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残業を減らしながら生産性を高める「ROI(投資対効果)発想の業務改善」

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画像: teguhjatipras / AdobeStock(※)

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■「時間外労働規制」に対する対応はどうなっているか


日本の企業、とくにホワイトカラーの労働生産性は、2010年のOECD加盟35か国ランキングで22位に低迷して以来、先進国中で最低レベルといわれています。2015年の発表でもランキングは20位。時間当たり労働生産性は42.1ドルで、5位アメリカの6割ほどにとどまっています。


日本は世界的にGDP上位で、かつ労働人口が多い国です。これを捉えて、日本では個々人の生産性はさほど高くない、労働人口の多さと長時間労働に支えられて経済大国になったのだ、という議論が起こりました。事実、1995年をピークに労働人口が減少に転じるとともに、日本経済は徐々に減速・縮小する傾向が続いています。実際の景気動向は外的要因に大きく左右されるとはいえ、痛い指摘であることは間違いありません。



そんな中、働き方改革関連法案(以下、改革法)が施行されて6ヵ月が経過しようとしています。


その目玉となるのが「時間外労働の上限規制」。時間外労働を原則月45時間・年間360時間とし、罰則も設けて残業時間を制限しようという法律です。


大きな改革ですから、その成果が統計で裏付けけられるまでには時間がかかるかもしれませんが、実際に厚生労働省の毎月勤労統計によれば残業時間は前年比で減り続けています。 一方で、労働者にとって耳ざわりの良いこの改革に対して、ネットを中心に現場からの批判が続出しています。


問題は、一部の企業で労働時間の削減により成果が低下する事を危惧し、サービス残業・持ち帰り残業が増加している現状です。


新聞などによれば、夜間のカフェ利用が増えており、そこからは、処理しきれなかった仕事をオフィスやカフェ、自宅で仕事をしているオフィスワーカーの姿が浮かび上がります。


日本経済新聞「残業時間短縮 アフター5変革~働き方改革 データで読み解く」(2019年11月20日)



実質的に残業は減っておらず、かつ手続き上は残業していないので手当は支払われない。企業側が人件費コストを削減した上、規制下では回らない仕事を継続できることになってしまうのでは本末転倒といえるでしょう。


ある会社では、全社から担当者が参加する委員会活動が、「一番時間を食っている」というトップの号令一下で廃止になったそうです。この委員会は全社のメンバーが顔を付き合わせて情報交換する貴重な機会だったため、仕事がうまく回らなくなってしまいました。


困った社員たちは関係する部署同士で打ち合わせて情報を補填しようとしましたが、それも「勤務時間中に離席して何をしているのか」と上司に咎められて、できなくなったとのこと。


自社は法定時間内で残業を切り上げ、処理できなかった仕事の一部を下請けの中小企業に丸投げしているケースもあるそうです。ある意味、日本的な対処と言えますが、元請けが規制をクリアできても、請けた中小企業では、もともと自社の業務で手一杯なところ、上流の仕事を丸投げされた上、QCDもキープするようにお達しされたりしますから、たまりません。取引を切られないために職場がブラック化することもあるでしょう。


こういった例に共通しているのは、自助努力によって生産性を引き上げようという発想がなく、「改革法によって引き下げられた残業時間をどう処理するか」という"転嫁"的な対策でしかないという点です。


「ホワイトカラーの生産性向上」というそもそもの問題からどんどんかけ離れてしまうということに、人は気づくべきではないでしょうか。


仕事量が変わっていないのにかけられる時間が減れば、未達部分が発生するのは当たり前です。生産性の向上というテーマに真剣に取り組むなら、本来行うべき業務改善に目を向けるべきなのは言うまでもありません。



画像: Khosrork / AdobeStock(※)

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■「ROI発想」で生産性を見える化し、向上の方法を模索する


株式会社中尾マネジメント研究所の代表取締役社長として、大企業をはじめ多数のコンサルティングを手がける中尾隆一郎氏にお話を伺いました。中尾氏は、「ROIで労働生産性を捉える」必要性を説いています。




