※シリーズ記事 ほかに「[中編]オフィスデスク実験: 幅 80cm ~ 140cm で使い方はどう変わる?実地シミュレーション ~いざ実験へ~」「[後編]オフィスデスク実験: 幅 80cm ~ 140cm で使い方はどう変わる?実地シミュレーション ~そして結論~」
オフィスデスクを購入する際に、いったいどのくらいの広さのデスクを選べば良いのだろうか。世の中で販売されているオフィスデスクの仕様を見ると、幅80~160cm、奥行き60~80cmあたりのものが多い。「みんなの仕事場」の取材で訪れるオフィスの場合でも、多く見かけるのは幅100cmや120cmで奥行き70cmのデスクだ。
デスク面は広いに越したことはないが、オフィス(または書斎)のスペースには限りがあるので、デスクの広さはあまり大きくすることはできないのが一般的だ。
デスクの横幅を狭くすればそれだけ多くの席数が確保できるので、仕事のしやすさと人員の配置数の調整は企業の総務担当者の悩むポイントの一つでもある。
この点は法律に規定がある。労働者の安全と健康を確保し快適な職場環境の形成を促進する目的で「労働安全衛生法」という法律が施行されており、事務所については、厚生労働省令にて「事務所衛生基準規則」が定められている。
そこによると労働者1人について10立方メートル以上を確保することが定められている(第2条)。天井高を2.5mとすれば、4平方メートル(縦2m×横2mの面積)となる。これには設備分の体積や天井高4m以上の高さの空間を含まない規定なので実質的な執務エリアの広さと考えて良い(デスク周りの通路部分は含まれる)。そのため、この最低ラインをクリアしつつ、オフィス内の人員配置数の調整に頭を悩ませているのが多くの企業では総務部だったりする。
では実用的にはどのくらいのデスクの広さを確保すれば、広すぎず狭すぎずの快適な仕事環境になるのか、いろいろな角度から検討してみた。
(※本稿では、議論の複雑化を避けるため、デスクの天板上の広さについてのみ検討する。デスクには天板上での事務作業をする台としての機能に留まらず、片袖机等、収納機能もあるのだが、収納に関しては別な記事で検討していきたい。)
・オフィスデスクはどのくらいの広さのものが良いのか
・(その1) パソコンの横幅から考える
・(その2) 人間の肩幅から考える
・実地シミュレーション開始
・想定している働き方(ワークスタイル)
・[実験] デスク幅[80cm][100cm][120cm][140cm]それぞれで何が置けるかの実験(画像付き)
・[考察] 仕事に必要なデスクの広さはワークスタイルで決まる
・[★結論★] デスクの横幅ごとにできる作業(横幅80~140cmそれぞれの場合)
・[補論1] 机が常時広くなくて良い場合
・[補論2] デスクの横幅で使いこなせる最大幅はどれくらいか
☆★実験結果をすぐに見たい人はこちらをクリック([後編]の結論へ飛ぶ)★☆
今のデスクワークは、パソコンを使うのとイコールと考えて間違いはない。また、最近の事務用パソコンは、コンピューターチップの性能向上もあってノートパソコンに切り替わりつつあり、ペーパーレス化も進んできているので、ノートパソコンの横幅くらいのデスク幅(とても狭い)でも何とかなるような気もしてくる。
そこで想定するノートパソコンの大きさだが、持ち運びに便利なノートパソコンという条件では、画面を閉じたときに紙のA4サイズに近い、液晶画面11~13インチのモデルが主流だろう。液晶画面11~13インチのノートパソコンであれば、横幅は30cm程度だ。
もう少し画面の大きなノートパソコンということであれば、画面を閉じたときに紙のB4サイズに近いか少し大きいくらいの、液晶画面15~16インチのモデルになるだろう。液晶画面15~16インチのノートパソコンであれば、横幅は38cm程度だ。
ノートパソコンの横幅が入るだけの幅として最小40cm程度あれば仕事は可能なのかもしれない。確かに、比較的狭いカフェのカウンターテーブルでも仕事ができるのはそうしたわけだろう。
とはいえ、人間にはノートパソコンの横幅より広い肩があるので、あまりに1人当たりの机の幅が狭いと、隣の席の人と肩が当たってしまうことになる。そこで、肩幅を基準にすると、どれくらいの幅が最小になるか調べてみた。
肩幅のデータとして、入手しやすいところで、2007年に公開された社団法人人間生活工学研究センターによる約6,700人の日本人の身体寸法データ(*1)があったので、それを参照した。そのデータによると肩幅間隔は平均値426.96mm 標準偏差 34.75mmとある。つまり、肩幅が正規分布に従うとすると、約36~50cmに全体の95%は収まる計算になる。とすれば、肩幅50cmを基準にすれば、大半はカバーできるといえるため、本記事で検討する基準としては良さそうだ。
*1) 平成18年度経済産業省委託事業「人間特性基盤整備事業成果報告書」社団法人人間生活工学研究センター (肩幅は、No.82のデータ 。指極は、No.102)
