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どこへでも行けるキャンピングカーが仕事場になる日 ~Carstay CEO 宮下晃樹氏インタビュー

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宮下 晃樹氏

宮下 晃樹氏



最近、広まりつつある「VANLIFE(バンライフ)」というライフスタイルをご存じだろうか。キャンピングカー・バンを拠点とするもので、新型コロナをきっかけに、"動く仕事場"として活用する人も増えているという。移動しながら車中泊をし、行きたい場所で時間を過ごす人へのキャンピングカーシェアを運営しているのはCarstay株式会社。24歳という若さで起業したCEO/代表取締役の宮下晃樹氏に話を伺った。



■デロイトトーマツの会計士から、24歳でベンチャー経営に転身


――宮下さんのご経歴を伺います。


僕は2歳から7歳までロシアで外国人として過ごして、2014年に日本の大学を卒業しました。海外で地域の方々から良くしていただいた経験から、日本に来訪する外国人の方にも良い経験をしてもらいたいという想いから、学生時代はインバウンド向けの事業やガイドなどをしていました。在学中に公認会計士資格を取ったので、海外のファームを目指し、監査法人のデロイトトーマツに入りました。



――公認会計士を目指したのはなぜですか。


幼少期の経験から、漠然と"将来は海外に住みたい"と思っていたためです。公認会計士という、ボーダレスで活躍できる資格があれば、海外どこでも仕事ができるのではないか。そう考えて、20歳のときに試験に合格しました。その後、IFRS(国際会計基準)を専門として、監査業務やコンサルティング業務などを行っていました。上場企業の監査が8割、2割がスタートアップやベンチャー向けのコンサルティングです。



――でも、そのまま一流企業の会計士としては歩まれなかった。


起業の現実や、ベンチャーの皆さんと話すうちに、自分もいつか支援する側から事業を行う側に行きたいという想いが芽生えてきました。起業家というと華やかなイメージがありますが、実際に会計士の立場で接していると、かなり泥臭いんです。私利私欲ではなく社会のために仲間を集めていくという生きざまに魅せられ、自分も1回きりの人生でチャレンジしたいと思いました。


もともとファストキャリアとしてトーマツを志望したのは、会計士として、さまざまな職種や業界の方と接し、その中で自分の天職を見つけたいという気持ちがありました。結果的に一番惹かれたのはベンチャーだったわけです。


それで約2年半でトーマツを退職し、自分は何をやりたいのかと考えて、日本に来る外国人向けのビジネスを選びました。2016年、24歳でした。



――かなり思いきった選択でしたね。


親にも友人にも反対されました。


トーマツで経験を積み、名刺にも「公認会計士」と刷れるようになっていたので、当初はフリーランスで公認会計士をして生計をたてながら、週のうちの半分ほどは好きなことをして、国内最大級のガイド団体「SAMURAI MEETUPS(サムライミーツアップ」というNPO法人を立ち上げました。4年間で約1200人をガイドしましたが、日本に来る人たちはいろいろなところに行きたがります。そこで、ガイドが連れていくのではなく、彼らが自分で好きなところへ行けるサービスがあった方がいいと考え、2018年6月に今のCarstayを立ち上げました。


今では1週間ずっと自分のやりたいことだけをやっています(笑)。



――モデルとした起業家はありますか。


Airbnb(エアビーアンドビー)には大きな影響を受けました。「シェアリングエコノミー」で人々のライフスタイルを変え、市場のリプレイスをしました。既存のモノをアイデアでうまく組み合わせて新しい価値を生み、三方良し、四方良しになるという点に非常に惹かれました。アップルもマイクロソフトも技術を核にした会社ですが、Airbnbは特別な技術を持たず、今ある資源を有効活用しながら新しいアイデアを愚直にやり続けたんです。創業者には本当に未来が見えていたのでしょう。



■コロナ禍の真っただ中で新ビジネスをリリース

宮下 晃樹氏



――今のCarstayのメイン事業「バンシェア」は、個人間でキャンピングカーをシェアするサービスですが、キャンプや車はもともとお好きだったのですか。


いえ全然。めちゃくちゃインドア派だったんです(笑)。ところが、外国の友人から「おすすめの温泉へ連れて行って」「一緒にキャンプしよう」などと声をかけられて、「じゃあ、車を運転して釣れていかないと......」という話になり、「みんなにもっと楽しんでもらうにはキャンプのテントも要るね」という話になり(笑)。そのうち、そういえば日本でこんなサービスはないことに気づき、商機があると思いました。当時はインバウンドで盛り上がっていたということもあります。



