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オフィスデザインの事例紹介 コンセプトづくりの方法や注意点も

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リモートワークによってさまざまな場所で働けるようになった昨今、オフィスには単なる「働く場所」以上の価値が求められています。その際に鍵を握るのがオフィスデザインです。本記事では、オフィスデザインとは何かという基本事項からはじめ、そのメリットやオフィスコンセプトの作り方、参考事例、注意点などをわかりやすく解説します。








■オフィスデザインとは

オフィスデザインとは、快適で魅力あるオフィス空間をつくる取り組みです。具体的には、デザインコンセプトの立案をはじめ、オフィス家具や設備の調達、レイアウトや装飾、コーポレートカラーの選定などが挙げられます。経営者や従業員がどのようなオフィスを希望しているのかヒアリングしたり、今のオフィスの問題を分析したりする現状調査も含まれます。


オフィスの役割には、従業員の働きやすさを促進するとともに、企業の個性やコンセプトを体現するという側面もあります。たとえば、オープンなオフィス空間からは自由な社風が窺えますし、緑や省エネ技術が多用されていれば、そこからSDGsへの関心やメッセージ性を汲み取れるでしょう。


昨今では新型コロナウイルスの影響によってリモートワークが増えた結果、オフィスだけが「働く場所」ではなくなりつつあります。では、会社や従業員にとって、オフィスで働く意味や価値とはどこにあるのでしょうか。単なる「働く場所」以上の付加価値をオフィスに持たせるためにはどうしたらよいのでしょうか。このような観点から、昨今ではオフィスデザインの価値を改めて考え直す企業が増えています。




■オフィスデザインによる社内へのメリット

優れたオフィスデザインは、社内にさまざまなメリットをもたらします。



●従業員満足度の向上

オフィスデザインは従業員満足度の向上に寄与します。誰しも1日の3分の1以上もの時間を、息がつまるような暗くて狭い場所で過ごしたいとは思いません。逆にストレスのない快適なオフィス環境は、従業員に喜びと活力を与えます。そして、自分たちに配慮して快適な環境を提供する会社に対して強い信頼感を感じることでしょう。


お気に入りの服を着るとテンションが上がるのと同じように、オフィス環境が好ましいものであることは、従業員の職場へ対する満足度やモチベーションの向上につながります。従業員満足度やモチベーションの向上は、さらに離職率の低下や労働生産性の向上などももたらします。



●業務効率の改善

よく考えられたオフィスデザインは、業務効率化や生産性の向上に貢献します。たとえば、動線が悪いと、必要な資料を取りに行ったりコピーしたりするのに動きにくく、面倒な気持ちにもなります。あるいは、ミーティングテーブルと作業用デスクの距離が近いと、人の会話が気になって自分の仕事に集中できないかもしれません。これは不適切な照明や室温、騒音などによっても起こります。人の行動や集中力が周囲の環境から影響を受けるのは当然のことであり、本人の意志力の低さなどに責任を求めても仕方ありません。


しかし、従業員の働きやすさをよく考えてオフィスデザインを設計すれば、こうした不要な手間やストレスが減り、従業員はより効率的に働くことが可能です。エルゴノミクス(人間工学)に基づいて設計されたデスクやチェアを導入するといった単純なことでも、従業員の疲労を軽減し、集中力を持続させる効果が期待できます。スタンディングデスクを導入するなどして、さまざまな姿勢で仕事できるようにすることは、集中力や生産性が上がるだけでなく、従業員の健康のためにもよい影響を与えます。



●円滑なコミュニケーションの実現

オフィスデザインによって、従業員間のコミュニケーションを促進することも可能です。たとえば、近年のトレンドであるオフィスデザインのひとつに、従業員が決まった席を持たないフリーアドレスがあります。各従業員がその時々の気分や用途にあわせて利用する席を自由に変えられるという仕組みです。このフリーアドレスを採用すれば、いつも決まった人が隣に座るということがなくなるため、人間関係にも流動性が生まれ、それまで話す機会のなかった従業員同士が会話するきっかけをつくれます。


