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失敗にめげず、楽しみながら新事業開発に挑戦しつづける方法 〜パンフォーユー 矢野健太氏インタビュー

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パンフォーユー 代表取締役 矢野健太氏

パンフォーユー 代表取締役 矢野健太氏


成功する新事業開発は数多くありません。パンをテーマに0から事業を立ち上げた矢野健太氏もその挑戦者の一人でした。さまざまな失敗や挑戦をしてパンのサブスク「パンスク」などで成功するまでの経緯を記した『失敗の9割が新しい経済圏をつくる』という本は、起業を目指す人、新事業開発に携わる人の間で話題になっています。事業開発の苦労、楽しさ、醍醐味などを株式会社パンフォーユーの代表取締役、矢野氏に伺いました。



■偶然出会った地元の冷凍パンに受けた衝撃


― パンフォーユーの事業内容をご紹介ください。


当社は、焼きたてのおいしさを閉じ込めた冷凍パンを自宅に届ける「パンスク」、職場に届く「パンフォーユーオフィス」など、「パンとIT」をキーワードに事業展開しています。ITと冷凍の技術で全国に冷凍パンを流通させ、地域のパン屋さんと消費者を繋ぐプラットフォームを構築しました。


― 起業されたきっかけは?


当時26歳でしたが、地元の群馬県で雇用を創出して貢献したいという想いがありました。県内で魅力ある商品やサービスを探していて、偶然、冷凍パンにめぐりあったのです。


― もともとパンがお好きだったとか。


パンは嫌いではありませんが、コンビニで買って食べるくらいでした。ところが地元のパンメーカーの冷凍パンを食べて、こんなにおいしいものが身近にあったことに衝撃を受けたんです。また、商品の流行りすたりが激しい今、パンには具や生地を無限に変えられるという可能性があり、飽きが来にくいことからパンを扱うことにしました。


― 商品としての可能性が広いと。


当時私は東京と群馬を行き来することが多かったのですが、東京と地元のパン屋に大きな差を感じました。まずは価格、そして混み具合の差です。東京のパン屋は時間帯に関わらずお客で賑わっていて、店も一日中パンを焼いています。ところが地元のパン屋はパンを焼くのは朝からお昼にかけてが中心で、15時頃には店内も閑散としています。そのギャップをビジネスに繋げられないかと考えました。



■1年でパンメーカーから提携を解消されてしまった



― そこで地元の冷凍パンメーカーと事業提携をされた。


当時はNPOの職員でしたが、メーカーの社長に起業を検討していることを伝えたら、興味を持っていただけました。事業計画書を作り、幹部の方たちを説得する材料を集め、工場に通って職人さんたちの意見を聞きました。2ヶ月後にはNPO法人を辞め、それから3ヶ月かけて、メーカーとの共同出資による「パンフォーユー」を立ち上げました。


― どんな商品を売ったのですか。


最初に打ち出した商品は、パンをカスタマイズできるオーダーメイドパンです。自分で具材や生地を選んで注文したパンを冷凍で家に届けるというサービスでした。当時アメリカで流行っていたプロテインバーのカスタムオーダーメイドサービスがヒントでした。オーダーメイドパンはアイディアの面白さから話題になり、注文もかなりいただいて初月売上180万円と良いスタートを切ったのですが、なかなかリピートに結びつかず、2ヶ月目には20万円くらいまで落ちてしまいました。意外だったのは、オーダーメイドパンより"おまかせセット"の方が売れていることでした。


― "おまかせセット"とは?


オーダーメイドパンは1種類につき4個製造するのですが、生産効率上、実際には14個作ります。そこで余った10個を他の種類の余った分と一緒に詰め合わせたものを"おまかせセット"にしたのですが、これが売れました。お客様はカスタマイズすることより、届いた数種類のパンを見て「どれから食べようか」と迷うほうが楽しいのですね。それで、いろいろな種類のパンを届けるところに顧客ニーズがあると思いました。


― なるほど。


そこで、全国各地の名産品を使ったオリジナルのご当地パンを作って、どの県のパンが一番おいしいかを注文数の多さで競う「全国パン甲子園」というアイディアで勝負しました。ただ、こちらも事業化できる結果に至らず、合弁相手のパンメーカーからパートナー解消を宣告されてしまいました。会社設立から、わずか1年後のことです。



■オフィス向け事業がヒット。さらに個人向けにも再チャレンジ



― 途方に暮れたのではありませんか。


パートナー解消が決まったとき、工場の冷凍庫にはまだパンが残っていて、廃棄するのはもったいないので、知人のいる会社に送ることにしました。以前、従業員の軽食用に30個ほど購入していただき、「おいしい」と評価してくれた会社だったので、200個ほどの冷凍パンを無断で送りました。


― えっ、いきなり無断で200個?


