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ジョブ型雇用制度が注目される理由、そしてありがちな誤解とは ~ブレインコンサルティングオフィス 北條孝枝氏インタビュー

北條孝枝氏

北條孝枝氏


リモートワークが広がる中、「ジョブ型雇用制度」への関心が高まっている。今後、日本の雇用制度はどのように見直される必要があるだろうか。企業の人事労務に関する多くの課題を解決し、ジョブ型雇用についてのセミナーなども開催する株式会社ブレインコンサルティングオフィスの北條孝枝氏に、ジョブ型雇用制度導入のための課題などを伺った。



■ジョブ型雇用制度は「Society5.0」時代の採用方法として注目されている


――ブレインコンサルティングオフィスの業務をご紹介ください。


当社では社会保険労務士事務所を併設し、コンサルティング・各種研修・資格検定など、企業の人事労務面の課題を解決するサービスを広く提供しています。また、全国5000以上の社会保険労務士事務所が参加するネットワーク(「PSR network)」を運営し、社会保険労務士に対して最新の法改正情報・人事労務情報を提供するとともに、それぞれ独自の強みを持つ全国の社会保険労務士の得意分野を把握し、情報共有することで、社会保険労務士が、企業にとって最適かつ最先端の人事労務ソリューションを提案できるようにしています。



――今、ジョブ型雇用制度が注目されているのはなぜだと思いますか。


大きく3つあります。


一つ目は、政府がもともと推し進めている「Society 5.0」における社会・経済の構造改革です。これまで以上に課題解決・価値創造が重視され、多様性が求められる社会を目指すために、ジョブ型雇用が必要になるという動きです。これにあわせて、経団連などでも「日本型のジョブ型雇用」への移行を勧めています。


2つ目としては働き方改革が挙げられます。労働基準法が改正され、パート有期雇用労働法や同一労働同一賃金など、職務と待遇の格差が問題視され、職務を明確化する必要が出てきたわけです。


3つ目は、新型コロナウィルスの影響でリモート勤務を余儀なくされるようになったことです。離れた場所で仕事をするために、これまでの業務を明確化する必要に迫られている。そのためジョブ型雇用を取り入れようとする動きがあります。


ジョブ型雇用を導入することで、今の課題をある程度解決できるのではないかということから注目される機会が増えているのだろうと思います。



――ジョブ型雇用は、そもそもメンバーシップ型雇用とどのように違うのでしょうか。


新卒一括採用と言われるように、メンバーシップ型はまず人材の採用が先です。採用後も一括で教育し、企業で人材を育て、仕事を割り当てていきます。これに対しジョブ型雇用は、仕事が先にあり、その仕事ができるスキルを持った人をタイムリーに採用していきます。人が先か、仕事が先かという大きな違いがあります。


日本では、良い人材だからとりあえず採用し、その人に合う仕事を割り当てていくといった採用の仕方をすることが多いため、配置や異動に関する人事権を企業が持っています。これに対してジョブ型では、職種や配属先は予め、本人との同意が必要になります。


賃金についても、メンバーシップ型は年功的に上昇していくのに対し、ジョブ型は職務内容で報酬が決まり、スキルによって変動します。



――「中途採用」は一括採用ではありませんが、それとジョブ型とは違うのですか。


中途採用の場合は仕事ありきで採用されますが、雇用条件が通常の一括採用と変わらないのであれば、ジョブ型雇用とは言えません。働き方改革で推奨されている「限定正社員」が、ジョブ型雇用にやや近い採用方法といえるかもしれません。限定正社員は、職種や勤務地などがある程度限定されている契約です。ジョブ型雇用とはイコールではありませんが、今後リモート勤務がさらに増えていく中、人材を全国から採用したり、配偶者の転勤先に同行するために退職しなければならないようなケースでも雇用維持したりすることにも対応することができるような働き方のひとつです。



■成果主義と混同している企業も多い

北條孝枝氏



――実態として、どの程度ジョブ型雇用制度が導入されているでしょうか。


導入が進んでいるのは、今のところ大企業中心です。ただ導入企業の中でも、ジョブ型を成果主義と混同しているところもあります。ジョブ型を導入していると言っても、正しい理解が進んでいない企業も多いという印象ですね。


