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気持ちよく働けるなら、それが森の中でもいい。拡張されていく働き方 ~トレイルヘッズ 山口陽平氏インタビュー

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山口陽平氏

山口陽平氏



誰もが自分らしく働き、遊び、暮らせる環境とは、どのようなものだろうか。多くの企業のワークスペースデザインを手がけ、自らも自然の中で働く「森ワーク」などにも取り組み、自分たちらしい働き方を追求する株式会社トレイルヘッズの代表・山口陽平氏に伺った。



■自由に働くにはどうすればいいのかー不動産会社で働きながら問いかけていた


――起業に至るまでをお聞かせください


群馬出身ですが、親がアウトドアが好きで、昔からキャンプやスキーに連れて行ってもらっていました。大学以降は東京在住です。経営学を学び、大手の不動産系企業に就職しましたが、もっと面白く自由な働き方があるのではないかという思いをずっと持っていました。「自由」というのは場所のことだけでなく、自分らしく働きたいということです。オフィス空間をプロデュースする企業に転職し、多様な働き方を掘り下げるメディアを立ち上げたり、既成概念を超える働く場を作ったりする中で、トレイルヘッズを起業しました。



――ホームページには「フィールドデザインの会社」とありますが。


オフィスや店舗などの空間デザインを行う会社ですが、屋内だけでなく、「アウトドア」のフィールドも大事にしていることから、「フィールドデザイン」という言葉で表現しています。具体的には、働き方を拡張し、働く場が持つ課題を解決することがミッションです。クライアントのオフィスを作る一方で、自分たちが理想とする「働く場」作りを具現化するため、自社プロジェクトも立ち上げています。その一つがキャンピングトレーラーにオフィス機能を搭載した移動式オフィス「OFFICE CARAVAN」です。



――オフィスが移動する?


はい、自分の好きな場所で、好きな景色を楽しみながら自由に働くために、2018年にスタートしたプロジェクトです。当時はリモートワークをしている方も少なくあまり理解されませんでしたが(笑)、コロナの感染拡大によって大分変わってきましたね。



――車で移動しながら働くというのは、どんな感じなのでしょう。


気持ちのよい場所に移動して働く楽しさがある一方で、やってみて初めて分かる難しさもありました。そもそも僕らの仕事のメインは都内でオフィス空間を作ることですから、オフィスキャラバンのみで成り立つものではなく...。また、トレーラーを牽引して都内に入ると駐車できる場所がないので、実際移動はかなり大変でした。細い路地に入ってしまうと動けませんし。


そこで、OFFICE CARAVANをチェックインする場として東京都檜原村に「HINOKO TOKYO」というキャンプ場を構えました。また2年前には、都市と山をつなぐ拠点としてこのメイン自社オフィスの近くに「MAKITAKI」というコワーキングスペースも作っています。



――キャンプ場で働くという発想はどこから出てきたのですか。


もともと私も含めてトレイルヘッズメンバーがキャンプ好きだったり、運営しているコワーキングスペースに外遊び好きが集まっていたりということが背景にありますが、コロナ禍で働き方が大きく変わったことがきっかけですね。リモートワークが浸透してきた2020年8月頃、「どこでも働けるなら好きな場所で働いてみようか」という声が出て、キャンプ場で働くということを実践してみました。やりにくいこともあるだろうけどとにかくやってみよう、と始めたんです。そして森の中でも快適に働けるよう什器や設備をそろえていきました。11月にはこれを「森ワーク」と名付け、トライアル利用の募集をかけたところ、数日で一杯になりました。皆さん、こういう働き方に興味があるんだなという手ごたえを感じましたね。



山梨県北杜市のキャンプ場で開催された映画祭の会場設営現場にオフィスキャラバンを展開(DRIVETHRU「OFFICE CARAVAN PROJECT」より ※)

山梨県北杜市のキャンプ場で開催された映画祭の会場設営現場にオフィスキャラバンを展開(DRIVETHRU「OFFICE CARAVAN PROJECT」より ※)



――どんな反応がありますか。


スタートアップの方、フリーランスの方、大手企業のプロジェクトチームの方などがトライアルで使ってくださいました。景色のよい場所に机を運んで仕事をしたり、焚火で焼き芋をしたり、利用された方は非日常感を楽しんでいましたね。



――今後も拡大していく予定ですか。


反響があったので、使いたいと思ってくださる方がいればもっと作りたいと思っています。良い場所があれば、ほかのキャンプ場にも置きたいですね。



■自分らしくいられて、気持ちよく働ける場所

山口陽平氏



――従来のオフィスには、どんな不自由があると思いますか。


というより、「ここだけでしか働けない」というルールがそもそもナンセンスで、気持ちよく働ける場所を選ぶスタイルがあってもいいと思うんです。


そういう市場があるからとうことではなく、単純に自分たちが気持ちいい場所で働くにはどうすればいいか。そこから自然の中で働くというアイデアが生まれました。もっと自由でユニークに働きたいということです。



――トレイルヘッズのオフィスのコンセプトは?


