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テレワークにコミュニケーションを取り戻す!内定者間の遊び・学び・つながりの「バヅクリ」 ~プレイライフ 代表 佐藤太一氏インタビュー

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佐藤太一氏

佐藤太一氏



コロナ禍の今、テレワークが定着し、なかなかリアルに対面できない社員同士の「つながり」をどのようにして確保するべきか。「この世から孤独をなくす」を使命に掲げ、遊び情報メディアを運営するプレイライフ株式会社のオンラインサービス「バヅクリ」は、そのためのユニークな仕掛けだ。内定者同士のコミュニケーションづくりを通し、企業や職場への帰属意識が生まれる。仕事へのワクワク感を高める数々のアイデアはどのように生まれたのか、代表取締役 佐藤太一氏に話を聞いた。



■全員が盛り上がれるユニークな「遊び」を「学び」につなげる


――内定者が対象のオンラインサービス「バヅクリ」が話題です。ユニークなプログラムがたくさんあるそうですね。


「バヅクリ」は、「遊び、学び、つながり」をテーマに、オンライン上の「遊び」を通じて内定者や新入社員のつながり、仲間づくりや動機付けを行うサービスです。遊びがテーマなので、何かしら楽しみながら、非日常な体験をするところに重きを置いています。



――対象を内定者と新入社員に絞ったのは?


企業が一番つながりづくりを大事にしたいところだからです。そこで、「つながりづくりといえば僕らのバヅクリです!」と言えるサービスを提供したかった。



――「非日常的な体験」とはどういうものですか。


普段体験しないようなこと、でも心のどこかでは興味があって、ちょっとやってみたいことってありますよね。誰かに背中を押されたり、友達と一緒じゃないとできないようなことを通じて、仲間づくりをしていくわけです。


具体的には役者やアナウンサー、すし職人やお坊さんといったプロの講師が指導して研修を行います。例えば「役者がオンラインで教える寸劇ワークショップ」などは盛り上がりますね。



――「寸劇」というのは?


例えば、東京オリンピック賛成派の選手団代表や広告代理店、反対派の医療従事者、中立派の競技会場周辺住民に分けてディベートするんです。ロールプレイングのようなものですが、単にディベートするだけでなく、感情表現豊かに、役者のように役に入り込んでやることで、喜怒哀楽や価値観、考え方を表現します。アドリブも出ます。



――アドリブということは台本がある?


設定と最初、転換、最後のセリフは、誰が何を言うか決まっています。その間はアドリブで埋めていきます。あらかじめ4,5人でどんなシナリオにするか打ち合わせをした上で発表するのですが、めちゃくちゃ盛り上がります。



――すし職人さんというのは?


オンラインでシャリの作り方、握り方まで講師が教えて、最後はみんなで食べるんです。



――それで参加者同士がつながると。


つながるんです(笑)。みんなで同じものを作って食べるだけで、一体感が生まれます。お寿司を握りながら好きな魚の思い出を語ったり。いずれリアルで顔を合わせたときに、「あのときお寿司やったよね」、「今度またお寿司パーティーやろうよ」とコミュニケーションが生まれるきっかけにもなります。参加者全員が自分の手で作るという非日常な共通体験が、「楽しい」でつながって、後々にまで残るわけです。



「バヅクリ」プログラムの様子(上:「握って楽しい食べて楽しい寿司職人が教えるオンライン寿司握り」、下:「劇団俳優&研修講師が教えるお互いの喜怒哀楽が知れる寸劇ワークショップ」)(※)


「バヅクリ」プログラムの様子(上:「握って楽しい食べて楽しい寿司職人が教えるオンライン寿司握り」、下:「劇団俳優&研修講師が教えるお互いの喜怒哀楽が知れる寸劇ワークショップ」)(※)

「バヅクリ」プログラムの様子(上:「握って楽しい食べて楽しい寿司職人が教えるオンライン寿司握り」、下:「劇団俳優&研修講師が教えるお互いの喜怒哀楽が知れる寸劇ワークショップ」)(※)



「寸劇」や「お寿司」はインパクトのあるプログラムですが、非日常体験で遊び、学び、つながることができれば、すべて「バヅクリ」の対象になります。遊びを通じているので、「やらされ感」がなく、仕事に対するモチベーションも上がります。



――そのような研修のニーズがあると思った理由は?


