今回は、ソネット・メディア・ネットワークス株式会社のオフィスを訪問取材してきた。
同社のオフィスは、JR大崎駅から徒歩4分の大崎ウィズタワーの中にある。最寄りのJR大崎駅は、山手線沿線駅というだけでなく湘南新宿ラインやりんかい線にもつながっている。新宿、渋谷、東京駅など都内どの方面からもアクセス容易なのが魅力だ。また、入居している大崎ウィズタワーは、JR大崎駅西口からペデストリアンデッキで直結しているのも通勤上のポイントが高い。
取材先のソネット・メディア・ネットワークス株式会社は、ビッグデータ処理、人工知能、金融工学の3つのコアテクノロジーを軸にマーケティングテクノロジー事業を展開している企業だ。
人工知能やビッグデータなど、ハイテクすぎて簡単に説明するのが難しいのだが、同社の主要事業であるDSP(ディマンド・サイド・プラットフォーム: Demand Side Platform)についてざっくりと説明する。
インターネットのいろいろなサイトを見ているとき広告が表示されているが、現在ではその多くがコンピューターによる自動入札が行われており、見る人に合わせて最適な広告が出るようになっている。
例えば、住宅購入に興味があって、そうした閲覧傾向があると自動的に住宅の広告が表示されやすくなるといった具合だ(実際の広告はいろいろな仕組みが働いているので一例)。
それを可能にするため、サイトに訪れたユーザーの特性を瞬時に判断し、そのユーザーに最も適した広告を割り出して配信できるよう広告出稿側が入札する仕組みが、おおよそのところDSP(ディマンド・サイド・プラットフォーム)だ。
その最適な広告配信を実現するためには、数億ユニークブラウザ分のデータを参照してそのユーザーに最も適した広告を割り出し、最適な入札価格を計算するということを毎秒10万回以上の処理を裏方で行っている。それを支えているのが、ソネット・メディア・ネットワークスの大規模なデータをリアルタイムに処理するためのシステム構築技術であり、人工知能を活用した入札価格の自動最適化技術とのことだ。
というわけで、広告マーケティングのすごいハイテクを駆使する会社なので、クールなオフィスを想像してしまうのだが、実際に伺ったオフィスは柔らかな光と手触りに満ちている素敵なオフィスだった。そこには会社としての想いが込められていた。
オフィスに込められた想いについて、ソネット・メディア・ネットワークス株式会社 取締役の中川さんからお話を伺った。そのお話をまとめつつ、オフィスを紹介していきたい。
同社は2015年12月に東京証券取引所マザーズ市場に上場した。上場を視野に入れた同年3月に、会社の方向性にあったオフィス環境づくりのため、デザイン会社に内装を依頼し、こちらの現オフィスに移転してきたとのこと。
移転時のコンセプトとして、冒頭の「のびのび仕事をするには、やすらぎを感じられる空間にしたい」ということがあった。
テクノロジー企業だからこそ、無機質ではない木のぬくもりの感じられる、リラックスできる空間にしてほしいと、デザイン会社に依頼した結果、木と緑のあふれる空間が出来上がった。
さっそくオフィス内部を見てみよう。
エントランス入ったところ。
大きなぬいぐるみのモモちゃんがお出迎え。
ソネット・メディア・ネットワークスは、So-netの系譜に連なる会社なのでポストペットのモモちゃんがいて、2017年4月からはコーポレートキャラクターに起用されている。
こちらはロゴをアップに。
白い板張りの壁はアメリカ西海岸風の明るさだ。
板張りのストライプが目立つようエッジに視覚上の工夫が施されていて、立体感ある縦のラインがオフィスにリズムを与えている。
モモちゃんアップで撮影。
かわいい。
ロビーの待合の柔らかな雰囲気のあるアームチェアとテーブル。
品があるバランスの良い椅子は、アルキ社(Alki) の KOILAチェア。アルキ社はフランスのインテリアメーカー。
ロビーからすぐのところに会議室が3室。
レッド(Red)、ブルー(Blue)、グリーン(Green)と色の名前がついている。
会議室「グリーン(Green)」に入ってみると、
この会議室は円形で、テーブルもだ円形、壁は円形で全面ホワイトボード仕上げ。