当たり前ですが、「オフィスの冷蔵庫がいっぱいだ」という怒りのメッセージが届きました。ところが、30分後に空になった冷凍庫の写真が送られてきたのです。社員たちに「冷凍パンが届いたので、欲しい人はどうぞ」と伝えたところ、あっという間になくなったそうです。


それで、オフィスをターゲットにしようと考えて企業にヒアリングし、都心のオフィス街には限られた昼休み時間に"ランチ難民"が発生していたりすることを知りました。そこで、働き方改革を進める企業に、福利厚生の一環として社員のためのパンを提供するニーズが見えてきました。


オフィス需要に応える「パンフォーユーオフィス」をスタートさせたのは2018年10月です。提携する複数のパン屋のパンをアソートして企業に納めており、現在では200社ほどに契約していただいています。


― よかったですね。一般消費者向けのほうは?


「パンフォーユーオフィス」は2019年3月頃からメディアに取り上げられるようになったのですが、「個人宅向けのサービスはないのか」という質問も多数寄せられました。そこで個人宅向けのパンのサブスクリプションサービス「パンスク」を企画しました。オーダーメイドパンで失敗した反省点を生かして、1年かけて準備して、まず300名の無料モニターを募集したのですが、応募は4000名もあって、関心が高いことがわかりました。



全国のパン屋さんからお店自慢のパンが届く定期便サービス「パンスク」(※)

全国のパン屋さんからお店自慢のパンが届く定期便サービス「パンスク」(※)


パン専用のオリジナルミックス粉からパン屋さん向けのレシピまで開発した

パン専用のオリジナルミックス粉からパン屋さん向けのレシピまで開発した"糖質15g以下"のパンフォーユーオリジナル冷凍パンブランド「まいパン」。(※)



― かつての失敗をどのように克服したのでしょう?


例えばパッケージデザインにこだわったり、パン屋の紹介カードを入れたりして、パンが届いたときのワクワク感を演出しています。個人向けの商売では、ただパンがおいしければいいわけではなく、そういう情緒的価値も大切なんです。「パンスク」は2020年の2月にスタートし、登録者は2ヶ月で1000名を超え、現在は1万5千人になります。



パンスク事業はみごと成功した(※)

パンスク事業はみごと成功した(※)



― コロナの巣ごもり需要も追い風になったのでしょうか。


一方で「パンフォーユーオフィス」のほうは2020年の緊急事態宣言後で売上が半減しました。幸い、「解約」ではなく「休止」という企業がほとんどでしたが、当時はいつ回復するか分からず不安でしたね。



■顧客ニーズを元に次々とパンの事業を拡大



― その後の事業拡大は?


やはり顧客からの問合せで可能性を感じて事業化したのが、カフェなどの飲食店に提供する「パンフォーユーBiz」です。こちらはオイシックス社などのECでも取り扱っていただいています。



パンフォーユーBizは渋谷のショッピングモール内のauショップなどでも展開(※)

パンフォーユーBizは渋谷のショッピングモール内のauショップなどでも展開(※)



それからeギフトを展開するギフティ社からの提案で始めた「全国パン共通券」というのもあります。



パン屋さんで販売している商品と交換できる電子チケットを、オンラインで手軽に送れるサービス「全国パン共通券」(※)

パン屋さんで販売している商品と交換できる電子チケットを、オンラインで手軽に送れるサービス「全国パン共通券」(※)



― オンラインのギフト券ということですか。


コロナ禍で客足が減ってしまったパン屋さんが全国にあります。ギフト券をもらってWebで調べていただき、近所で使える店を発見していただくというという、パン屋さんとの偶発的な出会いになればいいなと思っています。ゆくゆくは全国に約1万店あるパン屋さん全店舗で展開していきたいですね。


― パンをテーマに0からの事業を成功させたポイントは、どこにあったのでしょう?


