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Webマーケティングツールで急成長のベーシックがTwitterフォロワー6万人を獲得できた理由~CAO 角田剛史氏インタビュー

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角田剛史氏(株式会社ベーシック 執行役員CAO コーポレート本部長)(※)

角田剛史氏(株式会社ベーシック 執行役員CAO コーポレート本部長)(※)


Webマーケティングツールを開発し、SaaSプロダクトが前年比200%と急成長を続ける 株式会社ベーシック。フォーム作成管理ツール「formrun」や、オールインワン型BtoBマーケティングツール「ferret One」を提供している同社では、全社を挙げてSNS発信でも成功をおさめている。同社の角田剛史氏(執行役員 CAO コーポレート本部長)に、個々の社員がフォロワー数を増やしコーポレートブランドを確立する秘訣などを伺った。



■Twitterフォロワーはトータルで6万


――会社としてのSNS発信を社員が行っているそうですね。御社全体で行っているとのことですが、どのような目的ではじめ、どのような効果があるのでしょうか。


Twitterの発信を本格的に始めたのは2019年4月頃です。それまでも公式SNSでプレスリリースなどを発信していましたが、各社員でも取り組もうということで始めました。


当初は採用の後押しという位置づけでした。例えばリファラル採用でも、声をかける相手がそもそも当社のことを知らなかったら、採用を進めるのはなかなか難しいですよね。そこで社名を聞いたときにピンとくるように、「あのベーシック」と言われる状態をTwitterで作ろうということになったんです。


始めてみると、当初の目的の採用効果以外でも、Twitterを契機にメディアから声がかかることも増えました。イベントの登壇や寄稿の依頼のようなお声がけ増えて、相乗効果でより広がりました。



――Twitterを選択したのはなぜですか。


拡散力を考えるとやはりTwitterが強いと思ったからです。ビジネスに影響力があるような経営者や社長が個人ベースで行っているケースはありましたが、全社で取り組んでいるケースは当時はまだ少なく、先駆けになれるかもとも考えていました。



――noteも運用されていますね。


はい。「Twitter+note」ではなく、「Twitter×note」で考えていました。noteでそれぞれの想いや取り組んできたことを書き、それをTwitterで拡散することでより多くの人に伝えられ、広がっていくのではないかと考えたんです。


採用コンテンツ発信の場としてはWantedlyもありますが、若干Wantedlyというプラットフォーム内でのPV競争になっている部分がありましたし、プラットフォームの特性上どうしても採用のためと見られがちで拡散も起きにくい。それに対してnoteは、取り組みや思いに対する共感が、Twitter上で拡散され大きく広がる現象が起き始めていました。


採用広報の手段としてなぜnoteを選んだのかを聞かれることも多いのですが、合わせてTwitterに力を入れていく上で、noteというプラットフォームが最も相性が良かったのです。



――採用の効果はどうでしたか。


非常に大きかったです。元々考えていた通り、Twitterを見ました、noteを見ました、そこで知ってたから応募しました、という人が増え、それ以上に選考の通過率や内定承諾率の向上が大きかったです。Twitterやnoteを通じて、ベーシックに対する理解が進み、共感が増し、意向度を向上させることに繋がったのです。



――全社員でのTwitter運用を成功させるコツは?


現在Twitterをアクティブに活用しているのは全社員の3割ほどですが、とにかくしている社員が楽しくないと続かないと考えていたので、何より「強制しない」ことを最も大事にしています。その上で、会社にとって良い効果が出たことを社内でしっかり共有するようにしています。


採用の結果はこうだった、こんなうれしい声がある、note見てこんなつぶやきしてる人がいるなど、成果を適切なタイミング、適切な場で共有することが大事だと考えています。より具体的に言うと、「採用した人があなたの発信を見て入社を決めてくれたよ!」ということを社内で共有することで、「本当に採用に効果がある」ということを全員が認識すると、自然とやる気も出てきます。



――ルールを決めたりは?


