語化しにくい仕事の魅力を伝えることができる


東京都港区の仕事旅行社は、「自分らしい働き方の実現を支援する会社」を掲げて2011年に創業しました。働き方を学ぶための「仕事旅行」というサービスをメインに、転職広告メディアの「おためし転職」、働き方に関連する情報メディアの「シゴトゴト」の3つを運営しています。


「仕事旅行」は、参加者が料金を払って未知の仕事に働き方を学ぶサービスですが、「おためし転職」は企業がお金を払って掲載する求人広告です。それぞれビジネスモデルは異なっているものの、「自分らしい働き方の実現を支援する」という創業の理念は同じ。 代表の田中翼氏に、「おためし転職」のサービスを始めた経緯からその有効性、「おためし転職」に向く人向かない人など、さまざまな観点から伺いました。



仕事旅行社 田中翼氏(代表取締役)

仕事旅行社 田中翼氏(代表取締役)



――「おためし転職」の求人サービスを始めた経緯を教えてください。


働き方を学ぶ「仕事旅行」に参加した後で、職業体験をした企業に転職したいとか、その仕事に興味を持ったといった人が少しずつ増えてきました。であれば、最初から転職前提の体験があってもいいのではないか、ということで始めました。


「仕事旅行」で訪れる職場は、主に企業PRを目的とした事業者が多く登録しています。それに対して「おためし転職」は、採用を目的とした企業での体験です。


オンタイムで募集しているのは30~40社ぐらいです。基本的に求人広告の媒体とはいえど、記事を作ることと、それに対して人を集める以外にも、おためし転職期間中の体験内容などを考えるのが私たちの仕事です。



――今勤めている会社を辞めずにおためしできるのですよね。報酬はあるのですか?


ほとんどの求人が、おためし期間自体を1~2日に設定しています。会社を辞めずに行ける短期の転職体験という位置づけなので、現職に就いたままという人がほとんどです。


あくまでおためしなので、雇用関係もないですし、業界経験も比較的少ない人が行くわけで、実際の仕事をやるというよりも、典型的な仕事の一部を体験したり、バーチャルや、シミュレーションでやることもあります。お互いの適性を見るための体験ですから、一部を除いて所得も発生しません。


あくまでも体験なので、面談に行くのに近いかもしれません。見学に行くみたいなものなのですが、面談よりもお互いを深く見ることができます。



――職種としてはどんなものがありますか?


仕事内容がイメージしにくい仕事が多いかもしれません。例えば、ちょっと中身がわかりにくい仕事とか、職人さんなどのモノ作り系とか、あとは地域の仕事が多くなりますね。中でも鶴岡市の地域おこし協力隊。総務省が行っている施策で地方都市に都心の人を送り込む求人案件ですが、それが先行事例として総務省で紹介されています。会社のビジョンやミッションをはっきり持っている会社からのご依頼も多くなっています。



仕事旅行社ウェブサイトの山形県鶴岡市「地域おこし協力隊」のページ (※)

仕事旅行社ウェブサイトの山形県鶴岡市「地域おこし協力隊」のページ (※)



「おためし転職」で求人する企業には、一般求人媒体に掲載しても、面接だけでは応募者のことを理解しきれないので、実際にちょっと体験してもらって適性を確認したいというニーズがあります。要はマッチングの精度を上げたいわけです。


それぞれの仕事には、募集の文面だけではなかなか伝えられない仕事の魅力があります。職場の雰囲気や人間関係など、なかなか言語化しにくいことを伝えるという目的もあります。



――ミスマッチで辞めてしまうと企業としても損失ですね。「おためし転職」なら自社もちゃんと見せられるし、相手のことも深く知ることができるわけですね。


適性を確かめたり、言語化しにくい会社の魅力を伝えたりするには、体験してもらうのが一番です。今までの求人媒体は、「給料いくらで仕事内容はこれです、以上終わり」じゃないですか。それではやはりお互いのことがわからないし、仕事の魅力は伝わらない。


私たちとしても伝えられるかぎりのことを伝えたいので、求人記事はすべて私たち自身が現地に行って取材して書いています。現地で体験する内容に関しても、「こういう体験をしてもらうのはどうか」というコンサルティングから関わっています。



■仕事と濃密な関わりや手応えを求める人が利用



――応募条件などはどんなものを掲げているのですか?