あるいは、専用のカフェスペースなどを設ければ、休憩中に居合わせた人たちが自然と世間話などをすることもあるでしょう。部門間を隔てる壁をなくす、もしくはガラス壁にするだけでも、組織の閉塞感を改善し、部門間の距離を近づける効果が見込めます。このようにオフィスデザインを通して部門間や従業員間のコミュニケーションを活性化することで、これまでになかった交流が生まれ、新たな気づきや発見が生まれることも期待できます。従業員同士のつながりや信頼感が増せば、より強い組織になるでしょう。



●従業員の企業コンセプトの理解

昨今、ブランディングは顧客だけではなく、自社の従業員に対しても行うべきだという考えが出てきています。いわゆる「インナーブランディング」という考え方です。オフィスデザインはこのインナーブランディングの実施手段としても有用で、従業員が自社の企業理念やブランド価値を理解するきっかけにもなります。


たとえば、「自然に寄り添う」という企業理念がある場合、植物や自然光などを効果的に取り入れたオフィスデザインを採用すれば、従業員は言葉だけでなく体感としてそのコンセプトを理解できます。また、色調をコーポレートカラーで統一したり、自社のロゴやイメージキャラクターなどを前面に押し出したりすることで、従業員の帰属意識を高めることが可能です。いわばオフィスデザインは、経営者から従業員へのメッセージでもあるのです。




■オフィスデザインによる社外へのメリット

オフィスデザインは従業員だけでなく、顧客や就職希望者など社外のステークホルダーに対するアピール手段としても重要です。



●顧客へのブランディングの実現

おしゃれで機能的なオフィスには、顧客へ自社に対する好印象を抱かせる効果があります。初めて訪れたオフィスが明るさや清潔感を感じさせる場所か否かは、顧客の第一印象を大きく左右するでしょう。もしもオフィスデザインに自社のブランドイメージやアイデンティティが的確に反映されていれば、何も説明せずとも自社に対する顧客の理解や共感を深められるかもしれません。


また、ホームページやSNSなどを利用すれば、実際にオフィスを訪問した人だけでなく、より広い範囲の人にオフィスの様子をアピールすることも可能です。このことから、いわゆる「インスタ映え」をオフィスに求める企業も増えています。



●就職希望者へのアピール

オフィスデザインは就職希望者へのアピールにもなります。就職希望者にとって、オフィスの様子は目に見える貴重な企業情報のひとつです。他社に比べてオフィスがおしゃれであったり清潔であったりすることは、その企業を選ぶ十分な理由になります。


その意味では、普段からオフィスを見慣れている従業員よりも、就職希望者のほうがオフィス環境をシビアにチェックしているかもしれません。「このオフィスで働きたい」と前向きな志望動機を持って応募する希望者が増えることは、自社へのコミットメントを促進し、早期離職を防ぐ上でも大切です。




■オフィスデザインに重要なコンセプトの作り方

オフィスデザインを考える上で第一に重要となるのがオフィスコンセプトの決定です。先述のように、オフィスには自社の企業理念やブランドイメージを表現する役割も求められます。つまりオフィスコンセプトとは、「オフィスを通して従業員や来客などに対して何を伝えたいのか」というメッセージ性のことです。また、なぜレイアウトを変更するのか、なぜ移転をするのか、プロジェクトを通してステークホルダーに伝えたいメッセージ、といった「ストーリー」もコンセプトとして重要です。


このコンセプトがないと、オフィスデザインが自社の企業イメージにそぐわないものになってしまったり、機能性だけを追求した味気ないものになってしまったりする恐れがあります。では、コンセプトをつくる際には、どのようなことがポイントになるのでしょうか。



●企業のブランディングイメージを明確にする

最初に行うべきは、自社の企業理念やビジョン、社風などを改めて見直し、オフィスを通して表現したいブランドイメージを明確化することです。たとえば、業界を牽引する先進企業を目指すのであれば、オフィスコンセプトとしては「イノベーションが生まれるオフィス」などが考えられるでしょう。


