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至福のコーヒーを楽しむことがオフィスに行く意味になる日~ダイオーズ 大久保真一氏インタビュー

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大久保 真一氏(株式会社ダイオーズ 代表取締役 ※)

大久保 真一氏(株式会社ダイオーズ 代表取締役 ※)


企業にとって新社屋プロジェクトはオフィス以上に重要だ。近隣地域に受け入れられるか、社員の士気は高まるか、生産性は上がるのか。オフィスコーヒーサービスで知られるダイオーズは、東京・三ノ輪の地にシンボル的なオフィスを建設。常磐線の車窓からはマグカップを模した新しいオフィスを見下ろすことができる。新社屋プロジェクトについて代表取締役社長の大久保真一氏に伺った。



■コロナの打撃を受けるも、過去最高の売上・利益を達成


―― 事業についてご紹介ください。


オフィス向けコーヒーやボトルウォーターなどの飲料サービス、また、玄関マットや空間除菌消臭機等のレンタルや事業所向け定期清掃サービスを行う環境衛生サービス主体に、年間契約を結んだ事業所へ定期的に訪問し、製商品の販売やさまざまなサービスを提供しています。「B to Bで継続する必然性のあるビジネス」だけに特化し、これまで52年間歩んできました。現在、日本のほか北米、アジアなど海外でも事業を展開しています。


―― コロナ禍の影響を受けましたか。


飲料サービスでは、大都市圏を中心に出社率が下がったことで影響を受けました。IT系の企業や社員数の多い大企業を中心に出社が抑制されたことに伴い消費量が減り、売上にはネガティブな要素となりました。


ただ、一方で巣ごもり需要の拡大で、物流拠点、医療・介護関係における新規顧客件数は大きく増加しました。特に除菌や衛生意識の高まりで環境衛生サービス部門ではお問い合わせが増え、逆にポジティブな要素となりました。なかでも、定期清掃サービスを行うダイオーズカバーオールは、医療レベルのプロ品質の清掃が大変ご好評をいただき2桁成長を果たしています。これらによって環境衛生サービス全体では2年連続の二桁成長を達成、全体としても今期の国内事業はコロナ禍という特殊事情のなかでも、創業53年来の過去最高の売上・利益を更新する見通しです。


■創業50周年のシンボルとなるコーヒーカップ型新社屋


壁面の左右には幸せをもたらす北斗七星を相対で描いている。

壁面の左右には幸せをもたらす北斗七星を相対で描いている。



―― 新社屋建設の経緯を教えてください。


自社物流網の拡大と物流拠点の見直しの一環で、2017年に東京・三ノ輪の配送拠点として使用していた自社所有地に、当社主力製品のボトルウォーター製造工場の建設計画を立てました。せっかく新たに建てるのなら宣伝にもなるような外観にしようとプロジェクトがスタートしました。2019年がちょうど創業50周年でしたから、新たなシンボルとするための記念プロジェクトの一環でした。実際にはコロナの影響で完成は1年遅れとなり、2018年初めから準備していましたので完成まで3年半かかったことになります。


―― コーヒーカップ型のユニークな外観ですね。


限られた敷地(敷地面積659.09㎡/約200坪)の中で最大限の宣伝効果を発揮するため、インパクトのある話題を呼ぶ建物にしたいと考えました。外観だけでなく耐震や遮音、そして内装も重視していたため、デザインは何度もやり直しました。実は設計が進み建築申請を提出した後に偶然にも隣の土地を購入することが出来たので、新たに購入した土地には増築棟を建てることとしました。当初設計の棟と渡り廊下でつなぎ合わせた別の建物となります。また、常磐線の車窓からも良く見えることから、この建物には当社のPRを目的に大型LED液晶ビジョンを設置しておりますが、地元の警視庁南千住警察署からの依頼による連携協力で犯罪防止の啓発動画もLEDビジョンで流しており、地域の防犯と安全・安心な街づくりにも貢献しております。


屋上には上空から見るとダイオーズロゴマークの「D」の文字に見える屋根を取り付けました。一歩一歩の積み上げてきた当社ビジネスをらせん階段という形でイメージし、屋上の「D」にはさらに大きく成長していこうという意気込みを込めました。壁面の左右には、幸せをもたらす北斗七星を相対で描き、正面の明かり取りの小窓は、「ダイオーズ」という文字列となっています。


エントランスの中央にシースルーのエレベーターを配置し、その周囲にらせん階段を設け、屋上に抜ける設計。階段は一歩一歩積み上げてきたダイオーズのビジネスをイメージしている。

エントランスの中央にシースルーのエレベーターを配置し、その周囲にらせん階段を設け、屋上に抜ける設計。階段は一歩一歩積み上げてきたダイオーズのビジネスをイメージしている。



―― コロナ禍下での従業員の皆さんの働き方は?


