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ドローン時代本格化を目前にパイロット養成事業にいち早く着手 ~ハミングバード 鈴木伸彦氏インタビュー

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ハミングバード 代表取締役 鈴木伸彦氏

ハミングバード 代表取締役 鈴木伸彦氏


急成長するドローン(小型無人機)産業。農薬散布や測量、外壁や屋上調査、空撮、災害時の情報収集、物流など、利活用の期待が大きく膨らんでいる。航空法が改正され、2022年度にはドローン操縦士は国家資格となる。パイロット養成スクール運営から業界を支えるハミングバード株式会社の鈴木伸彦氏にお話を伺った。



■数年で急速に進化したドローン機体


――ドローン事業を始めたきっかけは?スクール運営事業を立ち上げた頃は、まだドローンの認知も進んでいなかったとか。


首相官邸の屋根にドローンが落下した事件が2015年にありました。それをきっかけに、ドローンの存在が世間に知れ渡り、法整備が進み始めました。僕が起業したのは事件の翌年の2016年で、産業用に使えるのではないかとささやかれ始めた頃でした。それまではIT系や広告事業をやっていましたが、社会貢献性のある事業に取り組みたいという気持ちから、この事業に着手しました。最初は江東区塩見で、倉庫の一画を借りてスタートしました。プレハブの掘っ立て小屋のようなところです笑)。2017年からは、お台場のヴィーナスフォートでドローンスクールを開校しました。日本で初めての商業施設内でのドローンスクールです。


都心型で通いやすく、快適で買い物や食事も楽しめるような環境という受講生のニーズにマッチしたドローンスクールとなり、皆様に喜んでいただく事が目的で開校しました。



――パイロットの需要は当時あったのですか。


当時は、外壁点検や災害などに使えるなどいろいろ言われていましたが、想像の域を抜けず実際の現場では使われていませんでした。ドローンのマーケットが発展途上だったこともありドローン操縦士の仕事というものは多くはありませんでした。でも、今後、産業用パイロット育成のためにドローンパイロットスクールが必要になると確信していましたので、下流部分でしっかりとマーケットを下支えして作っていくスクール事業に初期段階から着手したいと考えました。


ドローンを使った事業はいろいろ考えましたが、どんな現場でどう使えるのかという検証も進んでおらず、どんなビジネスができるようになるのか正直まったくの手探りでした。


また、ドローン産業、ドローンマーケットとして育てていきたいという考えは創業当時から変わっておらず受講生重視で、本当に受講生に良いと思うカリキュラムをドローン産業の発展に合わせ常にアップデートしながら提供しています。今ではVRトレーニングツールなどオリジナルのサービスを提供しています。



――自らドローンの市場を作る側に回ろうと。


はい。ドローンが実際飛んでいるところを見たことがある人はほとんどいないと思います。人目につく商業施設でスクールを開校することにより多くの方にドローンを知っていただくきっかけになればと考えました。


ヴィーナスフォートに訪れた方と多くの出会いがあり、ドローンを活用される方が増えたのは非常にうれしく思っています。



――世間のドローンに対する当時の目は?


危ないというイメージの方が大きかったと思います(笑)。あんな大きなものが飛んで大丈夫なのか、本当に活用できるのか、安全性を保ったまま飛ばすのは大変だろうという印象が多かったですね。


2016~2017年にかけて、DJIという中国の大手ドローンメーカーから非常に安全性が高いドローンが発売され始めました。衝突防止センサーや、GPSで動きが制御されて定位置にしっかりとどまることのできる機能など、安全を確保できる機能が充実していました。その後、機体も小型化され、安全に対する課題がクリアされてきていました。



――わずか1、2年ですごく進化したのですね。


はい。性能が向上し、安全性も高く、事故防止機能なども搭載されています。価格もかなり安くなり、3年前の半額ほどになっています。従前のメインは「ファントム」というシリーズでしたが、バッテリーなども含めると一式30万円ほどかかりました。今は主流の「マービック」シリーズなら15万円ほどで購入することが出来ます。



――主流は中国メーカーでしょうか。


そうですね、DJIが世界のトップメーカーで、日本では9割、世界でも7割を占めています。その他はアメリカの3D Robotics、フランスのParrot社が3大メーカーと言われています。


日本ではいわゆるロボットベンチャーと言われる企業が開発する国産機体も増えており、国も物流などのでの利活用を推進しており国産機の活躍も期待されてます。


ただ、DJIは長年培ってきたものがありますから、機能性能が飛びぬけて良いんです。商業利用も一般の方もDJIを使う方が大多数を占めています。



■パイロットの供給が追いつかなくなる日も

ハミングバード 代表取締役 鈴木伸彦氏



――パイロット養成のカリキュラムにはどんなコースがあるのですか。


当スクールでは基本的に3日間でライセンス取得してもらいます。実技と座学があり、カリキュラムは国交省の定めているガイドラインに沿って提供しています。このライセンスがあれば、国土交通省の飛行許可申請を取れ、晴れて堂々とドローン飛ばせます。


更に現場活用に特化した点検専門コース、空撮専門コース、夜間飛行や目視外飛行のコースもあります。


VR(バーチャルトレーニング)のツールを開発し、現実に近い形で安全にトレーニングが出来る設備も整えました。VRは将来的に場所と時間を選ばずに高度なトレーニングが出来るツールとしても期待しています。



ドローンスクール


ドローンスクール


ドローンスクール



――目視外飛行というのは?