基本的に求人広告と同じなので、採用後の給料や歓迎するスキル、応募資格、仕事内容などが書いてあります。応募がきたら受け入れ先の企業に情報を伝えます。そこでおためし転職を実施するかしないか、条件を見て求人企業が決定します。私たちとしては、サイトへの掲載料、そして転職が成就したときの成功報酬がビジネスモデルになります。



――おためし転職で転職した人の離職率はどうですか? また企業の反響は?


離職率は低いと思いますが、2017年からまだ2年ほどですから、明確なデータはありません。企業の反響としては、定期的に使ってくれているので満足していただいていると思います。企業からの問い合わせや申し込みも増えています。ただ、一件一件作り込んで丁寧に紹介することを心がけているので、一気に掲載企業数を増やすことは考えていません。



――応募者のイメージを教えてください。


20代中盤~30代前半の応募者が多いです。大手企業に5~6年勤めて、組織の歯車でいるよりは自分らしい働き方をしたい方、自分の価値観に沿って仕事を選びたい方というイメージです。自分の価値観に合うかを確認してから転職したい気持ちが強い方たちですね。 女性も6割を占めます。派遣社員の方もいますが、比較的、大手企業に勤めている人が多いです。金融やコンサル、広告代理店など数字を追いかけている人が、仕事ともっと濃密な関わりや手応えを求めて参加しているというイメージですね。



――おためし転職に向かない人は?


同業他社に移りたい人にとっては、わざわざおためしする必要はないですよね。また給料を上げたいという目的で参加する人はほとんどいません。


求人する側は、即戦力を求めている企業にとってはあまり意味がないでしょうね。どちらかというと異業種の風を入れたいとか、今までにない人を採りたいという目的意識がある企業のほうが刺さりやすいかな。


申し込みから掲載までは、体験内容を決めて、現地取材をして、というプロセスがあるので、やり取りも含めて1カ月以上かかります。即日で人を採りたい会社には合いません。



■企業自身が自分たちの仕事の魅力を分かっていない



――これまでの求人媒体のように、枠にはめ込んで終わりというわけではないのですね。


私たちからすると、企業の人たちは、自分たちの仕事の魅力をよくわかっていないと感じることがあります。私たちが入っていって第三者の視点で切り取ることによって、企業にとっての価値につながると思います。


職人さんなどは典型的で、「自分たちの仕事なんて単純作業でつまらないよ」などとおっしゃるのですが、はたから見ていると、しっかりしたポリシーやこだわりぬかれた仕事哲学があり、ご当人も理解されていない魅力がちゃんとあります。それをしっかり伝えることが重要だという気がしています。


「自分の仕事なんて」と思っていると、普通の求人媒体で募集しても、紹介内容がつまらなかったり、結局、給与だけで人を引っ張ろうとしていたりすることになります。そうではなく、もっと魅力的な部分を引き出すのが私たちの価値なのです。求人記事も3000~4000字ぐらい、メディア記事の1本分ぐらいは書いていて、そこを魅力に感じてくださる求人企業さんも多いです。



――田中さんご自身も転職組ですか?