現在でも企業の5割以上がなんらかの成果主義を取り入れており、評価していく仕組みを持っています。


しかしそれはジョブ型とは異なるものです。ジョブ型雇用は、最初に職務を明確に限定し、職務記述書にある仕事をするという契約です。メンバーシップ型のように、チームに人が足りないから他の人がカバーするという形にはなりません。


ジョブ型雇用では契約した仕事に報酬を支払うということで企業と個人が同意しているので、それ以外のことはやらなくていい契約です。日本の就業規則では、転勤を命じられたら基本的に正社員は断ることができません。それはメンバーシップ雇用で採用されているからです。


日本のメンバーシップ雇用は、社歴、年功序列で賃金が上がっていきます。さらに今年4月1日から、企業には70歳までの雇用機会を確保する努力義務が課されます。年功序列で人件費があがり、職務と報酬のバランスがとれなくなるということで、ジョブ型を取り入れたい企業は増えています。



――ほかにはどんな誤解がありますか。


例えば「仕事がなくなったら解雇できる」という誤解があります。法制度が変わったわけではないので、むやみに解雇はできません。争いになった際には、企業規模が大きいほど、裁判所や労働基準監督署から「他に任せられる仕事がないか検討したのか」と求められます。



――ジョブ型雇用のメリットは。デメリットもありますか。


企業としては、業務内容がはっきりしているため、より専門性の高い人材を必要なときに採用できること、社員一人ひとりの得意分野を生かすことができ、職務と報酬のバランスが取れることがメリットです。従業員としても合意したうえで労働契約を結ぶわけですから、納得性が高くなります。


デメリットとしては、その仕事がなくなったらどうするのかということですね。今の法制度は変わっていませんから、欧米型のジョブ型雇用は日本には馴染みません。


従業員からすると雇用がずっと続く保証はなくなっていくので、個人がキャリアを磨いていく必要が出てきます。


従業員側が、自分は何ができるのかをきちんとアピールし、企業では、現場のマネージャーも人事もそれをしっかり把握して、適材適所に人材を配置していくことが必要です。企業にとっては、全従業員のスキルを把握するのに時間もかかるでしょうし、難しさもあると思います。



――ジョブ型にはないメンバーシップ型の良さをどのように補っていったらよいでしょう。


結婚、出産、子育て、その後は介護とライフサイクルやライフイベントが年代ごとに変化していきます。


メンバーシップ型は、それに対して仕事の内容や責任の程度を変化させることで対応しています。


ジョブ型の良いところは、職務と報酬のバランスが取れていることです。メンバーシップ型の雇用維持の原則を取り入れつつ、ライフイベントによって職務と報酬を変化させ、雇用を維持していければ、職務と待遇のアンバランスを埋めていけると思います。


現在、育児休暇や介護休業といった制度を活用しにくい雰囲気の職場もありますが、ライフイベントの時期には一時的に短時間勤務やリモートワークで職務を明確化し、報酬はいくらというふうに契約で決めれば、そのようなこともなくなるのではないでしょうか。



――ジョブ型雇用に移行するための課題は何でしょうか。


経団連が実施したジョブ型雇用に関するアンケートによると、導入できない理由として、「職務記述書が作れない」という意見が多くありました。


先ほども申し上げたように、ジョブ型雇用は、どんな業務をするのかを細分化した「職務記述書」が必要です。これにより、職務を明確化し、それに見合う報酬を決めるわけです。今の日本は、職務内容が曖昧なことが多いのが現状です。チームで仕事をし、互いが補い合うということもあり、業務を細分化し厳密化することは難しいケースも多いでしょう。誰が職務記述書を作るのかということを含めて、しっかり整理していくことが大切です。



――運用面で注意することはありますか。


ジョブ型雇用はトップダウンで導入すべき制度ですが、業務の棚卸しなどはボトムアップでやらないとうまくいきません。現場のリーダーが業務を細分化し、それをもとに職務記述書を作ることになると思います。


