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社員が「いつ・どこに・何人いるか」を見える化!ビーコン活用の最前線~株式会社ビーキャップ「Beacapp Here」「Beacapp Here Pro」

metamorworks / AdobeStock (※)

画像: metamorworks / AdobeStock (※)



オフィス移転やレイアウト変更に着手するためには、曜日や時間ごとの社員の「在席率」、会議室などの主要施設の利用状況を把握する必要があります。こうした情報は、ゾーンの面積や家具の数、用意する会議室などサイズや数などに直接かかわるものであり、新オフィスの物件選びそのものから、設計・デザイン、運用方法まで、新オフィスのための必須情報と言えます。



とくに、フリーアドレスやABW(Activity Based Working)を導入するオフィスにおいては、「見える化」は非常に重要です。社員が今どこにいるのか、各スペースの利用状況はどうか、部署感のコミュニケーションは進んでいるか、といった知りたい情報を数えはじめるときりがありません。


実際、多くの企業では、現状の働き方やオフィスの利用状況を「見える化」するための調査を行っています。


たとえば、管理部門の社員が見回って人数をカウントしたり、調査対象の部署の社員から自己申告してもらったりといった人手による方法があります。執務室の出入りにカードキーシステムを導入している企業では、入退出ログを利用するという方法もあります。


ただ、人手による調査は、やはりマンパワーがかかりますし、時間や場所が制限されますので、連続したデータを取ることが難しいと言えます。専用のシステムもありますが、導入にはそれ相応のコストが発生します。



そこで近年注目されているのが、小型の電波発信機「ビーコン(Beacon)」と受信機を用いて位置情報を収録し、社員の位置や行動を「見える化」するという手法です。


規格の普及やサービス提供企業の技術開発により、より安価に、フットワークよく利用できるようになってきた「ビーコン」の最新動向について見ていきましょう。



■小型化、低価格化、スマホ対応で普及が進む


まず、「ビーコン」とはどのようなものでしょうか。


ビーコンは、スマートフォンやノートパソコンにも実装されている近距離用の無線通信技術「Bluetooth」の低消費電力規格(BLE=Bluetooth Low Energy)を利用したシステムです。


微弱な信号を発信している「ビーコン端末」を装着した人や物が、特定のレシーバーに接近すると相互に信号がやりとりされ、端末(を付けた人や物)の位置を特定できるという仕組みです。



「ビーコン」の仕組み「みんなの仕事場」事務局作成

「ビーコン」の仕組み「みんなの仕事場」事務局作成



この技術は、当初、高齢者の見守りサービスや遭難者救助への応用などが期待されていましたが、専用の機材が必要な上、コストもまだ高く、普及が進みませんでした。


ビーコン技術が注目されたのは、「BLE」規格の向上によって端末が小型化し、入手しやすい価格に下がったこと(3千円前後~)、さらにスマートフォンが規格に対応してビーコンの受信端末として利用可能になったことなどにより、ビジネス分野への応用が一気に進みました。


工場や倉庫などの人・物の位置情報取得や、店舗を訪れた顧客がどのような動線をたどったかを調査したり、特定の商品の棚に接近するとピンポイントで商品情報をスマートフォンに通知するなど販促分野でも活用されたり、普及が進んでいます。


この技術をオフィス内での位置特定、在席率の調査に用いることにより、どのようにオフィスでの働き方を見える化することができるのか、実際にオフィスでの採用実績を伸ばしている株式会社ビーキャップの中垣雄氏(代表取締役社長)にお話を伺いました。


同社のビーコンシステム「Beacapp Here(ビーキャップ・ヒア)」は、もともとは工場や物流センター向けに開発されたもの。思いもよらず、オフィスで利用したいとの要望が寄せられ、オフィス用としても提供を始めたというユニークな経緯のサービスです。



中垣雄氏(株式会社ビーキャップ 代表取締役社長)

中垣雄氏(株式会社ビーキャップ 代表取締役社長)



■工場・物流の現場からオフィスへ


――もともとはオフィス用に開発したものではなかったそうですね。


中垣 まったく考えていませんでした。当社はビーコン端末とスマホを使ってログデータを取得し、それをもとにしたソリューションを提供する会社です。2017年12月に、人や物の位置情報をリアルタイムに取得して可視化するサービス「Beacapp Here」を、工場や物流センター向けにリリースし、当初は物流系のメディアにしか情報を流していませんでした。ところが、2~3ヶ月後たって、「オフィスで利用できないか」という問い合わせが多く寄せられるようになったのです。