このようにコンセプトを明確にすることで、「では従業員の創造性を刺激するようなオフィスとはどのような空間か」など、オフィスデザインの課題や方向性が定まってきます。絵画などの装飾を活用することも、コンセプトを表現する上で役立つでしょう。



●企業のメインカラーを決定する

コンセプトを効果的に表現するには、カラーデザインも重要です。企業イメージを象徴するメインカラーを決め、オフィスデザインにおけるアクセントカラーとして用いることで、企業イメージや特性をわかりやすく伝え、オフィス全体の印象に統一感を持たせられます。


たとえば、赤い色はエネルギッシュなイメージを与えるため、活気のある職場を演出したい場合に最適です。逆に青は冷静で静謐な印象があるため、落ち着きや信頼感のある職場を表現できます。他にも「緑は自然や調和」、「黄色はポップ」、「黒は重厚さやモダン」というように色から連想されるイメージはさまざまです。そのため、自社の企業イメージに沿って、メインカラーを考えましょう。


なお、メインカラーは複数あっても構いませんが、あまりカラフルにオフィスを彩ってしまうと、ごちゃごちゃした印象になってしまい、目が疲れてしまうので注意が必要です。



●社内の問題解決につなげる

自社の現状の課題を明確化し、その課題解決につながるコンセプトを考えるのも効果的です。たとえば従業員の多くが職場の雰囲気や人間関係に閉塞感を感じているのであれば、「従業員同士がオープンにコミュニケーションを取れるオフィス」といったコンセプトを立てるのもよいでしょう。


このように、自社の課題につながるコンセプトにすることで、オフィスデザインに必要な要素が具体化されていきます。なお、社内の問題点を可視化する際には、現場の従業員からもヒアリングするとよいでしょう。実際にオフィスで働く人々の意見を広く聴取することで、従業員のストレス解消のためにより的確なアプローチが可能になります。




■コンセプトが反映されたオフィスデザインの事例

続いては、コンセプトが反映されたオフィスデザインの事例を紹介します。オフィスデザインを考える際のご参考にしてください。


資料参照元:47内装株式会社



●事例1. オープンな社風を体現した開放的なオフィス

Webマーケティング事業を展開する株式会社NEXERは、本社移転を機会にオフィスデザインを再設計しました。コンセプトは、「オープンなオフィス」です。オープンという言葉には、企業の開示性や、社内の明るさ・風通しの良さという意味も含まれています。


エントランスは、透明なガラス壁メインの内装デザインで自然光が差しこむ開放感を演出し、ペッパー君が来客をあたたかく出迎えてくれます。また、来客スペース全体から社内を見せることで、お取引先や求職者にもオープンな社風であることを印象づけます。


エントランスに隣接するのは、たっぷりと奥行きをとったオープンスペースです。社内の風通しの良さをアピールしつつ、情報セキュリティ上、お客様から執務デスクが見えないように工夫しています。社員がコミュニケーションを取る姿も、「オープンなオフィス」では1つのデザインになっています。





●事例2. 遊び心のあるときめくオフィスを実現

代理購入サービスの企画・開発・運営などを手掛けるSIG Service株式会社は、新築ビルの2フロアを使って、「遊び心とあたたかみのあるオフィス」をつくりました。2フロアのうち、上階は執務スペース、下階が来客スペースおよびリラックススペースというようにエリア分けがされており、オフィスデザインもそれぞれの用途にあわせてメリハリをつけています。





フリースペースは、みんなとわいわいコミュニケーションをとりたい人、一人でゆっくり過ごしたい人、どちらの人にとっても居心地の良い場になるよう、レイアウトと家具に工夫を凝らしました。チェアもゆったりと座れるデザインで、思わず身を預けたくなる魅力を感じさせます。





