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顧客との繋がり深めるコミュニティイベント戦略 〜コミュニティ・アクセラレーター 河原あず氏インタビュー

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河原あず氏

河原あず氏



ビジネスにおけるコミュニティというと、企業が顧客とコミュニケーションするためのイベントや場というイメージがありますが、具体的にはそれをどのように運営し、利益に結びつけていけばいいのでしょうか。話題の書籍『ファンをはぐくみ事業を成長させる「コミュニティ」づくりの教科書』(ダイヤモンド社)の共著者であり、伊藤園、コクヨ、サントリーなど、数多くのコミュニティイベントをプロデュースする河原あず氏に、三密を回避しながらコミュニティを立ち上げ、展開するためのポイントを伺いしました。



■顧客を巻き込みながらセールスを広げる「ビジネスコミュニティ」


――コミュニティ・アクセラレーターというのは、どのようなお仕事なのでしょう。


コミュニティ・アクセラレーターというのは3年前に自分で作った肩書きですが、企業のコミュニティづくりやイベントの企画、組織開発やチームビルディング、人材育成の研修を手がけています。企業が持つキャラクター、私は「個」と呼んでいますが、それを明確にして、コミュニティや人の繋がりを通じて表現して行く仕事です。



――「個」ですか。


企業のプロダクトやサービスには、固有の価値があります。それをまず言語化し、表現するのです。その後にどのようなターゲットにどういう手段でそれを訴求していくかということをヒアリングしながら、顧客企業と一緒にプロジェクトを進めます。



――コミュニティの中でも企業が作る、いわゆるビジネスコミュニティづくりを中心に手がけていらっしゃいますね。


ここ2〜3年の間に、「ビジネスコミュニティ」は新しいキーワードとして表に出て来ました。背景には、企業が「共創」をテーマに新しい事業を立ち上げたり、広告代理店に依頼してプロダクトやサービスのプロモーションを一方的に広告する旧来の方法論とは別に、顧客を巻き込みながらセールスを広げるスタイルが増えていることがあります。



■ファンの愛着を高める施策~伊藤園「茶ッカソン」の事例

河原あず氏



――企業のプロモーションが変わったきっかけは?


2008年頃、ソーシャルメディアマーケティングあるいはインフルエンサーマーケティングという文脈で広がり始めたことがきっかけです。ただ、ソーシャルメディアだけでは顧客と濃い繋がりを築くのは難しい。それでネットだけで完結させず、リアルなイベントを開いたり、企業が「コミュニティの場」を設け、そこに外から人を招いてコラボレーションするようなスタイルが広がっていきました。



――顧客とのより濃い繋がりを作るための場、仕掛けということですか。


はい。たとえばB to Bなら、企業が取引先を招く勉強会を開き、そこに参加した顧客同士が主催企業の提供するプロダクトやサービスについて語り合うことによって愛着を持つようにする。そういう場を設ける企業が、ここ数年増えています。



――リアルなコミュニティでの交流があると、愛着が生まれやすいわけですね。


もちろんオンライン上でも、そのようなコミュニティは存在しています。B to Cの例ですが、ある格安SIM のサービス会社はオンライン上にユーザーコミュニティを作り、サービスを利用して分からないことをユーザー同士が質問しあえるコーナーを設けています。ユーザーが自らそのサービスに関与、貢献することで、より愛着が増すという現象が生まれるのです。企業側も本来なら自社が行うサポートサービスのコストを下げるという副次効果が期待できます。



――河原さんが手がけられたビジネスコミュニティを教えてください。


サンフランシスコに駐在していたとき、シリコンバレーで伊藤園の駐在員と一緒に「茶ッカソン」というコミュニティイベントを始めました。ハッカソンをもじったアイデアソンですが、お茶を飲みながら新しい発想、アイデアをグループワークで生み出そう、というコンペ型のイベントです。



――顧客は現地アメリカ人ですね。現地のコミュニティでプロダクトを普及させるためのイベントですか?


