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コロナ時代(ウィズコロナ)のオフィス

コロナ下で急速に進む不動産業界のデジタル・トランスフォーメーション

コロナ下で急速に進む不動産業界のデジタル・トランスフォーメーション


コロナの影響が様々な業界に影を落とす中、不動産業界もまた大きく動いている。この業界は住宅やオフィスビル、土地開発や投資、リフォームやシェアスペースなど、関わる業種の裾野は広いが、不動産取引には古い慣習も残り、紙の書類と電話の交渉が業務の手段という企業もいまだ多い。そんな不動産業界にDXの波が押し寄せ、大きく変わろうとしている。



■揺れる不動産市場、DXの先駆けとなった不動産テック


コロナ禍によって、テレワークが浸透するなど働き方が大きく変化した。業績が悪化する企業も多く、さらにワークプレイスが分散化したことにともない、東京都心ではオフィスに空室が増えるなど、不動産市場にも変化が起こっている。



出典:三鬼商事 オフィスマーケットデータ(※)


出典:三鬼商事 オフィスマーケットデータ(※)

出典:三鬼商事 オフィスマーケットデータ(※)



こうした変化にともない、都心からは離れた近郊駅周辺では逆に賃料がゆるやかに上昇したり、住まいの需要も都心部か相当な郊外かに二分化したりといっためまぐるしい動きがみられる。


不動産業界におけるウィルス感染対策として非対面化広く進んだが、それに貢献したのが不動産テックの流れである。


不動産テックと呼ばれる業界のIT化については、当「みんなの仕事場」でも過去に下記のような記事を掲載し、古い商慣習が残り旧態依然としていた不動産業界がIT化の波に押され、多くのベンチャー企業が生まれていることをお伝えした。


業界を揺るがし、変革を促す「不動産テック」の波が来る」(2019/12/26)


これら不動産テックの潮流は、昨今話題になっている「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」のひとつと言える。DXとは、ITを利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させること。国も、社会全体のDX実現に向けて改革を推進する「デジタル庁」設置を最重要政策として位置づけている。


今回は、DXの取組みによってコロナ禍の状況を乗り越えようとしている不動産業界とそれを取り巻く需要について取材した。



■データをオープン化し、海外資本との戦いに備える


不動産業界におけるDXのベンチャー企業として大きく躍進している会社のひとつが、estie(エスティ)である。


オフィスビルの賃料は一般に公開されず、仲介業者が個別に把握しているのみということが多いため、オフィス移転を検討する場合には、わざわざ仲介業者まで問合わせなければならず、賃料が適正なのかも不明だった。これも過去の不動産業界の旧弊と言える。


同社では全国のオフィスビルの賃料データを収取し、国内最大級の不動産マーケットプラットフォームでそれを提供している。非公開の場合は同社が開発したアルゴリズムで推定賃料を算出する。


業界の一大インフラに挑む代表取締役CEOの平井瑛氏に話を聞いた。



平井瑛氏(estie 代表取締役CEO)

平井瑛氏(estie 代表取締役CEO)



――コロナ禍によって不動産マーケットの状況はいかがでしょうか。


平井 コロナショックといっても、数字だけでいえばリーマンショック後の方が何倍もひどいんです。そこまで大きな影響はまだ出ていないと思います。ただし、企業にとってのオフィスの考え方が変化するきっかけにはなっています。


コロナ禍によってマーケットが縮小してニーズが減ると心配しましたが、当社のサービス自体は、むしろ先行きの不透明感に対して、きちんとオフィス賃料のデータを見て判断したいというニーズが増えました。もちろんコロナ禍はマクロでみると大きな損失を及ぼしていますが、データの大切さを知るきっかけになっています。



――コワーキングスペースやシェアオフィスなども増えていますが。


コロナ禍により働き方が大きく変化し、メガベンチャーやIT系企業に限らず様々な企業が本社機能を移すという動きがありました。フレキシブルオフィスについては、事例が少ないので何とも言えませんが、業態として定着するかどうかはまだわからないと思っています。実際、ニューヨークでWeWorkと並んで最大手だったKnotelという会社は経営破綻していますし、フレキシブルオフィスはチャレンジングなビジネスモデルをとっているためまだ安泰とは言えないと考えています。



――御社プラットフォームの利用企業は急増しているそうですね。


平井 不動産デベロッパー、管理会社、仲介会社といった不動産事業者向けの「estie pro」、新しいオフィス移転先を探す企業向けの「estie.jp」を提供しており、特に「estie pro」は毎月30%程度の伸び率で、順調にご利用数を拡大しています。行政レベルに近いプラットフォームを民間で作ったため、絶対にニーズはあると思って始めましたが、予想以上に高いニーズがありました。



――サービスを提供しようと思ったきっかけは。


平井 私は三菱地所で海外不動産投資に携わっていたのですが、アメリカでは不動産テックサービスが普及していて、日本にいながらアメリカのマーケットデータを詳細に入手できます。世界中の投資家がアメリカに投資をすることが可能になっているんです。日本の不動産マーケットとのギャップを感じました。日本の不動産市場は透明性がない、情報格差で有利な業者が得をしているとよく言われますが、そうではなく、必要な人が必要なタイミングで必要な情報にアクセスできないという構造があり、誰が得をして誰が損をしているか分からないことが課題だと思います。日本のそのような現状は「データ」によって変えられると思い、estieを創業しました。



――構造的な原因?