経営指標のひとつとして用いられることの多い「ROI(Return on Investment)」は、もともと金融業界の用語で、「投資対効果(投下した資本に対して得られた利益の割合)」、つまり「利益÷投資」を表します。たとえば1万円(のInvestment)を使って2万円の利益(Return)が得られた場合、2万÷1万で、ROIは2ということになります。この指標は、労働生産性の指標としても利用できます。1時間、あるいは1日8時間の業務でどれだけの成果が得られたかが計れるのです。


(株式会社中尾マネジメント研究所 代表取締役社長 中尾隆一郎氏)



中尾隆一郎氏(株式会社中尾マネジメント研究所 代表取締役社長)

中尾隆一郎氏(株式会社中尾マネジメント研究所 代表取締役社長)



I(時間)に対してR(成果)がどう増減するかによって、自社の生産性を数値化・見える化できるとすれば、改革法における残業規制とは、「強制的にIを引き下げることによって、相対的にROIを引き上げる」施策であると考えられます。たとえば、規制によってI(時間)が0.5になれば、R(収益)が1のままでもROIは1÷0.5=2になり、生産性が向上するわけです。


問題は、Rを維持あるいは増加できるかどうかです。無策であれば、そんなことが都合よくできるはずもなく、減らしたI(時間)の中でR(収益)が低下し、業績が悪化してしまうことが危惧されるわけです。


「単位時間あたりの利益」を算出し、Iを減らしながらRを維持・増加させ、労働生産性を改善させるには、戦略に基づいた業務改善の積み重ねが必要になります。



巧まずして、業務改善の成果を上げている企業があります。化粧品開発・販売で100億円を売り上げる、株式会社ランクアップ。徹底した業務のスリム化によって社員のほとんどが定時退社をしている超ホワイト経営について、過去に代表取締役の岩崎由美子氏のインタビュー記事も掲載しています。


社員がほぼ17時に退社する100億円企業!元ハードワーク女性社長が挑む「超ホワイト環境」とは? ~株式会社ランクアップ代表取締役 岩崎裕美子氏インタビュー~



岩崎社長に、再度あらためて、この問題について伺ってみました。




業務改善のために必要なのは、「一人ひとりの仕事内容の切り分け」だと考えています。より重要な仕事により多くの時間をかける。当社はそのために、全社員の「業務の棚卸し」を実施しています。定期的に「業務棚卸表」を作成し、「何に」「どれだけ時間がかかったか」を数値化しました。



ランクアップで用いられている「業務棚卸表」の例




これをもとにして上長とのすり合わせを行い「どの仕事をするべきか・どの仕事はしないでいいか」を決定・実践させています。


岩崎裕美子氏(株式会社ランクアップ代表取締役社長)



■重要なのは「やらない仕事」を明確にし、「実際にもやらない」こと


一見シンプルに見える「業務棚卸表」ですが、業務を切り分け、その所要時間を算出して、一人ひとりの働き方を見える化する効果があります。それを整理・分析することによって、生産性を引き上げる業務改善が進むわけです。


ご覧になれば気づくと思いますが、これはよく言われる「仕事の優先順位をつける」プロセスと同内容の表です。業務内容を「やるべき仕事」→「やった方がいい仕事」→「どちらでもいい仕事」→「やらないでいい仕事」と切り分け、より成果の高い仕事を優先的に処理していこうというわけです。


もちろん、成果に直結する重要な仕事は明確にすべきですが、多くの人は自分の仕事の持ち分があるので、「やるべき仕事」は比較的簡単に抽出できます。重要なのはその逆、「やらないでいい仕事」を見極め、書き出して特定することです。


やらないでいい仕事をしなくなればI=時間は小さくなります。さらに、その時間をより利益に近い仕事に振り向けられれば、R=成果の拡大が期待できます。生産性が上がるわけです。



ところが、前出の中尾氏は、ここに思わぬハードルがあると指摘します。




大事なのは、「やらない」と決めた仕事を「本当に」やらないことです。業務を仕分けして優先順位の高い仕事が終わったときに、「時間があるからこれもやっとくか」というのが、危ない。「やらないでいい仕事」を時間があるからとやってしまえば、結局、R(成果)は上がりません。「やらないでいい仕事」を「やらない」ことで生み出した時間の一部を、よりR(成果)に直結した業務に振り向けることが重要なのです。


