IT化の進行により、多くの企業ではあらゆる情報機器が使われるようになりました。それに伴って発生する課題が、フロア上に張り巡らされた配線の適切な収納です。「OAフロア」を導入すれば、安全で働きやすい職場環境が実現されるでしょう。本記事では、OAフロアの種類や特徴、メリット、導入時に必要な選定ポイントなどを解説します。
・OAフロアとは配線を通すための床構造のこと
・OAフロアのメリット
・OAフロアの主な種類とそれぞれの特徴
・OAフロアを選ぶポイント
・OAフロアの信頼性を見極めるJAFA性能評価認証制度
「OAフロア」とは、ケーブルやコンセントなどの配線を収納する空間を、床下に設ける二重構造床のことであり、「フリーアクセスフロア」とも言います。「OA」は「Office Automation(オフィス オートメーション)」の略で、情報機器を用いた定型的な事務作業の自動化や、自動化するためのシステムなどを意味します。
IT化の進行により、多くの企業ではパソコンやプリンターなどの、さまざまな情報機器が使用されるようになりました。それに伴って増加した配線による、つまずきなどの事故や、不便なレイアウト変更の解消に役立つ仕組みです。
OAフロアを導入するメリットとして挙げられるのは、安全で働きやすい職場環境を構築できる点です。フロア上に張り巡らされた配線がなくなるため、抜けや断線によるトラブル、つまずきによる転倒事故の発生防止に効果的で、安全性が高まるでしょう。
また、配線を気にせず、什器や情報機器の柔軟な配置を行えるので、オフィスのイメージに相応したレイアウト変更や、従業員が心地よく過ごせるインテリアの配置など、働きやすい職場環境を実現できます。床上を掃除しやすくなり、オフィスを清潔に保ちやすい点もメリットのひとつです。
OAフロアには、「置敷式簡易」「置敷式溝配線」「支柱調整式」の3種類があり、それぞれメリット・デメリットが異なります。自社に最適なOAフロアを選ぶために、相違点を把握しておくとよいでしょう。
支柱がついたパネルを置き、床との間にあるスペースに配線を収納します。樹脂製やプラスチック製の素材が多いため、他のタイプに比べて安価な上、軽量で建物に負担をかけにくい点が特徴です。名称に「簡易」が含まれている通り、短期間で設置できることから、施工による業務への支障が生じにくい点がメリットとして挙げられます。
多量の配線を入れられますが、きちんと整理せずに配線を詰め込んでしまうと、レイアウト変更時に混乱しがちなので、注意が必要です。また、支柱の高さは天井の高さに相応した調節が不可能で、フラットではない床や、段差の多い場所などに設置できない場合があります。
置敷式簡易OAフロアは配線の変更に手間がかかるため、一度決めたレイアウトをなるべく変更しない、小規模なオフィスに適しているでしょう。
支柱はついておらず、パネルを床に敷き詰めて、表面の溝に配線を収納する方式です。配線にはカバーをかけて保護します。溝に沿わなければならないので、配線の自由度や収納量は制限されますが、配線の変更が容易な点がメリットです。素材には樹脂製とコンクリート製があり、コンクリート製はやや高価ですが、歩きやすく耐久性と耐熱性に優れています。
置敷式簡易OAフロアと同様に、床がフラットでないと、設置が難しい点がデメリットです。配線の変更が容易く、頻繁なレイアウト変更に対応できますが、配線の収納量はあまり多くないので、中規模のオフィスに向いています。
支柱がついたパネルを使用し、置敷式簡易OAフロアと同様に、床との間のスペースに配線を収納します。支柱の高さを調節して、収納量を自由に増減させられる点が特徴です。素材はスチール製が多く、コンクリート製に並ぶ優れた耐久性と耐熱性を持ちます。
他のタイプよりも、構造や素材が頑丈でしっかりしていますが、施工にかかる費用が高く、施工期間が長いといったデメリットがあります。また、支柱を固定するのに、ビスを打ち込んで床を傷つけるため、施工しても問題ないか、ビルの管理会社への事前確認が欠かせません。大規模オフィスやサーバールームなど、配線量と耐荷重性が重要視される場所にぴったりでしょう。
3種類のOAフロアはそれぞれ特性も、施工にかかる費用や時間などの必要なコストも異なります。OAフロアを導入する際は、自社に必要な機能や許容範囲内のコストを検討して、最適なタイプの選定が大切です。以下、OAフロアを選ぶ際に重要な6つのポイントを紹介します。
床に下地となるシートを置いて、その上にパネルを敷き詰める置敷タイプと、支柱をひとつずつ床に固定する支柱調整式タイプでは、施工にかかる時間が大きく異なります。オフィスの広さにもよりますが、目安としては最短でも、置敷タイプは1週間、支柱調整式タイプは2週間を見積もっておきましょう。特に、支柱調整式タイプは他のタイプと比べて時間がかかるので、一時期は業務を行うために、レンタルオフィスなどでスペースを借りる可能性も考えられます。
