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人生100年時代の働き方を問う「40歳定年制」 [ビジネスのコツ]

人生100年時代の働き方を問う「40歳定年制」

画像提供: joel_420 / Adobe Stock(※)


日本人の平均寿命は、男性80.98歳、女性87.14歳(2016年)と、いずれも過去最高水準を記録しました。これは香港に次ぐ世界2位の数字で、日本は国際的長寿国として世界から認知されています。


こうした流れを受け、政府は「人生100年時代構想」を打ち出しました。長寿化、高齢化で国民が100歳まで生きるようになった社会を想定し、全ての人が元気に活躍し続けられる社会システムを構築しようとする構想です。高齢者の雇用促進や定年引き上げ、リカレント教育プログラムの開発などの施策案が発表されています。


参考:「人づくり革命 基本構想newwindow(首相官邸)[外部リンク]



すでにメディアや国会審議などで「人生100年時代」という言葉を見聞きしている方も多いでしょう。実際に私たちが100歳まで生きるかどうか、実感がない方も多いかもしれませんが、英国のリンダ・グラットン教授の試算によれば、2007年に日本で生まれた子どもが107歳まで生きる確率が50%もあるそうです。将来「人生100年時代」が到来する可能性は、確実にあると言えるでしょう。


参考:「今10歳の日本の子どもは「107歳まで生きる確率50%」の真相newwindow(DIAMOND online)[外部リンク]



このような長寿化の傾向は、私たちの働き方にも少なからず影響を与えます。現在の高齢者だけでなく、将来に高齢となる現役世代の身の処し方に関しても、さまざまな議論が行われてきました。



「40歳で会社を辞めろ」とは言っていない


そのひとつが、2012年に国家戦略会議が提唱した「40歳定年制」です。2050年を見すえた長期ビジョン「フロンティア構想」のひとつとして出てきたもので、企業内に人材が固定化する現状を改め、雇用の流動性を高めることを目的とした政策提案でした。


労使の合意を前提としながら、管理職に変わる人が増える40歳での定年制もできる柔軟な雇用ルールがあり得るとしています。


そこでは、早期定年を選んだ企業には退職者への定年後1~2年間の所得補償を義務づけるほか、社員の再教育の支援制度を整備することを課し、代わりに雇用契約は原則有期とし、正社員と非正規の区分もなくすなど、非常に意欲的な内容の提言であると言えます。


参考:「雇用流動化へ「40歳定年を」 政府が長期ビジョンnewwindow(2012/7/7、日本経済新聞)[外部リンク]



提言を行った国家戦略会議フロンティア部会の座長である東京大学教授の柳川範之教授は、「40歳で会社をやめなさい、仕事をやめなさいと言っているわけではない」と、その真意を語っています。


柳川氏によれば、40年定年制は「75歳まで、やりがいを持って、自分のスキルを社会にいかして働くための考え方、ひいては日本経済・社会の活性化につながる提言」であり、どうしたらみんなが長く働けて、社会、経済全体がうまくまわっていくのかということの答えです。


急激に変化するビジネス環境においては、個人の技術やスキルは、あっという間に陳腐化してしまいます。能力が高くても、それがもう必要とされない能力であるがために失業率が上昇し、生産性がダウンしてしまうのです。


会社に頼らずに、働き方、学び方、コミュニティ、そしてアイデンティティを再構築していく。会社がうまくいかなくなっても、潰れても、安心して働けるように、何歳になっても能力を開発していける社会が、40年定年制という提言の目指すものなのです。


参考:「75歳まで元気で働くための「40歳定年制」newwindow(社会人材学舎)[外部リンク]



40歳をメドにして、労働者は自分のスキルを見直し、磨き直して、転職も含めて将来に備える。そのためには一時、仕事をしないで勉強する期間を国や企業が設ければいい、と柳川教授は言っています。個人がひとつの会社に依存することなく、しかも長く働き続けるための社会の仕組みなのです。



大胆な早期定年の提言に議論百出


定年の延長が検討される中で、逆に定年年齢の引き下げを叫んだこの提言は、当時とてもセンセーショナルな主張と注目され、多くの議論を呼びました。


「この構想を推進すれば、お飾り的ポストについている管理職は降格されることになる。一方で、専門性の高い仕事を担当しているベテラン社員は賃金が上がる。組織にしがみつくことではなく、自らをより活かす道を示す制度」


「若年層の雇用創出効果が大きい。正社員の入口を広げ、社会全体として若い世代に仕事を通して成長のチャンスを与える効果がある」


「40歳定年は一律適用ではなく、40歳を理由にしてクビにはしない。昇給や役職の上限年齢だとする。こうすると、30代の働き盛りの世代を対象とした巨大な転職市場が生まれる。労働市場の流動化を進めるには優れた仕組み」


「首を切りたいという企業の願望をうまく取り入れた制度。出来が悪いと自己認識している社員がいたとしたら、40歳の査定で首を差し出して待っていなくてはならなくなる。それはあまりにも悲惨」