オフィスの中のカドがない丸い空間はまるで宇宙船の中のよう。床のカーペットの柄も放射状なのも、はまっている。見たことがない柔らかいクールな空間となっている。
移転前の課題として、社内のいろいろな部署間のコミュニケーションを活発にしたいというのがあったという。「コミュニケーションを円滑に進められるよう、ミーティングを設定しなくても、社内のあちこちで簡単に話ができるようにしたい」と考えた結果、執務デスクの島の配置を工夫し、デスクの島の周囲にさまざまなスタイルの打ち合わせスペースを設けることにしたとのこと。
では、社内のいろいろなところで話ができるオフィスを実際に見てみよう。
カフェカウンター周辺の打ち合わせスペース全景。
予約なしで使える打ち合わせスペースがふんだんにあり、社員の方はちょっと声をかけて打ち合わせ場所で話し込んでいる。
こちらにコーヒーマシーンやウォーターサーバーがあるので、社員の方が集まる場所になっている。
パステルカラーのハイスツールは、マジス社(MAGIS)のティーブ(TIBU)。
マジス社はイタリアのデザイン家具メーカー。小鳥の止まり木のようなデザインがかわいい。
カウンター上で右側に見える赤いポストは目安箱。オフィスに関して社員からの意見を受け付けていて、オフィスに要望が反映されている。
キャビネット裏に作られた打ち合わせスペース。
丸いデザインがかわいいテーブルとスツール。
ファミレス風ブース。奥にホワイトボード。
ファミレス風ブース前にもテーブル。14角形という不思議な形。
とにかくオープンな打ち合せができる仕組み。
ちなみに、このチェアは、カリガリス社(caligaris)の、ダッフィーチェア(Duffy chair)。カリガリス社はイタリアの家具メーカー。
多人数打ち合わせだけでなく、各拠点からの出張者がこちらで仕事が可能。
チェアは、ヴィトラ社(Vitra)の、ティップトンチェア(Tip Ton)。
ヴィトラ社はスイスのデザイン家具メーカー。このチェアは身体を前に傾けると、椅子が数度前傾するので、ちょっと集中するときに前傾姿勢を取れたりするユニークなチェア。本体はポリプロピレン樹脂製で軽く、積み重ねて収納もできる。
中央にある木が印象的な円形のスタンディングミーティングテーブル。
こちらにもカウンターとホワイトボードがあり、立ち寄って会話ができる。
ソネット・メディア・ネットワークスは、システムをスクラッチで作っている(ゼロから作っている)テクノロジー企業として、オフィスは新しい価値を生み出すための場所であり、本質的なところで向き合っていかないとビジネスはできないと考えていた。そこで、オフィス移転の際、もう一つのコンセプトとして、「奇をてらわない」「本質的なもの」ということを掲げた。
オフィスデザインでは、「派手さを追わず、社員が触れるところに本質的なものを配置していくこと」をデザイン会社に伝えて、オフィス作りを進めていった。
前述の「社内のあちこちで話ができるオフィス」というコンセプトに基づいて多くのミーティングスペースが作る際に、ミーティングに刺激を与え、気分を切り替えられるよう、各国のいろいろなデザインチェアが使われているのもその表れだ。
例えばこちらのミーティング用のハイスツール。
裏を見ると、
このスツールは、イタリアのマジス社(MAGIS)の「トム & ジェリー "ザ・ワイルド バンチ" (TOM and JERRY - The Wild Bunch)」。
「トム&ジェリー」という変わった名前なのは、ハイスツールとロースツールのペアになっているから。こちらにあるのはハイスツール。座面はネジのように回転させることで、16cmもの高さ調節が可能だ。
ホワイトのガーデンデッキテーブルがナチュラルな感じのオフィスにマッチしますね。打ち合わせに使える液晶モニター付き。
中央の木が目印のミーティングテーブル。出張者の方がこちらで執務したりもできるようになっている。
この樹脂シェル、パイプフレームのチェアは、ヴィトラ社(Vitra)の、ハルチューブチェア(HAL Tube)。
座面を裏返すと、ヴィトラ社のシール。
このチェアは、植物をイメージさせる、ヴィトラ社(Vitra)のベジタル(Vegetal)。ポリアミド樹脂製で、スタッキングできる。
