住信SBIネット銀行 本社オフィス 執務スペース
住信SBIネット銀行は原則テレワークなしの全員出社勤務型です。
オフィスでの社内外コミュニケーションの活性化、執務環境の改善など、「働きたくなる」オフィス環境の構築を目的として、2024年4月、六本木一丁目の本社オフィスを、同年7月には中野駅前の新規オフィスをオープンしました。そのうち、今回は六本木一丁目の本社オフィスを紹介します。
前編
・エントランス
・会議室エリア
・セミナールーム
・執務スペース
・コンシェルジュセンター
・イノベーションエリア
・ラウンジ
・スタジオと役員用待合スペース
・ボードルーム
後編
・面積は2倍、会議室は3倍に
・リーダーシップで決めなければ良いオフィスは作れない
・青空を取り戻す!
・何でも頼めるコンシェルジュセンター
・オフィスの"意外な使われ方"
住信SBIネット銀行の本社オフィスは、東京メトロ南北線の「六本木一丁目」駅に直結。神宮外苑、東京タワーが一望できるワンフロア1,000坪超の「住友不動産六本木グランドタワー」19・20階です。
エレベータを20階で降り、受付に進みます。
見覚えのあるロゴの映った動くサイネージが見えていますが......
エントランスに足を踏み入れると、思ったより広い。早速、受付電話を探すものの、どこにもないなぁと思っていると...
サイネージは子会社のロゴなどに周期的に変わります。
受付脇のドアが開き、男性2名が近寄ってきます。「アスクルさんですか。今日はどうぞよろしくお願いします。」と、お声がけを頂きました。今日お話を伺う千田康匡さん(総務部長)と吉田祐一さん(総務部マネージャー)のお2人でした。
― 今日はよろしくお願いします。
早速ですが、ここの壁はちょっと変わったテクスチャーですね。
千田さん これは左官職人による"塗り壁"なのですが、よく見て頂くと、ブルーガラスの破片に気が付くと思います。リサイクルに出されたビン等を砕き、研磨して角を取って埋め込こみました。面積あたりの標準個数をおおよそ決めて、壁塗り時の材料に入れて頂き仕上げたものです。
― コーポレートカラーですよね。
千田さん はい。加えて、塗り壁、リサイクル瓶ともに「半製品」ということから、「未完」というオフィスのデザインコンセプトを表現しています。
― なるほど、「未完」というデザインコンセプトなのですね。
― そういえば、サイネージ横の「隙間」から、向こうの空間が見えるようになっています。
吉田さん はい。これは「未来を垣間見る隙間」です。壁をぐるっと回ると、隙間から見えていた現代的な空間が出現します。
― 窓の外のエレベーターシャフトをあえて見せているのですね。かっこいい!
吉田さん はい。この場所をエントランスにすると決めた際、高速で上下するシャトルエレベーターの動きを風景として使えないかと考え、設計を練りました。エレベーターの色味とマッチするよう天井を抜き、床も下げているので天井髙4m近い広がりのある空間になっています。
壁面のグリーンはアイスランドから持ってきたという色付けした天然の海藻。近づくと磯の香りがする!
さりげなく置かれたスツールも「未完」のストーリーに沿ったもの。背板や脚など木の部分が藍染め、時間と共に色が抜けていくそうです。
それではいよいよオフィスに入っていきます。
千田さん 来客会議室フロアの特徴は窓際回廊です。日本家屋の「縁側」同様、お客さまに外の風景をお楽しみ頂く設計です。また、会議室を窓沿いに設けると廊下から窓が見えず、廊下が暗くなります。お客さまをご案内する際、外の景色を楽しんで頂ければと思います。
千田さん ここはセミナールームとしても使える会議室です。シーリングアレイスピーカーホン「SHURE」というシステムを天井に設置しているのが特徴です。このマイクシステムは、手持ちマイクなしで会話しても、シーリングマイクが声を拾って拡声してくれます。声を張り上げなくても、会議室全体に参加者同士の声が鮮明に聞こえるという最新テクノロジーです。
シーリングマイクが自動的に声を拾ってくれる。
執務スペースに入っていきます。
入り口近くにはフォンブースが設置されていました。
千田さん コロナ禍以降、外部とのオンライン会議が一般化したため、需要が高まっているものです。オンライン会議のほか、上司との1on1でも利用されています。
千田さん 執務スペースから私物のコートやジャケットが丸見えですと、プライバシーが守られているか不安を感じる人もいると思います。また、ロッカーも出し入れの際に中が丸見えですと、こちらもプライバシーの確保を不安に感じやすいと考えました。そこで、コートハンガーは廊下に面さないように設計し、個人用ロッカーは出し入れの際に他の人から中が見えにくいように配置しました。以前のオフィスはハンガーを各自用意としていたのですが、見栄えが良くないため、すべてアスクルさんにて会社で用意しました。
さて、こちらが社員が働く執務エリアです。
使用されている椅子は【椅子コレ】の記事をご覧ください。
こちらは中野オフィスの執務スペース
