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先行きの見えない時代のビジネスパーソンのメンタルを晴らす〜VISION PARTNERメンタルクリニック四谷 院長 尾林誉史氏インタビュー

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尾林誉史氏

尾林誉史氏


コロナ禍もあり先行きが見えない今、メンタルの悩みを抱えるビジネスパーソンが増えているようです。書籍『先生!毎日けっこうしんどいです。 元サラリーマン精神科医がみんなのモヤモヤに答えてみた』の著者で、サラリーマンから精神科医、産業医に転身した異色の経歴のVISION PARTNERメンタルクリニック四谷の院長、尾林誉史氏に、ビジネスパーソンが抱えるメンタルの悩みの傾向や対処法などについて伺いました。



■ビジネスパーソンの9割がメンタルの問題を抱えている


――現在の活動について教えてください。


大きく二つあって、一つは産業医としての業務、もう一つがクリニックで精神科医として臨床の現場に立つ仕事です。


産業医というのは、企業で従業員の健康管理を行うお医者さんです。フィジカル、メンタル両方の問題を診るドクターですが、最近はメンタルヘルス上の問題を抱えているビジネスパーソンが多いので、産業医には必然的にメンタルの対応をしっかり行うことが求められています。



――フィジカルな症状で診察される方に比べてどのくらいの割合ですか?


診察される方の率で言えば、9割以上がメンタルの問題ですね。



――9割......! つまりほとんどの方がメンタル上の問題を抱えているのですね。一企業の専任ではなく、複数の企業で産業医をされているのですか?


はい、現在16社を担当し、企業の要望によって月に1〜3回ほど訪問しています。訪問回数は会社規模、そして企業トップのメンタルな問題への意識が高いかどうかで変わってきますね。



――クリニックで院長として診療される方もビジネスパーソンが中心ですか?


もちろんビジネスパーソンだけではなく、学生、妊婦、高齢者など幅広い方がいらっしゃいますが、私自身が以前サラリーマンだったので、働く方のメンタル面でのサポートをしたいという思いが強いんです。ホームページなどにもそう書いているので、自ずとビジネスパーソンが多いですね。クリニック名「VISION PARTNER」のVISIONは、視点、その先の目標、見通しといったことをイメージしています。先々の見通しが立たなくなると、人間というものは不安になります。先行きを一緒に考える伴走者でありたいと思って名づけました。



■会社を辞めて医学部に入り直した

尾林誉史氏



――先生はもともとサラリーマンで、産業医になると決意して退職し、医学部に入ったそうですね。


職場の後輩が体調を崩し、産業医面談に付き添ったことがあるのですが、ものの数分、話を聞いて休職の予定を決めただけで、その態度にがっかりしたんです。サラリーマンにとって産業医との休職面談は人生を左右しかねないことですから、20〜30分くらい話をじっと聞いてくれるのだと勝手に思い込んでいました。


一方、自分は人の話を何時間でも聞くのが苦にならない、人の話をしっかりと受け止められることが自分の強みだと感じていました。ちょうど自分自身のキャリアについて迷っていた時期で、自分は産業医に向いていると、ビビッと来たんです。



――思いきった人生の転機でしたね。周囲の反応は?


退職の理由を話したところ、上司からは止めも励ましもされず、淡々と送り出されました。家族や友人には大学合格するまで内緒にしていましたね。


ただ、良い産業医になってみせるという強い決意を胸に秘めていました。臨床ではどの科を選んでも産業医の資格は手に入れられますが、メンタルに詳しい方がいいと思ったので、迷わず精神科を選びました。



■正解がないと、どうすればいいのか悩んでしまう

尾林誉史氏



――ビジネスパーソンに最近多いモヤモヤ、悩みにはどんな傾向があるのでしょう?


20〜30代のビジネスパーソンに自分探しをしている方が増えている印象があります。それがモヤモヤを通り越して深い悩みになってしまうケースが少なくありません。


先ほどお話ししたように、私自身も自分探しをしているときに今の仕事に就こうと決心しました。自分探し自体は悪くありません。でも、私が診療している方々はとにかく皆さん真面目で、「本当に今の仕事が自分に合っているのか」「このまま続けていいのか」「結婚はいつすべきなのか」「縁があって入れてくれた会社を自分の都合で辞めるのは許されるのか」などと真剣に悩んで、メンタルに問題が生じてしまう。「合わなければ辞めて次に行けばいいのかもしれない」というカジュアルさがまったくないのです。



――そういう悩みにはどう対処されるのですか?


たいていは休職中の方なので、まずは「復職できるといいですね」と声をかけますが、「追い込まれてしまったとしても、それは自分自身を見つめ直すチャンスだと捉えましょう」と励ますようにしています。人によっては復職だけが正しいとは限りませんから、転職という選択肢も視野に入れて話すこともあります。



――「企業の医者」だけど、社員に転職を勧めることがある?


もちろん会社は社員が健康を取り戻して復帰することを期待しているし、私は社員の健康状態に関して、会社とは綿密にやりとりします。


ただ、回復が不十分だったり、やる気が起きない状態で職場に戻ると、会社側も本人も再発の不安を感じ、双方にとって良い結果になりません。社員本人にとってどうすることが一番良いのかをまず考え、ひいてはそれが会社にとっても良い結果をもたらすのが理想的ですが、それが難しい場合は、社員自身にとってより良い解決方法を選ぶように勧めています。



――最近、メンタルの問題として、HSP(Highly Sensitive Personハイリー・センシティブ・パーソン)が取り上げられることが多いですが。


私のクリニックに来る方の中にも「自分はHSPだと思う」とおっしゃる方がいます。感覚や感受性が過敏で、人間関係において、他人の言葉に敏感だったり、自分が発した言葉が相手にどう伝わっているかを気にして悩んでしまうタイプです。「繊細さん」などと呼ばれますが、私は「繊細」という表現は優しすぎで、ものごとや言動の価値や意味を自分でしっかり定めることに不慣れな状況なのだと思います。



――となると、具体的にはどんな治療法が考えられるのですか?