「働き方改革」やコロナの巣ごもり需要など、時代の追い風に乗ることができた部分もありますが、「パンフォーユーオフィス」を始めた2018年に比べて、消費者の冷凍パンに対するリテラシーが上がったように思います。


― どういうことでしょう。


おいしいパンを求めてパン屋巡りをする人が増えているんです。SNSでパン屋の情報を発信する人がいて、それを参考にパン屋巡りをする人がいる。パン屋の職人が作ったパンはおいしいという価値が一般的になり、クオリティの高いパンを出す店も増えています。


私自身、こんなにおいしいパンが売れないはずない、何か工夫をすればきっと売れると信じて頑張ってきました。起業家としては、成功を信じて我慢して待つことも大事です。もちろん顧客のニーズ、時代のニーズに応えていくことも成功には欠かせませんが。


― 最近も、健康を意識したパンの事業に挑戦しているそうですね。


「パンが食べたいけれど糖質を控えたい」、「食物アレルギーのある子どもにおいしいパンを食べさせたい」という声をいただくことが増えました。そこで糖質を15g以下に抑えたパンのブランド「まいパン」を今春に立ち上げました。パン屋の職人が手作りしたパンですから、健康に良いだけでなく、おいしさにも自信があります。アマゾンなどで購入可能ですが、ゆくゆくはスポーツジムや健康食品の店などでも取り扱ってもらいたいと思っています。


― 今後は何を目指しますか。


そもそもの起業した理由の、地元への貢献を果たしていきたいですね。地方で働くメリットをしっかりと享受できる事業を展開していきたいです。パン屋としては、地方のほうが水がきれいだし、地域の特産物を活用できます。東京より家賃が安く、通勤時間もかからないので、パンを低価格で提供でき、パン作りに手間をかけられるメリットがあります。


― 地方でのビジネスの難しさもあると思いますが。


都市部より人口が少ない分、売上の規模は小さくなりがちですが、当社の事業モデル、つまり冷凍にして送れば、商圏を広げ、商品のポテンシャルを引き出せます。地元でパン屋をやりたいという人もいるので、そういう方を支える事業を進めています。


― 最後に、新規事業開発に携わる人に何かアドバイスをお願いします。


初めの一歩は、まず気軽に踏み出してください。なかなかうまく事業計画を立てられずに早々にあきらめてしまう人がいますが、たとえ事業計画書がよくできていても、実際に動きはじめると問題はたくさん出てきて"右往左往"するものです。まずは足を突っ込んでみる。そして次々と課題が現れても決してあきらめずに打ち手を講じつづけることが、事業開発の楽しさだと思います。


― ご著書を拝読すると、たしかに矢野さんが楽しみながら起業や事業開発をしてきたことが伝わってきます。


本にも書きましたが、私は「経営は仕事、事業開発は趣味」だと考えています。ぜひ、この本を参考にして、事業開発の楽しさを経験してください。







あれこれとリスクを考えてしまい、起業や事業開発になかなか踏み出せない人も多いと思います。矢野さんのように「楽しむ」という気持ちで、失敗や気づきを次の展開に活かしながら、事業を広げていくことが成功への近道かもしれません。






プロフィール


矢野 健太(やの けんた)

株式会社パンフォーユー 代表取締役
1989年、東京都生まれ、群馬県育ち。京都大学経済学部卒業後、2011年に株式会社電通に入社するが、地元群馬に貢献したいという思いから2014年に退職。教育系ベンチャーを経て、桐生市を拠点に小学生への体験プログラムや子育て支援事業、起業支援を行う特定非営利活動法人の事務局長に就任。地方に貢献できるようなビジネスを立ち上げてみたいと思う中で、とある冷凍パンメーカーと出会う。地域の独自性や強みを発揮できる食であるパンと、冷凍を組み合わせることで、かねてより想っていた「魅力のある仕事を地方に作りたい」を叶えることができるのではと考え、2017年1月にパンフォーユー設立。パンを「作る人」「売る人」「食べる人」三方良しのプラットフォームサービスを提供しながら、「新しいパン経済圏を作り、地域経済に貢献すること」を目指している。


著書

失敗の9割が新しい経済圏をつくる(かんき出版)
https://kanki-pub.co.jp/pub/book/details/9784761275921[外部リンク]


株式会社パンフォーユー https://panforyou.jp/[外部リンク]



編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
取材日:2022年4月25日

         

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