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働き方改革を支えるオフィスのインフラ!東急電鉄が仕掛ける全国規模の企業向けシェアオフィスネットワーク「NewWork」

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画像提供:karandaev / Adobe Stock (※)



■「WeWork」を始めコワーキングスペースのトレンド


「コワーキングスペース」「シェアオフィス」と聞いて、どのようなイメージが浮かびますか。「スタートアップや個人事業主のための共用オフィス」でしょうか。実は、今、そのようなイメージが古いものとなりつつあります。



2018年初頭、グローバル規模でコワーキングスペース事業を展開する米国の大手「WeWork」が六本木に日本1号店を大々的にオープンしました。それを報じるニュースで、マイクロソフトやソフトバンクなど大企業が利用顧客に名をつらねていることに驚かれた方も少なくないでしょう。


近年、コワーキングスペースは企業の「第2のオフィス」としての存在感を高めています。決して一過性の流行などではなく、日本でも数年前から動きが起こっており、働き方改革の流れを受けて、利用企業も増加傾向にあります。利用している各社は、どのように「第2のオフィス」を利用しているのでしょうか。



■東急電鉄の運営する「NewWork」を取材


日本国内における法人向けコワーキングスペース事業の先駆けとしては、東京急行電鉄株式会社が運営する「NewWork」があります。2016年春に「法人向けサテライトシェアオフィス」と銘打ってNewWorkをスタート。2018年10月現在、直営店18店舗(近く北千住店、京都店、梅田店オープン予定)、提携店約100店舗、会員企業200社以上、会員数約7万人以上、月あたりの利用者延べ1万5000人以上という規模にまで成長しています。


法人向けコワーキングスペースとはどのようなサービスなのか、利用者はどのように活用し成果を上げているのか、最新の動向を取材しました。



NewWork渋谷(※)

NewWork渋谷(※画像提供:東京急行電鉄株式会社)



■全国に広がるオフィス

一般的なコワーキングスペースの場合、自由に利用できるのは契約した店舗のみ、ということが少なくありませんが、東急電鉄のNewWorkでは、会員は全国展開する直営・提携店舗約120カ所の施設をどこでも制限なく使用できます。



<NewWorkの直営店・提携店数>

<NewWorkの直営店・提携店数>

出典:NewWorkサイト 「NewWork」利用マニュアル(https://www.newwork109.com/pdf/NewWork_user_guide.pdf)より「みんなの仕事場」事務局作成



直営店は、Wifi環境、各席へのコンセント設置、会議室、テレフォンブース、複合機などが用意されており、予約不要で利用できます(会議室のみ要予約)。これに加えて、北は札幌から南は沖縄まで、約100カ所ある提携店を、利用料金内で自由に使用できます。提携店は、各地のコワーキングスペースやホテルのほか、カラオケボックスチェーンなどもあります。


利用する際は、直営店であれば、ライセンスカードか、登録済みのIC付き社員証を入退出時にリーダーに読み込ませるだけ。提携店でも、受付で利用の旨を伝え、同様に設置されたリーダーに読み込ませる方式です。カードさえあれば、午前中は都内の直営店、午後は出張先の提携店という使い方が予約不要でカードだけで可能。


また、カードのIDと紐づけて入退出の時間から滞在時間を記録できるので、会員企業側は、利用者の労務記録として活用することができます。これにより、社員が始業時間に近くの店舗で出勤を打刻、帰りに好きな店舗で退勤を打刻、というようにNewWorkを自社の「サテライトオフィス」のように利用することが可能になります。 自前のサテライトオフィスを持つよりも低コストで、リモートワークや柔軟な勤務スタイルを構築できるわけです。



NewWork横浜(※)

NewWork横浜(※画像提供:東京急行電鉄株式会社)



■従量制と定額制の2プラン

NewWorkの利用料金は、「使った分だけ」の従量制と、「使い放題」の定額制の2プランが用意されており、従量制は1ライセンスあたり月額基本料5,000円(8時間分の利用料金を含む)、9時間以降は1時間あたり700円が加算されます。たとえば月11時間利用した場合は、基本料金+3時間×700円で7,100円。ライセンスカードは複数名で使い回すことができるため、利用しやすいプランと言えるでしょう。


