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アクティビティだけでなくアビリティに基づくワークプレイス~「人フォーカス」のバリアフリー/ユニバーサルデザインオフィス

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画像:UTS / AdobeStock

画像:UTS / AdobeStock (※)



2016年4月に障がい者雇用促進法が改正され、100人以上が働く企業では2.2%以上の障がい者雇用が義務化され、遵守しない場合は行政指導や企業名公表などのペナルティを受けることになりました。2018年からは精神障がい者の雇用も義務づけられ、今後さらに障がい者支援が進んでいく流れがあります。「みんなの仕事場」でも、障がい者雇用の取り組みについて下記の取材記事を掲載しています。


「障がい者雇用は「義務」から「生産性向上の取り組み」へ ~ LITALICOワークスと高島屋横浜店に聞く」


この流れにより、様々な身体的、精神的困難をもつ方が同じオフィスで働く可能性が高くなりつつありますが、健常者の視点によるオフィスデザインでは問題が生じるかもしれません。



今回は、バリアフリーオフィスについて考えていきます。



■バリアフリーオフィスとは


実際に雇用されている障がい者の内訳をみると、その7割以上は身体にかかわる障がい者であることがわかります。


2006年2月、特定建築物の建設促進に関わる「ハードビルド法」と、駅や車両、道路などのバリアフリーを推進する「バリアフリー法」が統合され、高齢者や障がい者の移動や活動を円滑化する「バリアフリー新法」が新しく制定されました。さらに、たとえば東京都では建築物バリアフリー条例によって適合義務対象が拡大されています。


オフィスビルは、従来は対象外でしたが、改正法では、努力義務がある特定建築物に指定されています。


すでに2002年にハートビル法が改正され、2000平方メートル以上のオフィスにおいて、バリアフリー対応に係わる「利用円滑化基準」が定められ、義務づけられています。この「利用円滑化基準」では、出入り口・廊下など・階段・傾斜路・昇降機・便所・敷地内の通路・駐車場などがバリアフリーの対象となります。


バリアフリーは、高齢者や身体が不自由な障がい者でも使いやすいように障壁を取り除く意味があり、誰でも使いやすいデザインがオフィス内装にも必要になります。


オフィスへのバリアフリーの導入とは、一般的には、次のような配慮がされたオフィスを指します。


・段差を極力排し、スロープを設けている。

・デスク間の通路は車いすでの通行がスムーズに行えるよう、少なくとも90cm以上、人の往来が多い場所に関しては120cm以上にする

・デスクの高さ、幅も車いすが入る下肢空間を確保する

・引出し書庫の高さは車いすの人の視線の高さや中のものが取り出せるようにする


ほかにも配線類を床下に入れるフリーアクセスフロアにするなど、できるだけ車いすでも自由に動き回れるデザイン、レイアウトがバリアフリーオフィスの特徴です。


バリアフリーオフィスを考える際、上記のようなポイントに配慮することは重要ですが、しかし、それだけにこだわってしまうと、かえって使いづらいオフィスデザインになってしまう可能性があります。


障がい者だけではなく、健常者にとっても使いやすいオフィスであるためには、障がい者に配慮しつつも、ユニバーサルデザインの考え方を軸に、あらゆる人にとって使いやすい機能を有するデザインが求められます。



■従業員の8割以上が障がい者 リクルートオフィスサポート


リクルートグループの特例子会社であるリクルートオフィスサポートに取材しました。対応してくださったのは経営企画部の湊美和さんです。


(特例子会社とは、障がい者雇用促進法の規定に基き、障がい者雇用率算定における親会社(この場合はリクルートグループ)の一事業所として認可された子会社のことで、同社はリクルートグループ他社の障がい者雇用を引き受けていることになります。)


リクルートオフィスサポートの従業員構成。87%が障がい者(※)

リクルートオフィスサポートの従業員構成。87%が障がい者(※同社提供)