では、肩幅50cmを基準とすると、デスク横幅が50cmでは、お隣に座る同僚といつも袖触れ合う仲になってしまって気分がよろしくない。とすると多少姿勢を変えるなど体の動く余地を見込むと、最小でもデスク横幅70~80cmは欲しいのではないか。横幅70cmのデスクはオフィス家具メーカー各社から発売されるデスクとしてはラインナップにあまり含まれないことから、本記事では、オフィスデスクの検討すべき幅として80cmから検討することにする。ちなみに、隣に誰もおらず、単独で使う条件であれば、横幅50~60cmでも問題はなさそうだ。個人用パソコンラックの横幅が60cmのものを多く見かけるのもそうした理由からだろう。
というわけで、以降実際に、横幅80cm, 100cm, 120cm, 140cm のそれぞれの場合で机上にどれだけ物が置けて、どんな感じで仕事ができそうかを実地シミュレーションしていきたい。
今回、奥行きに関しては、現在一般的に多いデスクの奥行き70cmで実験を行っている。70cm以下の奥行きのデスクを検討する際には、奥行き方向を差し引いて見てほしい。例えば60cmの奥行きであれば、85%ほど短く見積もる計算になる。
用意したのは、幅140cm 奥行き70cmのこちらのデスク。
(今回の実験では、左右に見える脇机とサイドキャビネットは実験の対象外とする。脇机(天板が机と同じ高さで並べて使うことが出来るもの)を使用しているケースも少なからず存在すると思われるが、例えば一般的な脇机(横幅40cm)をデスクと併用する場合、脇机の横幅40cm分だけ、デスク天板の拡張と考えることが出来る。その場合、ベースとなる机横幅が120cmであれば、+40cmとして、160cm横幅のデスクとして考えられる。)
今回の実験で想定している働き方(ワークスタイル)は以下の3パターンだ。
(1) A4サイズノートパソコン派 | A4サイズのノートパソコンで仕事をする |
---|---|
(2) デスクトップパソコン派(ワイド23インチ液晶モニター) | デスクトップパソコン(床置き)、ワイド23インチ液晶モニターで仕事をする |
(3) A4サイズノートパソコン+外部デュアルモニター派 | A4サイズのノートパソコンと、ワイド23インチ液晶モニターのデュアルモニターで仕事をする |
読者の皆さんのワークスタイルもこのどれかに当てはまるのではないだろうか。
机上に置く物は、ほかにもビジネス電話機や、A4サイズの紙資料、A4ボックスファイルなども用意した。以下が一覧だ。
液晶パネルを囲むベゼル部分の厚みにもよるが、「みんなの仕事場」で調べたところ、19インチ液晶モニターで横幅41cm前後、ワイド27インチ液晶モニターで横幅63cm前後が多かった。ちなみに奥行きは、モニター脚によるもので23cm前後が多かった。読者の方でこれらのサイズの液晶モニターを使用している方は参考にしてほしい。
※机上配置物の横幅は実験で用いたものの実測値。製品によっては実験で用いたものより多少サイズが前後する場合があるので、実際に配置する場合は製品カタログ等で確認してほしい。
横幅80cm×奥行き70cm というと、黄色の線で囲んだエリアになる。
140cm幅の57%しかないのでかなり限定された領域だが、意外に広そうだ。
こちらに配置していこう。まずはデスク横幅80cmの場合だ。
[中編]オフィスデスク実験: 幅80cm~140cmで使い方はどう変わる?実地シミュレーション ~いざ実験へ~
「オフィスデスク実験: 幅80cm~140cmで使い方はどう変わる?実地シミュレーション」
・オフィスデスクはどのくらいの広さのものが良いのか
・(その1) パソコンの横幅から考える
・(その2) 人間の肩幅から考える
・実地シミュレーション開始
・想定している働き方(ワークスタイル)
・[実験] デスク幅[80cm][100cm][120cm][140cm]それぞれで何が置けるかの実験(画像付き)
・[考察] 仕事に必要なデスクの広さはワークスタイルで決まる
・[★結論★] デスクの横幅ごとにできる作業(横幅80~140cmそれぞれの場合)
・[補論1] 机が常時広くなくて良い場合
・[補論2] デスクの横幅で使いこなせる最大幅はどれくらいか
最寄駅: 東京メトロ有楽町線「豊洲駅」 1C出口より徒歩3分 オープン時間: 午前10時~午後5時(土・日・祝日・年末年始・お盆等を除く) ※見学は要予約です (電話またはウェブフォームより受付)
編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
作成日:2017年8月10日
≪ご注意≫本記事内容は「みんなの仕事場」運営事務局による実験の結果を参考としてご提供するものであり、実験結果を保証するものではありません。また、アスクル株式会社の立場や意見を代表するものではありません。
2016年11月17日のリニューアル前の旧コンテンツは
こちらからご確認ください。