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ウィズコロナの"巣ごもり"で活況のオンライン学習市場~ビジネスパーソンのスキル獲得意欲が高まる

ibravery / AdobeStock(※)

ibravery / AdobeStock(※)


新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた休業や時短勤務、在宅ワークによる通勤時間の減少などによって、オフィスワーカーの余暇が増えています。中には1日のほとんどを家で過ごしている人もいるようです。


働き方の変化で生まれた時間を有効活用しようと、自宅に居ながら新しい知識やスキル(技能)を習得しようという、社会人の学び直しに対する意欲が高まっています。


今回はそのようなオンライン学習の現状について調べてみました。




■オンライン学習の受講者が急増


日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC、ジェイムーク)によれば、同協議会が提供する無償講座の利用者数は、4月以降、前年に比べて大幅に増えているそうです。


JMOOCとは、「『良質な講義』を『誰も』が『無料』で学べる学習機会を提供することで、様々な分野における知識レベルの共通化・標準化を推進し、個人が意欲的に学ぶことを支援するとともに、個人の知識やスキルを社会的な評価へ繋げていく」(同協議会ウェブサイトより)ことを目指す団体。オンラインで公開された無料の講座を受講して、修了条件を満たすと修了証が取得できる「MOOC(MOOCs)」という教育サービスの日本版です。学生ばかりでなく、学び直したい社会人など幅広い層に門戸が開かれています。




■多彩なJMOOC認定講座のプラットフォーム


JMOOCの活動には企業なども賛同しており、JMOOC認定講座を配信しているプラットフォームは大きく4つあります。


Fisdom

本格的な講義をパソコンやスマートフォンからオンラインで受講できる、新しいJMOOC公認プラットフォーム。特徴は講座提供者が自らFisdomに講座情報(シラバス、動画URL、テスト内容など)を設定できることです。


希望する言語を日英から選べたり、スマートフォンの専用アプリケーションを使って通勤時間といった隙間時間に学習できます。企業向けには、自社従業員の理工系基礎科目シリーズの受講状況を把握できる機能(別途利用申請が必要)も提供しています。



gacco

ドコモgacco社が提供する国内最大のプラットフォームで、57万人以上が利用しています(2019年4月末時点)。


社員のリカレント教育促進にgaccoのMOOC講座や学習プラットフォームを活用できます。日本語と英語に対応しているほか、シングルサインオン(SSO)などの各種データ連携も可能です。



OpenLearning, Japan

教育学習サービス企業である株式会社ネットラーニングが運営するプラットフォーム。同社には8,650講座の制作実績と5,030万人の受講実績があり、学習設計コンサルティングから撮影・編集・運営までを一貫して提供しています。


受講者視点を重視した学習設計によって、これまで開講したJMOOC講座の平均修了率は29.1%(2019年4月末現在)。多言語対応で海外の受講者向け配信にも向いています。



OUJ MOOC

放送大学が運営主体になっているプラットフォーム。FacebokkやGoogle+などのアカウント(会員情報)を使って登録できるのが特徴。Moodleを利用した学習管理機能を用意していて、教材はeBook(電子書籍)など、オープンソースや無料で利用できるサービスを組み合わせる手法(Mash-up)によって、サービスを構成しています。


参考: 日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)



オンライン学習としては、政府も一般向けに講座を開講しています。


総務省が開設しているデータサイエンス・オンライン講座「社会人のためのデータサイエンス入門」で、5月19日に将来の経済成長を担う"データサイエンス"力の高い人材育成のための取り組みとして開講しました。2019年10月に実施した講座を再収録したものですが、2020年7月7日まで受講登録が可能です。


統計学の基礎やデータの見方のほか、国際比較データを使った分析事例や公的データの入手・利用方法の紹介等、データ分析の基本的な知識を学べる内容となっています。


参考: 総務省統計局「社会人のためのデータサイエンス入門」




■IT技術を駆使した「EdTech」


オンライン学習のようなITを用いた教育には「EdTech」という呼び名もあります(「Education(教育)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語)。


EdTech市場ではすでにさまざまなサービスが開発されていますが、野村総合研究所(NRI)コンサルタントの隈部大地氏によれば、無料または低料金のサービスが多く、収益を上げているものはまだ少ないとのこと。野村総合研究所では2016年度におけるEdTech市場規模を約1,700億円と推計しており、市場拡大の余地はまだまだ大きいと隈部氏は指摘します。


「今後、公教育における情報端末の整備が進む2020年前後にかけては、主に児童・生徒向けの教科学習コンテンツが市場を先導し、2023年にはEdTech市場全体で約3,000億円に達する見込みだが、さらなる市場拡大には、消費者や企業が利用したいと思えるようなサービスを生み出せるか、また収益化可能なビジネスモデルを確立できるかが鍵となるだろう」