企業として開示すべきソーシャルガイドラインは作りましたが、基本は任せています。いつの間にか社員のアカウントのプロフィール画像やヘッダー画像には、青い壁紙が使われるようになり、それが外部的にも認知されていることから、「自分たちは"ベーシックの顔"として発信している」という意識が持てているのかもしれません。


内容については、よほどのことがないかぎり裏で注意することもないです。「こうつぶやけ」と言われたらやはり窮屈じゃないですか。読む側も面白くない。「ベーシックの人たちは、みんな同じことつぶやいてる」と思われます。負担を感じず自由に楽しくつぶやいてもらって各個人にファンをつけようとしています。



――社員個人のファンを増やすと。


発信している3割の社員がそれぞれ影響力を持っているところが当社Twitterアカウントの強みです。トータルで6万以上のフォロワーがいて、その半分以上でフォロワー数1,000人を超えている。強制も指示もせず、みんなで楽しみながら役に立つことをつぶやいたから、ファンがたくさん付いてくれたと思っています。


Twitterに力を入れることを大々的に公表しておきながら結局やめたらコミット力がない会社だとかえってマイナスのイメージがついてしまいます。そうならないように、とにかく継続に力を入れています。


もう一つは、やるといった人が率先してやることです。「役員がやれと言った割に自分はやってないじゃん」となると、誰もやらなくなります。やろうと言ったのは僕なので、誰よりもやってますし、誰よりもTwitterのノウハウを仕入れています。単純ですけどこれは重要なポイントです。



■継続が重要。自主的に発信し続ける理由は

角田氏のTwitterアカウントhttps://twitter.com/takeshisumida_(※)

角田氏のTwitterアカウントhttps://twitter.com/takeshisumida_(※)



――フォロワーを増やすコツは?


それぞれの担当分野にフォーカスしたつぶやきはわかりやすいので、ファンができますね。セールスだったらセールスのノウハウ、マーケティング部門だったらマーケティングなど。その人の発言が好きだとか、聞いてみたいとか参考になるなって思われることが重要だと思っています。



――途中でやめた方はいないのですか。


いますね。発信している3割の社員も時折入れ替わっています。一時期忙しくてやめたけど落ち着いたのでまた戻ってきたり、前述のように社内で成果を共有しているうちにまた戻ってきたりもします。これも先ほどの話と同じく「やめるな」とは一切言っておらず、またやりたかったらやればいいという感じです。



――発信することは評価の項目になっているのですか?


いいえ、直接評価には関係しません。フォロワー数に応じて報酬を出すような企業の例もありますが、ベーシックの場合は、Twitterでつぶやくことは自分に与えられたミッション達成の一助にするというスタンスなんです。


当社では各社員が、会社及び部署のミッションからブレイクダウンされた個人としてのミッションが、平均的には5つほど、多い人だと10個ほど与えられており、その達成度合いで評価されます。重要なのはあくまでその与えられたミッションを達成することであり、そのためにTwitterが必要だったらどうぞやってくださいというスタンスです。ですので、よくある業務中のSNSの使用に対する制限も、ベーシックの場合は一切行っておらず、こちらも各自に任せていますね。



■コロナ禍が後押しするWebマーケティング

ベーシック 採用サイト(※)

ベーシック 採用サイト(※)



――ベーシックの本業は SaaS事業ですね。


Webマーケティング領域の課題を解決する SaaSプロダクトに力を入れており、「ferret One」「formrun」という2つのツールを展開しています。


当社がフォーカスしているのはBtoB企業です。Webマーケティングで業績を拡大しようとしても、多くの企業でデジタル領域の知識や人手が不足しており手が回っていません。コロナ禍でその流れが一層加速してます。



――マーケティング手法も変革の時代を迎えているのでしょうか。


これまでは外回りなど足で稼いだり、テレアポしたり、展示会に出展したりと、いわばアナログで見込み顧客を得る営業がメインでしたが、コロナ禍によってそのような手法が軒並みできなくなり、一気にWebに移行しようとしています。とはいえ、これまでのアナログな手法の知識しかなく「やるといってもどうしたらいいのか」と、実際にはなかなかWebに移行できない会社が多いので、当社はそれを助けるツールを提供しているわけです。



――Webマーケティングになかなか移行できないのはどうしてですか。


多くの場合、「知識がない、環境がない、人がいない」という3つの課題に直面しています。まず知識がないこと。これまでアナログでやってきてWebマーケティングの知識が組織にたまっていないので、進められない。知識がないので、Webマーケティングに必要なツールなどの環境もない。そして現状の組織や役割の中にWebマーケティングの人材リソースがない。当社が提供するのは、そんな会社でもWebマーケティングができるツールです。



