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働き方改革時代の人事評価<後編>~HRテックによる「人」を活かすマネジメント~「顔」で人材情報を一元管理するクラウド人材管理システム「カオナビ」の世界

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画像:svetazi / Adobestock (※)

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「働き方改革時代の人事評価」の<前編> では、「『年次評価廃止』『ノーレーティング』『1on1』が企業を活性化する理由」として、「成果主義」における評価手法、いわゆる「年次評価」に起こりつつある変化について取り上げました。


前編はこちら
働き方改革時代の人事評価<前編> ~「年次評価廃止」「ノーレーティング」「1on1」が企業を活性化する理由~



今回は、人事制度や関連するマネジメント手法の変化と表裏一体で起こっているもうひとつの流れ、「HR(Human Resource)テック」について取り上げます。



■数あるHRテックの中から何を選べばいいのか


人事関連の業務は、企業活動の中でもシステム化が遅れていると言われている部分です。


給与計算や勤怠管理、社会保険等の労務管理関連は、システム化やアウトソーシング化が進みましたが、人材管理に属する評価や目標管理、採用、育成といった業務は、最終的にはデジタル化されるとしても、日常の運用はペーパーベースになっている企業がいまだ少なくありません。


そんな中、近年、最新のテクノロジーやビジネスモデルによって、人事関連の業務や課題を改革するHRテックのサービスが数多く登場しています。当初は欧米が先行していましたが、「働き方改革」や生産性向上への要請、慢性的な人手不足などの問題を背景に、日本の人事制度や考え方に合わせたHRテックサービスやツールが次々と生み出され、実際に導入が進んでいるのです。


しかし、一口にHRテックと言っても、採用や評価などの既存業務を効率化するツールから、「タレントマネジメント(社員のスキルや個性を把握し最大のパフォーマンスを発揮させるための取り組み)」や、AI等を利用し収集データを分析し社員の状態や行動を予測するツールまで、その内容は大変幅広く、未導入の企業にとっては全体像をつかみにくいのが実情です。HRテックの活用が進んでいる欧米企業でも、数が多すぎて何を選んでいいのかわからないという声が上がっているそうです。


そこで、HRテックの最もわかりやすいかたちとして、日常的に行われている人材管理業務を省力化し、さらに新しいマネジメントのあり方を提案するサービスを紹介しましょう。



■顔写真をベースに人材情報を一元化


クラウド人材管理システム「カオナビ」は、人事評価、配置など人材をマネジメントする「人材管理領域」をカバーしています。人材データベースを軸に、評価ワークフロー、アンケート機能など人材管理に関連する機能を搭載したサービスですが、最大の特徴は「顔写真」をベースにしたインターフェースにあります。


「カオナビ」の画面(※)

「カオナビ」の画面(※)



「顔」にこだわることで、直感的に把握しやすい操作性と、社員一人一人の個性に重きを置いた設計コンセプトが注目され、すでに1,400社以上(2019年6月現在)の企業が利用しています。


さっそく、株式会社カオナビの宮本桃子さん(コミュニケーションデザイン室長)と内田壮さん(カオナビHRテクノロジー総研 所長)にお話を伺っていきましょう。




――「顔写真」ベースの画面は、一般的な人材管理ツールのイメージがかなり違います。


宮本 最近入社したメンバーの名前が覚えられない、どんな人かわからない、という状況はよくありますよね。会社が成長し、社員数が増えると、次第に「顔」と「名前」を一致させることが難しくなります。異動などで部署が変わると、情報がアップデートされないということもあるでしょう。「カオナビ」開発のコンセプトは、「顔」と「名前」を一致させるというものでした。


「顔」というのは最も明確な個性ですから、それと人材情報を結びつけることで、データベースの使い勝手やわかりやすさが向上することになります。たとえば、チームの割り振りなど、顔写真があることで、データだけで行うよりも、はるかに効率よく作業ができるようになります。



――操作も顔写真ベースなのですね。


宮本 基本的な操作方法は、一覧画面上に並んだ顔写真をクリックするだけです。社員情報の画面が開き、登録されている人材情報をまとめて閲覧することができます。非常に感覚的に操作することが可能です。


また、登録した情報から、どんな情報を表示するかの設定も、簡単に追加したり入れ替えたりできるようになっています。人事担当者の方がカスタマイズできるので、いちいちシステム担当者の手をわずらわせることなく日常の運用が可能です。



「カオナビ」社員情報の表示画面(※)

「カオナビ」社員情報の表示画面(※)



――顔を見ながら、配置や評価の比較検討が行えるのですね。


宮本 「カオナビ」の機能の中でも高く評価いただいているところですね。


たとえば、「SHUFFLE FACE」という機能があります。基準となる要素を縦横軸に選んで、社員をカテゴライズして表示することができます。



「SHUFFLE FACE」の画面(※)

「SHUFFLE FACE」の画面(※)



