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9フロアを1つに集約移転してコミュニケーションを改善!その秘訣は「壁」をなくして「道」をつくるボーダレス化 (株式会社ディスコ オフィス訪問[2])

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オフィス内のコミュニケーション不足はつまるところ損失につながる。


社内の連絡不足から無駄が発生するというような会計的な損失もさることながら、社内の知力を結集できずに事業展開に時間がかかってしまうのも、結局のところ機会損失に行き着く。


必ずしも、三人寄れば文殊の知恵となるわけではないが、円滑なコミュニケーションは「働きやすい」というだけでなく、ビジネス成長のカギになる。


だからこそ、例えば、アメリカのGoogleやFacebook、国内で見るとYahoo!JAPANやLineといった企業がオフィス内に実に多くの仕掛けを施して、社内コミュニケーションを活発化させているのではないだろうか。


今回取材した株式会社ディスコは、9フロアに分かれた旧オフィスから、1フロアに統合移転する過程で、社内コミュニケーション不足の課題解決に取り組んだ移転事例だ。移転前の課題と、それをどのように解決したのかについて、株式会社ディスコ 管理本部総務人事部 課長代理 馬渕淳一さんから伺った。



■コミュニケーションが生まれないという課題

.オフィスを移転される前に御社内で認識されていた課題について教えてください。


移転前に入居していたビルは、1フロア190坪程度の広さが全部で9フロアあり、すべて自社で使っていました。当初は部門ごとにパーティションで仕切って部屋を作る方針でいましたので、各フロアの中に少なくとも3部屋くらいはありました。


当時はそれが当たり前と思っていたのであまり意識していなかったのですが、フロアごとに、機能別、部門別に分かれているため、同じ会社ながら、それぞれが独立国みたいな感じがありました。よく言われたのが、フロアごとに「空気が違う」ということでした。


管理部門ならばあちこち入ることもありますが、そうじゃない人たちは用のないフロアには一切入りません。何年仕事をしていても入ったことのないフロアがたくさんある、見たことのない人がたくさんいる、という状態になっていました。


同じフロアの中ですらも、パーティションで区切られて、意図しないコミュニケーションは生まれない環境だったと思います。荷物もたくさんあって、雑然とした感じでしたし、『ちょっと雑談』なんてこともやりにくい雰囲気でした。


(株式会社ディスコ 管理本部総務人事部 課長代理 馬渕淳一さん)




■コミュニケーションを醸成するようなオフィスを作る

(インタビュー続き)


コミュニケーションを醸成するようなオフィスを作ろう!」というのが、今回の移転にあたっての最初のテーマでした。


一般社員を集めて作った移転プロジェクトチームでのブレインストーミングからも、「すぐに話ができるような仕組み」といったコミュニケーション上の課題についてのキーワードがたくさん出てきましたから、社内のみなが何かしら必要性を感じていたということだと思います。また、そこから何かしら事業の上でのブレイクスルーが生まれるのではないかという期待もありました。


(同)




■壁のない「ボーダレス」なオフィスに

.移転にあたり、もっとも重視されたポイントを教えてください。


社内プロジェクトチームを取りまとめる中で、最終的にはオフィスレイアウト上の一番のポイントは「ボーダレス」というキーワードにまとめられました。


今度のオフィスは、はじめから壁のないオフィスにしよう、「ボーダレス」にしようと。ボーダレスな環境にして、コミュニーションを醸成したい、という風に方針がまとまりました。


そこで、ほかの要件も合せてRFP(提案依頼書: Request For Proposal)にまとめまして、デザインコンペを行い、何社かにご提案いただきました。その中で際立った提案だったのが、今回依頼した株式会社ヴィスさんによる提案でした。


曲線を使った「道」があるデザインで、我々が要望した、壁のない配置で、ボーダレスな環境が成立していて、流れのある配置が気に入りました。


(同)




執務スペース風景

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(株式会社ディスコ提供写真※)


ゆったりとした曲線を描く「」の周囲に、デスクの島が並ぶ。


デスクの島の端に個人ロッカーが配置されている。ロッカーのキャビネットは高さ1,000mm程度と低く、視界は開けている。



■オフィス内から工夫して面積を作る

(インタビュー続き)