いいえ、シリコンバレーでは伊藤園のお茶は人気のドリンクなんです。主流はコーヒーで、加糖の紅茶しかなかった場所に無糖の日本茶が入ってきて、ヘルシー志向にマッチし、料理にも合うと受け入れられました。イベントでエンジニアたちに飲んでもらい、そこから企業内カフェテリアの責任者にアプローチしたりして、すでに導入には成功していたのです。


売り込みではなく、すでに伊藤園のプロダクトのファンになった人々により強い愛着を持ってもらうための施策はないかと相談を受けて、「茶ッカソン」を立ち上げたのです。



――「茶ッカソン」は日本でも開催されていますよね。


日本に帰国してからも続けています。お茶を飲みながら特定のテーマについて語り合い、アイデアを出し合う現代版"茶会"です。たとえば「長崎県の地域活性について話し合う」とか、「インバウンド向けSHIBUYAマップを作ろう!」とか、テーマは様々です。コンペティションですから、デザイナーやエンジニアなどが真剣にディスカッションし、プレゼンテーションする。その間、つねに傍らに「お〜いお茶」が置いてある。するとプロダクトの売込みを前面に出さなくても自然に愛着を持つようになり、「こういう場を作ってくれる伊藤園っていい会社だな」と感じるようになるわけです。



――何名くらいの方が参加するのでしょうか。


30〜50人ですね。何度も来てくれる人もいれば、初めてという人もいます。たった50人でも、その人たちが友人や家族に「伊藤園のこういうイベントに参加した」と話し、「お〜いお茶」を買うようになる。今は、短期的に広告を投じて一気にセールスを広げる旧来の方法が通じづらくなっているのですが、この手法なら、熱烈なファン、コアなファンを作り、徐々に熱を伝播させていくことができます。ドーンとユーザー数が伸びることはありませんが、じわりじわりと広がり、急に落ちることもありません。



■ビジョンを作り、小さく始めることが成功の道

河原あず氏



――ビジネスコミュニティの立ち上げを検討している企業も多いと思いますが、ずばり、成功のコツは?


まずはビジョンを作ること。何のためにやるのかというビジョンをきっちりと固めて、周りの人が共感できる言葉でそれを伝えられるようにします。


コミュニティの立ち上げというと、とりあえずイベントをやってみよう、コワーキングスペースを作ってみよう、と施策から入るケースが多いのですが、何のためにやるのかというビジョンがないと、数ヶ月後、数年後に、「何のためにやったんだっけ?」という問いがブーメランのように戻ってきます。



――最初にビジョンをきちんと決めておけば、施策は後からついてくる。


とくにイベントの場合は、数を打つことは手段であり、その手段が目的になってしまうとうまくいきません。


二つ目のポイントは、いきなり大きくしないことです。最初は10人程度のユーザーを集めるミートアップから始めます。大きなイベントだと一方通行になりがちなコミュニケーションも、その規模なら、会社のプロダクトやサービスについてどう思うかを問いかけ、参加者一人ひとりの答えをきちんと受け止めることができます。それによって、最初にお話しした、自社のプロダクトやサービスの「個」に対する気づきが生まれます。



――参加者が少ないほうが、ユーザーと深いコミュニケーションが取れるわけですね。


そうです。コミュニティ運営の結果はすぐに出るものではなく、中長期、数年がかりのスパンで見る必要があります。でも、目に見える進捗がないと「何のためにやっているんだ」と社内で言われてしまう。それを避けるためにも、小さく始めて大きな赤字を出さないようにしながら、少しずつ成果を積み重ねて行くことが大切なんです。とくにコロナ禍のような不測の事態が起これば、予算は不要不急のところからカットされていきますから。



――成果が出るまで持続するための秘訣は?


『「コミュニティ」づくりの教科書』にも書きましたが、「いいことリスト」を作ることです。劇的な変化がなくても、コミュニティ活動を通して少しずつ"いいこと"が起きていることを上司にレポートしつづけます。



――具体的にはどんなこと?


たとえば、「面接に来た人が『コミュニティを通じてこの会社を知りました』と言ってくれた」というようなことがあれば、採用活動に役立っていることの証明になります。そうして人事や管理部門、さらに経営層を味方につけることができれば心強いですね。また、コミュニティ活動に興味を持っている役員がいるという噂を聞いたら、「ぜひ次のイベントを覗いてください」と声をかけ、参加ユーザーと実際にコミュニケーションをとってもらうのもいいでしょう。



――経営層をうまく引き込んで行くということですね。



■コロナ禍は、オンラインという武器で火種を作るチャンスになる

河原あず氏



――現在は三密を避けるために人がリアルに集まるイベントを開催することは難しくなっていますね。


ビジネスコミュニティに関しても、オンラインイベントが増えています。オンラインならではのメリットもあるのでそれを生かせばいいと思います。



――どんなメリットがありますか?