――Webマーケティングの必要性をどのように訴えますか。


現在はBtoBの場合でも、買い手側が営業と接触する前に、必要な情報を自らWebでチェックしているんです。営業マンとアポを取ったときに、一応相見積もりを取ったり社内の説明用に話を聞いたりしますが、約6割の人がその時点で既にどこにするかを決めているというデータもあります。


我々も普段の生活において、何か買ったり、何か食べるときは、Instagramや口コミサイトで情報を収集しますよね。普段そういう生活をしている人は仕事でも当然そういう発想になるわけで、これまではまずは営業マンを呼んで話を聞くということが当たり前だったBtoBの世界における買い手側の購買行動が変わってきているということをお伝えしています。



――確かにすぐにネット検索しますね。


もはやBtoBにおいても、Web上に提供しているサービスの情報がなければ、「この企業、情報がないから外しましょう」と、ある意味戦わずして負ける状況が起こってしまいます。情報発信の必要性はますます増しており、まずはWeb上に情報が存在するということはもちろん、数多くのWebサイトの中から、自社のWebサイトに行きついてもらい、その上で資料をダウンロードしてもらったり、問い合わせしてくれるところまでいかないと、結局検討の土台に乗らないという状況が起きています。



――「ferret One」「formrun」の機能を教えてください。


どちらもWebマーケティングをする上での課題解決に関するものですが、その課題の範囲が異なります。


前述情報発信する際は、ただWebサイトを作っただけではダメで、併せて認知拡大、見込み顧客獲得に繋がるWebマーケティングの戦略を立てなければなりません。Webマーケティングには「SEOマーケティング」「コンテンツマーケティング」「SNSマーケティング」などとたくさんの用語があるように、つまり打ち手がそれだけたくさんあります。これまではその打ち手ごとに様々なツールを使い分けなければなりませんでしたが、それをまるっと1つのツールで効率的にできるのがferret Oneです。



――なるほど。formrunは?


企業のWebサイトに行くと必ずお問い合わせフォームがありますよね。あれはシンプルなものでも、作るのは実はとても面倒くさいんです(笑)。特定の文字が入ったらはじくようにしたり、県名の選択をユーザーフレンドリーに選べるようにしたり、要件を考え始めるとキリがない。


また顧客からフォームに問い合わせが来たら、問い合わせの管理が必要になってきます が、他のフォーム作成サービスの多くはフォームの作成部分に特化しており裏側の管理機能はカバーされていません。通知メールが来て終わりで、結局別途エクセルで管理しなければならなかったりする。


問い合わせフォーム自体作るのが面倒だし、かといってさくっと作り過ぎると管理が煩雑になって、大概は二重苦になるんです。



――問い合わせフォームはマーケティングの第一歩なのに、手間がかかるのですね。


その通りです。それを解決するのがformrunであり、プログラミングの知識がなくても誰でも簡単にフォームを作れます。また顧客管理の機能がセットになっており、顧客の対応ステータスや、誰が対応したのかなどが一覧でわかる機能が備わっています。



――導入実績は。


ferret Oneは1,000社超、formrunが10万社以上で、どちらも前年比で200%ほど伸びています。前述のようにコロナ禍でWebマーケティングの需要が拡大しているため、導入は加速しています。現在はSaaSとしては2つのサービスを提供していますが、Webマーケティングは領域が広いので、今後も個別の課題に特化したサービスを出していくことはあり得ますね。



――マーケットは日本だけですか。


ferret Oneはノウハウを教え込むところまでがセットなのでひとまずは日本国内に特化しており、すぐに海外展開することは難しいですが、formrunは当社サイト上で簡単に申し込みも退会もできるサービスなので、本気で海外展開も考えています。先ほど説明した、顧客管理までがセットになったフォーム作成サービスは世界でもほとんどないんですよね。


操作が簡単な割に、デザイン性が高いフォームを誰でも簡単に作れるため、ブランドイメージにこだわる企業で使われることも多いです。世界にはWebサイトがうん億という単位で存在すると言われていますが、その全ての問い合わせフォームをformrunに置き換えていきたいですね。(笑)。