一番いいのは、目の前に積まれた仕事の山から1度離れて、「インプット(勉強)」に時間を振り向けることだと思います。米中など各国と比べて、日本人のビジネスパーソンはとにかく勉強していませんから。

(前出・中尾氏)



多くのビジネスパーソンに思い当たる節があるでしょう。


仕分けで業務時間が短縮されて創出した時間は、より有意義に使われるべきですが、必要ない仕事に使ったとしたら、結果的にRもIも従前のまま。これでは仕分けした意味がありませんし、生産性も上がらないという最悪の結果になります。


理論としてわかっていても、克服しづらい問題かも知れません。先進企業のランクアップは、この問題をどう解決しているのでしょうか。




社員は、毎週1回上長と週報を行っています。ここで時間の使い方に問題があれば、その時点で各自是正することができます。「この仕事はやらない」ということを上司と共有しているので、部下は安心して「この仕事はやらない」でいられるわけです。全社徹底していますから、社員が必要のない仕事に手を取られることは、当社の場合まずありませんね。

(前出・岩崎氏)




岩崎裕美子氏(株式会社ランクアップ代表取締役社長)

岩崎裕美子氏(株式会社ランクアップ代表取締役社長)



業務の棚卸しでやる仕事・やらない仕事の大枠を定め、週報で日々の仕事の見直しをして、上司と進行を共有する。非常にしっかりした仕組みによって、高い生産性が維持されていることがわかります。ランクアップは、こうした取り組みを積み重ねた上に「社員が定時で帰る」という、一般企業では考えられない優れた働き方と、そこから生まれる社員のワーク・ライフバランスを、高いレベルで実現しているのです。



■「会議の生産性」を考える


生産性改善というと、決まりごとのように言われるのが「無駄な会議時間の削減」です。


弛緩した空気に支配された中、時間ばかり流れる会議の多さにうんざりしている人も多いことと思いますが、実際にどうすればいいのかという答えはなかなか見つかりません。前述した事例のように、やみくもに会議を廃止することがいいとも限らないからです。業務仕分けのように、「した方がいい会議」を切り分け、中身も効率的にできればいいのですが......。




時間を測定すると分かるのですが、会議時間の7割は「資料の説明」で費やされています。ここが「会議の生産性向上」のポイントです。参加者に資料を事前に配布し、目を通してもらうということまではやっている企業が多いのではないでしょうか。


私は、更なる「会議の生産性向上」のために、「事前審議」をお勧めしています。資料を事前に配付する事に加え、参加者に議案に対する「承認/否認」を会議の「事前審議」としてやってもらう、という仕組みです。全員承認、あるいは全員否認が事前に明らかであれば、その議題を会議当日に確認だけすれば良いのです。これにより最大会議時間を7割短縮することが可能です。短縮できた時間の一部を議論に使う事ができれば会議のR(成果)向上が期待できます。

「事前審議」でトップ、例えば社長の「事前審議」の承認/否認表明後に、同じ意見しか言えないイエスマンの参加者は、メンバーから外して本来業務に使ってもらう、なんてこともできます。まあこれは余談ですが(笑)。

(前出・中尾氏)



中尾隆一郎氏(株式会社中尾マネジメント研究所 代表取締役社長)



事前審議によって不要な会議がなくなれば、Iが減るのでROIは改善します。残った会議は、本当に必要な重要案件に関わるものに限られ、かつ事前審議で論点が明確化しているので、それまでよりも短時間で、深い議論をすることが可能です。その結果として、収益の向上、またはリスクマネジメントにつながる判断ができます。結果としてR(成果)が大きくなるので、これも会議の生産性向上に寄与することになります。


会議は、社内のキーパーソンを長時間拘束する場ですから、その生産性の向上はきわめて重要です。その点、岩崎社長のランクアップは、会議についてもユニークな独自の取り組みを行っています。中尾氏のお話を念頭に伺ってみましょう。