千田さん 脇机(デスクワゴン)は設置しないため、足元を広く使える設計です。座席は部署ごとに必要数を割り当てて、誰がどこに座るかは部署長が決めています。人員の増員が多い会社のため、部署席数は現員数より多くなるようにしています。
執務スペースの角地に、ペンダントライトが下がり、革張りソファが配置された空間がありました。「コラボエリア」だそうです。窓の外には東京タワー。すごい、全部見える。夜に訪問できなかったのが残念です。
高層ビルの隙間から、東京タワーの根元部分まで見える好立地です。
― 夜はさぞかし良い眺めでしょうね。
吉田さん はい。ライトアップされる夕方からの東京タワーは特に綺麗です。東京タワーが見えるというオフィスはいくつもあると思いますが、頂点から足元まで見えるところは希少だと思い、眺望を活かすレイアウトにしました。
― モチベーション上がりますね。
吉田さん ありがとうございます。他社の方にオフィスを紹介する際、「東京タワーが見えるオフィスです」と紹介すると「オーッ、いいね」と言って頂けることがあります。また、家族やお客さまにオフィスを紹介する際も、たいてい「いいね」と言って頂けるので、社員のモチベーションも上がると思います。
こちらは19階のコラボエリア。仕事をしながら窓の外を見やすいようレイアウトを改修予定だそうです。
コラボエリアから執務スペースを見たところ
執務スペースの窓際は周回通路になっていて席を設けていません。これも窓の外の景色を潰さない工夫とのこと。ミーティングスペースやカウンターデスク、フォンブースなど、「社員が窓際に集まりやすい仕掛け」がされています。
こちらはコクヨのLeafy(リーフィー)という吸音パーティション。隣の部へ会話が聞こえにくいよう、社員情報を扱う人事部に設置されていました。
千田さん 当社社員の90%超は「即戦力」を期待された中途入社社員ですが、その業務分野では即戦力であっても、当社での経験値は少ないので、年齢に関わらず自由に身動きできるようになるには時間を要するという課題がありました。そこで、各社員の本業以外を専門的に担い、社員の本業専念化を図るため、コンシェルジュセンターを設置しました。
コンシェルジュセンターは、六本木オフィス/中野オフィスの両方に常駐し、社員の本業以外の仕事を担っています。例えば「取引先に書面を送りたいのだけど、どうしたら良いか」、「スマホを落としてしまった」、「印紙が欲しいのだけど、どうすれば良いか」等のとき、コンシェルジュセンターを訪問すれば気軽に頼めます。かつては、若手や女性が男性年配社員のサポート役になるような時代がありましたが、それでは本業に専念できない社員が出てしまうので、コンシェルジュセンターを設置したものです。
千田さん 部署別の郵便物ロッカーには赤白のマグネットをつけています。赤色は「郵便物が入っています」というサインです。アスクルさんのオフィスを見学した際に同様の仕組みを拝見して「これだ!」と参考にさせてもらったものです。
執務スペースの文具・コピー機コーナーには、補充や欠品時にコンシェルジュセンターへ連絡するよう案内が掲示されていました。
執務スペースに続き、カフェラウンジのようなエリアがありました。
吉田さん ここはイノベーションエリアです。社員なら誰が仕事してもいいエリアです。
千田さん ここで小さな飲み会をしてみようと、バーカウンターを作りました。先週にもちょっとしたパーティを開催しました。
吉田さん 執務スペースは、座席を固定的に運用している部がほとんどのため、隣近所がいつも同じ顔ぶれで変化がありません。そこで、周囲の顔ぶれを変えて、違った気分で仕事をしたり、コーヒーやお菓子を頂きながら仕事する際に有用と考えまして、このエリアを構築しました。
― このエリアにはBGMが流れているのですね。
千田さん はい、シーンとしていると、人の話し声や電話の声を無意識のうちに聞き取ってしまい、かえって集中しにくくなります。私は電車の中の読書が一番集中できる性格で、雑音の存在は大事だなと実感しています。
次に、社員の皆さんが食事や休憩をとる「ラウンジ」を見てみましょう。
ラウンジの一角にはセブンイレブンが入居しており、ここで自由に昼食やおやつを買ってラウンジで食べることができます。
吉田さん 六本木一丁目は就労人口に比して飲食店や売店が少なく、地上まで移動しても限られた時間で食事をとるには苦労します。そこで、工事開始当初は社員食堂の設置を考えましたが、当社は決まったお昼休みが無く、休憩時間もバラバラなため、利用時間が限られる社食ではニーズをカバーしにくく、色々と情報収集した結果、セブンイレブンが最適と考えて入居頂きました。
ラウンジはお弁当を持参して食べても良いですし、社外者と同伴入室し、コーヒーブレイク等に使っても良いことにしています。
中に進むと、窓の外の景色がすばらしい、かなり広い空間でした。
ちょうどお昼どきのため多くの席が利用されていましたが、密集感はありません。
吉田さん 移転前の本社オフィスには休憩室がなく、自席で昼食をとる人が多く周囲から「におい」が気になるとの声もありました。そうした声を背景に、執務スペースを多少狭めても、ラウンジに比較的大きなスペースをとりました。
― お昼どきは混雑しますか?