――日本ではWebマーケティングツールは遅れているのでしょうか。


EC化率で日本より先行している国はあります。日本は国土が広くないため、前述のようにBtoBはこれまでアナログな営業が主体で成り立ってきたという背景もあるでしょう。


もともと日本が強かったモノづくりの業界でも、コロナ禍によって、良い品物を作っても売れなくなり、困っている会社が増えています。当社の導入事例でもBtoBのメーカーは非常に多いです。BtoB取引市場は年間300兆円以上あると言われており、そのうちWebなどデジタルだけで取引が完結しているのは1割か2割。それ以外は、この状況でもいまだにアナログ手法で頑張ろうとしているか、デジタルシフトできないでいます。当社ツールでWebマーケティングを行うことにより、良い製品を本来届けるべき人に届けてほしいです。


顧客側も同じで、「こういう商品が欲しいけど見つけられない」という人がたくさんいるはずです。Webマーケティングの力でその双方をマッチングしていき、巨大なBtoBの市場を元気にしていくことで、日本の生産性、成長力を再び取り戻したいと本気で考えています。



■事業成長率200%。これまでにない速さで人が増えている

角田剛史氏(株式会社ベーシック 執行役員CAO コーポレート本部長)



――御社では、新入社員が入社前後に抱きがちな不安を解消するオンボーディング制度を導入しているそうですが。


現在の社員数は100名ほどですが、事業を毎年200%ずつ伸ばしていきますので、それに応じて組織が大きくなっており、これまでにないペースで人を募集しています。2、3年以内に今の2倍ほどになっているかもしれません。しかし、頑張って採用しても馴染めなかったり、不満を募らせて早期退職に至ったら当然意味がないので新入社員に対するオンボーディングには合わせて力を入れています。制度導入以降の退職者はゼロですので、その効果は感じています。



――なるほど。皆さんの働き方はテレワークがメインですか。


そうですね。オンオフどちらにしてと言っているわけではなく、各自に与えられたミッションを達成するために、自分がベストと思う働き場所を選んでもらっています。現在の出社率は10%前後です。ただ、リアルに会うことで刺激し合ったり成長を高めあうことは絶対あると同時に考えていますので、定期的に全社会議を開催したり、また事業部単位、チーム単位で、定期的にオフィスに集まることを促進するための補助制度を備えています。



――アフターコロナに向けて、どういうビジョンを持っていますか。


ベーシックは「Webマーケティングの大衆化」という最終的な目標を掲げています。コロナ禍で特に苦しんでいるBtoB企業に対して、ベーシックが提供するサービスを通じて誰でも簡単にWebマーケティングを行える状態を作り、本来出会うべきサービスと人が確実に出会える世界を作っていきたいと思っています。


そのために「事業の成長と、社員一人ひとりの働き甲斐の両立」ができる会社を目指しています。いくらサービスが広がり業績が上がったとしても、そのために社員が疲弊し、笑顔でイキイキと働けない状態であっては意味がありません。そして当然逆もまたしかりです。すべての社員が仕事に全力を注げる環境があることで、ベーシックのサービスが世の中に広がり、会社が発展し、日本の経済成長にも寄与する。その結果、社員の物心両面での満足度が高まり、さらに仕事に注力できる。これからも、そのような好循環を生み出すための施策をどんどん打ち出していきたいと考えています。



角田剛史氏(株式会社ベーシック 執行役員CAO コーポレート本部長)



コロナの収束がまだ見通せない今、かつてない勢いでリアルの世界にデジタルが入り込んでいる。もはやデジタルなしの社会は成り立たない。アナログだけでは立ち行かなくなるという危機感は感じつつも前に進めない企業が転換するためには、皮肉なことにデジタルではなくアナログの対面説得が効果的かもしれない。ともあれ、今後どのような事業でも欠かせないであろうWebマーケティング。ツールの裏側まで理解して取り入れるべきだ。






取材協力

株式会社ベーシック

2004年3月設立。

「社会のあらゆる問題を解決する」経営理念を持ち、デジタルセールスSaaS事業を中心とした業務を拡大中。創業以来、50を超える事業(問題解決)を展開。現在は「Webマーケティングの大衆化」に注力している。


コーポレートサイト https://basicinc.jp/ [外部リンク]




編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
取材日:2021年11月16日

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