新型コロナウイルスの影響で、研修の後に飲み会や交流会のようなリアルイベントができなくなりました。オンラインで飲み会やりましょう、といっても何十人、何百人が参加して、いきなり「自己紹介どうぞ」といっても、薄いというか、盛り上がりませんよね。すると内定を辞退したり、モチベーションが下がったりして、人事が困るわけです(笑)。


社内だけでは盛り上げる自信がない、というニーズがあるのですが、それに応えられる業者はありませんでした。研修企業はまじめすぎるし、謎解きゲームなどを行うイベント会社はありますが、好きな人は好きだけど、興味ない人は全然興味ないので、一部の参加者だけが盛り上がるだけで終わってしまいます。それでは企業がお金は出してくれない。



――人事研修に「遊び」が必要なのでしょうか。


必要だと思います。内定者・新入社員が参加する研修だけでなく、会社には「遊び」が大事なんです。飲み会とか社内イベントなど、遊びがあるでしょう。


でも、今までの内定者研修には、さまざまな趣味嗜好を持つ人々が全員で盛り上がって、かつ学びになり、しっかりと関係構築につながるようなものが抜けていたんですね。研修と飲み会の間と言いますか。そこを僕らが作ろうと考えたわけです。



――終了後にはどんな感想が出ましたか。


人事からは、めちゃくちゃ楽しくて楽だったといわれました(笑)。今までは社内で企画し、自前でやっていたけどコロナでできなくなり、オンラインでやるようなノウハウもない。人事部門から「半月分の研修が浮いた」と言われました(笑)。


参加者の評判も上々で、「友達ができた」「こんな人たちとなら楽しくできそうだ」という声もあり、「こういう雰囲気の中で仕事をするんだ」と帰属意識が高まったという声もありました。うれしいですね、それで十分です。



■激務で自殺未遂。走馬灯で見えたものは

佐藤太一氏



――昨今の就活はどのように変わっているのでしょう。


飲み会ばなれが起きています。僕の頃は内定式で先輩に連れていかれて、「じゃあ4月から頑張れよ!」という感じが多かったと思います。趣味嗜好や価値観の多様性、ハラスメントなどいろいろあって、みんながひとつのことで楽しむ場所がなくなってきている。遊びも以前は飲み会一辺倒でしたが、今は多様化しています。



――内定者は孤独を感じている?


以前に比べると今のコロナ下のほうが孤独になっていると思います。内定が出てから翌年の4月まで、内定式もオンラインだし、一度も会わずに「初めまして」ということになる。会社で働くというイメージが湧かないし、不安になる人も多いでしょう。



――なぜ多くの企業が「バヅクリ」を採用していると思いますか。


「バヅクリ」は、テレワークの普及によって失われた「雑談」や「オフコミュニケーション」を取り戻すことを裏テーマとしています。雑談の中で新規事業やイノベーションが生まれることは多いですから。


採用してくださった会社に、なぜ当社を選んでくださったのかを聞くと、プログラムが豊富で、さまざまな趣味嗜好の内定者に合わせられるからと言われます。


今、内定者のエンゲージメント、帰属意識上昇、内定辞退防止などが問題になっています。新卒採用にかかるコストは一人当たり100万円だそうです。僕らの「バヅクリ」は一人当たり1万円ですから、むしろ安い。内定者にも会社にも役に立つし、まだまだニーズはあります。


「バヅクリ」は「内定辞退防止」という守りの面だけでなく、攻めの面にも生かせます。例えば、拠点の生産性や営業効率を上げるために多拠点間コミュニケーションの「バヅクリ」もできます。100年後の事業を絵にしてみましょう、というお絵描きプログラムから新規事業のアイディアが生まれるかもしれません。