全体的な内装カラーとしては、パステルカラーなども使用して優しい色合いにしました。機能的でありながらも温かさを感じさせる内装デザインは、同社の職場に流れる穏やかな雰囲気を彷彿させるものです。執務スペースのカラフルなチェアは、内装のアクセントになっており、コンセプトである遊び心を感じさせます。






■オフィスデザインをする上での注意点

オフィスはおしゃれであるだけでも合理的であるだけでも十分ではありません。オフィスデザインを考える際には、安全性の確保をはじめとする、いくつかの点にも注意することが必要です。そこで続いては、オフィスデザインをする上での注意点を解説します。



●安全性の確保

オフィスの安全性は非常に重要な要素です。従業員や来客の安全を確保するためには、非常口や火災報知機、消火器などの設備が設置され、その位置などが明確に表示されている必要があります。また、避難口までの途中経路が荷物やオフィス家具などでふさがれることがないように、災害時の避難ルートを十分に確保することも欠かせません。避難ルートが整備されていないと、いざというときに避難が遅れ、命に関わる事態に陥る可能性もあります。安全性の確保にあたっては、建築基準法や消防法、労働安全衛生法などの各種法令を確認し、遵守することが大切です。


上記は地震や火事などの災害に対する備えですが、情報セキュリティの面での安全確保も欠かせません。たとえば重要な機密事項が記載された資料が、人の頻繁に行き来する場所に置かれた棚に入っているようでは、資料の紛失や盗み見などのリスクが懸念されます。「部外者にPC画面が見えないようにする」「重要な会議用に他の場所から切り離された会議室を用意する」など、情報資産を守るための安全対策についても入念に考えてオフィスデザインを検討しましょう。



●利便性への配慮

オフィスデザインを考える際には客観的な合理性やコンセプトだけに目を向けるのではなく、実際にそこで働く社員の使いやすさを考慮に入れることが重要です。たとえば、いくらおしゃれであったり省スペース化に役立ったりするとしても、小さすぎるオフィスデスクは作業しにくく、従業員にとってストレスになります。


また、ロッカーなどの収納力が不十分だと、デスクの上が散らかる原因になるでしょう。いくらオフィスデザインそのものはおしゃれであっても、資料や私物が散乱したデスクがあちこちにあるようでは台無しです。動線についても、頭の中で考えるだけでなく、実際に従業員がどのように動いているか確認してから決めることがポイントになります。



●従業員同士の距離の確保

従業員同士が適切な距離感を保てるようにすることも大切です。たとえ同僚との関係が良好であったとしても、自分のスペースが小さすぎては窮屈な思いをしてしまいます。また、コミュニケーションの活性化をコンセプトとして掲げたとしても、他人と四六時中一緒では集中できないという人もいるでしょう。


したがって、従業員に快適に働いてもらうためには、従業員一人ひとりがゆったり仕事ができるだけのスペースを確保することが大切です。また、コミュニケーションの促進を目指す場合には、一人で仕事に集中する必要があるときに静かに過ごせるブース席なども用意することをおすすめします。従業員間の距離をつめすぎないことは、従業員のプライバシー保護や新型コロナウイルスをはじめとする感染症の予防対策にもなります。特にリモートワークを導入している場合は従来よりも出勤する従業員が減った分、オフィススペースに余裕ができているはずなので、オープンな空間づくりにチャレンジしやすいでしょう。



■おわりに

従業員の集中力や労働生産性を高めたり、自社へのエンゲージメントを向上させたりする上でオフィスデザインは重要な役割を果たします。オフィスデザインを考える際には、各種法令を遵守した上で、オフィスコンセプトに従ってデザインを考えていくことが大切です。そのためには、最初に自社の企業理念やビジョン、目指したい将来像などを明確化するところから始めましょう。本記事を参考に、オフィスデザインの改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。



「アスクルオフィスづくりサービス」
https://www.askul.co.jp/f/services/furniture/construction/moving.html/




編集・文・画像:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局(※を除く)
制作日:2022年12月20日

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