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アスクル流オフィスリニューアル! リアルとオンラインでシームレスに働く仕事場へ[コンセプト編]

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(右)岩津徹氏(人事総務本部 仕事場改革 部長) (左)長谷川仁氏(同ファシリティマネジメント マネージャー)

(右)岩津徹氏(人事総務本部 仕事場改革 部長) (左)長谷川仁氏(同ファシリティマネジメント マネージャー)



「オフィスツアー編」に引き続き、アスクルのリニューアルオフィスについての取材記事です。


アスクル流オフィスリニューアル! リアルとオンラインがシームレスに働く仕事場へ[オフィスツアー編


当サイトの読者の多くがオフィスの新設や移転を検討されている企業の担当者です。スモールにする方向もあれば、従業員満足度を高めるためのリニューアルなど、オフィスの方向性はさまざまですが、共通して皆さんが希望されるのが、他社のオフィスデザイン担当者とコミュニケーションしたいということ。オフィス改革をどう進めるべきか分からず、オフィス家具メーカーに相談して提案された家具をそのまま置くだけという会社もあるようです。


本記事が、オフィス改革のプロジェクトチームを組み、コンセプトを議論して形にしていく進め方の参考になれば幸いです。



■全面テレワークで「リアルが恋しい」という声が


――コロナ前から働き方改革に取り組まれており、テレワーク制度があったそうですね。


長谷川 テレワーク制度は2018年5月に始まっており、当初は介護休業制度と育児休業制度の該当者のみが対象でした。それを全社員に広げて、原則的には月に4回まで、自宅に限らずカフェなども許容することにしました。しかし稼働率は部門ごとに異なり、全員が均一に活用しているわけではありませんでした。



――このオフィスで働いている方は何名ぐらいですか。


長谷川 このオフィスには、バックオフィス系をはじめ、営業、コールセンター、商品MDなど、物流を除くアスクルの全機能があります。社員850名に加えて、派遣の方や業務委託のパートナースタッフが同数ほどおり、常時1300~1400名が働いています。



――それが、コロナ禍によって否応なく出社ができなくなったわけですね。


岩津 ちょうど働き方改革のディビジョンの中で「仕事場改革」という部門が人事総務本部の中にできた2020年3月に、爆発的なコロナの感染拡大が起こり、出社ができなくなる事態になりました。そこで既存のテレワーク制度を拡大し、テレワークが可能な業務は原則すべて切り替えました。



――出社する人は、ある程度コントロールしているのですか。


岩津 出社するかどうかは業務に合わせて、部門ごとにまちまちです。例えば僕らのいる人事総務本部は完全シフト制で、誰がいつ出社するかを月初めに決めます。一応会社としての推奨は月6日までで、全社平均では社員の出社率は30%程度ですが、部門によっては月に1回程度の出社、今年に入って3回ほどしか来ていない人もいます。



――働き方が大きく変わることで、どんな課題が生まれましたか。


長谷川 全面的にテレワーク化したことで働き方が変わり、これまではずっとコミュニケーション重視で仕事をやってきましたから、バーチャルの会議がほとんどという状況になって「リアルが恋しい」という声も一部から聞こえるようになってきました。


岩津 リアルでのコミュニケーションの機会や場を要望される方が増えました。テレカンは目的を果たすための会議で、終われば切るだけで、意図的に残らないかぎり雑談をすることはない。リアル会議では、そうしたコミュニケーションからいろいろクリエイティブな話が出ることもあります。



――テレカンでは、会議室に入る前後で誰かとちょっと話をしたりといったコミュニケーションが一切ありませんからね。


岩津 そこで、仕事をする場をリニューアルする「ミライベースプロジェクト」を発足させました。各部署が選別したメンバー33人による組織横断的なプロジェクトチームです。



岩津徹氏(人事総務本部 仕事場改革 部長)



――メンバーは若い方の割合が高かったのですか?


