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働き方改革元年、中小企業でテレワーク導入が進まない理由を克服するために

Momius / AdobeStock

画像 : Momius / AdobeStock (※)



■企業にも従業員にもメリットのある「新しい働き方」


「テレワーク」の導入が進んでいることを報じるニュースが増えています。


日本経済新聞社が実施する「スマートワーク経営調査」によると、在宅勤務を導入している企業は2019年で53.0%に上りました。同調査は3回目で、初回2017年からの推移をみると、導入企業数は35.4%→44.2%→53.0%と3年連続で大きく伸びています。


また同年8月にエン・ジャパンが発表した従業員300名未満の中小企業を対象としたアンケートでも、14%が「導入している」と回答しています。



『人事のミカタ』アンケート| エン・ジャパン(en-japan)(外部リンク)



テレワークとは、Tele(離れた)+Work(仕事)=「PCや携帯端末を使い、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」のこと。2018年3月に国土交通省が行った「テレワーク人口実態調査」では、テレワークについて「知っている」と回答したのは全体の1/4に過ぎませんでしたが、ここ数年の間に、企業にも社員にもメリットが高い新しい働き方として広く認知されつつあります。




平成29年度テレワーク人口実態調査-調査結果の概要-

平成29年度テレワーク人口実態調査-調査結果の概要-(PDF)(※)



ICTの活用によって、オフィスに出なくても自宅や出先で仕事ができることから、「働く場所・時間を自由に選べる」「ライフステージが変化しても働き続けられる」などに代表されるワークライフバランスの向上をはじめ、「『痛勤』の苦労から解放される」「出張など地方や海外での業務を効率化できる」など、ワーキングパーソンの自由度を高めます。また遠隔地でも働けるため、地方在住者が転居しないで導入企業に就職・転職できることも大きなメリットです。


会社サイドから見ても、従業員の負担軽減による生産性の向上、働きやすさのアピールによる企業イメージの大幅な向上、「離職率の縮小」「交通費や事業所維持等のコスト軽減」「遠隔地の優秀な人材を雇用することができる」など、高い有用性があります。3.11の東日本大震災、また近年散発している台風や豪雨による水害など大規模な災害時にも、通勤困難者が働けることから事業を継続できることが実証されました。



テレワークは「働き方改革」と高い親和性があります。政府は2013年に閣議決定し、翌年改訂された「世界最先端IT国家創造宣言」で、


・2020年にテレワーク導入企業を、2012年比で3倍増させる

・2020年にテレワーカーを全労働者数の10%以上にする


という目標を明らかにしました。テレワークの推進は改革のまさに目玉のひとつです。


正確な統計結果は後年まで待たなければなりませんが、上記の調査結果を見ると、目標達成の可能性も低くはないように思ってしまいます。



しかし、そう簡単には言えない現実もあるのです。



■大企業と中小企業の間で広がる導入格差


上記「スマートワーク経営調査」は「上場企業と有力な非上場企業708社」からの回答をまとめたものです。日本の上場企業数は3,663社(2019年3月現在)です。一方、エン・ジャパンのアンケートの対象は、中小企業のうち「同社のweb情報サービスを利用している企業491社」。サンプルが少ないだけでなく、情報サイトを積極的に利用する限られた企業の回答がベースになっており、中小企業全般ではなく「働き方に敏感な一部の先進企業」における結果である可能性が高いと思われます。加えて、よくよく調査結果を見れば、テレワーク未導入の企業の5割は「今後も導入する予定はない」と回答しており、「一部の先進企業」においても導入意欲の温度差があることが窺われます。



実際にリアルな中小企業のテレワーク導入率はどうなっているのでしょうか。


前述の国土交通省「テレワーク人口実態調査」の母集団は就業者29万人、有効サンプル数は4万人ですから、確度としてはこちらの方がより実態に近いと考えられます。企業規模別に、自社が全社的なテレワークを制度として導入しているという就業者を見ると、20人未満1.7%、20~99人1.6%、100~299人で2.4%となっています。




テレワークの普及度合いと実施実態(国土交通省)

テレワークの普及度合いと実施実態(国土交通省)(PDF)(※)



つまりテレワークの導入には大企業と中小企業の間で少なからぬ格差があり、また広がりつつあると言えそうです。



こうした実態について、企業を対象にテレワークに関する普及啓発や導入支援、ビジネス提案などを行っている、株式会社テレワークマネジメントの田澤由利氏(代表取締役)は次のように語ります。