弊社が大切にしているのは「ケア」と「フェア」という考え方です。ケアとは、互いの障がいを認め合って配慮しようということ。フェアとは、健常者障がい者にかかわらず、一人ひとりの自己ベストの発揮を公正に評価するということです。実際、組織長の半数以上が障がい者です。業務は、入館証の発行や健康診断データの発送、コピー、契約書のPDF化などリクルートグループ各社の事務代行です。また、リクルートグループ各社が運営するサイトの情報の審査もバックヤードとして行っています。在宅勤務の地方在住メンバーもおり、朝夕はiPadでテレビ会議をして、日中はチャットでやり取りをしています。


湊美和さん (リクルートオフィスサポート 経営企画部)




同社では、特定の障がいに特化するのではなく多様な障がいのある方を雇用しています。




設立当初は下肢障がい者を中心に採用していました。しかし、首都圏における障がい者採用競争の激化により、現在は精神障がいや免疫障がいなど、様々な障がいの方を採用することでグループの法定雇用率を達成し続けています。


(同)



このオフィスに入居してから10年ほどとのことですが、従業員数が右肩上がりで増えているため、そろそろ手狭になってきているとのこと。



お話を伺いながら、オフィス内を案内していただきました。



すぐ気がつくのは、照明のスイッチやセキリュティーの社員証カード照合機など、一般的な機器がすべて普通より低い位置にあること。ドアはすべて半自動の引き戸になっており、力を入れずに開閉できるようになっています。



リクルートオフィスサポート オフィス

(※画像: 同社提供)



リクルートオフィスサポート オフィス

(※画像: 同社提供)



受付では、呼び出しの内線電話も、高い位置と低い位置の2台が設置されていた。(※)

受付では、呼び出しの内線電話も、高い位置と低い位置の2台が設置されていた。(※画像: 同社提供)



おなじみのタイムカードも低い位置に

おなじみのタイムカードも低い位置に(※画像: 同社提供)



リクルートオフィスサポート オフィス

(※画像: 同社提供)



通路には車いす通行のための養生。

通路には車いす通行のための養生(※画像: 同社提供)



通路はもちろん、執務エリア内の曲がり角にもカーブミラーが設置されている

通路はもちろん、執務エリア内の曲がり角にもカーブミラーが設置されている(※画像: 同社提供)



災害時、車いす利用者を階段で昇降するためのイーバックチェアを随所に設置(※)

災害時、車いす利用者を階段で昇降するためのイーバックチェアを随所に設置(※画像: 同社提供)



オフィス内の自販機コーナー。車いすの低い位置からでも商品選択や支払いができるようになっている。

オフィス内の自販機コーナー。車いすの低い位置からでも商品選択や支払いができるようになっている(※画像: 同社提供)



トイレは車いすで楽に回転できる広さ(※)

トイレは車いすで楽に回転できる広さ(※画像: 同社提供)



障がい者用のトイレは3・4階に3個ずつあるのですが、障がいによっては時間がかかりますので、渋滞を回避するために、「今入っています」というセンサーを自席で見られるようにしています。


(同)



「健康管理ルーム」には保健士2名が常駐。健康相談や血圧測定なども可能。(※)

「健康管理ルーム」には保健士2名が常駐。健康相談や血圧測定なども可能。(※画像: 同社提供)



手動装置を使って自動車で通勤している下肢障がいの方も(※)

手動装置を使って自動車で通勤している下肢障がいの方も(※画像: 同社提供)



障がい者が快適に働いているリクルートオフィスサポートのオフィス。随所に一般のオフィスとは異なる配慮を目にすることができ、とても新鮮な体験でした。




■ユーザーを増やし、企業の利益に直結すアプローチとしてのユニバーサルデザイン


そもそも、バリアフリーオフィスを導入するためには、どのようなアプローチや考え方が必要なのでしょうか。



日本ファシリティマネジメント協会でユニバーサルデザイン研究部会長を務める似内史朗さんを訪ねました。



――ユニバーサルデザインとは、バリアフリーとは違うのでしょうか。


似内 ユニバーサルデザインもバリアフリーも多様な人にとって障がい障がいなく使いやすい環境を作るという点では同じです。しいて言えば、バリアフリーというのはバリア、つまり障がい障がいのある人や高齢者などにとっての障がいをなくすというアプローチです。これに対して、ユニバーサルデザインは、10の能力がある人を想定して作ったプロダクトや建築、情報機器を、能力が5や2の人でも使いやすくするというアプローチです。皆が使いやすくなるということは、ユーザーが増えるということです。ユーザーが増えれば、顧客が増え、売り上げが増えることにつながりますから、ユニバーサルデザインはマーケティングとしても成り立つわけです。企業にとっても、働く人が限られるオフィスでは困る。車いすに乗っていても能力が高い人はいるわけですから。そういった人を排除せず、より広い領域をカバーできることが企業にとっても有利になるわけです。