長谷川 社員の年代別構成は40代以上が多く、30代は少なく、20代がまた多いという、典型的なワイングラス型です。今回のプロジェクトメンバーの半数は若い層の人でした。若手は若手の意見をしっかりと伝え、ベテランも、それをしっかりと受け止めてくれて、ベテランと若手が融合した良いバランスでした。



――なるほど。具体的にはどのように進めていったのでしょう。


岩津 全体は2段階に分かれており、まず最初に、スペースを有効利用するための断捨離フェーズを2ヶ月ほど設けました。一気に人がいなくなって空きスペースが点在していた状態だったため、出社率を考慮して部門単位でエリアを決め、その中でフリーアドレスにするために、不要なものを断捨離して寄せていきました。サイドキャビネット828台、チェア319台、約37トンにおよぶ処分で、これが大変でした。



――業務の特徴として紙資料への依存度が高かったのでしょうか。


岩津 紙は多かったですね。この機会に紙資料は廃棄して必要なものはデータ化して共有フォルダに入れることにしました。


そうしてスペースを寄せ、全部新しいデスクに入れ替えて、仕事内容に合わせたスペース取りもやって、ゾーンフリーに移行しました。


12階のお問い合わせセンターのオペレーターは休めないので、優先的にスペースを広げて密状態を解消しなければならず、それ以外のチームは一部、11階に下りてもらうことになりました。


一斉にオールクリアしてバッと入れ替えるわけではなく、仕事をする場所を確保しながらリニューアル作業もしていったことが大変でした。玉突きのように作業を進めなければならなかったので。



――新しく作ったところに入るのではなく、働きながらリニューアルするわけですから、大変だったでしょうね。


岩津 プロジェクトメンバーに各部門に帰ってから説得してもらい、皆さんに理解していただきながら進めることを意識しました。



――断捨離の次のフェーズは?


岩津 機能変更実装フェーズです。断捨離をしながら、オフィスに何を求めるかというコンセプトをブレストしました。



オフィスに求める新しいコンセプト、機能役割(円が大きいほど重視)

オフィスに求める新しいコンセプト、機能役割(円が大きいほど重視)



まずはコロナ対策を万全にして安心・安全・秩序・快適を確保することを前提としました。 次に重視したのは、出社した人のリアルコミュニケーションを重視し、イノベーション・価値創出をしやすくすること、そして、出社する機会が少ないからこそ帰属意識を保つことです。他にも集中やリフレッシュ、社外をつなぐ場といったテーマを7つ設けて導いたコンセプトが、「ASKUL CROSSING」です。リアルでもオンラインでも集い、結びつくことができる仕事場であり、多様な働き方、多様な人材が情報を分かち合い、刺激を受けられる場所を目指すことになりました。



――プロジェクトを進める上で苦労されたところは?


長谷川 イノベーションを起こすためにどういう装置が必要かという議論はみんなでしました。偶発的に会う要素とか、すれ違ったときに言葉をかけあえるようなものがあればいいねということは話していました。


岩津 いくつか仕掛けが決まって実装していきましたが、出社しているのは一部の人だということもあり、実際にそれを使う人は限られる。コメントしてくれる人はさらに限られるという難しさがありました。


例えば従業員の位置が分かるビーコンツールがあると便利なのは、体感すれば誰でもわかるのですが、そこまでの啓蒙するのにはやはり苦労しました。これは引き続きやっていかなければいけないところですね。使ってくれる人、いろいろ意見を言ってくれる人は限られるので、もっと多くの人に使ってもらって意見を言ってもらいたいなと思います。



■家具のプロならではの進め方

長谷川仁氏(同ファシリティマネジメント マネージャー)



――デザイン会社など外部の人は、コンセプトを決めるところから入ったのでしょうか。


長谷川 レイアウト変更管理をやっていただいている会社には、早い段階から定例ミーティングに入ってもらって進捗状況を把握してもらいました。どんな議論をしているのか、問題はお金なのか時間なのかといったことも理解してもらいたかったので。


ただ、今回は何かデザインしてもらったということはなく、ここにこの機能を置きたいといったことから、それに即した家具を入れるためにメーカーの展示会に行ったり家具のMDに手伝ってもらったりして進めました。造作のカウンターなどを提案してもらったりはしましたが、デザイン会社に全体を設計してもらったりはしませんでした。