国が推進していることもあり、大企業のテレワーク導入はかなりのスピードで進んでいます。メディアに取り上げられることで、企業CMなどよりずっと高いイメージアップが図れることも理由のひとつです。最新のICTシステムの導入に費用をかけて、生産性も高めることもできます。「働き方改革」の一環として、テレワークを進めるメリットは大きいでしょう。これに比べて地方の中小企業は、まだまだ「働き方改革」自体が進んでいません。中でもテレワークに着目し、実施しようという企業は少ないのが現実です。今のまま推移すれば、テレワーク導入の企業間格差は、ますます広がりそうです。でも実際には、大企業より中小企業こそテレワークを導入しやすく、効果が出ると私は考えています。


(株式会社テレワークマネジメント 代表取締役 田澤由利氏)





株式会社テレワークマネジメント代表取締役 田澤由利氏

株式会社テレワークマネジメント代表取締役 田澤由利氏



こうして見ると、「テレワーク導入企業を3倍にする」という政府目標は、そう簡単には達成できないと悲観的になってしまいます。




■先進企業はテレワーク導入で何を得たか


そんな中、いち早くテレワークを導入し、成果を上げている中小企業もあります。


システム開発を行う株式会社ソニックガーデンは、テレワークを追求した結果、本社オフィスを廃止してしまいました。そのユニークな就業スタイルが各方面から注目されています。




2013年頃からテレワークを拡大し、現在では全社員が18都道府県にまたがる自宅で仕事をしています。中には海外を旅しながら働いている者もおり、働き方の自由度は全企業の中でもトップレベルだろうと思います。2年前にはオフィスという概念も捨てて、自社開発ツールを使った「仮想オフィス」で仕事をするようになりました。メンバーの顔が見えて自由闊達なやりとりできる環境があれば、モノとしての本社オフィスは必要ないというのが当社の考え方です。現在は、「ログインしている時間=働いている時間」とする自由な就業スタイルを実現しました。


(株式会社ソニックガーデン副社長 藤原士朗氏)





自社開発のコミュニケーションツール「Remotty」によるソニックガーデンの仮想オフィス画面。(※)

自社開発のコミュニケーションツール「Remotty」によるソニックガーデンの仮想オフィス画面。(※)




また、不動産販売・賃貸業の株式会社ワンマンバンドは、9名という少人数ながら、全国、さらに海外まで及ぶ物件を販売・賃貸しています。同社が中小の不動産業者につきまとうイメージを払拭するテコになったのがテレワークでした。





町の不動産屋さんというと、旧型のパソコンとプリンタで女性の事務員さんが仕事をしているイメージがありますよね。来客があると印刷した物件情報を見せ、問い合わせがあれば、FAXで資料を送って具体的な話は電話で、みたいな。そのイメージから一歩踏み出したいという意図がありました。当社が扱うような賃貸・売却物件のお客さんは、圧倒的に若い方が多いので、不動産屋に出向くよりもネットで調べてオンラインで問い合わせ、という当社の進め方の方が喜ばれます。少人数でも全国をカバーしながら迅速な取引ができる体制として、テレワークは当社とマッチングのいい働き方といえました。


(株式会社ワンマンバンド代表取締役 坂田憲一氏)





株式会社ワンマンバンド代表取締役 坂田憲一氏

株式会社ワンマンバンド代表取締役 坂田憲一氏




ソニックガーデン、ワンマンバンドの2社とも、業界あるいは企業社会で常識とされていた概念を、テレワークの導入によって打ち破ることに成功していると言えます。


とくにオフィスを持たないソニックガーデンでは、維持コストの削減を実現できています。また「仮想オフィスにログインしている時間は就労中」というルールが確立しているため、労務管理上も負担が少ないと想像できます。ちなみに同社は「管理しない方が仕事がはかどり業績も上がる」という考え方のもと、「管理しないマネジメント」を標榜しています。



「管理ゼロ」は働き方改革の最終形か~ISAO、ソニックガーデンが実践するオープンでフラットな組織』(「みんなの仕事場」)



一方、ワンマンバンドは、地域の中小不動産業に対するステレオタイプな印象から脱却し、いち早く客層にマッチしたビジネススタイルをとることで、自社の規模を超えた顧客獲得に成功しています。


