ハイブリッドな働き方に対応するオフィス家具シリーズ「JUSTUS(ジャスタス)」
アスクルは、2023年11月8日に、オフィス家具トップメーカーであるオカムラと共同開発した中小企業向けのオフィス家具シリーズ「JUSTUS(以下ジャスタス)」の発売を開始しました。コンセプトは「私たち(us)にとってちょうどいい(just)」。中小企業においてもハイブリッドワークの導入が増える中で、中小企業ならではの悩みを解決するために、オカムラに働きかけて実現したコラボレーションシリーズです。
そこで今回は、本シリーズに携わった両社の担当者に伺った開発ストーリーをお届けします。前編では、オカムラの五十嵐僚氏、アスクルの岩崎久美子氏、野崎達氏にお話を伺いました。
前編
・お客様のニーズに応えるアスクルと豊富なノウハウを誇るオカムラがタッグ!
・中小企業におけるオフィスの課題とは
・コンセプトは「ちょうどいい」
・ジャスタスで実現する新しい働き方
後編
・ジャスタスとは
・デスク~フリーアドレスへの転用を重視
・チェア~座り心地・色味・サイズ感のこだわり
・パネル&ソファ~吸音効果つき囲われブース
・ストレージ~追加買いしやすい省スペース収納
アスクル/野崎達氏(マーチャンダイジング本部 ライフスタイル統括部 家具・生活雑貨)
― 今回、「ジャスタス」というコラボ企画が生まれた背景を教えてください。
野崎(アスクル) コロナ禍の中で当社販売における家具・インテリアカテゴリーの成長が鈍化しました。当社の強みは中小企業のお客様のニーズに応えてリーズナブルな家具を短納期でお届けできる点ですが、品質や耐久性、ブランド力などの点ではメーカー様にかないません。そこで、メーカー様とコラボしてアスクル限定販売の商品を開発することで弱みを克服しようと考えました。
― コラボパートナーとしてオカムラを選ばれた理由は?
岩崎(アスクル) やはりオフィス家具のトップメーカーとして非常に豊富なノウハウを蓄積されていて、ハイクオリティの家具を提供されているということからオカムラさんにお声がけさせていただきました。
― オカムラとしてはどんなメリットがあると受け止めましたか?
五十嵐(オカムラ) 当社では大企業向けの家具を作ることが多く、中小企業のニーズには積極的に応えることができていないと感じていました。
昨今の大企業ではハイブリッドワークが普及し、オフィスも人数の増減への対応が重要になっています。オープンな空間にさまざまなワークスポットを配して、仕事の内容に応じて場所を選んで働けるABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の考え方が、大企業ではある程度浸透しています。しかし、中小企業がそれを取り入れようとすると、やはりスペースとコストの問題が出てきてしまいます。
そこで、中小企業のニーズをしっかりつかんでいるアスクルさんからの提案で家具を作るということにメリットを感じました。
オカムラ/五十嵐僚氏(オフィス環境事業本部 マーケティング本部 ワークプレイス製品部 部長 ※開発当時)
― コロナ禍を経たオフィスのトレンド変化は、中小企業にも影響しているのでしょうか?
野崎(アスクル) オフィス全体のトレンドとしては、フリーアドレスが導入されて従来のような固定席が縮小したり、リモート会議に適した防音性の高い個室や、コミュニケーションを誘発するカフェスペースなどが設けられたり、ウェルビーイングを意識した環境性の高いスペースなども増えています。
一方、私たちのメインのお客様である中小企業では、そのような新しい働き方に対応したメーカー家具は、予算的にもサイズ的にもハードルが高いと考えられます。
野崎(アスクル) 中小企業のお客様向けに実施したアンケートの結果から、テレワークの増加によって、就業規則の変更や、オフィスのICT(情報通信技術)化、それにともなうペーパーレス化が進んでいることがわかりました。今後はオフィス回帰に向けて、オフィスを心理的・機能的・物理的に快適な空間にすることが求められるようになると考えられます。
一方、働き方改革やオフィス改革の目的や期待する効果については、従業員満足度の向上、業務生産性の向上、社内コミュニケーションの強化という回答が多く、オフィスに置く家具にそれらを担う役割が求められていると考えました。
こうしたニーズから、今回のコラボ製品を、新しい働き方を実現するオフィスづくりを支援するものと位置づけました。
― 中小企業は、オフィス改革という課題をどの程度感じているのでしょうか?
