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ウェルネスがオフィスを変える!大林組技術研究所「テクノステーション」に学ぶWELL認証取得のポイントとメリット

大林組技術研究所「テクノステーション」

大林組技術研究所「テクノステーション」



働く人が心身ともに健康になることでパフォーマンスが向上し、生産性が向上するという考え方が企業に定着しつつあります。この考え方をオフィスづくりに取り入れたものが「WELL認証」です。


現在、国内のWELL認証のエントリー件数は急速に増えていますが、今回は建物全体として世界で初めてゴールドランクで認証を取得した大林組技術研究所テクノステーションを取材し、同研究所のウェルネスの取り組みと、認証取得のポイントを伺いました。



■急速に広がるWELL認証の取り組み


「WELL認証」とは、心身の健康をサポートしたり、快適性が高く、人間の健康やウェルネスに好影響をもたらす建築物に与えられるもので、アメリカのデロス・リビング社が2014年に開発した認証システムです。


運営はIWBI(International WELL Building Institute)という公益企業、認証審査はGBCI(Green Building Certification Inc.)という第三者評価機関が行っています(2018年に評価基準が改定され、第2版「WELL v2」がリリースされています)。


登録件数は累計37ヵ国で1034件、うち17ヵ国で134件が認証を受けています(2018年11月20日現在)。



WELL認証の登録件数(一般社団法人 グリーンビルディングジャパンWebサイト掲載の図をもとに「みんなの仕事場」にて作成 ※)

WELL認証の登録件数(一般社団法人 グリーンビルディングジャパンWebサイト掲載の図をもとに「みんなの仕事場」にて作成 ※)



ここでいうウェルネスとはより広義に総合的に健康をとらえた概念で、「健康(Health)」が「病気ではない状態」を示すのに対し、豊かな人生、輝く人生を目指す過程を指しています。健康はそのための手段、ベースでしかないのです。琉球大学のウェルネス研究分野では、生き方、ライフスタイルデザイン、自己実現を表しているものこそウェルネスであると提唱しています。


「みんなの仕事場」でも、オフィス家具を手がけるイトーキが2018年12月にオープンした新本社「ITOKI TOKYO XORK(イトーキ・トーキョー・ゾーク)」を紹介しましたが、XORKはABWとWELL認証を2本柱としてデザインし、オープン時点でゴールドレベルの予備認証を受けています。


イトーキの新本社「XORK」に見る、オフィスの最新形態「ABW」と建設環境基準「WELL認証」


今回は、国内で初めて認証を取得した大林組技術研究所「テクノステーション」を訪問しました。



■ウェルネスの観点から既存施設が再評価された


1965年に開設した東京都清瀬市にある大林組技術研究所では、長期ビジョン「Obayashi Sustainability Vision 2050」のもと、最新の環境技術を自社施設に投入することで、省エネ技術と環境技術の研究・設計・施工を行っています。2017年にWELL認証を取得した新本館「テクノステーション」は2010年竣工。WELL認証以前に、CASBEE、LEEDの認証を取得し、BELS賞などを受賞した施設です。


ウェルネス研究およびWELL認証取得プロジェクトに携わった吉野攝津子氏(技術本部技術研究所 都市環境技術研究部 主任研究員)にお話を伺いました。



吉野攝津子氏(大林組 技術本部技術研究所 都市環境技術研究部 主任研究員)

吉野攝津子氏(大林組 技術本部技術研究所 都市環境技術研究部 主任研究員)



――テクノステーションは、WELL認証を視野に入れて建てたものではないのですね。


吉野 1982年に竣工した旧本館は、当時の基準でエネルギー使用量が通常のオフィスの4分の1という世界一の超省エネルギービルで、98の省エネ技術が盛り込まれていました。天井も低く、窓面積も抑えられていましたが、新本館は最先端の省エネ技術を取り入れ、省エネルギーと快適性、知的生産性の両立を目指して作られたものです。


2010年から建物を使いはじめて、5年ほど経ったところで、健康性という概念が出てきて、ウェルネスやウェルビーイングに対応した建物の検討ワーキングも立ち上がりました。私は2014年4月にワーキングリーダーを拝命して、これから新しい価値となるであろう建屋の健康性能について調べるうちに、その1年後に、アメリカのデロス・リビング社から、WELL認証という世界的な標準規格があるらしいと聞いて、技術研究所として取得に取り組みはじめたわけです。


新築の建物ではありませんが、既存の建物として、ウェルネスの観点から再評価してもらうという位置づけでした。設計者もデザインに誇りをもって設計した建物ですから、改修工事の必要はないという判断で、認証取得のための新しい開発技術もありません。