平井 例えばオフィスビルの賃料の不透明さです。適正な賃料が分からないため、ビルオーナーはもっと高く貸せたかもしれませんし、テナント側も不当に高い金額で借りているかもしれないわけです。


2018年のザイマックス調査によると、都心5区でオフィスビルが一度空室になると、5カ月募集しないと決まりません。日本では大体2~5年の賃貸借契約なのに、一度切れると5カ月間、空室になってしまうというのは社会的ロスも大きく、オーナー側も損ですよね。今はデータを使う時代です。賃料を隠すのではなく、発想を変え、データを活用することが必要です。



――コロナ禍によって、不動産業界におけるDXは進展しているのでしょうか。


平井 不動産テックの流れは2018年頃から盛んになっていましたが、2020年4月の緊急事態宣言から1年余り、不動産テック企業は僕らも含めて、本当に顧客が求められているものに向き合ってきました。欧米諸国と比較するとまだ緩やかではありますが、コロナ禍は日本の不動産業界においても確実にDXのトレンドを加速させていると考えています。



――今後の不動産市場の見通しは。


コロナ禍によって、不動産マーケットの調整は進むと思っています。


コロナ前までの不動産マーケットは、リーマンショックでガッと下がり、東日本大震災もあってずっと沈んでいましたが、2013年頃からアベノミクスでお金が流れるようになり、この8年ほどは好景気が続いていました。2019年にそのサイクルが天井に達した状態でしが、今後はマクロでは下がっていくと思います。現時点ではリーマンショック後のときより緩やかなペースで、マーケットの調整が入っています。リーマンショックでは急激にすべての資金繰りが悪化して倒産する業者も続々出ましたが、今回はそういう状況にまではなっていません。



――不動産業界ではこれまでなかった事業ですが、人材の獲得はどのように?


平井 エンジニア、デザイナーなど、トップクラスの人材を採用できています。今は20人体制ですが、事業も拡大しているので年内には30人を超える体制にしていきたいと思います。エンジニアは、自分が作ったプロダクトで顧客や社会の課題を解決したいという強い思いを持っています。自分が創るものがどう社会を変えるのかにすごく関心があるというか。不動産業界は二桁兆円という大きな産業にもかかわらず、大きな課題があることを伝えると、みんな燃えてくれます(笑)。



――それだけ大きな課題があると。


平井 障壁というよりは、不動産業界ではお客さんが困っていることが大きいのです。ビジネスにおいては、定性的なデータと定量的なデータをもって意思決定者が決裁をするべきですが、この業界では定量データがないという状態がずっと長く続いてきました。片手落ちの状態、常に不安定な状態で意思決定をしなければなりませんでした。僕らが取り組んでいるのは、まさにそのような課題です。



――不動産業界の地図はどう変わっていくでしょう。


平井 今後、データをうまく使える会社は収益を伸ばして、それに乗り遅れた会社は収益を落としていく優勝劣敗の流れが進むと思います。コロナ禍で変化する働き方の中で選ばれる会社、選ばれない会社が鮮明になって、結果的に勢力図が変わることもあり得ると思います。


今後、アメリカやイギリスの資本がどんどん日本の不動産マーケットに入ってきます。日本の会社がちゃんとデータを使って儲けていかないと海外と戦えなくなると思います。


少なくとも、我々が一緒に仕事をさせていただいている大手企業はデジタルで経営を変革しているところばかりです。



■コロナ下でもオフィスを拡張移転する企業も


次に、オフィスコンサルティングを企業に提供しているオフィスバンクを訪ね、小久保健一氏(オフィス事業本部・本部長兼大阪支店支店長)にコロナ禍がオフィス移転に及ぼしている影響、DX施策などについて伺った。



小久保健一氏(オフィスバンク オフィス事業本部・本部長兼大阪支店支店長)

小久保健一氏(オフィスバンク オフィス事業本部・本部長兼大阪支店支店長)



――最近のオフィス移転の動向はいかがですか。


小久保 2021年1月に3回目の緊急事態宣言が出ましたが、それによるマイナスの動向はありません。当社のクライアントはベンチャー企業が多いのですが、IT系は業績が順調な企業が圧倒的に多く、むしろ拡張しています。オフィスに集まることのメリットを感じている経営者も多く、事業も順調なため、人を増やすので、6~7割は拡張移転をしています。


都内全体的に空室率は上がり、賃料も下がってきているので、移転したい企業にとっては今がチャンスだと感じています。移転を検討している各企業より様々な要望をいただきますが、オーナー様には今まで以上に相談に乗っていただいております。その中で、フリーレントを含め非常に魅力的な条件を提示いただくケースが出てきています。