――しかしその後、コロナが拡大してしまいました。


「旅」の業界にいるわけですから、かなりの影響をこうむりました。4月、5月は売上ゼロです。何とかしなければという中で、誰でもシェアリングで貸し借りできるビジネスを6月にリリースしました。じつはこの構想自体は1年前からあたためていたもので、本当は4月にスタートする予定だったのですが、緊急事態宣言が出て、誰も借りる人がいないという状態でした。


日本にはキャンピングカーやバンが200万台ほどあるのですが、実際にオーナーが乗るのは年間2、3週間ほどで、あとは遊休資産になっているのです。これを使っていただくために、当初は医療機関を支援する「バンシェルター」を立ち上げました。1カ月間、医療機関に無料でキャピングカーやキャンピングトレーラーを使っていただき、患者さんの診療、医療従事者の休憩スペースとして利用いただきました。クラウドファンディングで資金を集め、多くの個人の方々にも賛同いただきました。



――社会貢献的な面がありますね。


医療従事者の方々に喜んでいただけたのも嬉しかったのですが、医療関係者から「こういう車はいくらぐらいするのか」「コロナが終わったらキャンプに行きたい」という声もありました。キャンピングカーに初めて乗った方も多く、社会貢献とビジネスのバランスの取れた事業を半年間やらせていただきました。キャンピングカーの移動プラスアルファという付加価値を世の中に発信するために、トヨタファイナンシャルサービスと車のサブスクリプション事業を展開するKINTOがスポンサーについてくださり、一部はクラウドファンディングで資金を集めました。


キャンピングカーはこれまで旅やお金持ちの乗り物ものというイメージがあったかと思いますが、あらゆる用途でキャンピングカーを簡単に利活用することができることを知ってもらい、ただ単に車として乗るだけでなく、一空間として応用利用することができるという体験価値を訴求できたと思います。



――「バンシェア」は順調ですか。


CarstayのWEBサイトをレンタカー企業や個人オーナー様にリンクしていただき、興味を持ったキャンピングカーのオーナー様や利用希望者を媒介しています。サービスを開始したのは今年6月30日ですが、現在登録車数は約100台で、徐々に増えています。


キャンピングカーのオーナーや利用者は、「どこに車を置いて車中泊したらいいのか」という課題をもともと持っていました。利用者が増えるとゴミ問題なども起こります。そこでルールを作って、スペースオーナーの許可を取って車中泊できる場所を増やしています。例えばお城が見える土地を持っている方に登録していただくことで、「お城を見ながら泊まれる」という付加価値のある場所を提供したり。食事とお風呂に入れて、車中泊できる温泉旅館の駐車場というものもあります。



――本来、旅館と車中泊は競合するものですよね。


地域のホテル組合からは黒船が来たように受け取られたこともありましたが、ホテルに泊まる方とキャンピングカーに乗る方は客層がかぶらないんです。ホテル側にとっても新規の顧客開拓になるので、少しずつ広がっています。鉄道会社なども一見競合するように見えますが、沿線地域の活性化、二次交通という面で協業体制を作りました。例えば三浦半島では京急と協業しています。キャンピングカーに乗る方は、半島の先端に行きたがるので、途中まで電車で行き、そこからキャンピングカーに乗り換えて、車旅での観光を楽しんでいます。



■Stay Anywhere, Anytime

宮下 晃樹氏



――当初目標としていた海外でのビジネスも視野に入れていますか。


会社を立ち上げた当初、上場を目指して外部資本も入れました。一社でできることは限られていますし、海外進出するなら現地のパートナーが必要になります。日本のキャンピングカー業界には歴史のある大きな企業もありますから、戦略的な資本提携・業務提携を視野に入れています。



――20代という若さが不利に働くこともあるのでは?