視界の外にあるドローンをモニターで見て飛ばすということです。夜間飛行、目視外飛行は趣味で活用される方も多いですね。明け方に朝焼けを撮りたいとか、日の入りを撮りたいとか、夜景を撮りたいとか、飛ばしたくなるんですよ(笑)。人気があります。



――受講生は個人も多いのですね。


高校生から70代までいて、男性も女性もいます。若い女性はSNSにアップするためというのが多いですね。新宿校を受講される方は新宿を生活の拠点している個人がメインですが、お台場校は法人利用も多く、遠方から狙い撃ちで来る方もいます。特に新宿校はアクセスが良いことから個人利用の方が非常に多く開校1カ月ですが非常に手ごたえを感じてます。



――どんな層の人が受講しているのでしょう。


まずは、今までお台場と渋谷を拠点としていましたがこの7月に新宿校をオープンして受講生は倍になりました。内訳は法人60%、自治体15%、ほかは個人です。


この数年で受講生の層も変わりましたね。創業当時は、「クルーザーを持っているので海に出た時にドローンを飛ばしたい」とか、「スポーツカーで走っているところをドローンで撮りたい」とか、いわゆる中高年男性の富裕層が多かったんです。


それが2017年後半ごろから地場の工務店や不動産会社など中小企業の社長などの受講生が増えました。。ドローン活用される業界としては建設業と不動産業が目立ちます、近年は災害救助に関係する自治体の方が増えました。


また、来年のドローンパイロット国家資格化を見すえて受講する人が増えています。


活躍事例も増えてきましたし、一般の趣味ユーザーも増えています。



――次の開校も予定していますか。


来年度は、検討中です。視野に入れて


今後、ドローンの需要は様々な業界で高まっていきます。14万人のパイロットが必要になると言われていますが、その需要にお応え出来るように多くのパイロットをカバーできるドローンスクールにしたいと思っています。



――市場が拡大する一方で、まだ不足しているのは。


専門ショップは圧倒的に足りません。あとしっかりとしたメンテナンスが出来る環境が必要ですね。常に練習が出来る練習場も必要になってきます。当社では屋外のドローンフィールド2カ所と提携しており、広々とした自然の中でフォローんを飛ばせて喜んでいただいてますが、まだまだ足りていません。



――マーケット規模に応じたパイロットを供給するまで、どのくらいかかりそうですか。


この4年ほどが勝負じゃないでしょうか。法律が整うと爆発的にニーズが高まる可能性もあると思っています。その場合はパイロットの供給が追いつかなくなる。


2025年には、ある程度の機体開発、アプリケーション開発、法整備の3つがほぼ整うと言われています。市場はそれ以降も順調に伸びて安定期を迎えますが、今後10年は伸び続けていきます。


僕らも旧態依然としたドローンスクールではなく、常に新しい形のサービスを受講生に提供し、満足度を上げ、さらなるドローン産業の発展に尽くしていきたいと思います。



■ドローン議連に期待すること

ハミングバード 代表取締役 鈴木伸彦氏



――法整備は進んでいるのでしょうか。


進んでいます。おそらく今年度中にはある程度の法制度が決まり、来年度には細部にわたり制度設計がされていきます。、現在の予定では2023年1月から新ルールが適用されると想定されています。


法律に関しては、最近は一般の方もドローンを飛ばす前にちゃんと調べるようになりました。どこでも自由に飛ばせないと理解してスクールに来る方も多くなりましたね。


ただし、今のところドローンの販売を規制する動きはありませんので、購入したら法律を知らずに飛ばしてしまう人がいるのも現実です。


この部分は車のナンバーのようにドローンの機体認証制度も始まりますので、何かしらのルールが策定されるかもしれません。


当社としても、パイロット養成認定スクールの基準を、無人航空機普及・利用促進議連盟(ドローン議連)に要望しています。国家資格として免許を発行するからには厳しい基準を設け、安全な飛行が出来るパイロットを育成できるスクールの選定を行っていただきたいと思っております。



――最後に、今後の抱負をお願いします。


ドローンは、誰もが使えて便利なものになっていきます。ちょっとでも関心があるという人にはぜひドローンスクールに来ていただきたいですね。2022年度はドローン業界にとって非常に大きな節目となる法改正も行われ、ドローン業界にとって大きな転換機となります。もっとドローンについて認知を広め、マーケットを作っていきたいと思います。



ハミングバード 代表取締役 鈴木伸彦氏



東京オリンピック2020の開会式で1824台ものドローンが精緻なパフォーマンスで世界を魅了したことは記憶に新しい。多くの人がドローンの存在を大いに印象づけられただろう。ドローンは今後、エンターテインメント以外でも多岐にわたる産業で不可欠なインフラになろうとしている。今はまさにその創成期。法整備後、どのような利活用が身近な世界で始まるのか、今後の飛躍が楽しみだ。






取材協力

株式会社ハミングバード

2016年設立。代表取締役 鈴木伸彦。ドローンパイロットの育成、ドローンを活用した点検や撮影、ドローンを活用する事業者への最先端ドローンの提供・導入後の事業支援を行う。2021年現在、お台場・新宿・渋谷でドローンスクールを運営。一般社団法人ドローン操縦士協会加盟。


コーポレートサイト https://www.hb-j.jp/ [外部リンク]




編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
取材日:2021年7月27日

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