――WELL認証の取得にはどのようなメリットがあると考えたのですか。


吉野 まず、オフィスのオペレーションコストの内訳をみると、1割が光熱費で、残り9割が人件費と言われています。ウェルネスに投資することで従業員の疾病リスクを下げれば、知的生産性も上がり、オフィスのオペレーションコストが下がることになります。


次に、健康快適空間を実現することで、企業の認知度や魅力度が上がります。テナントリーシングにおいてはテナントへの訴求効果も高くなりますし、「人を優先する企業」として魅力度が上がれば優秀な人材を確保することにもつながります。


また、世界的な標準規格ですから、認証取得はブランディング効果もあります。複合施設やホテルなども稼働率が上がって収益性も上がり、不動産価値も上がります。



――先行例が少ない段階での取り組みは、手探りのことも多かったのでは。


吉野 最初は認証システムの理解から入り、1年ほどかけて、人手や費用、建物の情報開示のための社内調整を行い、認証にエントリーしたのが2016年7月。その時点ではエントリーしているのは世界で300件ほどでした。


評価項目に応じた課題の洗い出しや、日本に合わないアメリカの基準との調整などを行いながら2017年5月に書類申請、同年9月に現地調査、最終的に認証がとれたのは11月21日でした。


審査する人たちもまだどう審査すればいいのかわからないということもありました。日本に現地審査に来るのも初めてだったので、お互い戸惑いながらの審査でしたね。



■生産性を高める超広大なワークスペース


本館「テクノステーション」は、最先端の研究環境、最先端の環境配慮、最先端の安全安心の3つをコンセプトとして掲げています。入館して2Fの執務エリアに足を踏み入れると、吹き抜けの超広大なワークプレイスに圧倒されます。



大林組技術研究所「テクノステーション」2Fワークプレイス(※)

大林組技術研究所「テクノステーション」2Fワークプレイス(※)



吉野 横90m、奥行き18m、梁の高さ6.4mで、天井のトップライト採光の一番高いところまでは8mという巨大なスペースで、この大きさの建屋を支えるためには、普通はかなり太い柱が必要になるのですが、この建物自体が二次元免振でできており、高強度コンクリートを使っているので、柱を細くできます。ちなみにスカイツリーと同じ強さの鋼管です。最新の制震システムを導入しており、地面の揺れを1/50に低減するようになっています。


執務エリアは、周囲のグレーチングの外側をミーティングコーナーにしてあります。空気層がバリアの役割をして、外へ人の動きを逃す設計です。そばには、マグネットスペースやリフレッシュスペースを設け、メリハリをつけたグラデーション空間になっていています。



――かなり広大な空間ですね。何名ぐらいの方が働いているのですか。


吉野 研究部と管理部門で総勢200名弱が執務しています。以前は複数の棟に分かれていたので、どの建物に誰がいるか全然わからなかったのですが、今はちょっと立ち上がって見える範囲ですので、非常にコミュニケーションがよくなったと思います。


奥から、材料やロボット利用などの生産技術系、地震対策などの構造系、中央に管理部門があって、反対側は生物多様性などの自然環境系、気流解析など屋内外空間の評価をする都市環境系、一番奥が岩盤やトンネルなどの地盤系の各部門が配置されています。


いずれも専門性の高い職種のため、フリーアドレスではありませんが、ABWの考えを取り入れています。解析をやる人は自席にずっといることが多いし、専用のパソコンでないとできない作業もあるし、実験設備を使わないできない作業もある。人によってワークスタイルが違います。


大空間だと音がかなり大きく反響しますので、1人で集中したい時やWebミーティングをするときのために個室ブースも用意しています。2階にもライブラリーやコミュニケーションラウンジなど、いろいろな場所を設けています。



コミュニケーションラウンジ(※)

コミュニケーションラウンジ(※)



ソロラウンジ(※)

ソロラウンジ(※)



――課題はありますか。


吉野 なかなか思った通りに使ってもらえないという悩みがあります。日本では、ABWだと、何かサボっているように思われるんじゃないかという意識が生まれるようです。他人の視線を意識する気まずさなどをどうやって下げるかというのが今の課題です。


あと、せっかくラウンジがあるのに、フロアを上がるひと手間がネックになったりする。ミーティングスペースには昇降デスクがあるのですが、手動式だとなかなか使われない。小さな手間でも毎度のことだとだんだんやらなくなるのですね。


そうしたことは設備や建物のレイアウトだけでは解決できないので、計測データをもとに、人気のないスペースに給湯スペースを置いて人を集めたりして、運用ルールと、建築計画的アプローチの両面から検討しています。


