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ビジネスパーソンなら、誰しも、チェックリストを作るように言われたことがあると思います。
「でも、完璧なチェックリストを作るのは時間もかかるし、面倒くさい。いちいちチェックしていくのは、作業量が増えて、なんだか非効率的な気がする。世の中、どんな仕事も簡素化の方向に向かっているのに......」
そんなふうに思ってしまう方は、チェックリストがないことの怖さを知らないと言えます。
できる人は、チェックリストを活用することが、仕事の効率化につながることにちゃんと気づいています。
今回は、チェックリストを活用するメリットと取り入れ方について紹介します。仕事量が多くて残業ばかりな毎日に嘆いている方は、もう一度、チェックリストについて考えてみてください。
ビジネスの現場では、さまざまな業種でチェックリストが活用されています。
人の命を預かる旅客機のパイロットも、もちろん、フライト時には毎回厳しいチェックを行い、安全に飛行ができるようにしています。毎日行うことだからと記憶に頼ったりはしないのです。
医療業界でもチェックリストの導入が推奨されています。世界保健機関(WHO)が発表した「安全な手術のためのガイドライン2009~安全な手術が命を救う」には、手術の時期に応じた複数のチェックリストが掲載されており、このチェックリストを導入した病院では入院中の死亡率と合併症の割合が減少したという結果も出ています。
参考:公益社団法人日本麻酔科学会
「安全な手術のためのガイドライン2009~安全な手術が命を救う」(pdf)[外部リンク]
では、チェックリストにはどんなメリットがあるでしょうか。
仕事には、毎日必ず行う業務、曜日や日にち、月などによって発生する業務、突発的に発生する業務などがありますね。毎日同じことをするルーティーンな業務は、「完全にパターン化しているものだから、今さらチェックリストを作る意味はない」と思うかもしれません。ところが、実際には、ルーティンワークは慣れている業務こそ、集中力が失われて、うっかりミスが発生しやすいのです。ミスが多ければ、あなたの評価は下がってしまいますし、修正のために何度も同じ作業を繰り返すことになって、効率も悪くなりますね。
そんなとき、チェックシートがあれば、モレや誤りなどを未然に防ぐことができます。
意外に思うかもしれませんが、優秀な人ほど、ケアレスミスを多く犯す傾向があるようです。これは多くのカウンセラーや精神分析医が調査研究をしています。
参考:ライフハッカー
「頭のいい人が失敗してしまう8つの理由」(pdf)[外部リンク]
優秀な人は抽象的思考能力に優れているので、説明が足りなくても、それを自らの頭で補って、理解できます。しかし、それが仇となって、時として「早とちり」や「思い込み」ともなるのです。それがケアレスミスの原因です。
チェックリストは、早とちりや思い込みによるミスを防止するために効果的です。元来、優秀な人がチェックリストを活用すれば、まさに鬼に金棒といったところでしょう。
業務中、突発的に、急ぎの仕事が入ることはよくあると思います。今までやっていた業務を途中で止め、その仕事のほうを優先することにします。ところが、何から手を付けていいのかわからず、混乱してしまい、思ったよりも時間がかかってしまいました。その後、中断していた業務に戻り、いつも通り業務を進めたつもりが、そこでミスをしてしまったのです。
人間の記憶は、記憶が保たれる時間によって、長期記憶と短期記憶の2種類に分類されます。とりあえず必要だったり、興味があったりするものは短期記憶に保存されますが、この短期記憶は、数十秒~数分間しか保持することしかできないと言われています。また、アメリカの心理学者 G.A.ミラーによれば、人間が一度に把握し操作できる情報の数は約7±2個しかありません(この数はマジックナンバーと言われています)。
つまり、業務の途中で他のことを行うことにより、把握する情報の数が増えてしまうと、それまでやっていた業務についての記憶を保持できなくなってしまうわけです。慣れているから目をつぶっていてもできると思い込んでいたような業務でも、うっかりミスが発生してしまうことがあるのは、このためです。
業務中に電話がかかってきたり、人に話しかけられたりして、ほんの一瞬、作業を中断しただけでも、こうしたことは起こりえますから、自分は絶対にミスしないと断言できる人を信用することはできません。
どんな業務でもチェックリストを活用して手順を確認するのが有効なことは、こうしたことからも明白なのです。