岩崎(アスクル) 意欲はすごく感じます。変えたいけど、どうしていいかわからなくて困っていらっしゃる。経営者は、生産性の高い働き方ができるオフィスにしていかなければ、優秀な人材を確保しにくいという危機意識をもっています。人材確保は事業の成長にダイレクトに関わる問題ですから、オフィスを変えることが課題になるわけです。また、中小企業では経営者と従業員の距離が近いので、経営者は、「働きにくい」という従業員の声を気にしているんです。オフィスに対する課題は以前からあったと思いますが、コロナ禍によって働き方を変えざるを得なかったことから、生き残りをかけて優秀な人材を集める必要性が出てきている状況です。
― しかし実際には「予算とスペース」のハードルがあるわけですね。
岩崎(アスクル) オカムラさんの家具はもちろん素晴らしいものですが、価格帯も含めて、中小企業にとってはやはり手を出しにくいところがあります。「メーカー家具で揃えると予算に収まらない」「大規模オフィス向けの新しい働き方に対応した最新のメーカー品は、自分たちのオフィスには大きすぎる」「こんなに機能が充実していなくてもいい」というお客様の意見をよく聞きます。
また、実際に50坪規模のお客様のオフィスを訪問してみると、デスクと書庫といった必要な家具でいっぱいで、コミュニケーションスペースなどはなかなか作れない現状です。もちろん働き方を変えるなどの工夫もできるのでしょうけれど、そのための情報を知る機会もあまりありません。大企業の場合は、オフィスデザインの会社さんから、働き方まで含めてオフィスを変えるような提案を受ける機会もありますが、中小企業ではそういった機会がないために、どうしていいのかわからないわけです。
アスクル/岩崎久美子氏(マーチャンダイジング本部 ライフスタイル 統括部 家具・生活雑貨 部長)
― コラボはどのように進めていったのでしょう。
岩崎(アスクル) まず当社から中小企業におけるオフィスの課題を提示し、それについて両社でディスカッションして、オカムラさんのノウハウをもとにご提案をいただきました。当社から提示したのは、「ハイブリッドワークでも働きやすく、生産性の高いオフィスにしたい中小企業のご要望を、手の届く価格帯で実現したい」ということです。具体的なイメージは、
・ハイブリッドワークを導入し、固定席からフリーアドレスに
・リモート会議やミーティングスペースなどのコミュニケーションエリアを確保
・座り心地が良いチェア、無骨な事務机ではなくナチュラルテイストのデスク
・古い仕事場イメージを払拭した、若手が働きやすく風通しの良いオフィス
・集中作業や打ち合わせもできる、囲われ感や個室感のあるスペース
・雑品や個人持ちの書類や資料をしっかり収められるオープン収納や省スペース収納
・写真を撮ってSNSに上げるなどアピールできるイメージのよいオフィス
というものでした。
― シリーズコンセプトについて教えてください。
五十嵐(オカムラ) アスクルさんからの課題を検討して当社のマーケティング・デザイン部門が出したキーワードが、「ちょうどいい家具」というものでした。ちょうどいいサイズ、ちょうどいい機能、ちょうどいい価格、ちょうどいい家具、ちょうどいいオフィスというコンセプトで「ジャスタス(私たちにちょうどいい)」というシリーズ名になりました。
大企業向けの場合、家具ラインナップはシンプルなものから上位機能付きのものまでかなり幅広いのですが、それをスペースと予算が限られている中小企業向けに展開するとどんな家具になるのかということを考えて、最適化した機能で、スペースをとらないコンパクトなサイズの家具ということを意識しました。
デザインにおいては、アスクルさんから「くすみカラー」というキーワードをいただき、今までのオフィスのようなビビッドなカラーではない、人に優しいカラーコーディネートを意識することで、最近のオフィストレンドである「リビングのようなリラックスできる空間」を取り入れています。
岩崎(アスクル) 中小企業向けに機能を最適化することで「ちょうどいい価格」「ちょうどいいサイズ」「ちょうどいい機能」を実現しました。