導入したときはひと通り使われるのですが、継続して使ってもらうのはなかなか難しいですね。それまではなかったカルチャーを新しく入れたわけですから、何かつねに仕掛けをしていかないといけないと思います。



――コミュニケーション施策については。


吉野 随所にコミュニケーションを促進して、知的生産性を向上させる設計になっています。たとえば、通路のレイアウトもあえて蛇行にしてあって、部長席に突き当たるようにしています。歩くスピードをちょっと緩めさせ、コミュニケーションが生まれることを期待しています。


デスク脇に高さ1m10cmのキャビネットを設置しているのですが、この高さは設計者が考えに考えて決めたものです。囲っているけれども完全には隠れない、パーテーションとしての役割も果たしています。奥行もあるので打合せにも使えます。


WELL認証の審査では、これもスタンディングデスクの一種だと主張して、残念ながら認められなかったのですが、私はまだ納得していなくて、今、そこで立ってミーティングする時間を計測しているので、1年半後に再認証の審査を受けるときにはエビデンスとして提出しようと思っています。


それ以外にも、どの場でどれだけ人が集まって何をしているかということを計測しており、1日当たりのコミュニケーション回数が増えているなどの結果が出ています。



■7つのコンセプトごとの審査ポイント


WELL認証の審査項目は、その建築物を使用する者が経験するものとして、7つの基本コンセプトが定められており、要素としては100項目に分かれています。各項目の評価点数に応じて、シルバー(必須項目全て)、ゴールド(必須項目+加点項目40%)、プラチナ(必須項目+加点項目80%以上)、認証のレベルが変わります(WELL v1の場合)。


7つのコンセプトごとに、どのような取り組みと申請を行ったのか、苦労された点も含めて具体的に伺いました。



〇空気(Air)

自然換気スイッチ(※)

自然換気スイッチ(※)



吉野 空気の項目は、もともとLEEDやCASBEEで評価を得ており、WELL認証では、良質な空気を提供するための手段として申請しました。外気系統系の空調機のフィルタを全部、MERV 13というアメリカの規格をとった高性能フィルタに取り換えたのが、一番費用がかかりました。


また、「冷却コイルのカビ抑制」という項目があり、カビが発生すると空気質を汚染してしまうので、年に4回、冷却コイルを目視点検しなければいけないというメンテナンス会社泣かせの項目もありました。


この建物では、床のグレーチングから新鮮な空気が入って上に抜けていく自然換気の設計になっており、これは省エネにもかなり貢献しています。春や秋の中間期には、外気も環境モニタリングしていて、自然換気をしてもいい環境かどうかをつねにランプで表示しています。風速や温室との関係、粉塵などもモニタリングして、環境がOKなら緑のランプが点くわけです。緑なら手動で押して窓を開けられる。もちろん自動で開けることもできますが、あえて手動にすることによって個人の行動を促す仕組みになっています。外気の環境がNGになった場合は、自動で閉まります。


この項目には「手洗い設備」も含まれるのですが、トイレはドライヤーだけだと水が飛び散って再汚水になるのでNGで、ペーパータオルに換えました。また、抗菌石鹸は手の常在菌を殺して耐性菌を作ってしまうので、無香料の非抗菌石鹸にする必要がありました。さらに、水石鹸が出てくるシステムでは棚の下で継ぎ足し式になっていて、雑菌の温床になるので、使い捨て密封容器のものを使わなければならないのですが、そういうものは日本にはなかったので、結局、市販の使い捨てのポンプ式石鹸にしました。たしかに、最近では病院でも水石鹸を外してあるところが増えていますね。


また、シンクは再汚染を防ぐために奥行き23cm・高さ25cm以上が必要でした。浅いと手で触ったり水が飛んでしまったりするからですが、身障者用トイレでは、車椅子で利用するのに深すぎて使い勝手が悪くなってしまう。WELLの仕様基準とは合いませんでしたが、オルタナティブとして認めてもらいました。



〇水(Water)


吉野 日本のビル衛生管理法には、水について多くの基準があるのですが、WELLの基準はそれよりも厳しく、国内基準がなかったり、計測していない成分だったりするものもありました。アメリカでは上水が整っていない地域もあるらしいので、それを前提とした基準だと思います。日本はどこでも上水が飲める前提になっていますから、引っかかったら異議申し立てしようとぶっつけ本番でいきましたが、結局問題なく、全部クリアしました。



〇食物(Nourishment)

カフェテリア(※)

カフェテリア(※)