コロナ前とは職場環境に対する考え方が大きく変わったと感じております。当社でもそれまでは当たり前に行ってきたフェイスtoフェイスの新規営業活動はWeb商談が主流となりました。一方で商品の補充納品等を行うルートサービスは万全の感染症対策を徹底した中で行うことを余儀なくされました。管理部門などでも時差出勤やテレワークの促進を実施しており、平均すると2~3割、緊急事態宣言下においてはさらに多くの出勤抑制を行っております。


成績優秀者の表彰や成功事例を共有する場として、全従業員が集まる"ダイオーズフォーラム"が2年連続でWeb開催となり、従業員の元気な顔を見ることができないことは非常に残念なことだと考えております。



■挽きたてコーヒーをいつでも楽しめるカフェスペース「三ノ輪Café&lab」




――焙煎機もある2階の「三ノ輪Café&lab」は、新社屋の象徴的なスペースですね。


テスト焙煎機はドイツのプロバット社を採用。新製品の開発の際は実際にこの場所で生豆を焙煎し、100回以上のテイスティングを繰り返し合格したものだけを、千葉県八千代市の焙煎工場にあるさらに大きな焙煎機で製品化しております。


一方、このダイオーズCafé&Labでは、従業員はハンドドリップ抽出からサイフォン抽出など、自分たちの好みの抽出方法で自ら抽出すれば、カフェで1杯500円~1500円もする高価な原産地のコーヒーも無料で飲むことができるのも特徴で、体験型オフィスとなっております。






――ワークスペースとシームレスになったスペースですね。


この場所はフリーアドレスとなっており、ダイオーズの従業員であれば、通常業務はもちろん、ウェブ会議やミーティング、くつろぎのカフェスペースとしても自由に利用できる空間となっております。


また、Café&Labはその名のごとくR&Dの研究棟でもあります。コーヒーはお湯の温度や、ミルでの挽き方、あるいは抽出によって大きく味が変わります。私たちは時代のニーズにあったコーヒーを提供するためにさまざまな研究をここで行っております。





―― 利用者数は。


今はコロナ禍のため、日に10~30名ほどですね。もっと利用したいという要望はあるのですが、現在は人数を制限しています。コロナが終息したら席数を増やし、皆さんに利用してもらえる環境を整えたいですね。


―― 想定していなかった使われ方はありますか。


「オフィス内にカフェテリアを作りたい」というお客様が最近非常に増えております。そうしたお客様と商談ができるショールームとして活用される機会が増えたことは、予想外でした。さきほど述べたようにコロナ感染予防のためリモート商談が多くなりましたが、「実際にコーヒーを飲んでみて決めたい」と要望されるお客様も多いのです。そんなとき、丸の内の本社やこの三ノ輪Café&labにお越しいただいて、様々なコーヒーをテイスティングして導入イメージをもっていただきます。2016年にアジア人で初のワールドブリューワーズカップ世界チャンピオンとなった粕谷哲氏(Philocoffea代表)が完全監修したスペシャルティコーヒーや、スイスの最高級プロフェッショナルコーヒーマシン「FRAKE」(フランケ)という大型コーヒーマシンも設置しておりますので、お客様のニーズに合わせ最適なコーヒーと最適なマシンをここで体験していただくことができます。



