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停滞する人と組織を成長させるコツ 元アメフト日本代表の経歴を持つ組織改革コンサルタントが語る!~ペネトラ・コンサルティング株式会社 代表取締役 安澤武郎氏インタビュー~

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ペネトラ・コンサルティング株式会社代表取締役 安澤武郎 (やすざわ たけろう)氏

(ペネトラ・コンサルティング株式会社代表取締役 安澤武郎 (やすざわ たけろう)氏)


先が見えず、なぜか仕事がうまくいかないと感じている人が多い世の中。余裕がなくイライラしている日常。仕方なく仕事をするのではなく、ストレスなく個人の能力を発揮できる仕事の仕方について、組織変革のプロ、安澤武郎氏にお話を聞きました。






■組織で力を発揮するには?

――お仕事内容を教えてください。お客様はどういった方なのでしょうか?

組織変革コンサルタントです。クライアントは経営者で、企業の規模は従業員が50名から1000名くらいのところが多いです。企業は成長し成功すると規模が変わっていきます。マネージメントのステージもそれに合わせて進化さていかないといけないのですが、やったことのない人は次にどのようにマネージメントしていけばいいのかわからないのです。そういった組織のデザインをして、停滞しないように成長させていくことが仕事です。


――企業の人数によってコンサルティングの内容も変わってくるのですか?

人数だけではなく、企業のステージによって変わります。ビジネスの規模が小さいうちは、社長がどんどん牽引すればそれなりに伸びます。そのうちビジネスモデルが固まり、組織として役割を分担してやっていくようになります。50人くらいなら社長が全部見られますが、それを超えると社長の右腕になる人たち、マネージャーを育てて、その人たちに見てもらわなくてはならなくなるのです。そうすると、たとえば自分が直接やっていたときの方が早くできそうで、じれったくなってしまうのですね。


――それで、ちょっと口出ししてしまう。

そうです。そんな時には渡せる部分から権限を移譲して、マネージャーとはどういうものなのかを教育していきながら組織を大きくしていくわけです。そして大きくなってくると組織の機能も分かれ、事業構造も複雑になってきてます。そうなると複雑なことを整理できる人が必要になってきます。とにかく売上を追求してきたステージからしっかり利益を生み出せるように、適任者を入れてアクセルとブレーキをバランスさせることが必要になるのです。



■日本の多くの企業の悩み

日本の多くの企業の悩み ペネトラ・コンサルティング株式会社代表取締役 安澤武郎 (やすざわ たけろう)氏


――多くの企業の実情はどうですか?
今、日本の多くの企業が悩んでいるのは、組織が新しい製品やサービスを生みだす力を失ったことです。ビジネスモデルが確立した企業に就職をすると、既存の枠組みの中で成果を生み出すことが仕事になります。何を売ればいいのか、お客さんはだれなのか、そのお客さんを獲得するまでに、どういうステップで物事を進めていけばいいのか、といった仕組みがある程度でき上がっています。10年、20年とその仕事を続けると、社内調整や決まった活動を管理する能力は高まっても、リスクテイクをしてゼロから新しいものを生み出す経験はあまりできません。まったく何もないところから、今何が必要なのかをすくい取り、新しい価値を提供する商品やサービスをデザインできる人にはなりにくいのです。


――だからこそ、外部のプロフェッショナルが必要とされるのですね。
そうですね。新しい製品やサービスを生み出していかないといけないことは皆さん分かっています。しかし、自分たちがどれほど保守的で、固定的な思考になっているのかは自覚できていません。まずは自分たちの特徴を客観的に自覚することがスタートになります。成長期の企業であっても、新しい製品比率を落とさないようにすることが重要なのですが、ややもすると最初の成功で満足をして守りに入ってしまいます。このような状態を捉え、組織に適度な刺激を与える役割が、私たちのような外部のプロには求められています。


――企業の業績に影響を与えるファクターとして特に大切なものはどんなことだとお考えでしょうか?
たくさんあるのですが......。人が組織で能力を発揮するために必要なことは何か?と聞かれて、すぐに答えを言えるほどちゃんとわかっている人ってあんまりいないのですよ。それぞれ経験からある程度はわかっていたりするのですが、それぞれ思っていることがバラバラなんです。そこを、あるべき組織はどういう状態か、今解決すべき課題は何か、と認識を丁寧に合わせていきます。優秀な人が集まって仕事をしていても目的がバラバラでベクトルが合っていない状態では組織のパフォーマンスは上がりません。同じ方向を向いて仕事ができるようになり、周りの人は皆仲間だと感じて協力しあえる状態になれば、パフォーマンスは大きく変わります。そこが一番大きなファクターです。


――大きな企業では縦割り問題が顕著だと聞くのですが。
どの部門でも、本来果たすべき役割というものがあります。その役割を時代や環境の変化に合わせてどんどん進化させていくことが必要なのですが、なんとなく前任者がやっていたことをそのまま引き継いで毎年同じことを繰り返していることもあります。例えば、人事部の役割には「社員の育成」があります。目先の業績に目が向きがちな現場に対して、中長期的な視点で人を育成することを働きかけていくことが仕事です。時代が変わり、集合研修だけで社員が育たなければ、現場に出向いて社員が育つ環境を構築していくことも役割の中に入ってきて良いわけです。そもそも人事部の役割は何なのか、その部門の会社における存在価値をちゃんと議論することが足りていないのだと感じます。