ユニバーサルデザインは「Human centered design」とも言われます。物の作り手からの発想ではなく、使い手の発想でデザインしなければならない。使い手は健常な人だけでなく、障がいのある人やお年寄り、日本語が分からない人もいるから、そこを考慮しなければならなりません。


働き方改革が叫ばれる今は、まさに「人にフォーカスする時代」であり、そうした意味でユニバーサルデザインの理念が一般的になりつつあると言えます。障がいのある人と接することをためらう傾向もありますが、パラリンピックでも障がいのある選手を見る機会も多くなり、意識もだいぶ変わってきたのではないかと思います。



似内史朗さん

似内史朗さん



――パブリックな場と働く場のユニバーサルデザインでは違いはあるのでしょうか。


似内 パブリックなスペースには不特定多数の様々な人が訪れます。障がいは障がい者の側にあるのではなく、社会の側の方にあるという考え方が基本にあります。駅がバリアフリーの工事で使いやすくなるのは、社会の側(この場合は駅舎)を修正しようとしているわけです。


一方、ワークプレイスの領域においては、ユーザーがある程度特定されるという意味で、少し事情が異なります。ユニバーサルデザインは「Design for All」が基本ですが、ユーザーが特定されるならば、個人にとっての個別な最適環境が存在するということから「Design for Each」、言い換えればパーソナルなデザインが可能であると言えます。


ところが最近、先進的なオフィスで導入され始めたABW(Activity-Based Working)は、ユニバーサルデザイン/バリアフリーの問題のかなりの部分が解決すると考えています。ABWはオフィスの中で固定的な執務場所が決まっておらず、その人が、その時間に、その時の仕事の内容によって一番働きやすいと思う場所を選んで働く方法です。ABWが導入されることによって、障がいがある人も健常者も、それぞれ働きやすい環境を選べるようになるわけです。寒いと感じる人や暑いと感じる人が、好きな温度の場所で仕事をできるようになったのと同じように、車いすの人は広めの場所を選ぶことができるし、狭い場所の方がよければそういう場所も選択できる。教条主義的にすべての通路を広くしないといけないと考えるのではなく、自分のスタイルや嗜好により、働く場所を自らの意思で選択する。その上で、必要性に応じて直さなければならないハードは、変えていけばよいのです。


ABWはもともとユニバーサルデザイン/バリアフリー対応の観点から生まれたものではありませんが、ワークプレイスのユニバーサルデザインの最終解答に近いのではないかと思います。オフィスの中のABWだけでなく、在宅勤務、近所のカフェなど様々な場所を含めて考える広い意味でのABWならば尚更のこと、障がいのあるワーカーも選択肢が広がります。オフィスの中でのバリアよりも、通勤時のバリアの方がずっと大きいのですから。


公共空間のユニバーサルデザインと、ワークプレイスのユニバーサルデザインの違いを、自己流ですが整理してみました。



公共空間のユニバーサルデザインと、ワークプレイスのユニバーサルデザインの違い (似内さんによる ※)(同じユニバーサルデザインでも、パブリックスペースとワークプレイスではアプローチや考え方が異なる)

公共空間のユニバーサルデザインと、ワークプレイスのユニバーサルデザインの違い (似内さんによる※)


(同じユニバーサルデザインでも、パブリックスペースとワークプレイスではアプローチや考え方が異なる)



■Activityと同時にAbilityにもとづいてオフィスをデザインする



――パブリックスペースとワークプレイスでは、そもそもの出発点から異なりますね。


似内 パブリックスペースの場合には、社会には様々に異なる能力をもつ人がいることを前提に、基本的な人権として、どこででも行動できることが必要になりますが、ワークプレイスは、知恵を出す人が利益を生む場所です。つまり企業の富の源泉となります。ですから、人の知恵をいかに引き出すかがワークプレイスの重要課題となります。