どの企業でも優秀な人材の確保は課題ですから、これまでより職務をしっかり整理しないと、仕事に合う人材を確保できなくなるでしょう。自社の経営戦略としてどんな人材が必要か、職務の整理は現場主導で行う必要がありますね。ジャストフィットする人が採用できない場合、特に一時的な仕事や専門性の高い職種では、業務委託をすることも選択肢のひとつです。



■何のためにジョブ型雇用を導入するのかを明確に

北條孝枝氏



――ジョブ型が一般的になると、社員教育や育成などはどのように変わるでしょうか。


現在のように一括で新入社員研修や職位に応じた研修を実施し、教育することは少なくなっていくと思います。すでに取り入れている企業もありますが、個人がいつでも必要なときに研修できるeラーニングや外部研修が増えていくでしょう。例えば、業務に必要なスキルの研修を用意しておいて、その業務に就きたい人はそれを受けられるようにするといったことも考えられますね。



――新卒採用がなくなる可能性もありますね。


最初に言ったように、「Society 5.0」に必要とされる人材教育が推進されていきますので、採用もジョブ型に変化していく可能性はあります。新卒一括採用がすぐになくなるとは思いませんが、在学中に専門知識を身につけた学生を、インターシップ制度を利用してミスマッチをなくしていく採用方法のニーズが高まるでしょう。



――新型コロナ禍によって労務管理が難しくなる側面もありそうですが。


リモート勤務が増え、企業も社員自身もどうマネジメントするかが問題になっています。コミュニケーション、モチベーションの維持、勤怠管理、健康管理などを離れた場所で管理しなくてはいけない。当たり前なのですが、リモート勤務を希望するなら、社員自身が、自分でスケジュール管理ができ、自律して仕事ができることが必要です。


また、オフィスに出社しないので、通勤手当が非課税になるのか、在宅勤務手当をどうするのか、自宅での労災をどこまで企業が補助するのかなど、これまでにはなかった様々な課題がでてきています。


マネジメントの面で、これまで曖昧だった業務を規定してジョブ型雇用に移行するということも解決策のひとつではあります。



――ジョブ型雇用制度の導入を検討している企業へのアドバイスをお願いします。


日本の雇用制度の良さを生かしつつ、そこに欧米のジョブ型の要素を取り入れた、日本なりのジョブ型雇用が今後は浸透していくと思います。職務を細分化し報酬を決めて採用するジョブ型ではなく、メンバーシップで雇用し、役割によって報酬を決めていくというような方法が考えられます。


世の中が大きく変わり、職場の概念も変わる中で、時代の変化にスピーディに対応していかないと、企業の成長を維持しつづけるのは難しいでしょう。


グローバルに合わせて方向転換しなくてはいけない、メンバーシップの良い点も守らなければならない、という状況を踏まえ、ジョブ型雇用が流行っているからと飛びつくのではなく、本当に自社にとってジョブ型雇用が必要かどうかを見きわめ、中長期の課題として考えていくことがポイントだと思います。


どういう目的でジョブ型雇用に移行するのかを社員にはっきり示し、納得を得ながら進めていくことも大切ですね。



北條孝枝氏



北條さんのお話を聞き、終身雇用はもう崩壊と言われつつも、長年、メンバーシップ型雇用を継続していた日本では、そう簡単には方向転換できないのだなと感じました。企業の課題は山積みだと思いますが、ジョブ型雇用制度をきちんと理解し上手く導入できれば、問題解決できる可能性もあることもわかりました。今後、思い切った雇用システムの変革が必要になるでしょう。






プロフィール


北條 孝枝(ほうじょう たかえ)

株式会社ブレインコンサルティングオフィス 社会保険労務士 メンタルヘルス法務主任者

会計事務所での勤務後、株式会社ブレインコンサルティングオフィスとAPブレイン社会保険労務士事務所の双方に所属し、多くの企業の労務管理、業務改善サポートやメンタルヘルス対策などをサポートする。全国の企業から働き方改革に関するセミナー依頼を多数受け、セミナー講師としても活躍中。


株式会社ブレインコンサルティングオフィス[外部リンク]

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編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
取材日:2021年2月15日

         

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