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社員がほぼ17時に退社する100億円企業!元ハードワーク女性社長が挑む「超ホワイト環境」とは? ~株式会社ランクアップ代表取締役 岩崎裕美子氏インタビュー~

株式会社ランクアップ代表取締役岩崎裕美子氏

株式会社ランクアップ代表取締役岩崎裕美子氏



多くの企業で働き方改革が進む一方、劣悪な労働環境で社員を働かせる「ブラック企業」の存在も浮かび上がり、好調な業績の裏側で社員を酷使する働かせ方に批判が集まっています。そんな中、創業以来現在に至るまで右肩上がりの成長を続けながら、驚くべき「ホワイト環境」を堅持している会社があります。かつてはブラック企業のハードワーカーだったという、株式会社ランクアップ代表取締役 岩崎裕美子氏に、その秘密を伺いました。






■終電が「定時」のブラック企業と決別するまで


――前職の広告代理店でのお仕事について教えてください。


前職は広告代理店で営業の仕事をしていました。広告掲載媒体の開拓、そして出稿してくれるクライアントの獲得がミッションです。自社媒体もありましたが、それだけでは業績をキープできませんので、新しい媒体の開拓は広告主の開拓と同じくらい大切な業務で、社員全員、毎日遅くまで飛び回っていました。


――ずいぶん辛い思いをされたと伺っています。


もちろん就業時間は決まっているのですが、実質的には朝9時半から終電までが定時という状況でした。私は取締役でしたが、その「定時」すら超えて、タクシーで帰宅しなければならないこともしばしばでした。そうした長時間労働の支えによって、会社の収益は少しずつ上がっていきましたが、ビジョンや長期戦略的なものもなく、会社を維持すること、少しでも業績を上げること自体が目的になっておりましたので、従業員はハードワークを続ける動機を見出せないまま、疲弊して次々に辞めていってしまいました。


――典型的なブラック環境と言えますね。


新しく社員を採用しても、早ければ1ヶ月、頑張る人でも2年で辞めてしまう。つまり、何年かに一度というサイクルで、メンバーがそっくり入れ替わるような状況です。まさに離職率100%。社員の献身と挫折に支えられている、文字通りのブラック企業でした。


――その時の教訓が、今の会社に活きているわけですね。


ターニングポイントは、私自身が35歳になった時でした。相変わらず終電まで働く日々を過ごす中で、ふと、「このままずっとこの会社で働いていたら、結婚も、出産や子育てもできない」ということに気づいたのです。もし産休を取得し、その後復帰できたとしても、長時間労働ができなければ、私は会社で「戦力外」になってしまいます。でも、私は結婚も出産もあきらめたくなかった。一方で働くことは大好きでしたから、仕事も辞めたくなかったのです。この二律背反で、ずいぶん悩みました。


――その解決策が、起業だったと。


そうです。今の会社でできないなら、自分で会社をおこして、結婚・出産をしても働くことのできる環境を作ろうと考えました。そして2005年、37歳の時に株式会社ランクアップを立ち上げました。「女性がイキイキ働くことのできる社会」という理念は、このときに芽生えたものです。私だけでなく、これからともに働くことになる多くの女性にも、同じ歓びを与えたいと強く思いました。



■累計販売本数1000万本のヒット商品「ホットクレンジングゲル」を生んだ「3つのこだわり」

■累計販売本数1000万本のヒット商品「ホットクレンジングゲル」を生んだ「3つのこだわり」


――化粧品というジャンルを選ばれた理由は。


35歳当時、私は長時間労働と不規則な生活、管理職としてのストレスなどが重なり、肌がボロボロになっていました。取引先の会合でも、年齢相応に見ていただけなかったり、街で昔の友達と出会っても気づいてもらえなかったり、いろいろ悲しい思いをしていました。化粧品のつくり方や成分についてなど、知識はほとんどありませんでしたが、自分の肌を改善してくれて、有害な成分を含まない化粧品が欲しいという切実な思いがありましたので、それを自分で作ろうと思ったわけです。