(下記インタビューも含め、NRIのデータをもとに「みんなの仕事場」運営事務局が抜粋)。 企業導入の実態について、隈部氏に伺いました。



隈部大地氏(野村総合研究所 コンサルタント) (※)

隈部大地氏(野村総合研究所 コンサルタント) (※)



――企業の導入例について教えてください。


隈部 企業内教育・研修へのEdTech活用事例を挙げると、日本航空では、客室乗務員の訓練・教育プラットフォームに、スタディスト社が提供する「Teachme Biz」を活用しています。タブレット端末を社員一人ひとりに貸与して「Teachme Biz」を導入したことより、社員は場所や時間を問わず最新のマニュアルを確認できるようになりました。社員教育の品質が向上しただけでなく、マニュアルや教材作成に要する時間の短縮などにより、間接部門の業務効率化にもつながったそうです。


社内教育へのEdTechの活用は今後も進むと思いますが、教育効果を最大化させるには、従来のプログラムを単にデジタル化しただけでは意味がありません。時間や場所の制約がなくなるというオンラインメディアの特性を最大限に生かした学習プログラムの作成が求められます。



――オンライン学習は今後どのように進化していくと見ていますか。


隈部 オンラインやデジタルを活用した学習プログラムが進化した先には、人工知能(AI)を活用したものも登場するかもしれません。個々の習熟度や興味、得意分野、不得意分野などを分析し、それぞれの人に合わせてカスタマイズした学習プログラムが提供されるようになるでしょう。分からないところをAIに質問するとヒントや答えが提示されるなど、対話形式で学べるプログラムも考えられますね。近い将来、AIが教師の役割の一部を担うこともあるでしょう。


今後EdTechの技術が進み、新たな教育プログラムやプラットフォームが広く普及すれば、教育産業を変えるだけでなく、われわれの働き方さえも変える可能性も十分に考えられます。


一人ひとりの意思や能力、そして置かれた個々の事情に応じた、多様で柔軟な働き方(働き方改革実行計画より抜粋)」が後押しされ、ワーク・ライフ・バランスの改善や、労働者が自分に合った働き方を選択して自らキャリアを設計できるようになるでしょう。




■オンライン学習でAI人材を育成する新たな取り組み


AIソリューション開発と人材育成サービスを展開するAI TOKYO LAB(東京都渋谷区、小野良太社長)は、企業向け「AI人材育成講座」のオンライン講座を4月22日に始めました。


これまでは集合型の講座を実施してきましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大を防止する観点から、双方向のコミュニケーションができるテレビ会議システムを活用。オンラインでもこれまでと同じようなクオリティを維持できているようです。


同社取締役の松井宏樹氏に、開講の背景などについて伺いました。



松井宏樹氏(AI TOKYO LAB 取締役)

松井宏樹氏(AI TOKYO LAB 取締役)



――テレワークの拡大でオンライン学習の需要が高まっているようですね。


松井 オンライン化が浸透するまでにはある程度時間がかかると思いますが、数は増えていくだろうと予想しています。講座を受けるために地方から出張してきて1カ所に集まってもらったりするより、オンラインの方が学習効率が高いからです。



――「AI人材育成講座」では、どのようなことが学べるのでしょうか?


松井 AIについての基礎的な知識を学ぶ入門講座から、AIのプログラム開発スキルが習得できるAIエンジニア講座まで、幅広いカリキュラムを用意しているのが特徴です。


さらに、受講目的や企業が直面するビジネス課題に応じて、カリキュラムを組み替えたり、教材として自社のデータを使ったりといったカスタマイズもできます。



――日本ではよくAI人材の育成が遅れていると言われます。開講の背景にはそういった危機感もありますか。


松井 AI(人工知能)が企業の生産性向上や業務効率化を引っ張っていく先端技術として期待される一方で、AIを利活用できる「ニューカラー」と呼ばれる人材をどうやって確保し、育成していくかも課題となっています。2030年にはAI人材が約12万人も不足すると見込まれています。


当社はAIを利活用した企業の生産性向上・課題解決のノウハウを多数持っていますので、1965年からAI研究と人材育成を続けている北海道大学調和系工学研究室の川村教授に監修いただき、「AI人材育成講座」を開発しました。


「技術力」と「企画力」の2軸で講座プログラムを設計・開発し、AIについての基礎的な知識から、ビジネスでの活用例、AIを用いた開発技術まで、AIを必要とする方の幅広いご要望に対応できる複数のプログラムを用意しました。いずれの講座でもAIに精通する当社のプロフェッショナル講師が担当します。