――「遊び」にこだわり続けるのはなぜですか。


僕は20代の頃、外資系コンサルティング会社で働いていたのですが、あまりの激務な日々に自殺未遂までしたんです。新横浜駅ホームで電車に飛び込もうとして、5センチ違っていたら首が吹っ飛んでいました。そのとき、走馬灯で流れてきたのが、小学生のときの秘密基地の思い出だったんです。学生で起業、音楽活動、留学もしたのですが、でもなぜか流れてきたのは秘密基地でした(笑)。ほかのどんな思い出も、人口5000人の田舎で作った秘密基地のワクワクにはかなわなかった。そのときから「人生=遊び」だと考えるようになりました。



――プログラムはどのように開発しているのですか。


もともと当社では50人、100人単位のオンラインイベントサービスを提供していたのですが、内定者向けのものはかなり試行錯誤して開発しました。実際にやってみて、遊びが過ぎず、まじめすぎず、ちょうど良いバランスをどこに置くか熟慮しました。20人くらいがかかわって、1カ月ほどかかりましたかね。僕自身、起点になって遊びを作る方に回りました。仕事でこれまでに1000本くらいの「遊び」を作ってきましたから。ガキの頃からずっと遊びを企画して、会社を立ち上げてもずっと遊びばかりです。運動場や教室を借りきって、「大人のハンカチ落とし」とか。子どものときに楽しかったことを大人がやるとどうなるか。超楽しかったですよ(笑)!



――社員にはどんな方々が多いのですか。


IT系出身が多くて、ビジネス目線から「こんな企画があった方がいいのでは」というアイディアが出てきます。講師からは「遊び心があったほうがいい」とクリエイティブ目線の意見が出て、最終的に僕が決定します。



――懐かしい遊びほど、いいのでしょうか。


普通の飲み会や音楽イベント企画は好きじゃないんです(笑)。それより、小学校の放課後にやっていたような、自由でワクワクして、お金がなくてもできちゃう遊びがいい。小学生の遊びって、その中で仲間もできるし、学びにもなるじゃないですか。中学生になると恋愛とかお金とか学歴が入ってきて、人間 複雑になると思ってます。だから基本は「小学校の放課後」です(笑)。



――小学生の遊びは、輪に入れない人もいましたが。


僕は基本、人間嫌いなので(笑)、そういう初心者の気持ちも分かります。そういう人がどうやったら楽しめるのか、学びにつながるか、そんなこともわかるんです。アイスブレイクでいかにみんなを打ち解けさせ、遊び慣れていない人から遊び慣れている人まで、主体的な人から消極的な人まで、いかにして楽しく遊べるか、意味のある遊びができるか。そういうことはよくわかっています。



――コロナ終息後もオンラインの遊びの需要は続きますか。


今後もあると思いますよ。そもそも内定者は日本全国にいます(笑)。需要はなくならないでしょう。



■日本初の「遊び」のスタートアップとして2023年の上場を目指す

佐藤太一氏



――今後、どのように事業を拡大していきますか。


「キックオフ」とか「表彰」などの社内イベントも仕事のモチベーションを上げる「遊び」にして、「こんな遊びがあるのか」と知ってほしいですね。新しい遊び方をどんどん作っていきたいです。子どもの頃やっていた遊びを現代でやったらどうなるか、企業でできるものをマーケティングし、法人向けに事業化していきたいと思っています。



――あまり楽しすぎて仕事に身が入らなくなったりして。


そうですね、でも時間はしっかり区切っています(笑)。これがどう仕事に生きるか、コミュニケーションに生きるかという「気づき」や「学び」もしっかりフィードバックしています。



――御社の中ではどんな遊びをしているのですか。


社内では2週間に1度ほど開発中の遊びをやっています。寸劇の「半沢直樹バージョン」とか(笑)。遊びの中で、オンラインコーチングのワークショップもやっています。


あとはスポーツ選手からもお話をいただいていますし、「Google Earthで戊辰戦争の跡地を巡る」とか、歴史物のアイディアもあります。歴史をめぐってグループで語ったり。歴史好きってものすごく語ってくれますし。