吉野 建築設備については研究所内にプロフェッショナルが大勢いますから、解決策も見つかりますが、食べ物関係は専門家がいないので、苦労しました。


日本では食塩相当量や炭水化物の表示義務があっても、糖に関する表示義務がありません。彼らはカフェテリア形式で好きなものしか食べないので、表示基準や1皿分の栄養量に細かく基準値が決まっています。きちんと管理栄養士が設計した我々のメニューのほうがずっとヘルシーなはずなのに、日本の表示規制が異なるために、それを証明できなくて苦労しました。アレルギー表示も、日本では食堂での表示義務がないので、外注業者さんに協力していただかなければなりませんでした。


変わったところでは、「精製成分の制限」という項目があって、米や小麦粉など白いものだけしか選択肢がないのはダメなんです。白米だけじゃダメだというので、オプションで雑穀米を追加する運用になりました。正直なところ、こうしたことがなぜ建物評価につながるのかと思いましたが、建物オーナーとして自設の建物内で不健康な行動につながることは一切させないという考え方に立った性能評価ということなのだと思います。



〇光(Light)

トップライト(※)

トップライト(※)



吉野 照明デザインに関してはあまり苦労しませんでした。IWBIのホームページでは、光環境の良い例としてこの建物が紹介されています。


南側に光が当たりますので、屋根に太陽光パネルが載っています。北側の天井はトップライトが斜めに付けられていて、柔らかな光が入り、壁に反射して全体に当たるように設計されています。南側は庇のように屋根が出ていて、執務空間には直射のギラッというグレアが入ってこないようになっています。天井の採光部分にはフィンガという日除けが付いており、夏至の太陽光角度に合わせてあるので、西日がきついということもありません。


光の明るさや眩しさは常時計測していて、適正な300ルクスを確保しています。


ブラインドも開閉、角度が自動制御です。WELLのポイントでも、直射日光は目に良くないし快適性を損なうとされているので、そういった配慮は要件になっています。


輝度も計測していて、明るさ感指標を取り込んだ光の制御、照明制御をしています。人間はルクスで測る照度ではなく、周辺の輝度比で明るさを感じていますから、壁が明るいと明るく感じたり、日没後は照度を下げても暗さを感じなかったりするのですね。輝度比を考慮しながら照度を絞っても感知しませんから、不快感なく、作業に必要な明るさをしっかりと確保できます。これはエネルギー消費量的にもかなり大きな効果があるのですが、ひとつのウェルネス的な取り組みになっています。


少し苦労したのは、「昼光を得る権利」というオプション項目です。執務席の75%が窓から7.5メートル以内、95%が窓から12.5メートル以内でなければいけないというのですが、両方とも合いませんでした。でも、これは1フロアの中規模オフィスを想定したもので、2層吹き抜けのような大空間を想定したものではありません。どれだけ中に光がとれるかを計算して出して遜色ないということを示しました。


認証項目数としてはまだ余裕があったのですが、ここはやはり我々の意地としてとりたいということで、技術者たちが頑張って交渉しました。



〇フィットネス(Fitness)

パーソナル空調システム(※)

パーソナル空調システム(※)



吉野 この建物は縦にも横にも長くて、通路はジグザグですし、とにかくよく歩かされるように作られています。3階の会議室に行くのにどこを通ると最短かをいつも考えるのですが、実は近道はありません(笑)。歩くことによって偶発的なコミュニケーションを誘発するのが狙いだったのですが、健康性能として見ると、フィットネス動線として良いサーキュレーションになっているということで評価されました。エレベーターより先に階段がある設計になっているので、自然にそれを上ることになるのがいいようです。


あと、スタンディングデスクを30%入れるという項目があり、これには苦労しました。ここのデスクは、執務席自体が建築設備のような特殊なものなので、簡単に交換できないのです。


具体的にいうと、大空間ですから、まんべんなく空調を回すとエネルギー負荷がすごく高くなってしまいます。そのため、個人の席のまわりだけを快適にする設計思想から、一人ひとりが所持しているICタグを感知して、自席まわりの個別空調を稼働させています。卓上のタスクライトやセキュリティも同じですね。デスクの持ち主以外が座っても、照明もつかないし空調もつかない。そんな特殊なデスクなので、簡単に机を交換できないわけです。交換すると大規模な道連れ工事が発生してしまいます。


そこで審査機関と相談して、そこでミーティングスペースには可動式のスタンディングデスクに換えましたが、個人デスクは、机上にコンパクトに設置できるスタンディング装置を希望者に導入することにしました。



〇快適性(Comfort)


吉野 パソコンの裏には放熱パネルが設置されており、夏は15℃の水が中を流れています。冬は机の下に付け替えて、足元が温かくなるように40℃の温水が流れて温水が流れます。気がついたら快適になっているくらいの感じで、じわじわと快適になるように設計されています。