一方、定額制は、1ライセンスあたり月額30,000円。ライセンスカードの使い回しはできません。1人で月43時間以上利用するなら、こちらの方がお得という計算になります。


どちらの料金も、従来のコワーキングスペースと比べ、かなり低価格ですが、その秘密は徹底して無駄を省いたオペレーションにあります。まず、直営店は横浜店以外、人員が常駐しない無人式ということ。そして奇をてらったデザインなどを排除し、機能を重視したシンプルなレイアウトにしたこと。よくある無料ドリンクサービスもありません。 また、これも他のコワーキングスペースによく見られる、マッチングイベントなども実施していません。企業に対する「第2のオフィス」提供に目的を絞り込むことで、利用しやすい料金体系を実現しているのです。



NewWork自由が丘

NewWork自由が丘(※画像提供:東京急行電鉄株式会社)



■鉄道会社ならではの発想から生まれたオフィスネットワーク

さて、このようなNewWorkを会員企業の方々はどのように利用しているのでしょうか。 NewWorkの立ち上げメンバーのひとりである、東京急行電鉄株式会社の永塚慎一さん(事業開発室 プロジェクト推進部 イノベーション推進課 プロジェクトリーダー)に伺いました。



――どのような発想からNewWorkを立ち上げたのですか。


当時、私はビルの営業を担当していたのですが、あるとき取引先のIT企業で、パソコンさえあればどこでも仕事ができるという方々にお目にかかりました。私自身、通勤に1時間半くらいかけていましたが、それをきっかけに、毎日こんなに時間をかけて会社に行く必要があるのだろうか、と思いはじめました。たとえば、すべての会社員が週に1日テレワークして、電車での通勤をやめれば、平日の交通量は20%減る計算になります。それだけで通勤ラッシュが大きく緩和されるわけです。そこで、会社と自宅の間に、使い勝手よく利用できるオフィスがあれば便利じゃないかと考えたのです。


――通勤ラッシュからの発想は、鉄道会社の方ならではですね。


すべての会社がサテライトオフィスを持つことは、あまり現実的ではありません。それならシェアすればいいのではないか。そう考えてサテライト「シェア」オフィスとしました。サテライトオフィスよりも敷居を低くして、企業の方々が気軽に利用できるビジネスのインフラを作ろうという発想でした。これも鉄道会社だからこそかもしれませんね。



東京急行電鉄株式会社の永塚慎一さん(事業開発室 プロジェクト推進部 イノベーション推進課 プロジェクトリーダー)。ご自身の仕事場も当然NewWork。利用者の使い勝手重視のモデルを発想できるのも、ヘビーユーザーだからこそ。

東京急行電鉄株式会社の永塚慎一さん(事業開発室 プロジェクト推進部 イノベーション推進課 プロジェクトリーダー)。ご自身の仕事場も当然NewWork。利用者の使い勝手重視のモデルを発想できるのも、ヘビーユーザーだからこそ。(※画像提供:東京急行電鉄株式会社)



――企業がNewWorkを利用するメリットは。


これは大きく、人材の確保や採用力強化、生産性の向上、BCP(事業継続計画)対策という3つがあります。


まず「人材の確保や採用力強化」ですが、NewWorkを利用することによって、リモートワークや柔軟な勤務形態といった多様な働き方を低コストで実現できます。


子育て中の女性の事例を紹介しましょう。朝はお子さんを幼稚園に預け、家から1時間かかる本社に出勤します。昼休みに幼稚園に近いNewWorkに移動し、13時から午後の業務を開始。時短制度を利用して16時に退社して、お子さんを幼稚園に迎えに行きます。この方からは「この仕組みがなかったら仕事を続けられなかった」という声をいただきました。最近では、NewWorkによる柔軟なワークスタイルを、自社での採用時のアピールポイントにしている企業も増えていると伺っています。


次に、「生産性の向上」。利用者アンケートでは「業務効率が上がった」という回答が80%を超えています。「新しいアイディアの着想を得た」という回答も16%。「集中できる環境の確保」「通勤ストレスの緩和」「リフレッシュ効果」などによって効率が向上し、「残業時間の削減」などの効果も生まれているようです。会員企業とワーカー、双方にとってWin-Winの関係を構築できたのではないかと考えています。