このミーティングスペースからの景色は良さそうだ。窓際にミーティングスペースが点在している。
窓際のミーティングスペースは、それぞれチェアやテーブルを変えていて、場所ごとに気分が変わるようになっている。
マジス社(MAGIS)のプライウッドパイプチェア(Pipe Chair [plywood])。
ブナ曲木のチェア風だが、パイプフレームはアルミ製で軽くて機能的。この形状でスタッキングできる。座面と背面は柔らかな曲面を持たせた合板。パイプフレームの背面の曲線は見事で、置くだけで趣きのある空間が生まれる。
オフィスフロア全景。ミーティングスペースが点在する中、デスクの島が配置されている。
デスクはすべて固定席制になっており、デスク上パーティションで区切られているため、皆それぞれお気に入りの環境を作っている。
各デスクは1,200mm幅で十分な広さが確保されている。
執務用には、岡村製作所 サブリナチェア(Sabrina)が全員に用意されている。
アルミとホワイト樹脂による複合のリングフレームが美しい弧を描く岡村製作所の高級チェアだ。
移転前にチェアサンプルを借りて、社員みんなで座って投票した結果、こちらのチェアに決まったとのこと。執務用にこのレベルの椅子を用意する企業はあまり多くない。まさに「社員が手を触れるところに本質的なものを配置する」ということなのだ。うらやましい限り。
斜め後ろから撮影。後ろから見ても優雅で美しい。
こちらのオフィスはミーティングスペース以外にも、いろいろな場所が用意されている。
一人で集中して仕事をしたり、コーヒーを飲んでくつろいだり。
クリスタリア社(KRISTALIA)のBCNスツール。
座面はポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂による珍しいチェア。樹脂そのものの弾力性をバネにした不思議な座り心地だ。クリスタリア社はイタリアのデザイン家具メーカー。
集中して作業したりできる個室も用意されている。
多目的の円形エリア。マッサージの方に来てもらうことも行っていて、このスペースを使って施術されるとのこと。
フロアの中央窓際に、円形の社長室が!
丸い社長室とは珍しい。
オープンなコミュニケーションができるようにということで、円形の壁に合わせた大きな窓が取られている。ブラインドやカーテンなどはなく、執務スペース側から常に社長室の中を見ることができるオープンな社長室だ。
以上で、ソネット・メディア・ネットワークスのオフィスを一通り紹介した。
オフィス移転の際に目指した以下のポイントが十分に実現されていることが分かる。
派手さを追わず、しかし、ミーティングや執務スペースの家具は、温かみのある本物の家具が配置され、本質に触れられるオフィスが作り上げられていた。まさに、上質な空間、上質な執務環境だ。
家具は見た目で語られることが多いのだが、本物のデザイン家具を使ってみると、使うごとに、デザイナーがカタチに込めた思いや、職人が丹精込めて作り上げた手触りが伝わってきて、肌感覚で伝わるものが存在している。本物のデザイン、本物の家具に囲まれるというのは、そういう幸せやインスピレーションを得られるということであり、取材者も取材を進めるうちに、こちらのオフィスで働きたくなってしまう魅力に満ちていた。
編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
取材日:2017年2月24日
曲線美と機能美。流れるようなラインを描く優美なフォルムと、剛と柔を兼ね備えた新感覚の座り心地を実現した「サブリナ」。特徴的なリングフレームと透過性の高いメッシュ生地が、背中を心地よく包みこ込み、これまでにない上質な座り心地を提供します。「サブリナスタンダード」は座面下のレバー操作により、背もたれと座面が連動して前傾・後傾する「シンクロリクライニング」機能を実現。日常のオフィスチェアとしてビジネスパーソンの多様な働く姿勢をサポートします。
2016年11月17日のリニューアル前の旧コンテンツは
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