宮本 たとえば縦横軸に最新評価と売上達成率を設定すれば、達成率が高い人がどのような評価なのかも一目瞭然で分かります。


縦横軸に設定する項目も入れ替え可能です。いろいろな要素を視覚的に比較して検討を進めることができるので、異動のシミュレーションをしたり、評価の甘辛調整をしたりするのに有効です。



――表示情報は、役職や立場によって調整できるのですか。


内田 「カオナビ」の開発コンセプトのひとつは、経営陣や人事部だけでなく、部長や課長といったミドルマネジメント層や現場のリーダーのような立場の人にも、人材情報を積極的に活用してほしいということでした。それを実現するために、役職や立場などによる閲覧の権限設定をかなり細かく調整できるようにしました。全社員が見ることのできる項目も設定できます。


情報を隠す、というよりも、誰に何をどう見せれば、業務の改善や社員のモチベーション向上に役立てることができるか、という視点を持てるように設計しています。つまり、「人材情報のオープン化」ということですね。人材情報をより戦略的に活用していただきたいと考えています。


導入されたお客様の中には、当社でも想定していなかったような利用方法を考案され、成果を出しているケースも少なくありません。



――具体的に伺ってもいいですか。


内田 たとえば、SNSのように使うというものがあります。趣味やオススメの夜食など、業務とは直接関係のない情報の項目を作り、全社員に公開して社内コミュニケーションの活性化に活かす、ということをしているお客様が結構たくさんいらっしゃいます。人材データベースという発想に縛られていると、こういった使い方はおそらく出てこないのではないでしょうか。「カオナビ」には様々な機能が用意されていますので、アイディア次第で様々な活用が可能なのです。



――なるほど。人材情報の活用の幅が広がりますね。


内田 人材情報を活用できるようになれば、日常的な指示や決定にも裏づけを持たせることができます。たとえば、マネージャーの方が部下に声をかけるにしても、通りいっぺんにするのではなく、その人に合った会話をできるようになる。全員に一律の言い方で方針を押しつけるのではなく、「あなたはこういう職歴とスキルを持っているので、このように動いてほしい」というような、より具体的で心に響く説明をできるようになります。


宮本 人事異動を行うときなども有効です。異動時には引き継ぎが付きものですよね。そのときに、部下がこれまで担当してきた具体的な業務歴や、前の上司とどのような話をしていたか、というような細かい情報は、なかなか引き継ぐことは難しいのではないでしょうか。このため、関係を一から作らなくてはならなくなってしまいます。実際のコミュニケーションには、一見些細に見えるそんな情報が重要だったりするわけです。


これも、「カオナビ」に業務歴や、面談記録、性格やスキルなどを保存しておけば、それらの情報をもとに向き合うことができます。「カオナビ」は「人を活かす」ことを支援するシステムだと考えています。



宮本桃子さん(カオナビ コミュニケーションデザイン室長)

宮本桃子さん(カオナビ コミュニケーションデザイン室長)



■これまで蓄積されていなかった人材情報を集める


「人材情報の一元化」といっても、人事部の情報を渡して、それで終わりということではありません。


「カオナビ」が考える人材情報とは、入社時の履歴書、入社後に関わった業務、評価、受けた研修などは人事部にファイリング化されている情報だけではないからです。


各部署や直属の上司など、全社に分散して存在する、場合によっては文書化されていない、社員に関する情報も収集することを推奨しています。



――これまで人材情報と見なされていなかった情報にも価値があるわけですね。


宮本 所属する部署や直属の上司しか把握していないような、具体的なスキルや日常の業務における実績、性格や人柄などのパーソナリティ情報も、社員一人ひとりを活かすためには重要な社員情報だと考えています。これまでバラバラに存在していたデータを結びつけると、これまでは見えてなかった新しい可能性や価値を把握できるようになります。


導入されるお客様には、「カオナビ」の「タレントマネジメント」機能をより活かすために、できるだけ広く情報を収集されることをおすすめしています。



――社内に分散している情報を集める作業は、大変なのではありませんか。


宮本 収集するデータについては、「カオナビ」の導入目的に合わせて、アドバイスさせていただきます。「カオナビ」を活用できるだけのデータが登録されている状態に無理なくもっていけるようにサポートします。


むしろ、当社が提案する「人材情報一元化」の価値を理解していただき、社員一人ひとりに聞き取りを実施されたお客様もいらっしゃいます。



――導入するには、どの程度の日程が必要でしょうか。


内田 目安としては、3ヶ月です。大きく影響するのはデータベースを構築する作業時間です。集中的に作業できれば、もっと短縮できます。



――社員数何人くらいから効果があらわれますか。


宮本 最初に申し上げた「社員の顔と名前が一致しなくなる」タイミングが、「カオナビ」の導入タイミングのひとつだと思います。会社によって違いはあると思いますが、100~150人ぐらいではないでしょうか。100名以下でも、将来を見越して人材情報を一元化しておきたいということで導入した事例もあります。ボリュームゾーンは社員数300~3,000人程度なのですが、「カオナビ」の有効性は、社員の規模には関係ないと考えています。3万人クラスの大企業への導入や引き合いも増えています。



――多くの機能が用意されています。どのように使いこなせばいいですか?