当社では、会議は基本的に30分以内で終わらせるルールです。時間がないので、起案する人は事前に内容の資料を配付し、参加者はこれを咀嚼して、自分の意見と可否の判断を持った上で会議に臨みます。会議の席で論点がブレたり、「え? その話初めて聞いたんだけど」といったことがなくなり、深い議論を効率的に行うことができます。


もちろん、30分で結論が出ないこともあります。その場合はもう一度全員を集めるのでなく、意見の異なるメンバーだけで仕切り直させています。ただ、実際のところ、そうしたこともあまりありません。議論のネックになりそうな要素(当社では「懸念」と呼んでいます)を起案者があらかじめ想定して、事前に社内の各部署・担当者とすり合わせを行っているのです。いわゆる「根回し」ですね。「懸念」を最小化した上での会議なので、討議の内容もシンプル、意思決定も短時間でできます。


ちなみに、会議資料ですが、たとえばパワーポイントで飾りつけるようなことは勧められませんね。社内文書であり、内容がわかればいいのですから、ワードのA4に、テキストベースでシンプルにまとめれば十分です。

(前出・岩崎氏)



■トップが明確に指針を示し、全社で業務改善に取り組め


岩崎社長のお話を伺っていると、個々の社員の創意工夫というよりも、トップから率先して業務改善の仕組みを作り、全社で取り組むことが、生産性を引き上げる重要なポイントであることがわかります。一社員がいかにめざましい改善をなしとげ、高い生産性を実現したとしても、その成果と方法論を共有し、システム化し、継続的に運用しなければ、その人だけ・その時だけの結果に終わってしまいます。全体の生産性を高めるためには、トップダウンで全社を挙げて取り組む方が、よりよい結果に早くたどり着くのは当然のことでしょう。そのためには、いうまでもなくトップ=経営者の資質が重要になります。高い意識と知見、加えて断固として実行する行動力がなければ、その成果はおぼつかないでしょう。



中尾氏も、「優れた経営マインドを持たない経営者は、淘汰されるしかない」と言います。




ROIのIを短縮するのは、生産性向上の第一歩に過ぎません。それだけでは企業に一番必要なR=収益が向上しないですよね。改革法の上限規制だけを実現しても、本質的な生産性向上はできないのです。当たり前ですね。


安定的に利益を出し続けることこそ経営者が目指すべきものです。利益を上げ続けるために、トップは全社に長期・短期の両方を睨みながら、進むべき指針を示し、目標を設定し、部下を鼓舞するのです。生産性を測定するのは、利益を上げる重要な手段の一つであり、これを改善するにはトップのあり方が問われます。何をどうなすべきか。その大元にあるのが、経営者の「理念」「マインド」「戦略」なのです。


ここがちゃんとしていない経営者、またそういう人が率いる会社に未来はないでしょう。今は求人倍率が高く、売り手優位な転職市場です。「ウチの会社、危ないかも」と思った人は、転職しやすいうちに身の振り方を考えた方がいいかもしれませんね。

(中尾氏)



経営者の意識は、社内の雰囲気にも影響を及ぼします。


「自分の仕事は終わったけれど、同僚が皆残業しているのを見ると帰りづらい。自分だけがいい思いをしているようで気が引ける」という話は、よくあると思います。いろいろ理由があってそういう雰囲気が醸されているのでしょう。しかし、トップがそういう雰囲気を肯定している、あるいは無頓着であることも大きな要因である気がします。これについて岩崎社長に聞いてみました。




当社の場合は逆ですね。みんな定時で帰ってしまうので、かえって、残って仕事をしづらい雰囲気があると思います(笑)。当社は月20時間の残業を認めていますが、限度いっぱい残業するケースは、特別な時期、あるいはプロジェクトに関わる場合以外、基本ありません。私自身そうしていますし、社員にとってもそれが当たり前の働き方になっています。


毎月「残業ランキング」というものを発表しています。特段の事情なくランキングの上位に来るのは不名誉なことなので、社員は皆時間外にはみ出さずに仕事をこなす努力をしています。3ヵ月連続で20時間超の残業があった場合は、業務棚卸表を下にして業務の仕分け直しを行うことになっています。