私は金融の会社に就職して、丸の内で勤めていました。じつは大学を2つ行っていまして、一つ目は、英語を身に付けたいとか、新たな経験をしたいと思ってアメリカの大学でした。両親が教師でしたから教えることに興味があったので、アメリカでビジネスを学んだ後に、日本の大学に編入して教職課程を取ったんです。


結局、最初に就職したのが27歳。金融に5年ぐらいいましたが、別にそれが本当にやりたかったことではないので、退職して、この仕事旅行社を起業しました。


振り返ると、今私がやっているのは、大人に対する教育事業だと思っています。この事業を通して、いろいろな働き方があることを大人に対して伝えているつもりです。だからもともとやりたかったこと、教職課程を取ったことなどにもつながっていると思います。



■「おためし転職」は時間をかけてフィーリングの合う人材を探すのに有効


次に、実際に「おためし転職」を利用して人材採用を行っている編集・制作会社、ウィルメディア(東京都港区)の取締役を務める沼田大輔氏に、「おためし転職」の成果や活用方法などを伺いました。



ウィルメディア 沼田大輔氏(取締役)

ウィルメディア 沼田大輔氏(取締役)



――ウィルメディアをご紹介ください。


「auテレビ(サービス提供:KDDI)」や「TVぴあ(自社メディア/休刊中)」「WillMedia(自社メディア)」といったテレビ番組情報を取り扱ったコンテンツの企画・提供に加えて、冊子とウェブの企画・編集・制作・運用を手がける、グループ企業合わせて96人の企業です。もともとテレビ番組情報誌の『TVぴあ』を発行していましたので、インターネットのデジタルチームと、紙媒体のアナログチームが一緒になったイメージで、テレビ業界をはじめとするエンタメ情報を紙媒体からデジタル媒体まで一気通貫して扱うことができるのが強みです。


ウェブや冊子、スマホのコンテンツも作っていますが、androidOSを搭載したandroidTV(ソニーのブラビアなど)上で見られるコンテンツも作っていたりします。最近ではラジオ番組も手がけており、私自身、埼玉県のFM NACK5に出演しています。



ウィルメディア沼田氏出演ラジオ番組

ウィルメディア沼田氏出演ラジオ番組



――おためし転職で求人を始めた理由は?


短期的にチームを作る場合は一般の求人媒体を利用していますが、知り合いからの紹介、つまり縁故募集もしてきました。ただ知り合いにも限りがありますし、縁故募集というのは「良い人がいたら採用したいよね」ということですから、そういう意味で、フィーリングの合う人をのんびり探していくことができる「おためし転職」は、当社にすごくマッチしています。それほどに急いでいなかった人材募集だったということもあります。



――「おためし転職」は、縁故募集に通じるものがある。


そうですね。「おためし」ですから、明確に転職をする・しない、企業側も受け入れる・受け入れないが決まっておらず、お互い会って少し試してみますか、という建て付けです。ダメだったら途中でやめればいいので、相手も選べるし、こちらも選ぶことができる。そんな敷居の低さ、取り組みやすさが魅力ですね。



――いつごろから、またどんな職種で募集を始めたのですか?


2018年1月から、お客さんと相対していくディレクター職の募集を始めました。お客さんのニーズを汲み取って叶えていく仕事です。ウェブ制作の知識に詳しいことより、人柄というか、人に好かれるというか、人間的な魅力が大事な職種です。


「おためし転職」で応募される方には、今就いている仕事と異なる仕事がしたい、新しい分野に飛び込みたいという志向がありますから、こちらも前職の経験は問いません。ウェブ制作の経験がなくても、例えば編集など隣接する業界の方もアリです。スキルがあれば尚さらいいですし、なくても大丈夫というスタンスですね。



――スキルよりも、「人」を見たい。


そうです。「おためし転職」に応募するには、サイトに登録する必要があります。それに登録している時点で、すでに知的好奇心が高いわけで、私たちとしては基本的に好奇心旺盛な人に来てもらいたいのです。一般の求人よりも、出会える人にバラエティーがありますし、想定しているのとは異なる、思いがけない人がやってくるという印象があります。



■未経験でも、おためしからインターンへ



――どんな手順で採用まで至るのですか。


経験などによってパターンは異なりますが、おためしからインターンシップや試用期間を経て本契約に至るのが基本パターンです。


最初のおためしは、だいたい4回ぐらい。私たちの場合は、その段階で時給1250円をお支払いしています。


たとえば、今はインターネット業界にいるけれど、マーケティングに興味があるので教えてください、という人がいました。毎週火曜がシフトで休みだとのことで、火曜日に8時間来てくれました。有力国立大学出身で、すごく聡明な方でしたね。



――週1回、という方が多いのですか?