さらに、2社に共通している成果が、「人材獲得」と「商圏拡大」です。少し詳しく聞いてみましょう。





当社は8年前の創業当時から、在宅勤務主体の働き方を考えていました。一番の目的はリクルーティング。全国から優秀な人材を集め、働いてもらうためには、自宅から離れなくていいテレワークがいいだろうと思いました。とくに在宅女性の戦力化に期待していて、最初に採用した社員が当社の希望にとてもフィットした方だったので、「これでいいんだ」と意を強くしました。


また全国で在宅勤務をしてもらっているので、各地域の物件を取引できるようになりました。当社はこれをさらに拡大して、バングラデシュでの事業を行っています。社員のうち1名は当地の専任者ですから、残り8名で全国の物件を扱っていることになります。非常に効率的な事業展開ができていると思いますね。大手を含めても、業界内でこういうビジネスができている会社はまずないと思います。


(ワンマンバンド 坂田氏)






すでにメンバーは全国に散らばっていますが、新規採用についても90%が関東圏以外からの応募です。この業界では、東京は深刻な人手不足で、優秀なエンジニアの獲得競争が加熱していますが、当社はそこに巻き込まれることなく全国から優秀な人材を採用できています。


テレワークの特長を活かし、エリアに縛られない受注ができるのも強みです。実際、横浜在住の担当者が九州の取引先につくなど、受注に対してより適応性のあるメンバーをつける、地域横断的な仕事ができるようになっています。


(ソニックガーデン 藤原氏)





ともに、全国から人材を確保することができ、またその強みを活かして全国的な事業展開に成功しているようです。集約的に本社に人を集める就業モデルでは実現されない、中小企業でも成果を上げられる新しい仕事のやり方を実現させているのです。


多くの中小企業に対しても、テレワーク導入は十分なメリットを見込めるワークスタイルだと言えるのではないでしょうか。



■それでも停滞する中小企業のテレワーク導入


では、なぜ中小企業のテレワーク導入は進まないのでしょうか。



冒頭で紹介したエン・ジャパン調査では、テレワークを導入しない企業に「理由」を聞いていますが、上位を占めたのは、


・テレワークに適した業務がない(48%)

・企業規模が小さいから(36%)

・必要性を感じないから(34%)


などでした。



これらが妥当なのであれば、「中小企業はテレワークを導入するメリットがない」→「ゆえに導入する必要はない」という論法が成り立つことになります。おそらく同じような理由で導入に踏み切れない会社はたくさんあるのでしょう。


前出のテレワークマネジメントの田澤社長は「必要性を感じない」ということについて、次のように述べています。





地方の中小企業には、パソコンはひとり1台ではなく複数の社員が共用、業務は紙をベースにしているところが少なくありません。紙がデジタル化されなければ、テレワークは夢のまた夢です。


問題は「現状で仕事は回っている」ことにあります。「お金をかけてまで、デジタル化は必要ない。第一、誰がそれをやるのか。ましてテレワークなんて......」と考える経営者は、動きません。しかし現実に「人手不足」は深刻化しており、「現状のまま」ではいずれ立ちいかなくなります。経営者は業務のIT化を進め、その延長線上にあるテレワークにたどり着ければ、その先に多くの可能性が広がっていることに気づかなくてはいけません。

(テレワークマネジメント 田澤氏)





「必要性がない」のではなく「必要があり、成果も見込めることに気づけない」という状況。「それでも以前に比べれば、中小企業向けのセミナーに人が集まるようになってきた」と田澤氏は言います。


地方企業がテレワークを導入すれば、今なら「地域で一番」になれるかもしれません。「ITを使った働き方改革に取り組む地元企業」という評価は、採用面などでは有利に働くでしょう。実際に優れた人材を獲得できれば、仕事も変わっていくはずです。



「企業規模が小さいから」という回答は、


・コストがどれほどかわからない、おそらく負担に耐えられない

・限られたエリアでしか営業していないので、あえてテレワークでなくても不都合がない


の2点に集約されるように思えます。



■テレワーク導入にかかるコストは「微々たるもの」


テレワークマネジメントでは、テレワークにかかる費用と効果を無料で診断するwebサービスを提供しています。



テレワーク導入費用対効果診断

テレワーク導入費用対効果診断(※)



必要事項を入力すると、初期費用と運用費用が算出できます。交通費やオフィスの光熱費といった削減できる費用も教えてくれるので、お試しで利用してみるのもひとつの方法でしょう。