まずは、イベントの立ち上げが簡単になるということです。その気になれば明後日にも開催できます。また、より多くの人が参加しやすくなるし、SNSで拡散されやすい傾向もあります。さらに、場所の制約がないことで、コストを下げることも可能です。


たとえば、47都道府県のコミュニティ・キーマンをリレー形式でつないでいく「47ers(フォーティセブナーズ)」というトークイベントを主催しているのですが、これをリアルで行えば、北海道のキーマンに会うためには北海道まで飛ばなければなりません。でもオンラインなら交通費はかかりませんし、自分の部屋からすぐにアクセス可能です。



――デメリットもありますか。


リアルなイベントに比べると、新しい出会いは少なくなります。オンラインのコミュニケーションは、自分の得意な領域に狭まる傾向がありますから、知識を求める人にそれを発信すればいいセミナーなどには向いているし、すでに知っている人との繋がりを深めることにも適しています。ただ、自分とは特性が異なる人と偶然に知り合い、交流することは難しいですね。



――「47ers」で河原さんがコミュニケーションするのは、リレー形式で偶然に紹介された面識のない人ですね。


この企画は、遠くにいる知らない人と繋がる機会を意図的にデザインしたイベントなんです。面白いのは、オンラインでコミュニケーションを重ねることによって、リアルな出会いがより特別なものになるということです。オンラインで面識ある人と実際に対面すると、会った時の熱量が違う、という印象を受けます。ビジネスでもオンラインで話を盛り上げて「落ち着いたら実際に会いしましょう」と言っていると、リアルで会ったときに一気に商談が成立しやすい傾向があります。バーベキューにたとえれば"火種"を作るフェーズになるわけです。



――遠くに住んでいる人とはコストのかからないオンラインでファーストコンタクトし、手応えがあればリアルで会ってみる、という考え方もありますね。


実際、地方のイベントは東京からのアクセスが多く、参加者の半数は東京からというデータもあります。地方のオーガナイザーにとっては東京からの集客チャンスで、面白いコンテンツを発信できる地域が数年後にそれを活かせる"火種"づくりができます。



――なるほど。リアルなイベントに出かけられない分、オンライン上で面白いイベントを探す人も増えているでしょうね。


ピンチはチャンスという側面もあります。オンラインという武器を使ってイベントの開催数を増やし、いろいろな人とコミュニケーションをとり、繋がりをつくっておけば、アフターコロナに何か爆発力のあることが起こせるのではないか、と私は思っています。



河原あず氏

河原あず氏



旧来の広告プロモーションが限界を迎え、ビジネスコミュニティに転じる必要性が高まる中、コロナ禍でコミュニティ運営に行き詰まる企業も少なくないでしょう。「ピンチはチャンス」と結ばれた河原さんのお話は、コミュニティの運営を担うビジネスパーソンに新しい展開へのヒントをもたらし、勇気づけるものでした。






プロフィール


河原あず(かわはら あず)

コミュニティ・アクセラレーター。富士通を経て、2008年からニフティが運営する(当時)イベントハウス型飲食店「東京カルチャーカルチャー」イベントコーディネーター就任。年間200本以上のイベント運営に携わる。2013~2016年、サンフランシスコに駐在。帰国後、伊藤園、コクヨ、オムロンヘルスケア、サントリー、東急などと数多くのビジネスコミュニティをプロデュース。2020年春に独立し、ギルド制のチーム「Potage」を立ち上げ、コミュニティ・アクセラレーターとしてイベント企画、企業のコミュニケーションデザインなどを手掛ける 。Linkedin(リンクトイン)の公式インフルエンサー。


著書

ファンをはぐくみ事業を成長させる「コミュニティ」づくりの教科書』(ダイヤモンド社、藤田祐司氏との共著)[外部リンク]


取材場所 RYOZAN PARK 大塚[外部リンク]



編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局(※の写真を除く)
取材日:2020年8月4日

         

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