ご自身でAIを活用したソフトウェアを作成するエンジニアを目指される方だけでなく、事業でAIの活用を検討されているマネージャーの方など、さまざまな方々に幅広いカリキュラムで対応しています。




■オンライン環境での講座にニーズあり

自宅に居ながらできるオンライン学習に注目が集まる。(提供=AI TOKYO LAB ※)

自宅に居ながらできるオンライン学習に注目が集まる。(提供=AI TOKYO LAB ※)



――オンライン学習ではどのようなことを学べるのでしょうか


松井 従来から展開してきたAI人材育成講座と同内容の講座をZOOMなどのテレビ会議システムを活用したオンラインでも受講できます。


当社では受講者のスキルに合わせた4つの講座を提供しています。


AIエンジニア講座では、AIを自らのプロジェクトで活用・遂行する知識・技術を身につけるため、AIの全般的な知識からディープラーニングまで、プログラミング演習を交えて課題解決の方法について学びます。


AIを必要とする課題に対して、自ら目標設定・手法選択・プログラムの開発を実践できるスキルを習得できる講座です。


受講対象はAIやその活用事例に興味があり、プログラミングの知識・経験がある方で、受講時間は30時間です。


AIテクニカルプランナー講座は、AIの技術に関する基本的な知識を座学と演習を交えて学びます。エンジニアと協力してAI活用プロジェクトを企画、参加できるまでのスキルを身につけることができます。演習では、クラウドAPIやプログラミングを体験できます。


受講対象はプロジェクトマネージャー、IT部門等の技術者で、受講時間は15時間(3時間×5回)です。


AIビジネスプランナー講座は、AIを利活用する際に必要な基本知識や導入事例をケーススタディとして学びます。社内外の課題に対してAIが活用可能か、適しているかという判断基準を学び、外部の専門家をディレクションできるスキルが得られます。受講対象は自社内や顧客の課題に対してAI活用の検討を行う立場の方(マネージャー、経営層、企画職、営業職)で、受講時間は4時間です。


AI入門講座はビジネス教養としてAIの技術概要や注目されているポイントをディープラーニングなどの話題を交えて学びます。


受講対象はAIについてこれから知ろうとされる方(新入社員など)で、受講時間2時間です。



――反響はいかがですか。


松井 予定されていた集合型講座からの変更を含め、すでに数社からオンライン講座のご要望をいただいています。そのほかにも、集合型研修が困難な企業を支援する取組として、期間限定で実施した「AIビジネスプランナー講座」のeラーニングの無償提供は60社からお申込みいただきました。


今回は企業単位でお申し込みを受け付けたのですが、大企業のお客様からは「部署ごとに受けさせてくれないか」といったご相談もありました。


ご要望いただいた企業様の業種は、メーカー、商社、ITベンダー、通信、金融・保険など様々です。当初考えていたよりも手応えを感じているところです。



――どのようなことがきっかけになっているのでしょう。


松井 リモートワーク中心の状況で、研修もオンライン化したいという要望が大きいです。とくにAIエンジニア講座やAIテクニカルプランナー講座のようなプログラミング演習を行う講座も、オンラインで実施できる点を評価いただいているようです。


お申込みとしては、一度受講されたマネージャークラスの方が、若手にオンラインセミナーを薦められるというケースがあります。教育事業の代理店の方が、「アフターコロナ」に備えて情報収集として参加する例もありました。


割合としてはそう多くはありませんが、オフラインで一度受講された方が、オンラインで復習をやりたいというニーズもあります。あとは新しく入ってこられた中途採用の方を対象として、オンラインセミナーを受けてもらうといったことも考えられます。



――利用企業からの反応は?


松井 当社の標準カリキュラムだけではなく、AI活用コンテスト企画したいといった声や、より応用的、より実践的なAIの活用を求められる声が寄せられています。自社のデータを活用してリアルなAIの導入をやってみたいというユーザーさんも多いですね。このような講座のカスタマイズのご要望にも対応していきたいと思います。




■アフターコロナを見すえて高まる学習熱


オンライン学習はITの発展とは切っても切れない関係にあります。ビデオ会議システムの進化や、第5世代移動通信システム(5G)によって、動画や音声がスムーズにやりとりできるインフラが整えば、オンライン学習が飛躍的に普及する可能性があります。


新型コロナ禍が収まった後を見すえ、新たなビジネススキルを身につけようとしているビジネスパーソンは少なくありません。企業の側でも、AIをはじめとしたテクノロジーを自社のビジネスに活用し、新たな成長戦略を描こうと模索しています。オンライン学習は、そうした中で強力な武器となりそうです。







取材協力

株式会社野村総合研究所 [外部リンク]

AI TOKYO LAB株式会社 [外部リンク]





編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
取材日:2020年5月20日、6月1日

         

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