1,000坪 1フロアへ移転とはいっても、もともとは190坪 9フロアでしたから、フロアの合計面積は少なくなっています。本当はもっとぎゅうぎゅうになるはずだったところ、いくつかの工夫をして面積を作ったというところがあります。


ひとつには、会議室の削減


もともとあった会議室の数や量からするとかなり少なめにしています。その代わりに、執務エリアに打ち合わせスペースをたくさん確保したということがあります。


もう一つは、荷物の削減です。


もともと、書類や資材が多くある荷物持ちの会社でしたので、9フロアのうち1フロアが倉庫フロアでもありました。それをかなり強制的に削減し、資材で必要なものは外部倉庫に預ける、書類はスキャンしてデータで保存する、という施策を進めて倉庫スペースを縮小しました。それによって生まれたスペースがこの余裕のある配置にかなり役立っていると思います。


(同)




■「会議室」を大幅削減し「打ち合わせスペース」をたくさん作る

移転にあたりスペースを作るため、各フロアに複数あった会議室を削減し、代わりに、執務エリアにオープンな打ち合わせスペースをたくさん作ったとのこと。


複数フロアオフィスの1フロア化により、各フロア別に持っていた会議室や倉庫、コピー機等の重複する設備を統合してスペース節約するというのは、移転によるスペース効率化の一手法である。


しかし、同社の場合、もっと徹底している


「ボーダレスなオフィスを作る」という観点から、パーティションで部屋として区切られた会議室はわずか4室のみとし、会議室は基本的に来客用として、数を大幅に削減してしまった (ほかに役員会議室が1室と面談室が2室のみ)。


今まで行われてきた会議はどうしたのかというと、「会議室」の代わりに、執務エリア内に、予約不要でオープンな「打合せスペース」が数多く配置したとのこと。加えて、部屋になっている「会議室」の利用には、利用部門がコストチャージを支払わないといけない仕組みを採用し、極力、会議室を使うのではなくて、オープンな社内打ち合わせスペースを使うように誘導したそうだ。


それにより、移転前は会議室を予約して行われていた会議が、今ではその多くが執務エリアにある予約不要のオープンな打ち合わせスペースを利用して行われるように大きく変わった


また、数多く配置された打ち合わせスペースの、ほぼ常時3~7割程度が利用されているとのことで、移転時の課題であった、コミュニケーションの醸成に多く貢献している。



執務エリア近くにあるオープン打ち合わせスペース

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(株式会社ディスコ提供写真※)


写真はファミレス型の打ち合わせスペース。

予約不要で、簡単なテーブルと椅子のセットや、ファミレス型スペース、カフェスペースなど、さまざまな人数に対応できるスペースが数多く配置されている。



■執務エリアからパーティションをなくす

上の写真を見てもわかるように、執務エリア内にはパーティションが見当たらない


移転前は各フロア内も部門ごとにパーティションで仕切られていたそうだが、移転後は壁を無くし、基本的にパーティションのないオフィスに生まれ変わっている。


わずかに役員室3室と、役員会議室は個室として区切られているが、経営戦略上、非公開情報を扱う必要があるため、どの会社でも部屋になっていることが通常だろう。


ちなみに、部門ごとにデスクの島が作られているが、島と島の間は2m程度の間隔になるよう、かなり広めのレイアウトが取られている。デスク周りの空間を広くすることで、デスクそばの自然発生的な立ち話などのコミュニケーションが生まれやすいように配慮しているためだ。


また、執務エリア内はオープンな打ち合わせスペースが多く配置されていることもあり、執務エリア全体がセキュリティエリアとなっており、専用認証カードがないと立ち入ることはできない。


今回の取材で執務エリア内の写真が同社提供の写真になっているのはそのため。執務エリア内をオープンなコミュニケーション促進とセキュリティ確保の両面が配慮されている。



■どこでも仕事ができる状態を作る

.デスク周りの移転前後での変化を教えてください。


移転前は、幅1,000mmの机に袖机を付けて1,400mmの幅があり、個々人が巣作りをしてしまった結果、大量の荷物が山積みになっていました。


移転に当たり、社員がどこでも仕事ができるという状態を作っておいたほうが、その人のワークスタイルにもいいし、あちこちで仕事ができればコミュニケーションも取れる、また、単純に荷物のための家賃も払わないといけないわけで、荷物を減らし、巣作りをさせないような環境にしようということになりました。