みんなが顔が合わせられる場として作っています。


実際に、都心のオフィスの作り方も変わってきています。これまでは個室がたくさん並んでいて、外の人には聞こえないようにその中で打ち合わせるのが一般的でしたが、この数年は、会議室を少なくして情報をできるだけオープンにし、互いの顔が見えるようにするという企業が増えています。


私たちのオフィスでも、個室もパーティーションも設けていません。聞かれたら困る話なんてそれほどありませんし、逆にお互いの仕事の様子が分かりコミュニケーションもスムーズです。こうして取材を受けている様子も、すべてオープンです。



――今後、働き方はどのように変わっていくでしょうか。


働き方は今後もどんどん進化していくと思います。


2020年3月に緊急事態宣言が発出され、業種や年代を問わず一斉にテレワークを経験することになり、働き方についてみんなが一斉に考えるきっかけになりました。


我々のクライアントにはIT系のスタートアップが多くいますがコロナをきっかけにテレワークへと自然に適応されていましたね。



――珍しいことではなくなりましたね。


日本ではなかなかテレワークが普及していませんでしたが、コロナによって国からの要請もあり家で仕事することが当たり前になりました。ここ数十年の「働く」歴史を振り返っても一番と言えるほどの変化がこの1年で起こったわけです。


といっても、僕自身はテレワークはしていないんです。家では仕事ができないタイプなので、毎日オフィスに来ています(笑)。


テレワークが普及し、会社から見えないところでも「やることさえやってくれればいい」ということになると、家ですらなくてもいいということになります。コワーキングプレイスであろうと、リゾート施設であろうと、仕事さえしっかりできればそれでいい。


だからどこで仕事をしても罪悪感をもつ必要はなくなっていくと思います。その延長線上に、「自分らしくいられて気持ちよく働ける場所」ということがあると思うんです。



――テレワークからさらに進んで、森ワークも当たり前になる?


自然の中で働くことが当たり前になるまでには、まだ時間が必要でしょうね。これまでは満員電車に乗って都心の無機質なオフィスビルに出勤し、机を並べて働くのが、日本の一般的なワークスタイルでした。


僕らはオフィスを少しでも気持ちいい場に変えようとしてデザインしてきたわけですが、そもそも都心のオフィスビルで働くということから見直してもいいと思うんです。その選択肢のひとつが自然の中。しかし誰もが森の中で働きたいわけではないと思いますし、そもそも多様な選択肢があっていいはずです。



――変わるのが難しい職種もありますね。公務員とか。


順番はあるでしょうけれども、僕はいずれ変わっていくと思っています。積極的に働き方を変えていく業種から始まり、歴史ある企業や公務員のオフィスへと広がっていき、数十年経てば、「昔はあんな空間で働いていたよね」と思うようになるのではないでしょうか。


公務員の方でも職種によっては、仕事の自由度が高く、新しい働き方をしているところもありますから、全体的な流れは変わってきていると思います。



■働くこと、暮らすこと、遊ぶことをシームレスに

山口陽平氏



――コロナ禍で経営の影響は受けていますか。


働き方の自由さは増していますから、いろいろな働き方をあきらめなければならないような方向ではないと思います。ベンチャーのお客様では、変わらずオフィスを作りこんでいる会社もあります。


今は「森ワークプロジェクト」をスタートするべく、森の中で快適な仕事環境を作れるよう、試行錯誤を重ねています。「森ワークの1日」というビジョンマップを作り、森の中での様々な過ごし方を発信していこうと考えています。



森ワークのビジョンマップ。(同社ホームページより)

森ワークのビジョンマップ。(同社ホームページより)



――コロナ禍をチャンスと捉えていますか。


コロナによって働き方や働く場は大きく変化していますが、創業時から考えつづけてきたことは、働くこと、暮らすこと、遊ぶことをシームレスにつなげたサービスを作っていきたいということ。そして僕ら自身もそういう働き方をしていこうということです。自分たちが理想とする働き方も実現しようという考えは今も変わっていません。


急激に変化するとひずみも大きくなりますから。「ワ―ケーションが流行っている、チャンスだ、取りに行くぞ」ではなく、自分たち目線で面白いことを実現したいという気持ちがまず第一で、それに共感してもらう人を広げていければいいと思っています。そのベースの部分は変わらず、今後もこれまでにない働き方や働く場を追求していきたいですね。



山口陽平氏






プロフィール


山口陽平氏(やまぐち ようへい)

トレイルヘッズ株式会社 代表取締役

1983年生まれ。群馬県出身。大手不動産会社、オフィスや店舗デザイン会社を経て、働くことや遊ぶこと、暮らすことをシームレスに繋げるためにTRAIL HEADSを創業。オフィスビルだけではなく、自然の中でも働けるフィールドデザインを実験中。移動式オフィスのOFFICE CARAVANや東京都檜原村で会員制キャンプ場のHINOKO TOKYOを手掛ける。2018年12月にMAKITAKIをスタートしプロデュースに携わる。山が好き。


トレイルヘッズ コーポレートサイト[外部リンク]

HINOKO TOKYO[外部リンク]

外遊び好きが集まるシェアオフィス MAKITAKI[外部リンク]



編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局(※の画像を除く)
取材日:2020年12月9日

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