(同社 フリーアドレスエリア)
「働き方に合わせた独自のワークプレイスづくり! 空間デザイン・施工を手掛ける株式会社コスモスモアの本社オフィス訪問【前編】 (オフィス訪問[1])」からの続き。
前回、社内バースペースまでご紹介しました。
その先には執務エリアが広がっています。
パーティション等は極力置かず、部署間でコミュニケーションが取りやすいようオープンな作りになっています。
執務スペース内では、固定席、グループアドレス、フリーアドレスを働き方に合わせて分けているのが特徴的です。どういった基準で、固定席やフリーアドレスを設定しているのかを伺いました。
働き方を大まかに次の4つに分けて定義し、それに合わせて座席を設定しています。
≪働き方≫
[A] 経理職・アシスタント職など、椅子に座って働く時間の長い人
[B] 管理職のように、社内にいるけど打ち合わせが多くてあまり席にいない人
[C] 営業職・PM(プロジェクトマネジメント)職のように、オフィスの出入りが多い人
[D] 施工の現場担当のように、普段社外での作業が多く、週1,2回などの打ち合わせに会社に来る人
となりまして、[A]の座っての作業が長い人には固定席にしています。
[B]の社内にいるけど打ち合わせが多い人は、固定席だったり、ある程度エリアを区切った中でのフリーアドレス(グループアドレス)になっていたりします。また、設計職もプロジェクトごとに組む人が変動するためフリーアドレス(グループアドレス)を採用しています。
グループアドレスは、座席は指定されていませんが、部署や役割ごとに大まかに座る席が決まっています。オフィス内で、このへんは住宅の事業部、このあたりはファシリティの事業部などと決めていますが、そのエリアが混んでいる、などの場合は別のエリアに座っても問題ありません。グループアドレスにはチームの活性化やコミュニケーション促進の意味合いもありますね。
[C][D]については、オフィスに在社している時間が短いため、スペースの有効活用の意味でもフリーアドレスとなっています。
オフィスの設計をしていると、フリーアドレス制を導入したい、というご相談をよくお客様から受けるので、弊社でどのように取り入れているかを実際にご覧いただいて判断材料にしていただいています。
(同社 武田 透さん)
まとめると以下のようになります。
一律に固定席、フリーアドレスと決めてしまうのではなく、各人の働き方に合わせて、座席を固定席、フリーアドレス、グループアドレスを配分していることが分かりますね。
働き方 | 職種例 | 座席 | |
---|---|---|---|
[A] | 椅子に座って働く時間の長い人 (帳票処理が多い人) | 経理職・アシスタント職など | 固定席 |
[B] | 社内にいるけど打ち合わせが多くあまり席にいない人 | 管理職など 設計職 | グループアドレス |
[C] | オフィスの出入りが多い人 | 営業職 PM職 | フリーアドレス |
[D] | 普段社外での作業が多く、週1,2回打ち合わせに会社に来る人 | 施工の現場担当 | フリーアドレス |
経理職など、帳票が多い部門は固定席になっています。
資料が多いので収納のためサイドキャビネットが多く置かれています。
チェアは、イトーキ エフチェアがありますね。
こちらも固定席のエリア。
チェアは、岡村製作所 サブリナです。
こちらは管理職が集まっているエリアで、グループアドレスになっています。
一部は固定席制で、現在のところ、決裁のための紙の帳票を回すときにマネージャーがどこにいるか分かるほうが良いため、固定席制に近いグループアドレスが採用されているとのこと。
こちらはフリーアドレスのエリア。
営業職やPM職が多いワークスペース。プロジェクトで関係するメンバーが集まって話ながら仕事をしたりすることも。社員は基本的にノートパソコンが貸与されているので座席は自由に変えられます。こちらのチェアは、ハーマンミラー セイルです。
このエリアはすべてキャスター付きのテーブルになっており、テーブルを移動させてスペースを作ることで、イベントや全体会議などにも使えるとのこと。
デスクの島のアップ。
こちらは空いている席を撮影。
チェアは、岡村製作所 サブリナです。
こちらはフリーアドレスエリアの窓際のカウンター席になっています。
座席には大型モニターが設置され、図面編集やエクセル作成など、大型モニターを使いたい場合にはこちらで作業をします。
カウンター席をアップで。
チェアはヴィトラ ID TRIMチェアです。
フリーアドレス内、執務チェアは複数種類用意されていて、席を変えれば気分も変えられるようになっているとのこと。また、お客様に提案することも踏まえて、見本としても使われています。
こちらはフリーアドレスエリア内にある、ローキャビネット天板を活用したカウンターテーブルです。天板が広いので図面を広げての打ち合わせに良く使われているとのこと。ミーティングに便利なモニターも設置してあります。
こちらは国産木材を使ったファミレス型の打ち合わせスペース。
内装がロッジ風になっていて、面白がってそのままお客さまのオフィスに取り入れられることもあるとか。
画面左下に見えるのは、サウンドマスキングシステム。
こちらもフリーアドレスエリアです。
ベンチシートになっているので、人数が増えた場合は詰めて座ることができるようになっています。
営業のタッチダウンスペース的に使われているフリーアドレスエリアのカウンター席。
後ろのパーティションは複合機など音の出るツールのマスキングのために設置されており、打ち合わせや電話などの邪魔にならないよう配慮されています。こちらのチェアは、ヴィトラ 04カウンタースツールです。