個人が引っ越しで持っていけるのは段ボール1箱までと制限して荷物を減らしました。移転先のオフィスでは、袖机やサイドキャビネットは置かず、私物はロッカー(寸法: 幅450×高さ500×奥行450mm) に収納することにしています。帰る時には、机の周りはきれいにして帰るというルールです。この機会に社員のPCはノートPC化を進めていまして、自分のノートPCをロッカーにしまって帰るという形です。


席は部門単位で決まっていまして、その中での配置は部門ごとに判断しています。部門によって、固定席にしたり、フリーアドレスにしたりしています。実際は、おおよそ7割程度が固定的に使われているようです。デスク自体は連結型の岡村製作所の「マニホールド(Manifold)」を採用し、1人当たり1,200mm幅、奥行700mmを確保しています。


移転前は、1席に1台の内線の固定電話がありました。この内線の固定電話を無くし、社員に貸与しているスマートフォンを内線で使えるようにしました。今では内線固定電話は1部門に2台程度しかありません。今までは社内の連絡で内線電話を多用していたのですが、今は携帯に直接かけてもらうようにしています。結局、固定電話があると社員が仕事をする上で机から離れることができなくなるので、どこでも仕事ができる状態を作るために、この移転を機会に内線の固定電話の廃止を進めました。


(同)




部ごとの島の脇にある個人ロッカー

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(株式会社ディスコ提供写真※)


横から撮影。

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(株式会社ディスコ提供写真※)



■「道」というコンセプトの新しさ

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(株式会社ディスコ提供写真※)


こちらのオフィスは、ゆるやかな曲線の幅広い「道」(通路)が通り、机やローキャビネットも若干ずれたランダム性を持たせた印象的なオフィスデザインとなっている。


これは、オフィスデザインを担当した株式会社ヴィスによる「」というコンセプトによるものだ。『この道で人と人が出会い、傍にあるスペースで気軽に打合せができるようなコミュニケーションで溢れた働くひとが主役のランドスケープオフィス (株式会社ヴィス サイトより)』


(インタビュー続き)


企画段階では、ボーダレスが成立していること、流れのある配置が気に入っていました。「道」でコミュニケーションが生まれるという話がデザイン会社よりありましたが、まあそういうこともあるかなと思う程度でした。実際にこのオフィスに移転してきて、曲線の道を歩いていて、道端のキャビネットが低いので席にいる人と目が合って話が始まることもあり、後から、なるほどと思いました。


(同)




■移転後のコミュニケーション

.移転後はコミュニケーションが変化しましたか?


単純な実感では、今まであまり話をしなかった人としょっちゅう話をしているな、ということがあります。ビジネスの話もありますし、それ以外のことも。ベースとしてのコミュニケーションが非常に活発になっている。


私の場合は、総務なので、道を歩いていると誰かに呼び止められて、質問をよくされます。また、社内を歩いていると、よく立ち話をしていたりとか。そういう風景はよく見かけます。まだ移転から半年なので、それがビジネスにどう役立っているのかというのは、まだわからないところですけども。


会話は、キャビネット脇が多いですね。寄りかかって話す感じです。あとは、執務スペースの端々に作ってある打ち合わせスペースで、ちょっと座って話そうよ、という感じでそこで話しています。また、大きく作ったカフェスペースで部会議をやっている部門もありますね。


(同)




■オフィス内の通路と都市空間の街路の類似性

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(株式会社ディスコ提供写真※)


左手に打ち合わせスペースとコピーエリア、右手にデスクの島が並ぶ、同社の執務スペース風景。


オフィス内の「道」でコミュニケーションが生まれる、というコンセプトは新しい。オフィスの動線や災害時の避難路として十分な通路幅が確保できれば、それ以上に広くするよりも、執務スペースであったり、収納棚や、カフェスペースなどを設置したほうが機能的で合理的に思われるからだ。


これはオフィスづくりの話ではなく、都市設計の話になるのだが、街を活性化するためにどのように街を設計すればよいかという研究がなされている。中でも、デンマークの都市計画家のヤン・ゲールは、著書の「建物のあいだのアクティビティ(ヤン・ゲール著 Jan Gehl, 1971 , 北原理雄 訳, 2011, 鹿島出版会)で、どのように建物と建物の間を設計したら、そこに活発な活動やコミュニケーションが生まれるかという考察を行っている。