――商品の開発はスムーズに進んだのですか。


それはそれは苦労しました(笑)。ランクアップの主力商品のひとつに、累計1000万本を売り上げた「ホットクレンジングゲル」というメイク落としがあります。「maNara(マナラ)」というブランドの最初の商品アイテムのひとつですが、この商品の開発には本当に苦労しました。そもそも、クレンジングでメイク汚れが落ちるのは、多くの場合「石油系界面活性剤」という成分の働きです。ところが、この成分は台所用洗剤に入っているのと同じようなもので、使えば使うほど肌が荒れてしまうのです。そこで、界面活性剤や着色料、パラベンといった有害物質を入れないメイク落としができれば、肌に優しく汚れを落とせる画期的な製品ができると考えました。


――汚れ落としの成分をほとんど入れずに汚れを落とすのは、大変でしょうね。


大変でした。ただ、どんなに費用や時間がかかっても、自分で納得のいかないものは作りたくありませんでした。協力いただいた開発会社さんと、何度も何度も話し合いました。最終的には発売日も遅らせて、ようやく完成した「ホットクレンジングゲル」を試作品から自分で使い続け、効果を実感したときのうれしさは、今でも忘れられません。



ヒット商品のひとつ「マナラ モイストウォッシュゲル」

ヒット商品のひとつ「マナラ モイストウォッシュゲル」



――販売は好調でしたか。


最初はフリーペーパーの小さな枠に広告を載せても、掲載初日は10件ほどしか問い合わせが来ませんでした。でも、良い製品だという自信がありましたから、使ってくださったお客様のうちの何人かでもリピーターになっていただければ、未来はあると考えていました。2回目以降もリピートをいただけるということは、私が感じた製品の素晴らしさを、そのお客様が共有してくれているということだからです。幸い、順調にリピーターを増やすことができ、業績も少しずつ上向いていきました。


――創業以来、11年連続で右肩上がりの成長をとげ、2017年には100億円企業の仲間入りをされました。その原動力は。


私たちが重視しているのは、「徹底的なこだわりで差別化された製品開発」「消費者目線に立って製品をわかりやすく伝える広告」「顧客の困りごとに的確に対応した親切丁寧なカスタマーサポート」という3点です。この「3つのこだわり」をWebや会報で発信しています。


――「ホットクレンジングゲル」をはじめ、徹底的にこだわって製品開発をしてこられた。


私たちは「流行っているから」「売れそうだから」という理由では製品を作りません。私たちの製品ポリシーは「自分のほしいもの」「自分の悩みを解決してくれるもの」を作ることです。既製品にはない特徴があるので、それ自体が差別化された商品ということです。本当に自分たちが使いたい製品を作ることがゴールなので、妥協しない、ウソがない製品が生まれるのです。


――広告については、もともとの専門領域ですから、本領発揮ですね。


いちばん大事なことは、製品開発とリンクした「わかりやすい特徴」です。もともと差別化されている製品ですから、「どこが良いのか」「どんな人がターゲットか」「どんな悩みを解決するのか」という特徴を明確にすれば、広告も作りやすくなる。あとは表現の問題で、開発者側が押しつけるのでなく、お客様目線に立って「こういう良さがある」とわかりやすく伝えることができれば成功です。


――3つめのサポートについては。


たとえば「ホットクレンジングゲル」では、チューブの口が小さくて最後まで使いきるのが難しいので、ハサミで切って中身を絞って使っている、というお客様の声がありました。そこで、すぐに規格を変更して口の広いチューブに切り替えました。それによって、チューブの中に指を入れ、最後まで使い切ることができるようになりました。お客様のご要望に的確かつスピーディに対応できるように、心構えと情報収集を徹底しています。