「安易なリストラ・首切りの口実に使われるのではないか。雇用の流動化論は美談として語られるが、「流化」したとしてもその後で「動化」するかどうかは怪しい」


参考:「40歳定年制の賛否両論newwindow(WEBRONZA)[外部リンク]



このように賛否両論がある中、短兵急な改革案でなく「将来ビジョンとして各府省が適宜参考にするなどして活用してほしい」という位置づけにあったこの提言に対して、経済界や労働団体が大きく反応することはありませんでした。「こういう考え方もある」という扱いで、実現不透明なまま現在に至っています。



今、再び評価されはじめた40歳定年制


しかし、ここ最近、40歳定年制が再び議論の俎上に上がるようになってきています。


ビジネスパーソンの「学び直し」、いわゆるリカレント教育の重要性がいわれ、スクール・講座に積極的に参加するミドル層が増えていることや、かつての安定企業に経営破綻や身売りの話が浮上して、長期に渡って企業に雇用される保証はないという実感が増しているなど、私たちの働き方を見直す機運が高まる中で、40歳定年制を再評価しようという動きが出てきているのです。


昭和女子大学の八代尚宏特命教授は、40歳定年制を「非常に合理的な意見」として評価しています。


「新卒から40歳までの雇用は保障するが、そこから先は自己責任。40歳までにスキルを磨いて労働市場の中でひとり立ちできるように頑張るのです。能力を磨けばそのまま同じ会社で雇用され続けてもいいし、より良い条件の会社に転職もできる。労働経済や労働法の専門家からは絶対に出てこない発想です」


出典:「「40歳定年制」は非常に合理的な意見newwindow(日経ビジネス)[外部リンク]



元エルピーダメモリ社長でサイノキングテクノロジーCEO、坂本幸雄氏は、日本的人事制度の欠陥を指摘し、40歳定年制を議論する必要があると説いています。



「40~50歳が事実上の定年となることにより、常に若い従業員が力を発揮できるようになる。一線級で働いているときに会社を出れば好条件で転職できるだろうし、活躍もできる。組織の若返りを図らず、年功序列で上位ポストに上り詰めた高齢者が経営しているような組織はいずれ経営がもたなくなる。40~50歳を一つの区切りにすれば、大企業が必要以上に人材を抱えこむことはないし、成長産業に人が流れ、新産業が活気付く可能性もある。今の日本は人手不足が深刻で、40~50歳でリストラ対象になったとしても、仕事がなくて困ることはない。今こそ40歳代定年制の議論をすべきである」


出典:「日本企業復権の劇薬「40代定年制」newwindow(Wedge)[外部リンク]


一方で、日本特有の労働市場の性格から、慎重なスタンスを取る人もいます。起業コンサルタントの鈴木希一氏は、40歳定年制についてこんな危惧を述べています。



「企業で経営を担えるかどうかは40代で決まるため、それ以外の人たちに次の人生プランを考えさせるよう、役職定年を40代に設定すべきという意見があります。20代で身につけたスキルが40歳以降も通用することはほとんどありません。40歳前後で自身の仕事を見直した方が幸せだという説です。しかし、これが米国であれば、転職市場が成熟し、受け皿がありますが、日本には雇用の流動性が低いという問題があります。雇用の流動性を高めずに、社員の退職を促す制度を導入しても、リストラ策として使われ、人材使い捨てを助長するだけです」

出典:「役職定年制の功罪newwindow(定年起業のためのウェブコンサルティング)[外部リンク]


やはり評価は分かれていますが、40歳定年制を必要とする社会的土壌が、年を経ても変わらずに存在していることは確かなようです。



「定年」がなくても、日々の研鑚は必須課題


現実問題として、40歳定年制が企業で採用される可能性は低いでしょう。私たち個人はもとより、企業も国も、新しい仕組みへと大規模な改革を迫られることになるからです。よほど大きな動機、必然性がなければ、社会が一斉に動くことはないかもしれません。


ただし、40歳定年制を巡る議論の中で、私たちが考えなければならない課題があるということもまた、明らかではないでしょうか。


  • 「学び直し」をしないと、スキルは陳腐化して使えなくなる
  • 企業が永続することはあり得ず、終身雇用の保証はなくなっている
  • 定年が70歳に引き上げられた時、同じ組織で50年近く働くことは難しい


これらのことから、私たちは「ひとつの企業に頼らなくても生きていけるように、日々、自己研鑽してスキルアップを図らなければいけない」という行動指針を得ることができます。どんな働き方をするのが自分にとって幸せか、真剣に考えるのであれば、期間を区切ってスキルアップのための努力をするのは、むしろ当然なのではないでしょうか。


「定年が来るから」でなく、人生の中で自分がステップアップをするために「目標」として40歳を意識するとしたらどうでしょう。それほど無謀なことでもないと思えます。




目前の「人生100年時代」を豊かに生きていくために、あなたはどうしますか?






編集・文・写真:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
制作日:2018年6月19日




         

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