――「なぜ、うちに?」という感じでしたか。


中垣 オフィスにそんなニーズがあるのか、とびっくりしたのですが、詳しくお話を伺ってみると、「Beacapp Here」の位置情報を把握する機能がほとんどそのまま活用できることがわかり、オフィス用としても情報発信を始めました。現在は、問い合わせの約8割がオフィス関連です。



「Beacapp Here」のサービス内容 出典:所在地⾒える化ソリューションBeacapp Hereより(※)

「Beacapp Here」のサービス内容

出典:所在地⾒える化ソリューションBeacapp Here (PDF) より (※)



――企業の利用目的はどのようなものでしたか。


中垣 当初は、フリーアドレスが採用されているオフィスでの利用が中心でした。誰がどこにいるか、そもそも社内にいるのか。そういったことがわからないと効率が悪化したり、ストレスが発生することになります。その対策として社員の居所をリアルタイムでわかるようにしたいという導入目的でした。せっかく作ったカフェスペースやファミレス席、オープンミーティングエリアといったスペースがどの程度使われているか、客観的に知りたいというニーズもありました。


もうひとつは、オフィス移転計画を立案するための実態調査です。新社屋への移転やレイアウト変更に合わせて、フリーアドレスやABWを導入しようと考えているが、在席率や会議室の稼働率などの動態調査に使えるか聞きたい、という内容です。いわゆる、オフィス利用状況の「見える化」ですね。



――物流用として開発されたサービスが、オフィス用として注目されたのはなぜでしょうか。


中垣 当社の「Beacapp Here」が、スマホとビーコン端末だけで構築できる安価なシステムだったということだと思います。オフィス内で社員の位置情報を取得しようとすると、その方法はゲートを設けたり、センサーを使ったりといったことが考えられますが、いずれも専用の機材やネットワークが必要になり、コストや手間がかかります。


その点、「Beacapp Here」は1個3000円程度の安価なビーコン端末とスマホにアプリをインストールするだけで利用可能で、工事も、新たな機材の購入も不要です。また、すばやく環境を構築できるという点もポイントです。最短の場合、2週間で利用を開始することができます。規模が大きくなっても、通常は1ヶ月いただければ対応可能です。



――「Beacapp Here」の導入実績を教えてください。


中垣 サービス開始から約1年で、すで50社以上の企業が採用いただいています。そのうちオフィスでの利用は約8割です。たとえば株式会社オカムラ様では複数のビルを対象に約450名、日商エレクトロニクス株式会社様では全国の支社を対象に約850名が「Beacapp Here」を利用していただいています。



■ビーコンシステムの導入は非常に簡単


――オフィスへの導入手順について教えてください。


中垣 会社が働いている方にスマホを配布しているかどうかによって、大きく分けて3パターンがあります。



1.スマホ導入済み...対象社員全員が、会社提供のスマホを持っている場合

2.スマホ未導入......会社提供のスマホを持っていない場合

3.併用版   ......会社提供のスマホを持っている人といない人が混在



「Beacapp Here」の3つの導入方式出典:所在地⾒える化ソリューションBeacapp Hereより(※)

「Beacapp Here」の3つの導入方式

出典:所在地⾒える化ソリューションBeacapp Here (PDF) より (※)



1. 会社スマホ導入済みの場合は、最も簡単に導入できます。3~5メートルの間隔で受信用のビーコンを机の裏や壁に両面テープで貼り、皆さんがお持ちのスマホにアプリを入れていただくだけでスタートできます。



2. 会社スマホ未導入の場合は、カードタイプのビーコンを社員証などと一緒に首から下げていただくことになります。受信機にはスマホを使います。スマホ用の受信機は通常数万円するのですが、「iPhone6」など型落ちのスマホでも対応できるようにしたこともコスト的に有利な点です。ログはスマホからデータ通信で送るので、あらためてネット環境を構築する必要もありません。


スマホは当社から貸し出すことも可能ですし、ご用意いただければ、スマホを送っていただいてアプリをインストールして返送します。「ビーコン操作中触らないでください」というシール貼って、充電ケーブル挿して置いておくだけでいいので、場所を選ばす柔軟に運用できます。



3. 3つ目は、3併用版、つまり会社からスマホを配布されている人と、配布されていない人が混在している場合です。たとえば営業部門で外勤の方だけがスマホを配布されているという場合ですね。この場合は、スマホをお持ちの方はアプリをインストールしていただき、お持ちでない方にはビーコンを持っていただくことになります。ビーコンとスマホが混在する状況にも対応できることも当社の強みです。全体的にみると、③併用版の会社様がいちばん多いですね。