内田 「カオナビ」は、全機能を活用しなければ効果がないわけではありません。社員名簿の拡張版のようにも使えますし、評価システムとしても、人材情報の可視化など、お客様の課題や目的にあった使い方をできるように作られています。


導入時は最低限の機能でスタートして、利用しながら必要な機能を追加することも簡単にできます。一部門でトライアル導入して、有効性を確認したうえで全社展開する、というのでもいいでしょう。



内田壮氏(カオナビHRテクノロジー総研 所長)

内田壮氏(カオナビHRテクノロジー総研 所長)



■ノウハウ共有を推進した2つの事例


カオナビでは、より有効なシステムとして活用できるよう、企業間のノウハウの共有を積極的に進めているとのこと。サービスのホームページや販促資料で、具体的な利用事例を公開しているほか、ユーザー会やセミナーなどを開催し、利用企業同士の情報共有を支援しています。


特徴的な課題を解決した2社の導入事例を、課題と効果の両面から見ていきましょう。



○バンドー化学株式会社


日本を代表する産業用ベルトメーカーです。全社を上げての働き方改革に取り組んでおり、その一環として人事部門の評価業務の効率化のため「カオナビ」を導入しました。


バンドー化学株式会社の事例 (※)

バンドー化学株式会社の事例 (※)



宮本 評価業務に関しては、程度の差はあれ、まったく課題がないという会社はないと思います。多くの企業ではエクセルを使っていますが、お店や工場などでは、パソコンがなく、紙でやりとりを行っているところもまだまだあります。評価業務は、「カオナビ」導入の効果が劇的に現れるところだと思います。業務の省力化のほか、データ形式が揃うので、集計のしやすさや分析のしやすさの部分でも改善を期待できます。



○エイベックス株式会社


音楽、アニメ、デジタルと幅広いジャンルのコンテンツを発信するエンタテインメント企業です。構造改革を進めるうえで、社内の人材データベースを構築する必要が生じました。


エイベックス株式会社の事例 (※)

エイベックス株式会社の事例 (※)



宮本 情報を社員の皆さんに広く開放して成果を出されている事例です。例えば、あのアーティストのプロジェクトでデザインを担当していた人は誰?といった情報がすぐに取り出せるわけです。また、相互理解の促進を通じて社内の活性化にも役立てていらっしゃいます。「カオナビ」の持つ社員間のコミュニケーションを支援する機能を、しっかりと活用していただいている好例だと思います。



■HRツール同士の連携も進み、より使いやすく



――HRツールとしての「カオナビ」は、今後どのように進化していくのでしょうか。


内田 導入されたお客様を対象にアンケートを行っており、その結果に基づいた改善ポイントを「カオナビやります宣言」として発表しています。「ユーザーインターフェースの改善」「履歴機能の拡充」「グラフ機能をバージョンアップ」など、使い化勝手の向上を中心に、具体的な施策を打ち出しています。10月1日から実装する新機能「パルスサーべイ」もそのひとつです。



――それはどのようなサービスでしょう。


内田 3問の質問とフリーコメントからなる簡単なアンケートを、定点的に繰り返し行うことで、社員の状態を時系列で可視化することができるというものです。離職予兆だけでなく、従業員のコンディションを把握して、組織の課題を早期のうちに発見できるようにするサービスです。



――様々な機能が拡充され、より多機能になっていくのですね。


内田 「カオナビ」は単なる人材管理システムではなく、プラットフォームです。今後も新機能の追加は進めていきますが、合わせて、他社が提供するサービスとの連携も進めていきます。先日は、世界的に使われているビジネスコラボレーションハブ「Slack」との連携を実現しています。


今、HRテックの世界では、コミュニケーションや採用、分析など特定の機能に特化した画期的なツールが次々と生まれています。お客様の利便性を高めるという点に主眼を置いて連携を拡張していきたいと考えています。



宮本桃子さん内田壮氏



社員の人数が増え、顔と名前が一致しなくなる――企業の成長においては避けて通れない現象ですが、それは、人材情報が個人から離れてしまい、管理用データの1項目として「没個性化」していることを示す現象でもあります。


「顔と名前の不一致の解消」というシンプルな悩みを解決するシステムとしてスタートした「カオナビ」が、「個人」を活かす総合的な人材マネジメントシステムに進化していくのは、そう考えれば当然のことかもしれません。


社員の能力を引き出し、生産性を上げることが求められる今、「組織」の視点だけでなく、もう一度、「個人」にフォーカスすることが求められています。








HRテックは、これまで業務効率化という点からは、なかなか顧みることが難しかった「個」と「全体」を連携させる有効な手段だと言えるでしょう。




前編はこちら
働き方改革時代の人事評価<前編> ~「年次評価廃止」「ノーレーティング」「1on1」が企業を活性化する理由~





取材協力

株式会社カオナビ








編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
取材日:2019年7月25日




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