治療の方法は人それぞれですが、まずはご自分が「繊細」というよりは「不慣れ」だということを自覚し、まだ伸びしろがあると考えてもらいます。それがスタートラインになって、その方に合った克服法、解決方法を一緒に探っていきます。



――クリニックにいらっしゃるのは若い方が多いのでしょうか。


たしかに新卒をはじめ若い方が多いですが、会社役員や年配の企業経営者の方も来られます。中には、部長時代はまでは現場でマネージメントしながらメンバーとしても頭も体もフル回転で働いていたのに、役員になったら急に暇になってどうしていいかわからないと悩んでいる方もいます。子会社の社長から本社役員に栄転したけれど、生きがいを搾取されたようで辛いと打ち明けられた方もいました。



――キャリア終盤のぜいたくな悩みと感じてしまいますが。


自分の会社人生の"上がり"はここなのか、という違和感を感じるようです。真面目な人ほど病んでしまう傾向がありますし、その方の立場での固有の悩みというのは、他人が計れるものではありません。実際に睡眠がとれなかったりするといった症状があるので、ご本人は苦しんでいらっしゃるのだとわかります。



話題の新刊では、多くの人がぶつかる仕事上の悩み50に優しく、ときにズバリとアドバイスしている。

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――「働く人のメンタルの問題は年々増え続けている」とお書きになっています。その理由は何だと思われますか?


ひと言で言えば、教育と社会のギャップでしょうか。日本の教育は、回答をしっかり見つけることを求めます。言い換えれば用意された答えを見つけることです。ところが社会に出ると、「答えがあると思うな、自分で答えを探せ」などと言われる。真面目な人は、「ないものをどうやって探せばいいのか」と悩んでしまうのですね。



――マニュアルがないと何もできないということにも通じるような......


コロナ禍もそうですよね。今まで起こり得なかったことが起こって、様々なことがすごい勢いで変わりました。こういう場合にはこう対処するというマニュアル通りに生きている人にとっては、一事が万事でどんどん不安が増大していく。テレワークはいつまで続くのか。会社に行くのは嫌だったけれど、テレワークになったらなったでまた不安で仕方がない。そんな具合です。


不安に満ちた不確実な時代なので、マニュアルは通用せず、手探りの状態で進むしかありません。正解など存在しなくても自分自身で答えを考え出せるような対処能力が高い方たちは、むしろのびのびとテレワークなど新しい仕事のやり方に移行できているのではないでしょうか。そういう方はクリニックにはいらっしゃらないので、わかりませんが(笑)。



■「いい加減」に、「適当」に、「他力本願」で生きよ

尾林誉史氏



――ご著書の反響はいかがですか。


「読んだ後に心が軽くなった」「いろいろな例が載っていて、気になる項目から目を通して読んで自分に当てはめられた」という声が寄せられています。また、私自身の産業医になったエピソードも収めたのですが、それが良かったという感想もありました。



――元サラリーマンという先生のご経歴に親しみを感じるのかもしれませんね。


私は患者さんによく「もうちょっといい加減に生きてください」とアドバイスするんです。「いい加減」かつ「適当」に生きてくださいと。私はこの2つの言葉の意味が好きです。「いい加減」は「良い加減」、つまりちょうどいいということですし、「適当」は、「当(まさ)に適っている」ということですから。あとは「他力本願」という言葉も気に入っています。これも、もっと他の人に頼って少し手を抜いて生きてもいいんだよという意味ですよね。



――真面目過ぎるのはよくない、一人で抱え込まずに人を頼ることも必要だと。


はい、特別なスキルを持ちたいとか、万人に一人の逸材になりたいという方には刺さらない言葉だと思いますが、モヤモヤから楽になりたいと願っている方たちには一番伝えたいアドバイスです。


クリニックを訪れる方は、追い込まれた悲愴な表情をしている方が多いのですが、本当はそういう状態になる前にもっと気軽に来ていただきたいと思っています。



尾林誉史氏



コロナ禍の影響もあり、先行きが見通せずに不安を感じざるを得ない時代、「もうちょっといい加減に生きてください」という尾林先生からのアドバイスで、気持ちが楽になる方も多いのではないでしょうか。どうしても心がしんどいときには、精神科医などの専門家をもっと気軽に頼ることも大切だと感じました。






プロフィール


尾林 誉史(おばやし たかふみ)

精神科医、産業医。VISION PARTNERメンタルクリニック四谷院長。

東京大学理学部化学科卒業後、株式会社リクルートに入社。リクルート時代、社内外や年次を問わず発生するメンタル問題に多数遭遇。解決に向けて付き添う中で目にした産業医の現状に落胆するも、とあるクリニックの精神科医の働き方に感銘を受ける。2006年、産業医を志して退職し、弘前大学医学部に学士編入。産業医の土台として精神科の技術を身に付けるため、東京都立松沢病院にて初期臨床研修修了後、東京大学医学部附属病院精神神経科に所属。

現在はnote、面白法人カヤック、ジモティーなど16社の企業で産業医およびカウンセリング業務を務めるほか、メディアでも精力的に発信を行っている。


VISION PARTNERメンタルクリニック四谷[外部リンク]


著書

企業は、メンタルヘルスとどう向き合うか――経営戦略としての産業医」(共著、祥伝社)[外部リンク]

先生!毎日けっこうしんどいです。 元サラリーマン精神科医がみんなのモヤモヤに答えてみた」(かんき出版)[外部リンク]



         

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