(岩崎氏)



やはり、トップが高い目的意識を持って業務改善に気を配り、率先して理想的な働き方を実践していました。そのための周到な仕組みを作って「仕事を早く切り上げて帰る」雰囲気を作っていることもわかりました。短い労働時間で、100億円という高い年商を維持しているのを見れば、生産性のROIも高止まりしているのでしょう。


ダラダラ残業のために生産性が頭打ちになっている企業には、ぜひ参考にしてほしい取り組みです。



■ブラックでない限り、現状に問題がある企業ほど改善の成果が上がる


企業の生産性を数値化し、改善していくためのROIという指標。理論としてはほぼ申し分ない手法といえますが、実践的に考えると全く問題がないわけではありません。


たとえば、ホワイトカラーの生産性を考えるROIでは、「何をもってR(成果)と考えるか」。営業部門であれば、ブルーカラーと同じように成績÷労働時間で算出できますが、間接部門、後方支援セクションの生産性をどう評価するべきか、なかなか難しいところです。


しかし、全社の労働生産性を大づかみに捉えるのであれば、「R(利益)÷I(従業員の総労働時間)」で考えれば十分ではないでしょうか。これを年次で比較していけば、生産性の推移を読み取ることができます。




そういう取り組みをしないで、「生産性が上がらない」とぼやきながら何もしていない企業がたくさんあります。口が悪くて申し訳ないけれど、それはトップの怠慢だとしか思えません。あり方としてダメですよ。


平均値になりますが、成果につながるメインの「やるべき仕事」というのは、7割強というデータがあります。残りは何かというと「準備時間」と「手待ち時間」です。時間は、有限な経営資産です。「準備時間」と「手待ち時間」を減らし、「やるべき仕事」の比率を高める。これは従業員の努力だけではできません。組織、会社で取組む重要テーマです。そのための第一歩が「業務の仕分け」です。

(中尾氏)



業務仕訳によってムダな仕事時間を完全にカットできれば、平均値によると生産性が3割アップする計算になります。


この数字は、生産性の対策をしていない企業ほど高くなります。中長期の戦略的視座に立てば、総人件費の圧縮+収益向上が見込める、非常に有意義な取組みの第一歩といえるのではないでしょうか。


生産性の向上は、女性の働き方支援やワーク・ライフバランスの向上にも結びつきます。




経緯はいろいろありますが、定時退社のルールは、「ママが辞めない会社を作りたい」という私の強い願いから実現したと思います。結婚・出産・育児を理由に女性が働けなくなる状況を変えたかったんです。今の会社を興したのも、もともとそういう思いからでした。


業務改善とか優れた生産性とか、褒めていただくのはありがたいのですが、それ自体が目的ではありませんでした。私にとって大切だったのは「子育てと仕事の両立」。私自身はもちろん、社員のほとんどが女性の当社にとって重要な問題でしたから、そこは今日までぶれることがありません。現在、社員は不要な残業をすることなく、定時で仕事を切り上げて子どもの世話ができるようになりました。自画自賛ですが、そこにたどり着けた自分の「思い」に関しては、ちょっとした自負もあります。

(前出・岩崎氏)



全企業の7割を占める中小企業に対しても、2020年春には改革法が適用されます。罰則があるだけに、同法の適用は多くの会社に影響を及ぼすことになるでしょう。


実際問題として、法に抵触するほど生産性が低迷しているのであれば、適用を座して待つのではなく、「攻め」の姿勢で業務改善に取り組むべきでしょう。ROIという指標もあります。いち早く着手して成功したランクアップというお手本もあります。ある意味、「早い者勝ち」とも言えます。自社の健全性に自信があるのであれば、トップは信念を持って改善に乗り出すべきではないでしょうか。



著書とともに(中尾隆一郎氏)

著書とともに(中尾隆一郎氏)







取材協力

中尾隆一郎氏(株式会社中尾マネジメント研究所 代表取締役社長)

岩崎裕美子氏(株式会社ランクアップ 代表取締役社長)




編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
取材日:2019年8月19日、10月29日

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