吉田さん 正午前後は混みますが、お昼時間をずらして空いている時間帯を利用する社員もいて、社員それぞれの好みで利用されています。セブンイレブンは午前8時~午後7時でいつでも使えるので、好きなときに利用できて便利です。
人が少ないとこんな感じ。イスを移動させてイベントを開催することを念頭に、すべて軽いものを選択したとのこと。椅子のクッションはIKEAで買える450円のもの。半年程度で模様替えついでに全部交換するので、耐久性は期待していないとのこと。なるほど、コストをうまく使うコツですね。
こちらは中野オフィスのラウンジ
― お一人様席がメインのように見えますが。
吉田さん 会社として個食を推進しているわけではないのですが、コロナ以降は1人で食べる方が主です。ニューノーマルというものかと。街中のカフェでもカウンター席が人気ですよね。
昔ながらの食堂のような4人掛け席としても1人で利用してしまい、使われない席が多く生まれます。空間を無駄にしないよう時代・トレンドに合った空間利用を心掛けています。
限定的だがファミレス席のボックスシートも用意されている。女性を中心に使われているとのこと。
千田さん ファミレス席と1人席の数のバランスは最後まで悩みました。私が若いころは上司が先だって部下をランチに連れ出す時代でしたが、今はそういう時代ではありません。一方、ファミレス席は他社でも人気と聞いていましたので、何席設置しようか、図面を引きながらデザイナーと議論を重ねました。
ファミレス席は奥の壁沿いに垂らしたピンクのカーテンがポイントです。カーテンが無いとのっぺりした壁になるのですが、カーテンドレープにより「柔らかさ」と「動き」が生まれます。これがファミレス席全体の雰囲気をしなやかにしています。
窓際ステージの天井にはスクリーンが設置されており、イベント時には電動で下りてきます。什器は女性でも簡単に運べるよう軽いものを選んでいるとのこと。
壁際には卓球台が。
千田さん ここでは卓球台を出して遊んだりしているのですが、家具は移動させやすいようになるべく軽いものを選び、現状回復しやすいように目印を床に付けています。
最後にゴミ捨て場です。ここも、ゴミ箱の並びなどいろいろと試行錯誤したそうです。皆さんが食事を終える14時頃にゴミ回収し、満杯になりにくいよう工夫しているとのこと。
防音性能が高いスタジオ仕様の部屋もありました。
撮影用の社名ロゴや、市松模様のバックパネル状のスクリーンなども準備されており、オンライン配信や写真撮影に使われるとのこと。天井はスポット照明に変えられています。
スタジオルーム(※)
千田さん 当社は無店舗のネット銀行です。お客さまはネットの向こうにいます。将来、オンライン配信などを使って、ネットの向こうにいるお客さまへ直接にサービスを訴求できるような取組みができればと考えてスタジオを作りました。
また、投資家向けのIRミーティングでも利用しています。このスタジオは役員フロアにあり、スピーカーの社長に「出番です」と声をかければパッと来て頂ける動線も考えて設計しました。
バーカウンターがある役員フロアの待合スペース
千田さん 当社は銀行業のため非常時でも業務を止めないことが求められており、ボードルームには、非常時の統合指揮所となるための各種設備を備えました。情報収集のためのテレビ受信、大画面でオンライン会議できる200インチディスプレイ等です。
100インチディスプレイが並んで設置されています。備付けの専用マイクを使用すると、天井カメラが発言者を自動的に判別してモニターに映写してくれます。
千田さん 並列2画面としたのは、会議卓のどちら側に座っても、自然な角度でディスプレイを見られるようにするためです。真ん中1つですと、ディスプレイから遠い人ほど前の席の方の頭が邪魔になりやすいです。
※
というところで、前編のオフィスツアーはここまでです。
後編では、お二人にこの移転プロジェクトについてインタビューしていきます。合わせてお読みください。
取材協力
編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
取材日:2025年1月15日
2016年11月17日のリニューアル前の旧コンテンツは
こちらからご確認ください。