チェックリストでやるべきことが明確になると、仕事の効率化につながります。毎日行っているルーティンワークは、もう改善の余地がないものと思い込みがちですが、惰性で仕事をしてしまっていないかどうか、今一度考えてみましょう。
仕事の内容をあらためて見直してみれば、「この3つにチェックが入ったら、4の作業は不必要じゃないかな......」などと、改善の余地はきっと見つかります。チェックリストでチェックしていけば、必要なこと、不必要なことが明確になるので、最良な仕事手順に組み替えることができ、仕事の効率も上げることができるのです。チェックリストがあれば、仕事の進捗状況も一目でわかるようになり、すでに終わっている作業を繰り返し行ってしまうことがなくなります。
チェックリストは、人に与えられるより、自分で作ったほうが仕事の効率化につなげやすくなります。
チェックリストを作るのは簡単です。
まずは、その業務の手順を時系列に沿って書き出してみましょう。紙に書き出しても構いませんが、あとで挿入などを簡単にできるように、パソコンの使いなれたソフトを使ったほうがいいでしょう。思いつくかぎりの手順をすべて書ききったら、先頭にチェックできるように□のマークを入れれば、できあがりです。
せっかくチェックリストを作っても、作っただけでは役に立ちません。慣れている業務だからといって、せっかく作ったチェックリストを見なかったり、項目をろくに読まずに機械的にチェックだけをしてしまっては意味がないのです。
チェックリストをちゃんと使っていくうちに、加えたほうがいいと思われる項目などが見つかると思います。そのたびにリストを編集し直して、適切なチェックリストに仕上げていきましょう。
FAX送付チェックリスト、郵便投函チェックリスト、持ち物チェックリストといったものは、業種を問わず役に立ちます。FAXやメール、郵便などの送信作業は、個人情報漏えいなどの問題を起こしてしまうリスクがありますから、とりわけチェックリストが必要です。注意事項などがあれば、それもチェックリストに書き込んでおきましょう。例えば「A社にFAXする場合は15時以降必ず総務課に知らせること」といった注意事項を書き込んでおけば、連絡のうっかりミスも防止できます。
想定できないような業務が突発的に舞い込んだようなときでも、あわててその作業にかかるのではなく、まずは落ち着いて、やるべきことをリストアップし、チェックリストを作る癖をつけましょう。
たとえば、あなたが緊急会議のコーディネーターだったとしましょう。
会議室の手配、参加者への連絡メール、出欠確認、参加者名簿の作成、会議資料の作成などの作業を手順良くこなしていかなければなりません。さらに、会議資料を作るために、別な部署にデータを取りにいかなければならないものとします。
会議が15時から始まるとしたら、資料をセット、配布する時間も考えて14時30分までに資料の作成が終わっていなくてはいけません。データを取りに行くのに30分、資料作成に1時間と考えたら、13時には出なくてはいけません。
そのように時間系列で組み立てて、チェック項目を作っていきます。
その過程で、他の人に手伝ってもらえる業務も見えてきます。手伝ってもらうために細かく説明しなくても、チェックリストを見せて説明すれば、何度も聞き返しされたり、ヌケが出たりすることなく業務を進めることができます。
もし、チェックリストを作らずに作業を進めようとしたら、どうなるでしょうか。
急いでいるからといって、思いつきで仕事を進めてしまうことになり、作業の順番がメチャクチャになったり、やりかけの作業をいったりきたりしたりして、効率が悪くなるばかりか、モレが発生する可能性が高くなります。周りの人も何を手伝えばいいのかわからず、ただ時間だけが過ぎていってしまうでしょう。
急ぎのときに、チェックリストを作るのは遠回りのように感じるかもしれませんが、「急がば回れ」という諺もあります。チェックリストがないと、余計に面倒なことになってしまう場合のほうが多いのです。
そして、このとき作成したチェックリストは、必ず保存しておきましょう。また似たような事態が発生した場合に、それを呼び出せば、一からチェックリストを作らずにすみます。
チェックリストをちゃんと活用していないと、大きな損をしてしまうことがおわかりいただけたでしょうか。
ぜひ、あなたもチェックリストを活用して、職場の生産性を上げていきましょう。
編集・文・図:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
制作日:2018年5月21日
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