会議室のような閉鎖的な執務空間ではNC30という基準があったのですが、音響の専門家によれば、それはもうスタジオ並みの水準で、そんな設計をしているところは普通はないと言われました。防音工事しなければいけないのかと思いましたが、現地調査で測定してパフォーマンスが良ければいいとのことでした。空調を点けた状態で他に干渉する音がない状態、執務者がいないビジネスアワー外で測定したら、問題ありませんでした。


あと、日本では「座席」に苦労するようですね。椅子の座面が上下に12cm以上、前後にも動かないといけないのですが、上下12cm動く椅子というのは実はあまりない。この椅子はたまたま12cm動いたのですが、結構高いので苦労される会社も多いようです。



〇こころ(Mind)

エントランスに展示されている、大林組創業当時の「鬼瓦」

エントランスに展示されている、大林組創業当時の「鬼瓦」



吉野 この項目には「美しさとデザイン」などが含まれています。受付にスカイツリーの鉄骨レプリカや、創業当時の本社にあった鬼瓦、当研究所の歩みのパネルなどを展示しているのは、認証取得のためではなかったのですが、組織の文化を感じさせ、情緒的な健康につながるということで評価対象になりました。


廊下の先の窓に外の緑が見える点や、屋外のビオトープや、アプローチの椅子、テラスに出られる構造なども評価されました。



■これから取り組む企業へのアドバイス


テクノステーションでは、認証取得後も、ウェルネスの取り組みがもたらすバイタル効果を継続的に計測しています。



吉野攝津子氏(大林組 技術本部技術研究所 都市環境技術研究部 主任研究員)



吉野 アンケートデータだけではなく活動量も入れて統計解析しており、スタンディングデスクは、使った人の7割が効率化し集中力も上がるという結果が出ました。気分のリフレッシュにも正の因果関係が出ています。


旧本館と今のテクノステーションを比べると、1日当たりのコミュニケーション回数も8.6回から12.5回/日に増えています。



――大林組としては、認証取得をどのように活かしていきますか。


吉野 IoT技術やAI技術を活用したスマートビルマネジメントシステム「WellnessBOX」や、建物に関する情報の集約プラットフォーム「BIMWill」など、様々な技術に結実しています。多くのコンペ提案にはウェルネス要素を入れており、それで工事受注できたケースも増えています。研究所や工場の厚生棟などの建て替えでは、WELL要素を入れたいという要望も多いです。



――これからWELL認証の取得に取り組む企業へのアドバイスは。


吉野 プロジェクトチームを組んで、ちゃんと人をアサインすることが必須です。ドキュメンテーションの準備はかなり大変ですし、継続的にケアしていかなければなりません。この建物の場合は、幸い、設計者、施行者、利用者、メンテナンスは全部当社自身でしたから、連絡もつけやすかったのですが、既存の建物だと図面が失われていることもあります。テナントビルなどで利害関係者が全部社外だと、相当複雑なプロジェクトになります。声の通る人をプロジェクトマネージャーにアサインしないと難しいでしょうね。


既存の建物のリニューアル工事に合わせて認証取得に取り組むなら、建物の制限で換気量など、ネックになる項目がいくつかありますので、設計の上流側が早目に把握して、工事の手戻りにならないようにリニューアル工事をすることが必要です。




■ウェルネスへの取り組みが投資家にインパクトを与える

国内のWELL認証へのエントリー数は急速に増えています。本来はもちろん働く人のためのものであることには間違いありませんが、2015年12月のパリ協定以降の動きとして、投資家へのインパクトを重視して取り組む例も増えています。大林組もウェルネスの取り組みが評価され、2018年のグリーンボンドに続く本年のESG債の発行につながりました。


「認証の取得によって、アンケートの満足度が上がりましたとか、生産性も上がりましたと答えても、なかなか信じてもらえないこともありますが、ファンドから100億の投資を受けたというと、やはりインパクトが違ってきます」そう吉野氏は指摘します。


吉野氏によれば、快適性ブーム、知的生産性ブームは7-8年周期で巡っているとのこと。「私がこの業界に入ってからたぶん2巡目か3巡目だと思いますが、3巡目にして、投資という経済的な価値がついてきたことを実感しています」。


より健康に、美しく、人生を豊かに彩る「ウェルネス」という概念は、ビジネスにとどまらず、ライフスタイルや経済、文化、環境まで、あらゆる分野からアプローチすることが可能です。経済も大きく動かすその取り組みが、今、注目されています。






取材協力

大林組









編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
取材日:2019年6月25日




         

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