スマホでビーコンアプリを常時起動している方はまずいません。バックグラウンドになっていたり、ホーム画面に戻っていたり、極端な場合にはアプリを切っている人もいます。そんな様々な状況で、ビーコンを検知するにはかなり高度な技術が必要です。当社のアプリ開発技術と、どこに置けばいいのか、どういう設定をすればいいか、というビーコンの設置ノウハウによって、見える化を実現できます。



――設置が簡単なのは大きなメリットですね。


中垣 在席率などの調査は、季節要因もあるので、最低でも1ヶ月程度のデータを取る必要があると言われています。長くて2ヶ月です。これまでは人手で調べていた企業がほとんどだったと思いますが、「Beacapp Here」を使えば、1日を通した変化などログの可視化もできるので、調査・分析の手間や人件費を考えれば、導入コストは十分ペイすると思います。



■各部署間の遭遇量・施設利用割合・スペースの稼働率をグラフィカルに


――利用上の注意点などは。


中垣 現状では、ビーコンにはある程度の誤差がつきもので、精度100%の正確無比なものとは言えません。あくまでも傾向を見るための資料として使ってください、ということは必ずご理解いただくようにしています。



――どのくらいの誤差があるのですか。


中垣 会議室にビーコンを置いて、何時に何人いるかというデータを取るような場合、ガラス製のパーテーションで会議室を区切っているような場合だと信号が突き抜けてしまい、誤差が大きくなることがあります。百発百中のものではありません。また、データの更新頻度は現在1分に1回としています。つまり最大1分前の位置情報を取得していますので、時間経過による誤差もあることになります。


こうした特性を踏まえてお客様に利用していただいていますので、これまでこの誤差が問題になったことはありません。


より正確なデータが必要な場合には、センサーを併用する方法もお勧めしています。動態センサーや着座センサーを「Beacapp Here」に連動させることで、施設や席の空き状況まで見える化することができるようになります。ビーコンの弱点のひとつである「ガラス製のパーテーション」に対しても、人感センサーは赤外線なのでガラスを通らないため、ブースが空いている、埋まっている、という満空情報がより正確に把握できるようになります。人感センサーは月500円で利用できます。センサーからの情報もスマホで検知できます。調べたいポイントにセンサーを置くだけです。これまでは専用の受信機が必要でした。


より精度の高い情報が必要な場所はセンサーで、傾向がつかめればいいという場所はビーコンで、というようにセンサーとビーコンを組み合わせた運用を提案しています。



センサーを併用した場合のイメージ図 出典:所在地⾒える化ソリューションBeacapp Hereより(※)

センサーを併用した場合のイメージ図

出典:所在地⾒える化ソリューションBeacapp Here (PDF) より (※)



――今取り組まれていることを教えてください。


中垣 先ほどお話したように、「Beacapp Here」はオフィスでのニーズを想定していませんでした。ご利用企業には月例レポートを出しているのですが、オフィスでご利用される場合、データを分析する総務部の方やファシリティマネージャー様がどんなデータを必要としているか、基本的なこともわかりませんでした。


そこでオフィスのデザインや施工を手がける三井デザインテック社の協力を得て、よりオフィスで活用していただくためのデータ取得やレポート作りのノウハウを蓄積しました。同社との共同開発の成果が「Beacapp Here Pro」です。具体的には「各部署間の遭遇量」「施設利用割合」「スペースの稼働率」といったことをWEB上でグラフィカルに見える化できるようになります。



「Beacapp Here Pro」で見える化されるデータ 出典:所在地⾒える化ソリューションBeacapp Hereより(※)

「Beacapp Here Pro」で見える化されるデータ

出典:所在地⾒える化ソリューションBeacapp Here (PDF) より (※)



「Beacapp Here Pro」の開発中の画面 出典:所在地⾒える化ソリューションBeacapp Hereより(※)

「Beacapp Here Pro」の開発中の画面

出典:所在地⾒える化ソリューションBeacapp Here (PDF) より (※)



――見ることができるのはどの時点のデータですか?