当社のカタログ、インターネット販売でも、メーカーが異なることでサイズが合わなかったり、コーディネートが難しかったりするというお客様の声があります。そこで、私たちのコンセプトを具現化した家具をワンメーカーで提供することを考えました。
オカムラさんのノウハウをきちんと受け継いでいるので、よくある廉価家具とは品質や機能が圧倒的に違います。廉価家具は単機能に特化していることが多く、「転用性」も乏しくなっています。「ジャスタス」なら、増員の際のレイアウト変更などもフレキシブルに対応できます。
― 中小企業向けに最適化したポイントの例を教えてください。
五十嵐(オカムラ) 例えばチェアの座り心地やサポート感は大企業向けの家具と変えていません。今回、中小企業を意識したのは、たとえば人数に合わせた「転用性」を重視していることです。大企業向けの家具は特定の用途に特化されていることが多いので、そのようなものはなかったのです。
先ほど岩崎さんが言われたように、中小企業には経営層と従業員の距離が近く、そのフットワークの軽さが中小企業の強みでもあります。そこで、機動性の高さや、活発さを意識し、一つ一つの製品にこだわって、本当に必要な機能に絞り込みました。
対象としては、1~2名のスタートアップ企業から導入可能ですが、アンケート調査でも一番多い50坪のオフィス、従業員20名規模の中小企業を念頭に置いています。
― 「ジャスタス」を導入することで、中小企業の働き方はどう変わっていくでしょう?
野崎(アスクル) テレワークと出社のハイブリッドワークに変化し、従来の固定席からフリーアドレスにオフィスが変わる。リモート会議ができるコミュニケーションエリアも必要になる。そうした働き方の変化を「ジャスタス」がサポートします。在宅勤務時に不満を抱く人が多かったチェアの座り心地も良くして、デスクも従来の無骨な事務机からナチュラルテイストのデスクにしました。集中作業をできる個室感のあるスペースづくりのニーズにも応えています。
岩崎(アスクル) オフィスの古いイメージを払拭したいという中小経営者のご要望に応えるものができました。今まで諦めていたことが「うちでもできる」と発見していただきたいと思います。
― 今後のラインナップ展開について教えてください。
野崎(アスクル) ICT(情報通信技術)化・ペーパーレス化を進めたために書類が減り、従来のような大きな書庫からオープンラック型の省スペースの収納に変えたり、固定席からフリーアドレスにすることで、新たなスペースが生まれます。そうした新しい空間で、執務・ミーティング・リモート会議などにマルチで使える家具ラインナップを展開していく予定です。集中して執務ができ、コミュニケーションも取りやすく、かつ囲まれて集中したり休憩したりできるラインナップです。
収納シリーズは順次追加していく計画です。家具を設置するスペースが足りない、物を収納するスペースが足りないなど省スペースのご要望に応えつつ、天板の高さが720mmのデスクに合わせた作業スペースを拡張できる収納なども予定しています。
岩崎(アスクル) ご購入いただいたお客様に使い勝手を聞きながら、ラインナップを育てていきたいと思っています。
― ありがとうございました。
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ビジネス環境が多様化する中で、中小企業においても、出社とテレワークのハイブリッドワークは珍しくなくなっており、オフィスはそうした働き方の変化にも柔軟に対応することが求められています。企業のニーズに直結した事業を展開するアスクルと、オフィス家具のトップメーカーであるオカムラのコラボレーションは、企業規模を越えて進行しつつあるオフィス改革を支援するものです。
さて、本記事後編では「ジャスタス」の開発に実際に携わった両社の担当者から、各家具を紹介していただきます。さまざまなこだわりポイントを伺いますので、どうぞお楽しみに。
後編はこちらから
編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
取材日:2024年1月31日
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