週に1回という人と、面談した翌日から毎日来るという人がいます。いきなり毎日来ても戦力にはなりませんが、何かやれそうなことがあれば少しずつ渡していきます。やれそうだったら続けて来てみてください、と対応しています。


その他にも、今の仕事が物足りないので、もっとお客さんに近いところで働きたいという女性がいました。社員5,000人規模の大きな会社に新卒で入ったけれど、自分の仕事が本当に人の役に立っているかどうか実感できないというのです。そこで、実際お客さんのところに連れて行って、お客さんと打ち合わせをしているところを同席して体感してもらいました。もちろん関係者に合意は取ることが前提ではありますが。



――実際に採用に至ったケースはありますか?


これまで採用に至ったのは4人です。1人目は美術大学卒業後、SEを経て当社に来ました。あとは、有力私大を卒業した後に銀行に就職して、新しいものにチャレンジしたいということで入った人や、印刷業界20年という方です。もう一人は、大学の芸術学部を出てアーティスト活動してきたけれど、社会人としてどうしたらいいのかわからない、という人で、すごく良いものを作るのでこちらも興味深く来てもらうことになりました。



――アーティスト! いろいろな人が応募してくるのですね。


この方は経験がなかったので、「いる間は好きなことをしていていいですよ」ということでスタートしました。あるサイトの運用を任せたかったのですが、スキルにばらつきがあったので、1日8時間のうち仕事が2時間、勉強が6時間として、やれそうなことから渡していきました。3カ月たって仕事が4時間になるほどスキルが安定したところで、「この先どうしますか」と入社の希望を聞きました。



■スキルがなくても、やる気がある人に期待したい



――思い通りの人材を採ることができましたか。今後も続けますか?


すごく良い人が採れていますし、戦力にもなってくれていますね。ですから、「おためし転職」はこれからも続けていこうと思っています。ただ今は一般の求人でも優秀な人材が採れているので、スキルありでの求人は、一般の求人でも、おためし転職でも、どっちでもいいのかなと思っています。


「おためし転職」に期待しているのは、スキルはないけどこの業界に来たいというインターン的なマインドがあり、かつ好奇心もあるタイプの方です。



――やる気と好奇心は大事ですね。


今も、他業界から来ているインターン中の人が2名います。インターンはいいですよ。3カ月ぐらいの期間に、分からないながらも一緒にやっていくことで精神的にも結構仲良くなれますし、人となりも分かってくるし、お互いにメリットがあります。


ただ、おためしで来る人の中には、熱量に乏しく、その先に合意ができるとは思えない、単に見学に来たといった人もいます。教えるのに誰か付かなくてはいけませんから、ご遠慮いただくこともあります。体験だけで終わってしまうとこちらの労力だけで終わってしまうからです。


色んなアプローチがありますが、当社は「おためし転職」を通じて優秀な人材に来てもらえればと思っています。



■転職希望者と受け入れ企業の両方にメリット


仕事を探す人のほとんどは、「自分らしい働き方をしたい」と考えると思います。ただ以前は、職場にそうした個人の考えを許容しない雰囲気があったり、転職そのものもあまり良いイメージがなかったりしました。


しかし、最近では、人材不足が深刻化する中で、転職マーケットにも多様な考えが生まれつつあります。


今回とりあげた「おためし転職」は、退職にともなう人員補充など急募案件には向かないという側面もありますが、転職希望者と受け入れ企業が、その仕事の魅力を見つめなおす機会を得ることができ、適性や相性を見きわめて転職できる理想的な方法だといえます。 新しい環境で働きたいと思うものの、情報が少ないために踏み出せないという転職希望者にとって、「おためし転職」はハードルを低くしてくれそうです。






取材協力

仕事旅行社

ウィルメディア




編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局(※印の画像を除く)
取材日:2019年11月20日

         

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