最近は不動産物も増えてきました。「社長だらけ」というタイトルなのですが、オフィスビルに入っている社長たちのビル内オンライン交流会を「バヅクリ」でプロデュースするんです。3階の会社が忙しいので4階の誰か手伝ってください、というワークシェアリングを遊びのようなイベントで体験するんです。これは、都心のオフィスの不動産価値が下がっているので、同じビルに入居している会社同士が価値になったら面白いと思って開発しました。



――佐藤さんご自身はどんな遊びをしていますか。


トランポリンとスケボーばかりやっています(笑)。YouTuberとか魔法使いの友達とか、変わった人を集めて同じ体験をしてもらったり。



――魔法使い(笑)?


フィリピンとスペインの魔術家系直系の友人がいるんです(笑)。それで、みんなで同じ寿司握りをしたり。「変なひとたち×レア体験」によってどんな化学反応が生まれるかという実験です。


一番大切にしているのはつながりですね。人とつながっていることはすごく大事。ただの知り合いではなく、絆でつながれる友達はすごく大事です。



――対象も拡大していきますか。


病院・介護施設向けに拡大したいと思っています。高齢者や独居老人に遊びでつながってほしい。「終の棲家」ならぬ「終のつながり」が、僕の最終テーマだと思っています。



――佐藤さんは結婚式の口コミ情報サイト「みんなのウェディング」運営会社の上場責任者でもありますが、プレイライフでも上場を目指していますか?


日本初の遊びのスタートアップ、遊びのベンチャーとして2023年に上場します。社員も今は6人ですが、今後3カ月で2倍、2年で7倍に事業規模を拡大していきます。


「遊び」の費用対効果はまだなかなか表せていませんが、アンケート結果などをちゃんと数値化して、遊びを取り入れるほど会社が伸びていくことを示していこうと思います。



――最後に、御社の採用で求める人材像は?


体育会系がいいですね、素直でスピード感があって、志が高くて、一緒に働いて気持ちいい、さわやかだけど泥臭い人。


みんな、絶対に「仕事」は楽しくないんですよ。でも、遊びは誰もが好きなんです。サルも犬も、生きとし生けるものはみんな遊びが大好き。「衣・食・住・遊」なんです。


だから本質的に世の中を良くしたい、自分や周囲を大切にしたいと思ったら、遊び以上のものはないと思います。だから「結局、遊びが大事なんだな」と思える人に来てほしい。たとえティッシュ配りでもゴミ拾いでも、何ごとも楽しめて、相手を楽しませて幸せにすることを考えられ人と一緒に働きたいですね。



佐藤太一氏



「遊び」は人を癒し、また仕事への活力にもなる。コロナ禍で直接人と会う機会が激減している現在、オンラインで「遊び」と「学び」、「人とつながる」ができる「バヅクリ」のサービスは新鮮だ。特に内定者の不安をモチベーションに変える画期的なサービスは今後の社会の中で大いに力となりそうだ。






プロフィール


佐藤 太一(さとう たいち)

外資/国内コンサルティングファーム、株式会社DeNA経営企画本部、アクセンチュア株式会社経営コンサルティング本部にて戦略策定などに従事。起業の事業資金とノウハウ獲得のため、2012年より、みんなのウェディングの経営企画部長兼IPO室長として、事業戦略、資本政策、コーポレートガバナンスの責任を担い、2014年の東証マザーズ上場へ貢献した。 複数社での実績や資金を貯め、プレイライフ株式会社を創業。お出かけ情報メディア「PLAY LIFE」、ホテル業向け集客支援事業「コトプロ for ホテル」のほか、リアルな遊びの部活動「遊部」をリリース。コロナ禍において、オンラインでの体験プログラムの必要性から遊びと学びとつながりの場をつくる日本初の遊びのオンラインサービス「バヅクリ」をリリース。


プレイライフ株式会社[外部リンク]





編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局(※の画像を除く)
取材日:2021年2月10日

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