3つ目は「BCP対策」。今年は各地で台風などの天災も多く起こりましたが、交通が混乱しているときには、通常の倍以上の時間をかけて会社に向かうより、近くのNewWorkを利用するほうが、仕事も進み、ストレスもありません。台風上陸日の利用率はとても高くなりました。天災にかぎらず、お盆や正月のように同時期に非常に多くの方が移動する際にもNewWorkは有効です。帰省先にNewWorkがあれば、休み明けは現地のNewWorkで仕事をしていただき、帰省やUターン時のピークを避けることができます。


――NewWorkがよく使われる時間帯は。


朝と帰宅前の利用が一番多いですね。特に朝に集中していて、6割以上の方が利用されています。次に帰宅前が40%。つまり、出退勤時の拠点として使っていただいているわけで、これは当初の想定通りですね。また「アポイント前後」という回答もあります。取引先に訪問する前の資料確認、訪問後の報告作成などに使われているようです。一方で、終日使われる方も20%近くいます。ソロワークに集中できる点が評価されているようです。


――利用の頻度はどうですか。


月2~3回という方が40%強、週一回程度という方が30%。よく利用いただいている方では、週に2~3日と回答された方が12%、ほぼ毎日という方も2%います。皆さん、それぞれのワークスタイルに応じて多様に使っていただいています。


――ユニークな利用法もありますか?


提携店にはカラオケボックスがあるのですが、カラオケ店の個室は社内の会議室よりも防音がしっかりしているうえ広さもあるので、社外会議室としてよく利用されています。夕方からミーティングや勉強会を開き、終わり次第懇親会、という使い方もされていそうです。ほかには、NewWorkの近隣にオフィスがある会員企業の方が、会社のフリースペースのように活用いただいていたり、という利用のされ方もあるようです。



――利用者の意識も変化していきそうです。


NewWorkの利用によって、「作業内容に応じて執務場所を選択できることが業務の効率化につながる」ということを実感したという声が6割くらいありました。「スケジュール設定が効率化できた」という声もあります。約16%の方は「業務における『量より質』の考え方が身についた」と回答しています。これはNewWorkが当初から目指してきたことですので、たいへん手応えを感じています。



東京急行電鉄株式会社の永塚慎一さん(事業開発室 プロジェクト推進部 イノベーション推進課 プロジェクトリーダー)

同社 永塚さん(※画像提供:東京急行電鉄株式会社)



――今後の展開は。


拠点を増やしてネットワークを強化していきます。会員の方からは「利用したいから、ここにも出店してほしい」という要望がよく寄せられ、その地域を訪れてみると、たしかに大きな工場や企業があってニーズがあると感じることもあります。


また、やはり会議室に対するニーズが高いので、貸会議室の運営会社と提携し、NewWorkのサイトから会議室をワンストップで申し込めるようにしたいと考えています。


――オフィスを軸としたビジネスのインフラを発展させていくわけですね。


インフラが整えば、その上にサービスを展開していくことができます。東急グループはスーパー、ホテル、百貨店、通信など様々なサービスを提供していますので、今後は連携し、会員の方々に役立つサービスを充実させていくことで、より利便性を高めていける可能性もあると考えています。



■ビジネスを支えるインフラストラクチャーに


NewWorkは、鉄道という社会インフラ事業を担う東急電鉄としてビジネスを下支えする、共用オフィスのネットワーク化という発想から生まれています。ビジネスパーソンにとって使い勝手よく利用できる仕組みを整え、あとは企業の目的に応じて自由に利用してもらう、というスタイルは、「切符を購入して駅に入場すれば、あとはどこに行くのも自由」という鉄道のサービスにどこか通じるものがあるようにも思えます。つまりそこにあるのは、「インフラとしてのオフィス」という考え方です。業務効率化を進める大きな可能性を秘めた「第2のオフィス」として、働き方改革の取り組みの第一歩として、NewWorkというオフィスのインフラは格好のサービスのひとつと言えそうです。






取材協力


東急電鉄株式会社


法人向け会員制シェアオフィスネットワーク「NewWork」






編集・文:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
制作日:2018年10月18日




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