――普通、オフィスデザインはデザイン会社の提案、合意があって手配、施工と進むケースが多いですが、御社の場合は、家具のプロであるファニチャー事業部があるので、そういった進み方にならなかったと。


長谷川 そうですね。什器はこちらが指定する割合が多かったと思います。


岩津 家具に精通しているメンバーもいて、かなり心強かったですね。知識もあり、メーカーにもパイプがあるので、造作物があるところ以外はパースなども起こしてもらいました。



――アスクルならではですね。


長谷川 デザイン会社主導ではなかったのは、ファニチャー事業部があったことが大きかったです。



――当初の「リアルが恋しい」という課題に対しては、どんな工夫をしましたか。


長谷川 例えば「Online to offline」というゾーンでは、出社した人はソファに座ったまま、オンラインで参加している人が画面の中にいて、お互いが一緒にいるように感じられるようにしました。実際にやってみると、非常に親近感を持ちながらミーティングができるので、リアルとオンラインがうまく融合できていると思います。


岩津 ZoomRoomsの機能を使ってダブルモニターにしています。一方のモニターには全参加者をグリッドで表示し、もうひとつには共有画面を表示すると、会議も進行しやすく、一体感を保てます。


長谷川 もはや全員が出社している状況はまず考えられないので、いかに全員が一緒にいる感覚を持ってもらえるかということを考えました。



――在宅の部下のマネジメントで困ることはありますか?


岩津 ありきたりですが、どの部署も定期的に1on1ミーティングをして、表情を見ながら会話をすることはやっています。



■在宅ワークはアフターコロナにも続く

岩津徹氏(人事総務本部 仕事場改革 部長)


長谷川仁氏(同ファシリティマネジメント マネージャー)



――アンケートをとられたそうですが、皆さんの評価はどうでしたか?


岩津 出社している人の数が少ないので、サンプル回答数は100ちょっとですが、エリアに対する評価はおおむね良好でした。一方で、ここは使いにくい、どう使っていいか分からないと評価されたエリアもあり、少しアプローチを変える必要を感じています。半密閉や個室タイプなど集中作業用の場所は比較的良い評価でした。


長谷川 これから出社率が上がってくると、使い方が見えてくることもあると思います。いかんせん出社率がまだ低いので。



――今ちょうど緊急事態宣言が解除された時期で、これから出社率も上がるのではないでしょうか。


長谷川 どうでしょうか。アフターコロナも在宅ワークが継続していくことは変わらないと思っています。



――今回のオフィスリニューアルは、アフターコロナにもテレワークが続くことを前提にコンセプトを立てたわけですね。今後についてはどう考えていらっしゃいますか。


長谷川 出社率が下がっても業務が回るということはある程度分かりましたが、コミュニケーションが必要だという要望は今後も高まると予想しています。


今回のプロジェクトのコンセプトは、普段在宅で働いている人が出社したときに何ができるかということでした。だから、せっかく出社するなら、そこで新しい気づきや発見を得られる接点になるような場にしたいという議論をずっとしてきたんです。


今後はハード面だけでなく、使い方の啓蒙などソフト面も含めて進めていく必要があると思っています。出社率も関係しますが、みんなで知恵を出して仕掛けていこうと思います。



岩津徹氏(人事総務本部 仕事場改革 部長) 長谷川仁氏(同ファシリティマネジメント マネージャー)





オフィスはただ家具が並んでいるだけの空間ではなく、オフィス自体をどのように使うかを常に問わなければなりません。社員アンケートでニーズをキャッチしたり、オフィスの在り方を啓蒙し続けていくことも重要です。お二人のお話を伺って、リニューアルが終われば仕事場改革が達成できたわけではなく、今後も改革が続いていくことがわかりました。


仕事場改革の成功事例としてその成果をまた紹介できる日を楽しみにしたいと思います。




編集・文:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
取材日:2021年9月27日

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