ワンマンバンドの坂田代表は、「テレワークの導入コストは微々たるものだった」と指摘しています。





コストといっても、当初は人数分の端末を支給して、webのクラウドサービスの契約、チャットツールの導入くらいのもので、気にするほどのことはありませんでした。当初はテレビ会議のSkypeなどフリーウエアも使っていましたし、負担を感じるようなことはなかったです。そもそも、高額なシステムで運用する大企業に比べて、中小企業の導入コストは格段に安いんじゃないでしょうか。「何に」「いくらかかるか」を調べれば、拍子抜けするくらい安いコスト負担でテレワークに移行できることがわかりますよ。


(ワンマンバンド 坂田氏)





テレワークに従来の取引エリアが拡大するメリットがあることは、本稿の2社の事例で紹介しました。地方の中小企業が事業拡大をなしとげる可能性が生まれたことは、見過ごせないプラス要因です。



■どの仕事にテレワークを導入すべきか


最も多かった「テレワークに適した業務がない」という回答は、何を示しているでしょうか。


まず、先の「必要性を感じない」に共通する事情が関係しているでしょう。多くの中小企業で、現状でも仕事が回っているのであれば、あえてテレワークにすべき仕事は存在しない。つまり「テレワークで高い成果を期待すべき仕事=テレワークに適した業務がない」ということになるわけです。


もうひとつ考えられるのは、組織区分が明確でない中小企業では社員の職域の区別が曖昧で、「掛け持ち」でいろいろな業務をこなしながら働いている場合が多いという現実です。各人の業務範囲が曖昧かつ幅広く、1人で多くの仕事を掛け持ちしている状態では、同じ人がテレワークに向く仕事とそうでない仕事を兼務していたり、どの仕事でテレワークを導入すべきかという指針が立てづらいことがあったりするはずです。


この場合は、まず業務の仕分けを行って、個々の社員の職分を明確にすることが先決になります。そこから、どの業務がテレワークに適しているか、また、今できない業務も、どうすればできるようになるか、を携わっている人全員で考え、テレワークに移行していくというフローで取り組むことが必要です。


たとえば代表電話への応対など、テレワークではうまく回らないと思える仕事でも、クラウドPBXなどを利用して在宅社員の携帯に転送する仕組みを作れば簡単に解決します。ワンマンバンドは、この方法で会社に電話番を置かないですむようになったそうです。



■成功のカギを握る「導入メリットの認識」


以上、中小企業のテレワーク導入を阻害する要因と、その対策について見てきました。


対症療法的なものも多くありましたが、中小企業をめぐる構造的な問題も、導入にブレーキをかけているようです。





この4月から「働き方改革関連法」が中小企業にも適用されます。多くの中小企業が、テレワークに取り組み始めるでしょう。何のためにテレワークを導入するのかを社内で共有した上で、自社に合った形の導入を検討すること、そのために必要なITや各種ツールに関する知識を集めること、そして何より経営者の高い意識が求められます。最近になって、導入を検討する企業は増えているように感じられます。この流れがより加速されればいいと思います。


(テレワークマネジメント 田澤氏)





田澤氏の指摘のうち、とくに重要なのは経営者の「意識」でしょう。


テレワーク導入の必要性、メリットについて正しく認識すれば、経営者は実現のために必要な知識を勉強するはずです。知識が深まれば、ざっくりした導入コストの概略が見えてきます。あとはそのお金を出せるか出せないかの判断だけ、ということになります。



時代の趨勢として、テレワークという働き方はこれからも拡大していくでしょう。中小企業だから、必要ないからとエクスキューズしている間に、導入に向けて舵を切った会社がどんどん先行していく。気づけば取り残されて、人材も採れず業績も頭打ちで企業としての伸びしろがなくなってしまう、という望ましくないシナリオに乗ることもあり得ます。


働き方改革の時代、自社で取り組む一手としてテレワークはきわめて重要な施策です。その気づきを得た企業が、すでにいち早く成果を出しているのを見れば、問題意識を持って、自社での導入を検討すべき段階に来ていることがわかるはずです。


まずは一歩踏み出すこと。本稿で取り上げた企業や導入サポートサービスの情報が、中小企業の背中を押す一助となれば幸いです。






取材協力

株式会社テレワークマネジメント(外部リンク)

株式会社ソニックガーデン(外部リンク)

株式会社ワンマンバンド(外部リンク)










編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局(※印の画像を除く)
取材日:2019年11月15日、12月23日

         

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