それは、かなり言われます。25、26歳の実績もない若造が銀行でお金貸してくださいと言っても、普通は無理です。僕の場合は会計士の資格を持っていたこと、ベンチャー支援事業に従事していたことが大きかったと思います。会計士時代にひととおりスタートアップのファイナンスなどの知識も蓄積しましたから。



――ピンチに陥ったことは。


いつもピンチです(笑)。コロナの第一波の際にはどうしようかと思いました。先がまったく見えない状況の中でスピーディーに意思決定する必要がありました。4月に売上がゼロになって、それまで開発していた旅行者向けサービスなどを全部中断して、今からは僕が決定した通りに動こうと言ったんです。すべての会社の意思決定を自分に集めて会社の資源を違う方向に向けることで、医療機関支援の「バンシェルター」をリリースすることができました。



――社員の皆さんの反応はいかがでしたか。


当時の人数はまだ3人だけでしたから、小回りよく動けました。社員はその後増やしています。採用はうまくいっていますね。日本初のサービスですが、「Stay Anywhere, Anytime(誰もが好きな時に、好きな場所で、好きな人と過ごせる世界をつくる)」という世界観に共感してくれています。40人、50人ほどで定期的に行っているキャンプの体験イベントを通じて採用することもあります。キャンプファイアーを囲んで話すと、よく分かり合えるんです。僕のようなインドア派も意外に楽しんでくれます。キャンピングカーなら、「部屋ごと持っていく」という感覚ですし。



■動く「トレーラー本社」を制作中

宮下 晃樹氏



――今、課題としていることは?


2つの壁があります。「車の中」をどれだけ「部屋」に近づけるかということ、そして地域のインフラとしてどれだけ浸透していけるかということです。


車中泊という文化がライフスタイルとして社会に受容されるにはまだ高いハードルがあり、時間がかかると思います。民泊でさえ社会に認知されるまでに10年ほどかかったのですから。我々はその市場を作っていく立場です。また地域については、車中泊をする人が増えることで地域もハッピーになると思います。マナー啓蒙もしながら広めていくつもりです。



――今後の展開はどう考えていますか。


まだ10人にも満たない会社ですが、少なくとも社員30人、50人、100人は超えたいですね。こういう新しい文化を広めるには、その会社の中の人間が体験することが必要だと思うんです。本社オフィスをこの鳥浜(神奈川県横浜市金沢区)に移転して、トレーラーハウスを構えているのもそのためです。好きな場所で楽しく働きながらみんなで上場を目指します。最先端の働き方を追求したいですね。



――トレーラーハウスの本社とはユニークですね。


全長12mのトレーラーで、そこに本社を置く予定です。郵便ポストを付けたりして本社にします(笑)。登記上は倉庫の住所ですが、「動く本社」ですね。「動く会議室」も作ります。うまくモビリティ空間を組み合わせて、我々の発信拠点にしていきたい。2021年にはこの鳥浜の倉庫に他社も入居していただき、企業間での実証実験や協働を通じて、未来の旅、働き方、暮らしを含めた、新しいライフスタイルの姿を倉庫の空間から発信していきます。


これまではオンラインを重視して、インターネット上で広めることに注力してきましたが、コロナ禍の中で、リアルの価値はやはり大きいと実感しました。とっかかりはインターネットで興味を持ってもらうことですが、この場所から実際に一歩踏み出して拠点にしていきたいと思います。「バンライフの聖地」にしたいですね。



――上場も視野に入れていますか。


創業7年後の2025年を目標にしていますが、時期を選べるくらいになりたいですね。



――コロナ禍での社会の変化についてどのように思われますか。


テレワークも広まり、ライフスタイルも大きく変化しました。コロナがきっかけとなってパラダイムシフトが起き、未来が急速に近づいてきていると思います。アメリカではリーマンショックと同時にAirbnbが生まれましたが、不況のときこそ人間にとって本当の豊かさとは何かを考え直すタイミングだと思います。こういう未来が絶対来ると思っていましたが、意外に早く来たので(笑)、ますますピッチをあげていこうと思っています。


今までは、キャンプ大好きな方のための黒子のような事業でしたが、今度は自分もバンライファーとして生きたいですね。趣味のサーフィンを平日にできるようなユーザー意識をもってやっていきたいです。



宮下 晃樹氏



コロナ禍によってすべてのビジネスプランがストップする中、急遽、医療機関への支援カーへと転向、ピンチを切り抜けたという宮下さん。地方移住やワーケーションも広がる今、どこへでも行けるキャンピングカーを仕事場とする人も増えていきそうだ。そして、あなたの町でもCarstayのトレーラー本社を見かける日が来るかもしれない。






プロフィール


宮下 晃樹(みやした ひろき)

1992年生まれ。幼少期をロシアで過ごす。

大学卒業後、デロイトトーマツグループにて公認会計士として勤務。

その後、NPO法人SAMURAI MEETUPSを立ち上げる。

2016年、Carstay設立。代表取締役/CEO


Carstay株式会社[外部リンク]



編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
取材日:2020年11月25日

         

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