――コロナ禍の影響を受けていない企業にとってはチャンスなのですね。


賃料が下落したことにより、今までは予算的に手が出なかった物件に手が届き、今がチャンスと捉えている経営者もいらっしゃいます。


また、現状は定期借家契約により、解約ができない企業もいらっしゃるため、今後も空室率が高まってしまう要素が潜んでいると考えています。そのため、今後も緩やかな賃料下落が続いてしまうと感じています。



――商業テナントなどでは苦戦も伝えられていますが。


たしかにコンビニなどの商業店舗は、特に大型ビルの新築では館内人口を想定して入ったのに、テレワークで人が来ない、当初見込んでいたより売り上げがないということで、定期借家満了のタイミングで撤退する動きがじわじわ出ています。逆にそこを狙って出店する企業も出てきています。



――不動産テックへの取組みはされていますか。


小久保 「グラフェンユニファイ」というクラウドサービスのテック企業を日本ユニシスと立ち上げました。管理会社やオーナー向けのツールで、請求書発行などの業務を効率化したりと不動産管理の自動・自律化を実現するものです。不動産管理会社が今までは人力でやっていたことを自動化することで、違うことに時間を使ってほしいと思います。不動産業界は長らくアナログなものでしたが、不動産テックで業務を自動化する動きは間違いなく来ると思っています。


不動産テックについての認知は急速に進み、感度が高い会社は昨年から専門部署を立ち上げてDX推進に着手しています。この1年ほどで非常に増えました。



■賃貸住宅分野でもDXが進む

ハウスコム社コーポレートサイト(※)

ハウスコム社コーポレートサイト(※)



最後に、賃貸仲介業のハウスコムを訪ね、サービス・イノベーション室 室長・安達文昭氏に賃貸住宅分野における不動産テックの動向を伺った。



安達文昭氏(ハウスコム サービス・イノベーション室)(※)

安達文昭氏(ハウスコム サービス・イノベーション室)(※)



同社では、2015年からオンライン対応に取り組み、現在では問合せから内見、お申し込み、契約、更新までの一連のプロセスすべてをオンライン対応している。コロナの感染対策ということではなく、スマートフォンの普及、SNSやネット通販の一般化、あらゆることがネット上で完結する世界観が広がったことが背景にある。これにより、コロナ禍においても、全プロセスをスムーズに非対面で接客することが可能になった。賃貸契約においては賃借人に対する重要事項説明が必須だが、テレビ会議などのITを活用して行うIT重要事項説明を2017年からスタートし、現在では年間約20,000件、業界でもトップクラスとなっている。



オンライン内見の様子(ハウスコム提供 ※)

オンライン内見の様子(ハウスコム提供 ※)



デジタル化への流れは、不動産業界というと紙とFAXだった状況に、代表取締役社長執行役員の田村穂氏が危機感を抱いたことがきっかけだったという。同社ではそれ以降、オープン・イノベーションと自社開発を併用しながら、各種業務のDX化によって集客・営業力強化・バックオフィス効率化を積極的に進めている。


ただし、コロナの感染拡大以降も、対面での説明や現地を訪れての内見などの要望も多く、実店舗の存在意義は依然として大きい。テクノロジーとリアルオペレーション、各種データの連携が重要だという。



■DXで不動産業界での働き方が変わる


不動産は外圧によって変わる業界だと言われる。冒頭に紹介した前回記事を掲載したのは2019年、「不動産テック」という言葉が聞かれるようになったのはそのわずか数年前のことだが、今回の取材によって、その後、多くのサービスが生まれて拡大を続け、大手デベロッパーから管理会社、中堅・中小の不動産企業にいたるまで、導入側でもDX推進が進んでいることが実感できた。デジタル庁発足も間近に迫り、DXの流れはますます加速しており、今後は選別も進んでいくと予想される。



不動産テックの広がりを表すカオスマップもこの6月に「第6版」に更新された(一般社団法人不動産テック協会※)

不動産テックの広がりを表すカオスマップもこの6月に「第6版」に更新された(一般社団法人不動産テック協会※)



取材の中で印象に残ったのは、estieの平井瑛氏が語っていた「テックを使いこなすのはあくまで人間」という言葉だった。最先端技術を駆使する企業のトップが「人と人の信頼関係」を重要視しているのは意義深い。


不動産業界がDXに期待することのひとつが、「人材不足」の中での業務効率化だ。これまで紙をベースとしてきた不動産業務の煩雑さを軽減することで従業員の生産性を高めることができるだろう。これは不動産業界だけにとどまらず、DXによって働き方が変化していくことを示している。






取材協力

株式会社estie[外部リンク]

株式会社オフィスバンク[外部リンク]

ハウスコム株式会社[外部リンク]




編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局(※印の画像を除く)
取材日:2021年4月26日・5月18・21日

         

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