GAFAの成功も、かつてのように資産(アセット)ではなく人の知恵によるものですよね。こうした傾向はこれからどんどん強まっていく人フォーカスの時代、アイディアの時代といわれる理由です。ファシリティマネジャーの重要性も増してくと思っています。これまではアセット維持に必要なファシリティコストを削減することが最重要だったわけですが、これからは(勿論コスト削減も重要ですが)人が生産性・創造性を発揮する環境をつくっていくことが最重要な仕事です。人件費はファシリティコストとは一桁違う額ですから。経営資源がヒト・モノ・カネ・情報と言われますが、ヒト(従業員)に対してモノ・カネ・情報がベストの環境をつくるために貢献する。ある意味で業種を問わずに、人の生産性を上げることが重要となるわけで、従業員の健康や働く意欲の基になる幸福感・快適性といったものが重要になる。その環境を作り上げるのがファシリティマネジャーというわけです。こうした人中心の時代に、ユニバーサルデザインという思想がすごく重要となるのは必然です。


公共空間では、すべての人がちゃんと生きて活動できることを保証しますが、ワークプレイスでは人材は経営資源です。ワークプレイスでは、投資対効果の問題になりますが、パブリックスペースのユニバーサルデザインは基本的には人の手を借りずに自分の力でできるようにします。ハード対応が原則ですが、障碍者差別解消法で合理的配慮が求められるように、人々のちょっとした気遣いや手助けなど、いわば「ハート」的な対応も求められます。人々のパブリックマインドが重要なのです。日本人は同調圧力が強いというか、欧米などと比べると、優先席の譲り合いなどに躊躇する面があります。多様性への寛容、つまり多様な人がいることに対して、まだ拒否反応がまだ残っているのかもしれません。これは、よく都市の繁栄を阻害している原因と指摘されます。


話は戻りますが、ワークプレイスのユニバーサルデザインは広義のABWが有力な解決法になりますが、障がい者だけでなく、子育てをしている人、介護をしている人も働きやすくなるわけです。個別の能力や状況に応じた働き方を提供するわけですから、「Activity Based Working」であると同時に、「Ability Based Working」でもあるわけです。



――ダイバーシティを重視するということは、ActibityだけでなくAbilityも考慮することになるわけですね。


似内 ABWによってオフィス内での人材の流動性は高まりますが、そうすると管理するのが難しくなるのではないかという声が出てきます。しかし、そもそも従来の島型対向レイアウトがなぜ選ばれつづけてきたかというと、管理しやすかったからという理由に過ぎません。ピラミッド的な組織構造において、管理というものは、サボる人がいるなどネガティブな理由で必要だった。個人的な考えですが、僕は「管理」という概念を見直すべきだと思いますね。評価方法を改善したり、管理者の存在意義や役割を規定しなおしたりすれば、流動性の高いオフィスで、より能率が良い組織を実現できるはずです。


元同僚の障がい者の話を聞いたことがありますが、通勤はすごく大変だけど、職場に来たらほとんど問題ないとのこと。そもそも、なぜ通勤しなければならないのか、家で働いた方が生産性は上がるかもしれない。通勤して長時間働くという慣習自体が無駄だらけだし、いまの時代には当てはまらない。企業業績に結び付いているというエビデンスがなく、過去のルールや価値観が残っていることで、子育て中の人や障がい者の能力が排除されてきたわけです。今、日本の生産年齢人口が減り、生産性も低いといわれている中で、そんな無駄を温存する余裕はないはずです。どのように働くことを創意工夫していくか、そこがワークスタイル改革、働き方改革だと思います。昔ながらの働き方に郷愁を覚える世代もいますが、気持ちを早く変えなければならないでしょう。