次は、二期工事で増床した執務スペースを紹介します。
こちらは設計職のグループアドレスエリアになっています。
最初に紹介したラウンジスペースの一期工事のオフィスの反対側が増床部分になります。
こちらの先が増床したオフィスエリアになります。
こちらも見通しの良いフロアになっています。
社内で営業・設計・施工と部門が分かれているので、部門をまたいで相談したりできるようオープンなコミュニケーションを意図して作られているとのこと。
また、こちらのエリアは設計職が集まっていることもあり、周囲の色に引っ張られないようあえてグレーでデザインしたそう。照明は調光で色調を変えられるため、現地の光に合わせて色味を調整するそうです。
ちなみに、写真手前の打ち合わせのための2台のカウンターテーブルは、図面や資料を広げて検討できるよう広い天板になっています。
設計事務所らしく、サンプル、資料が並ぶライブラリーがありました。
スツールは、スツールワン(*3)。
*3) スツールワン (STOOL_ONE)
イタリア マジス(Magis)社から発売されている三角形がモチーフになったスツール。デザイナーはコンスタンティン・グルチッチ(KONSTANTIN GRCIC)。
こちらは隣のダークグレーのカウンターと対照的なホワイトグレーのカウンター。スツールは、スチールウッドスツール(*4)。
*4) スチールウッドスツール (STEELWOOD STOOL)
イタリア マジス(Magis)社から発売されているスツール。異種の木とスチールを組み合わせたデザインが特徴的。デザイナーはロナン・ブルレックとエルワン・ブルレック (RONAN BOUROLLEC/ ERWAN BOUROULLEC)。
設計部門はグループアドレスになっていて、その日の気分で座る場所を変えているそうです。ただし、新人と教育担当の方は、効率的に指導ができるよう暫定的に固定席にしているとのこと。
こちらのテーブルは、「i+(アイプラス)」006ミーティングテーブル(*5)。デザインする際などにペンの書き心地が良いよう、リノリウム板の天板のものを採用したそうです。また、天板はフラットにしてあり、建築模型なども作れるようになっています。
*5) 006ミーティングテーブル
イトーキとインターオフィスによるファニチャーブランド「i+ (アイプラス)」シリーズのミーティングテーブル。天板は、メラミン化粧板、アクリル化粧板、リノリウム板の3種類が用意されている。デザイナーは寺田尚樹氏。
チェアは、アーロンチェア リマスタードを採用。グレーカラーの「ミネラル」モデルです。
ちなみに部屋の奥の壁は本棚。各人の参考書籍が置かれています。
ヘリンボーン柄の床のフローリングや、装飾感のあるペンダントライトなどがオフィスらしからぬ雰囲気。必要に応じてカーテンでプライバシーを確保します。
グループアドレスのため、私物はこちらの個人ロッカーに収納します。
以上、株式会社コスモスモアのオフィスを見てきました。
働き方に合わせて使い分けられるよう、オフィス内にはさまざまなテーブル席、デスク席が作られています。
特に、固定席、グループアドレス、フリーアドレスの3種を組み合わせた複合的なオフィスづくりは特徴的で、その管理方法について尋ねてみました。
同社のオフィスでは、管理職の方たちはグループアドレスで社内の一箇所に集まっています。そうすると部下の方のマネジメントはどうしているのか、管理職をされている前出の同社武田 透さんに尋ねました。
管理職は、フリーアドレススペースを歩いて回って、部下とコミュニケーションを取っています
上司が部下を間近で見ている=管理、というのは、ダサいといいますか、今の時代にそぐわないのではないでしょうか。上司も部下も座るところはバラバラのほうがいいと思います。弊社ではリモートワークも取り入れているので、余計に部下が目の前にいたらマネジメントできるの?と疑問に思ってしまいます。
(同社 武田 透さん)
なるほど、フリーアドレスになれば、部下は目の前にいることはあまりないですよね。となると、部下を見ているのが管理ではなく、上司が逆に部下と会いに行ってコミュニケーションを取っていくのがマネジメントになるという変革が起きることになりますね!
それゆえに、固定席、グループアドレス、フリーアドレスを取り交ぜた複合的なオフィスであっても、管理職は積極的にフロア内を歩いてコミュニケーションを取るので、誰がどこに座っていてもマネジメントできるのでしょう。
働き方に合わせた、グループアドレスやフリーアドレス の導入は、単に座るところが変わるだけに留まらず、マネジメントスタイルも大きく変える重要な転換点になるようです。逆に言えば、そこまで踏み込んで変革しない限り、フリーアドレスやグループアドレスは定着させることは難しいのではないでしょうか。そういう点で同社の取組みはフリーアドレスを導入する際の参考になると思われた取材でした。
大和ハウスグループ、株式会社コスモスイニシアの100%子会社で、リクルートグループの工事管理事業を独立する形で1990年に設立された。以来、オフィス、商業施設、マンションギャラリー、住宅の設計・施工など幅広く空間デザイン、施工を手掛けている。
編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
取材日:2017年7月14日
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