■まさに至福の一杯をご馳走に


ここで実際にコーヒーをご馳走になった。 仕切られたガラス張りの奥の焙煎機に、生豆が投入されていく。





生の豆の色は、よく店舗で見かける「コーヒー色」ではなくは薄いベージュ。大切に扱われ、正確に焙煎機に入れられていく。





焙煎が終わり、見慣れたコーヒー色の豆が出てきた。これを挽いていただく。





正確に分量を量り、一粒一粒を丁寧に扱い、豆を挽き、お湯を注ぐ。





ゆっくりと細く注がれるお湯とコーヒー豆の重なる音が香りを際立たせる。





最高級マシンだときめ細かい上質な泡のフォームミルクが作れる。





こうして濃厚な至福の一杯が完成した。 焙煎から抽出まで一工程ずつ丁寧に丁寧に、この一杯のために計算しつくされたプロのコーヒーだ。



■オフィスに求めるもの、生産性を高める環境が今後変わっていく


日本で初めてオフィスでレギュラーコーヒーを飲む習慣を定着させた大久保氏(※)日本で初めてオフィスでレギュラーコーヒーを飲む習慣を定着させた大久保氏(※)



―― ご馳走様でした。このCafé&labは、今後どのように活用していきますか。


もともと多岐にわたるコンセプトや使い方を考えていたスペースなのですが、現在は感染拡大防止の観点から残念ながら保留となっています。著名なバリスタの方々にお越しいただいてコーヒーセミナーを行ったり、カッピング体験や原産地の飲み比べなどを行ったりする計画があります。社内の新商品発表会や定例勉強会でも使用していきたいと考えております。コロナ終息後はより機能的なオフィスとして利用していきたいと考えております。


―― 今、オフィスの在り方が大きく変わりつつありますが。


コロナ禍によって、テレワークでも可能な業務と対面や出社すべき業務とのすみ分けが進みました。従業員がオフィスに求める機能、企業側がオフィスで提供したいものが大きく変わり、その取り組みを始めたいという企業様からの問い合わせを多数いただいています。たとえば「オフィス内に無人のカフェテリアを作りたい」、「オフィス内に観葉植物を置きたい」といったご要望です。


業務の効率を求めて、働く人の時間を管理し、空間に縛る時代から、従業員が仕事をしやすい環境を作って必然的に生産性を高めていくような時代に変化していくのではないでしょうか。


―― オフィスにカフェスペースを作りたいというお客様へのアドバイスは?


当社では「カフェラウンジサービス」という新しい取り組みを行っております。3カ月ごとの定期保守点検サービスなど、契約後のアフターフォローも充実しており、1杯のカップクォリティを大切にしています。また、飲料のみならず空間除菌やオフィス内の観葉植物レンタル事業など様々なサービスも充実しており、「従業員の安心安全」「くつろぎ空間の演出」をお考えの企業様は、ぜひ私どもにご相談いただければと思います。


ダイオーズは今後も企業理念に基づいて時代の新しいニーズを先取りし、新しいマーケットを創造していきます。現在開発中の新商品や新サービスにご期待ください。



趣味は写真撮影と世界旅行という大久保氏(※))趣味は写真撮影と世界旅行という大久保氏(※)





昭和の時代、オフィスの飲み物といえば日本茶が主流だった。日本で初めてオフィスコーヒーサービスを事業化し、オフィスでレギュラーコーヒーを飲む習慣を根づかせたダイオーズが、いま令和の時代に「三ノ輪Café&lab」を建立し同社が提案する理想の職場を表現した。働く環境が多様化し、特に人材を最優先に考える企業は、コロナの収束にむけ働きやすい職場を作ることがますます不可欠になる。「出社したくなるオフィス」づくりを応援するという同社。新しいシンボルとなった新社屋オフィスとともに、今後どのような新事業が始まるか、これからも注目していきたい。






取材協力

株式会社ダイオーズ

1969年設立、1977年、日本初のオフィスコーヒーサービス事業を開始。1988年、米国へ進出。2007年、東証一部上場。従業員数1258名、2021年3月期のグループ連結売上売上高は23,323百万円。


代表取締役社長 大久保 真一氏プロフィール

中央大学卒業。在学中、全日本学生写真連盟委員長。広告会社勤務を経て67年より米国と欧州の流通企業で研修。69年に家業の米穀店に入店し、有限会社米屋おおくぼとして同社を創業。都内の米穀店を組織化し配達スーパーを開始する。70年クリーンケア事業開始。76年株式会社ダイオーに社名変更。77年日本初のオフィスコーヒーサービス事業を開始。88年には米国へ海外進出。83年株式会社ダイオーズに社名変更。2007年に東証一部に上場。趣味は写真撮影と世界旅行。


株式会社ダイオーズ https://www.daiohs.com/[外部リンク]




編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
取材日:2022年2月21日

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