中垣 前日までのデータです。各部署間の遭遇量からは「コミュニケーションが起きやすい環境を作ることができているか」、施設の利用割合からは「想定した通りのオフィス利用ができているか」、スペースの稼働率からは「スペースの効率的な利用ができているか」といったことを最新データから分析できます。


すでに開発は終わっており、2020年1月から運用テストが始まります。そのテストの終了を待って、2020年春のサービス開始を予定しています。



■「見える化」の導入事例は今後も広がる


――これまで収集されたデータから、どんな傾向が見えてきますか。


中垣 「Beacapp Here」の管理画面へのアクセスが最も多いのは朝です。おそらく、出社した上司が、部下が出社しているか、どこにいるか、を確認するために利用しているのではないでしょうか。部下は上司から遠いところから座る傾向があるので、自分の席からは見えなかったりします。また、サテライトオフィスがある会社の場合、東京の本社ではなく、たとえば横浜のオフィスに出勤しているかもしれません。管理画面にアクセスして、名前を検索すれば、社内にいるか、サテライトオフィスにいるか、社外にいるかをすばやく確認できます。


そうしたことを朝に確認し、次は昼前にまたパッと上がるという傾向が共通で出ていますね。 想定していなかったのは、社外から社内の様子を見るという使われ方が意外に多いこと。社内の資料探しとか、手伝ってくれる在席者を探しているのかもしれません。



――想定していなかったような事例もありますか。


中垣 勤怠記録の補助として使われている例があります。主にサービス残業の抑止目的ですね。朝8時に出社打刻しているけれど、じつはすでに7時半には会社にいたり、逆に、夜7時に退勤打刻されているのに、10時になってもなぜか社内にいたり、ということがわかりますから。


ビルの入り口にゲートがある場合は、ゲートの開閉時刻で調べることもできますが、ビル側とセキュリティ会社が直接契約しているような場合には、テナント企業が入退館記録を入手することが煩瑣な場合も多いのです。企業が独自にビーコンで所在データを取れば、そのようなことも簡単にチェックできるようになります。


ただし、先ほども言ったようにビーコンには誤差があり百発百中ではありませんから、あくまでもエビデンスのひとつとして使ってくださいと申し上げています。



――勤怠が取りにくい職場などでは役立ちそうですね。


中垣 そうですね、たとえば病院からの引き合いも増えています。医師は勤怠のタイムカード打刻をしないことが多いそうですが、法改正によって、2024年から医療の現場にも時間外労働の上限規制が適用されることになります。客観的な事実をもって医師の在院時間を正確に把握することが必要になりました。病院は24時間動いている施設ですし、カードキーで入退室する場所ばかりではありません。どうすれば医師の勤怠記録を正確に取れるかということが検討課題になっているため、問い合わせが増えています。現在、複数の病院でトライアルが進んでいるところです。



中垣雄氏(株式会社ビーキャップ 代表取締役社長)

中垣雄氏(株式会社ビーキャップ 代表取締役社長)



――「ビーコン」は、政府が推進する「第四次産業革命」の中核を成すIoT(Internet of Thing、モノのインターネット化)技術でもありますね。


中垣 じつは世間で言われるほど盛り上がっていません。これはマネタイズできてないサービスが多いためで、IoTに関わる者として問題意識を持っています。


企業がIoTをビジネスに活用したいと考えたとします。まずデータを取得して分析します。課題が見つかり、検証のためまたデータを取って分析します。このサイクルを繰り返しがIoTの肝心なところなのですが、これはとてもコストがかかる工程でもあります。1回まわすのに数百万から1千万は当たり前という世界です。課題が見つかればいいのですが、見つからない場合もありますから、そう簡単に投資できません。




――データを収集するにもコストがかかり、分析にもコストがかかる。


中垣 当社のシステムのご利用者様は、データを取ること自体が目的なのではなく、オフィスがどう使われているのかを知りたいだけです。しかしデータを取らないと分析できませんから、手間と時間をかけてデータを集めるわけです。しかし、データの収集は、しっかりと集めようとすると想像以上に手間がかかります。当社の考えは、できるかぎり安いコストでデータを集める仕組みを作って提供しよう、というものです。データがあれば社内で分析できる。もしくは分析のノウハウをもった社外に依頼することもできる。再検証のための新たなデータが必要なら、そのときはまた当社のシステムを使ってもらえばいい。収集、分析のサイクルを回しやすくなるはずです。








IoT技術を応用したオフィスにおける人や物の動向、利用状況の「見える化」は、いよいよ実用の域に達してきています。詳細、かつリアルタイムに収集されたデータが、使いやすく、快適で、ヒューマンリソースを最大限に引き出すことのできる次世代のオフィスのあり方を見い出す手がかりになるかもしれません。






取材協力

株式会社ビーキャップ




編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局(※印の画像を除く)
取材日:2019年12月10日

         

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