――障がいがあるわけではない子育て中の女性、介護離職してしまう人、退職するシニアなどが働きづらい理由が、仕事の本質から外れた管理や会社の仕組みにあると。


似内 おっしゃる通りです。必然的にそう変わってくるのではないでしょうか。



■ユニバーサルデザインを導入するための指標



――オフィスのユニバーサルデザイン化に取り組むためには、どうしたらいいのでしょうか。


似内 最近、都心部の大型ビルはユニバーサルデザインの観点からもよくできているものが多い印象です。バリアフリー法の円滑化誘導基準に適応すると容積率が実質的にアップする仕組みがうまく働いているのだと思います。ユニバーサルデザインの建築設計への組み入れという点では、少し手前味噌ですが、(公)日本ファシリティマネジメント協会のユニバーサルデザイン研究部で考案した「ユニバーサルデザイン・レビュー」を活用することも一考でしょう。基本構想、基本計画、基本設計、実施設計、建設の各段階で、ユーザビリティやアクセシビリティの観点からレビューし、使いにくいところがあれば提案を行う。早い段階で提案するほど費用もかかりません。建設段階まで進み、「そもそもこの階段がおかしい」などという話になると、作り直さなければならなくなりますから。ユニバーサルデザインを熟知している設計者なら、図面を見て改善すべき箇所を指摘できますから、少しずつ軌道修正できます。また、研究会ではオフィスビル計画のためのCASUDA(ユニバーサルデザイン総合評価指標)というオフィス限定の指標をつくっています。スケルトン、インフィル、運営維持という3視点から、遵守しなければいけない事項(マスト)と、ユニバーサルデザインの観点から評価すべき事項(ベター)の2軸で格付け評価し、ビルの格付け評価を行います。


最近急速に注目されているWELL認証(WELL BUILDING STANDARD)も本質的には、人間中心の考え方はユニバーサルデザインにかなり近く、また個別項目としてアクセシビリティやユーザビリティの指標項目があります。ユニバーサルデザインよりも広い意味での環境、働きやすさ、快適性、ウェルビーイングなどを定量化する精緻な指標であり、グローバルに認知された認証制度です。



似内 ワークプレイスにおける「人フォーカスの時代」に至る関連性を、国内とグローバルで比較したものをつくりました。



ワークプレイスにおける「人フォーカスの時代」に至る関連性を、国内とグローバルで比較(似内さん による※)

ワークプレイスにおける「人フォーカスの時代」に至る関連性を、国内とグローバルで比較 (似内さんによる ※)



似内 日本は政府主導で働き方改革が進んでいます。過残業の問題や生産性向上の問題があり、健康経営やホワイト企業を目指しています。働きやすい会社は、社員の幸福度が高く、生産性が高く、疾病による病欠率も少ない、人にやさしい企業という評判から人材も確保しやすくなるという流れになる。また「アイディアの時代」においては、必然的に「人フォーカスの時代」となります。先ほど申し上げましたが、経営資源の中のヒトが重要になり、他の要素はそれを支える構図になりつつあるのではないでしょうか。


一方、国際社会を見ると少し違っていて、2015年のパリ協定とSDGsの国連による採択が静かに大きな地殻変動をもたらしつつあります。すでにESG投資が存在感を持ち、最近では米国大手企業のCEOらが所属する団体ビジネスラウンドテーブルが株主至上主義を見直し、顧客や従業員、サプライヤー、地域社会、株主などすべてのステークホルダーを重視する方針を出しました。儲けだけでなく、環境・社会にも配慮する「トリプルボトムライン」が求められる時代です。ESG投資は、長期的視点で責任を持てる企業、ホワイト企業・ホワイト産業・ホワイト都市への投資の動きです。そのモノサシのひとつとしてLEEDやWELLも位置付けられます。サステナブルで人の快適性やウェルビーイングに優れた都市や建築が求められる。奇しくも、こうして国内も国際社会も「人フォーカス」という同じところに向かって動いています。







今後の課題となるのは、似内さんが気にしていた根強く日本人に残るダイバーシティを阻むマインド、同調圧力かもしれません。旧来の働き方のルールが改革され、オフィスと働き方が変わるにつれて、寛容で上機嫌な働き方の実現を期待したいと思います。





取材協力


リクルートオフィスサポート[外部リンク]


似内 志朗(株式会社ヴォンエルフ シニアアドバイザー/FDL代表/筑波大学客員教授)




編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
取材日:2019年8月8日、13日




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