■ママに会社を辞めてほしくない

■ママに会社を辞めてほしくない


――ランクアップは、かつて苦しまれた広告会社とは正反対の環境を実現しました。


お話ししたように、出産後も女性がイキイキ働ける会社というのは、起業した時からのモットーです。当初は1時間ほど残業するのが多くの社員の勤務パターンで、そのことに大きな問題を感じてはいませんでした。


――それが「ほぼ17時退社」になった経緯は。


きっかけは、私自身が社内で最初に妊娠・出産したことです。産休をとり、復帰し、仕事と子育てを両立する中で、とても苦労をしました。仕事以外でもママはとても忙しい。残業はもとより、定時勤務でも仕事は大きな負担です。一方で、周りの社員からすれば、事情を知りつつも、仕事を残して早く帰っていくメンバーに割り切れなさが残ります。このモヤモヤを一掃するには、全社員が定時退社する決まりを作るしかないと考えました。


――それが「超ホワイト環境」を実現することになったわけですね。


「ホワイト企業」と言っていただけるのは光栄ですが、そもそもは、「ママになった社員に辞めてほしくない」という思いが出発点なんです。弊社は、会社の業務上、ほとんどが女性社員です。ということは、早晩、私に続いて結婚・出産ラッシュが起きるわけですから、準備をしておかなくては大変なことになると思いました。


中堅の社員は、会社にとって最も重要な戦力です。何より、本人が仕事の面白さを知っている。そういう人材が「出産するから」「子育てが大変だから」という理由で辞めてしまっては、かつての広告会社と何も変わりません。私が起業した意味も、半ばなくなってしまうと思いました。そこで、できるかぎり会社がサポートして、働くママを助けていこうと考えました。


――勤務実態と乖離してしまうようなことはありませんか。


当初は「残業させてほしい」という声も上がりましたし、定時では仕事が終わらず、四苦八苦する社員もいました。それを解決するために、徹底的に「仕事の棚卸し」をさせました。各自が自分の仕事を見直して、明確に優先順位をつける。必ずやらなければいけない仕事、比較的重要度の低い仕事、やる必要のない仕事、と分けました。すると、すべての仕事がマストマターというわけではなく、場合によってはやらないでいい業務もある、ということがわかってきたのです。そうして各自が仕事の枝葉を刈り取っていくことで、定時で仕事を終わらせることができるようになりました。



■「細切れの有休取得」などでもママを支援

■「細切れの有休取得」などでもママを支援


――17時に社員が帰れるようになったのはいつ頃でしたか。


じつは、東日本大震災が契機になっています。発災後すぐに定時を8時半~17時半にする「サマータイム制」にしたのですが、電力不足の問題や、それぞれが家のことを心配しているとわかっていたので、経過措置として、仕事が終われば30分早く帰ってよいと、17時退社を許可したのです。


――非常時の一時的な施策だったのですね。


やがてほとぼりが冷め、震災から3ヶ月ほど経って、勤務時間を17時半に戻そうとしたら、社員から「17時退社を継続してほしい」という希望がありました。3ヶ月の間に、集中して17時に仕事を終わらせる習慣ができていたので、それを継続したいというのです。人件費の問題もありましたし、業績の悪化も懸念されましたので、「売上が下がったときには17時半に戻す」という条件つきで、17時退社を継続することにしました。


――その条件は杞憂だったようですね。


おかげさまで、17時退社を始めた年は前年比140%の成長でした。17時に社員が帰る文化ができたのは、その年以降のことになります。この体制は、ママ社員にとってもうれしいもので、子どもの送り迎えに無理をする必要がなくなったことは、ママが会社に残ってくれる大きなファクターになりました。


――ほかにもユニークな福利厚生の取り組みをなさっているとか。


有給休暇は、よくある「半日単位」ではなく、「時間単位」で取れるようにしています。1時間刻みで最大6時間まで、社員の都合に合わせて細切れに有休を取得できます。子どもの学校で三者面談があるときに、その時間だけ有休にするとか、美容院に行きたいので2時間休暇を取るなど、手前味噌ですが利便性は高いです。子どもが小さいママは、短い時間の用事がたくさんありますから、それにフィットする休暇制度だと思います。