簡易的なつくりである置敷タイプと、機能性や耐久性が高い支柱調整式タイプでは、施工費用にも大きな差があります。例えば下地処理の有無や、オフィスビルが新築なのか中古なのかによって変動します。費用相場としては、置敷タイプは1㎡あたり約2,500~3,000円であるのに対し、支柱調整式タイプは1m²あたり約5,000~6,000円です。つまり、支柱調整式タイプは置敷タイプの約2倍の費用がかさみます。
事務作業においてパソコンが欠かせない昨今では、一般的にオフィスに配属される従業員数と、使用される配線の量は比例の関係にあります。従業員数別のおすすめのOAフロアの種類は次の通りです。
オフィスで働く従業員数が約20人の場合は高さが40mmの置敷タイプ、約50人の場合は高さが50mmの置敷タイプがおすすめです。さらに、50人以上の規模になると高さが50mm以上の置敷タイプ、あるいは支柱調整式タイプが適しています。また、執務フロアではなくサーバールームの場合、配線量が多いので支柱調整式タイプがおすすめです。
ですが業務内容によって必要な配線量には差があるため、導入を検討する際は業者に相談して決めることをおすすめします。
レイアウト変更に伴う配線の変更や、従業員数の変化による増設などが頻繁に生じるオフィスには、置敷式溝配線OAフロアをおすすめします。配線を整然と収納できるため、目当ての配線を容易に見つけられる上、カバーを外すだけで簡単に配線の変更が可能です。置敷式簡易OAフロアおよび支柱調整式フロアは、パネルを外して配線を変更しなければならず、大幅な手間がかかってしまいます。ただし、置敷式溝配線OAフロアは他のタイプに比べて、収納できる配線量が少ないので要注意です。不要になった配線は、随時取り外しておきましょう。
耐荷重の単位は「N(ニュートン)」で表します。Nは、質量1kgの物体に作用して、1m/s2の加速度を生じさせる力を意味し、1kgが約9.8Nにあたります。耐荷重が必要なスペックを満たさないOAフロアを選ぶと、床が沈むおそれがあるので注意しなければなりません。
耐荷重は素材によって異なり、金属製の支柱調整式やコンクリート製の置敷式は3,000~5,000N(約300~500kg)、樹脂製やプラスチック製の置敷式は2,000~3,000N(約200~300kg)です。一般的なオフィスの場合、求められる耐荷重の基準は3,000Nですが、自動販売機を置いた休憩室やサーバールームなどは、より高い耐荷重性を備えるべきでしょう。
OAフロアを導入する際に、予定するOAフロアが建物の施工条件と相応しているかどうかを、必ず確認しなければなりません。床がフラットでない建物の場合、高さの調整ができない置敷タイプだと床上が不安定になり、つまずきのリスクが生じるおそれがあるため、候補から外した方がよいです。支柱調整式タイプは、支柱の固定時に接着剤やビスを使用するため、施工の許可を得られるかどうか、ビルのオーナーや管理会社への事前確認が必要です。
信頼性の高いOAフロア製品を選ぶためには、フリーアクセスフロア工業会(JAFA)が運営する、第三者認証制度の「JAFA性能評価認証制度」を活用しましょう。これは、OAフロアの性能に関する表示方法の明確化によって、製品選択の利便性と製品の信頼性を向上させるべく、2019年に新設された制度です。
JISの規格である「フリーアクセスフロア試験方法(JIS A 1450)」に基づいて性能評価が行われ、基準を満たした製品にJAFA認証マークが付与されます。JAFA性能評価認証制度について詳しく知りたい方は、下記の記事を参照してみてください。
参考:フリーアクセスフロア工業会「JAFA性能評価認証制度とは」
OAフロアを導入・活用することで、安全で働きやすい職場環境の実現を目指せます。OAフロアには、「置敷式簡易」「置敷式溝配線」「支柱調整式」の3種類の方式があり、それぞれメリット・デメリットや適したオフィスの規模が異なります。施工にかかる期間・費用、必要な配線量、レイアウト変更の容易さ、耐荷重、ビルの施工条件など、さまざまな要素を検討し、自社に相応しているものを選ぶべきです。
快適な職場環境を構築し、従業員のモチベーションアップにつなげたいといったオフィスづくりについては、オフィスのデザインから施工管理まで、専任の担当者にワンストップで任せられる、「アスクルオフィスづくりサービス」への相談を検討してみてください。
編集・文・画像:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
制作日:2022年11月16日
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