ヤン・ゲールは建物と建物の間にある道や公園などの公共空間で生まれる「ふれあい」に大切な可能性があると述べている。「日常の行き来の中で隣人や同僚としばしば出会う可能性があれぱ、それは気楽なくつろいだ交友関係をつくりあげ、維持する貴重な機会につながる(前著)といい、「ふれあいが育っていく苗床のような状態(前著)だという。このことは、オフィス内の部門と部門の間、デスクの島と島の間のコミュニケーション設計の話と、すべてではないにせよ、多く通ずるところがあるように思われる。


ヤン・ゲールは、建物と建物の間をどのようにすれば、ふれあいが育っていく苗床のような空間が作れるのかということについて、前述の書籍の中で多数の考察がされているのだが、オフィス内の通路のコミュニケーションに関係しそうな項目を以下にいくつかピックアップしてみよう。


    「建物のあいだのアクティビティ」(ヤン・ゲール著 Jan Gehl, 1971 , 北原理雄 訳, 2011, 鹿島出版会)よりまとめ


    ・高い壁ではなく低い塀で分ける
    『(街路と建物の間は)はっきりと区分されていると同時に近づきやすく、足を踏み入れやすいことが望ましい』(前著)


    ・高低差をつくらない
    『同じ高さに集中させる』『高さを三メートルずらして機能を配置しただけで、街路に沿って50~100メートル離したよりも、はるかに機能間の相互関係が生まれにくくなる』(前著) 『実用面でも心理面でも、階段が重大な障害になっていることが少なくない。誰でも同じ階の部屋を行き来するのはほとんど気にならないが、階段を上がり降りして別の階の部屋に行くのはためらうことが多い』(前著)


    ・街路・建物の両方からお互いを見ることができる
    『何が起こっているか見ることができる。これも、人を引きつける要因である。』(前著) 『見ることができれば、参加したいという気持ちが生まれる』(前著)


    ・曲線の街路にする
    『目的地までの距離が一目で見渡せるところを歩くのはうんざりする』(前著) 『長い直線の歩行者路を計画することは避けなければならない。屈曲し視野が閉ざされた街路は、歩いていて楽しい』(前著)


    ・街路にへこみがあって立ち止まるところがある
    『空間にベンチ、柱、植込み、木立ちがなく、寒々しくがらんとしていると、(中略)、足を止める場所を探すのがひどくむずかしくなる』(前著) 『屋外で時を過ごしやすい街では建物の壁がでこぼこしており、屋外空間にいろいろなよりどころがある』(前著)


    ・街路脇に座るところがたくさんある
    『よい街には座る機会がたくさんある』『座る機会があって、はじめて落ち着いて時を過ごすことができる。この機会がわずかしかなかったり、貧弱だったりすると、人びとはそのまま通り過ぎてしまう』(前著)




以上は、すべて都市設計の話なのだが、株式会社ディスコのオフィスを拝見したとき、まさにヤン・ゲールの主張するような「街路」がオフィス内に創り出され、コミュニケーションを生み出していることに驚きと感動を覚えた。



1フロアに集約し、高低差を作らず歩きやすい。壁を無くし、低いローキャビネットで仕切るのみとすることで、道を歩く人とデスクに座る人と目を合わせることが出来る。歩いていて単調ではない、ゆるやかな曲線の道。その道には多くのへこみがあり、立ち止まっての立ち話もしやすい。街路脇には多くの打ち合わせスペースが配されて、道で出会って椅子に座って話し込むことができる。


まさにここは「道」であり、オフィスそのものが「街」なのだ。








取材先

株式会社ディスコ
新卒者向け就職支援サイト「キャリタス就活」運営等、企業の人財採用に関するコンサルティング、採用広報活動の企画提案など、さまざまな組織の人財募集活動を支援している。



取材協力(オフィスデザイン)

株式会社ヴィス(デザイナーズオフィスサイト)

一貫性のあるオフィスデザインを軸にデザイナーズオフィス事業のリーディングカンパニーとして約3500件の事例を手掛ける株式会社ヴィス。オフィスデザインの事例やお客様の声など、オフィスデザインに関するコンテンツを多数掲載。




編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の写真を除く)
取材日:2017年3月7日



【注】株式会社ディスコ 執務エリア内は個人情報保護のため全域がセキュリティエリアとなるため、撮影スタッフは中に入らず同社に写真を提供いただいています。




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