――それは便利ですね。


ほかにも、全社員を対象に、月に2回、足つぼの先生を招いて施術を行っています。ママ社員が参加できるよう、就業時間内で施術を受けられるようにしています。あとは、子どもが病気になったときのシッター費用を会社が負担するベビーシッター制度や、毎年5日のリフレッシュ休暇、書籍代や美術館・博物館代、手帳代の補助、スポーツクラブの助成など、さまざまな分野で社員をサポートする仕組みを導入しています。


――ワークスタイルの変化などにも取り組まれていますか。


2018年3月からフリーアドレスを導入しました。異なる部署の社員同士が自由に座って仕事をすることで、組織の横のつながりが以前より強化されました。今のところ良い成果が出ていると思います。ささやかなことかもしれませんが、弊社にとってはひとつの働き方の変化ですね。



■次は「パパも早く帰れる会社」ができてほしい

■次は「パパも早く帰れる会社」ができてほしい


――ランクアップは、とてもママが働きやすい会社だということがわかりました。


これは見通しというより願望ですが、声を大にしていいたいことがあります。弊社は定時退社を徹底して、「ママが早く帰れる会社」になりました。これからは、ぜひ、「パパも早く帰れる会社」が出てきてほしいんです。おそらく、ほとんどの会社では、パパは家の都合があるからといって、休んだり早く帰ることができないでいます。制度があっても、それが機能している例はほとんどないように見えるんです。



――男性の育児参加もかなり進んではいると思いますが。


それをもっと仕事の現場に落とし込んでほしいのです。パパとママが育児の日を週の中で手分けできれば、2人にとっても、会社にとっても、ハッピーになります。でも、パパはまだ早く帰れる体制になっていない。せっかく社会的な枠組みを作ったのですから、その器に中身を入れていただきたい。そうなれば、共働き世帯の働き方は劇的に変わるのではないでしょうか。



――ランクアップの今後のビジョンは。


国内で高く評価していただいているマナラ製品は、国外でもお客様の共感をいただけると考えていますので、今後、台湾に設立した子会社を拠点にアジア市場への進出に注力していきます。また、これまで社内向きに取り組んできたママ支援を事業化することにも可能性を感じています。とくに託児・保育分野は社会的ニーズも高く、参入する意義も大きいと考えています。


株式会社ランクアップ代表取締役岩崎裕美子氏

株式会社ランクアップ代表取締役岩崎裕美子氏








ハキハキと企業理念や国際化戦略を語る岩崎氏は、とても元気で明るい社長さんでした。「maNara(マナラ)」というブランド名は、岩崎氏の郷里北海道の言葉「なまら」(とても、すごくの意)のアナグラムだそう。ランクアップのコピー商品が出てきたら?という質問に、「どんなに類似品が登場しても関係ありません。私たちは常にお客様に選び続けて頂くブランドであり続けるために、これからも誠実に仕事をしていくだけです」とのこと。「ホットクレンジングゲル」がワールドワイドな共感を得る日もそう遠くないと感じました。







プロフィール


岩崎裕美子(いわさきゆみこ)

1968年北海道生まれ。富士短期大学卒業後、大手広告代理店を経て広告会社勤務。この時多くの通信販売の化粧品会社を担当。退職後、「女性が一生働きつづけられる企業をつくりたい」と、2005年株式会社ラインアップを設立。自社ブランド「マナラ」化粧品の開発・販売を行い、多くの女性から共感を集めている。ラインアップは、2013年東京ワークライフバランス育児・介護休業制度充実部門で認定を受け、2017年には売上100億円を達成した。


著書
ほとんどの社員が17時に帰る10年連続右肩上がりの会社(クロスメディア・パブリッシング)[外部リンク]









編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
取材日:2018年10月3日




         

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