――そこでコンサルをして変わっていく?
そこで丁寧に議論をして、自分たちのなりたい姿をイメージできればグッド。


――事例があったら教えてください。
あるメーカーの子会社での話です。売り上げは親会社に依存しているので、頑張っても頑張らなくても売り上げは親会社次第。コストダウンをしても親会社からの買い取り価格の調整が入るので大きく儲からない。そこの社員からしてみれば目指す目標が曖昧でいまいち会社の存在意義がわかっていない。さらには親会社から出向してきたトップが変わるたびに方針が変わる。それで社員たちはトップの言うことを聞かなくなり(聞いたふりをするようになり)、お互いに批判しあうことにエネルギーを費やしているという状況でした。そこで、この会社の目指す姿を議論してもらいました。「世界に進出する親会社が成功できるように、世界一の品質の製品を作ろう」と目標を掲げ、「親会社の下請けでなく、ものつくりのパートナーとして対等の立場で技術開発をしようよ」と社員の人たちで目標を決めて取り組むことで、批判しあっていた人たちが協力し合って取り組み、資金などを投じずなくても生産性まで過去最高になったのです。人と人とが仲良くなるには共通の目標に向かって取り組むことが一番ですよね。距離が近づく。目指すものをちゃんと持つことが大きなファクターなのです。


――親会社から出向してきたトップの人たちは、なぜ言うことが違ったのでしょうか?
自分の個性を出したい、前任者と違うことをしたい、前任者のやっていたことを変えたい、となるのは人間の特徴だと思います。ある工場の事例ですが、機械の調整を順番にシフト制でやっていたのです。同じものを作っているのにシフトが変わるたびに設定の調整しているのです。なぜ設定を変えているのか、よくわかりませんでした。よくよく聞いてみると、ベストの設定が明らかになっていなかったことが原因でした。だからみな、自分の思い込みで何となく変えていたのです。企業や部門の役割もしっかり言葉にして定義をしておかないと、トップが変わるたびに何となく変わってしまうものだと思います。未熟な組織ではありがちな弱い側面かもしれません。



■今しか見ないから成長できない

今しか見ないから成長できない ペネトラ・コンサルティング株式会社代表取締役 安澤武郎 (やすざわ たけろう)氏


――組織作りについて、多くの働く人々が勘違いしている真実を教えてください。
「あるべき組織の状態は変わる」ということが分かっていないことが多いですかね。例えば、大会社にいた人は「業績予測の精度は高くないといけない」と考えていますが、ベンチャー期を経て成長期に入ったばかりの企業で「予測精度が高い」ということがあればむしろ問題です。安定的に結果が見込める部分にしか挑戦していない、すなわち、機会を逃しているということが推察されます。むしろそういう企業においては「予測をする」という行為自体に意味があって、「精度が高いかどうか」はあまり問題にすべきではないのです。このように企業の成長ステージによって、「あるべき組織の状態」は変わります。そこが分かっていないと組織作りを間違ってしまいます。


幼稚園の子どもが砂場で服を汚してきたら問題ではありませんが、高校生が砂場で泥んこになって帰ってきたら、多少問題なのかと思います。人間の成長ステージによって同じ現象でも問題になったりならなかったりするように、組織にも成長ステージがあって、同じ特徴でも問題だったり、問題でなかったりするということです。


多くのビジネス書に「組織はこうあるべき」ということが書かれていますが、どのステージにおけるあるべき姿なのか?ということはあまり書かれていません。著者の経歴などを見て、どのステージにふさわしい話なのかを考えておくことが大切です。


組織づくりにおいては、この組織の問題を正しく捉えることが重要です。 よく言われるように、問題とはこうなりたいというあるべき姿と現実とのギャップです。一歩先のステージと今を比較して、そのギャップを埋めることが必要です。


――それは上司の人に指導していくのですか?
通常はトップから順番に指導します。組織はトップから変わっていかなくては変わりません。


――ほかに多くの人が勘違いしていることってありますか?
マネージメントを「監視」とか「管理」という意味合いで捉えていることでしょうか?最近は「管理職になりたくない」という人も増えているようですが、そんな誤解を持っているのかと思います。


管理職になると、会社から自分のチームを与えてもらえるわけです。そのチームメンバーを活かして自分が一人ではできないような大きな仕事ができるわけです。会社の事業目的から外れることはいけませんが、自分が志を持って入社をした企業で、自分の思いを形にしていける楽しさがあるはずです。そのために、チームで役割分担をして、それぞれのメンバーが役割を果たせるように「応援」「支援」「救援」をすることがマネージメントです。共通の目標に向かって力を結集し、達成感を味わって、と素晴らしい活動であるはずなのに、勝手に「監視」だと思い込んでいるのは不幸なことです。



■組織変革コンサルティングの原点は京大アメフト部

組織変革コンサルティングの原点は京大アメフト部 ペネトラ・コンサルティング株式会社代表取締役 安澤武郎 (やすざわ たけろう)氏


――日頃どういったところで仕事をされていますか?
客先で仕事をすることが多いです。クライアントのオフィスにデスクがあり、そこで仕事をしています。でもミーティングしていることが多いので自席にはほとんど座っていないのですが。ミーティングルームとか、会議室などにいることの方が多いですね。いろんな会社のオフィスで仕事をしますので、オフィス作りの深いヒントが得られる「みんなの仕事場」は参考にさせてもらっています。



■著書について

著書について ペネトラ・コンサルティング株式会社代表取締役 安澤武郎 (やすざわ たけろう)氏


――著書について、それぞれご紹介いただけますか?
1冊目の本、「京大アメフト部出身、オールジャパン4度選出の組織変革コンサルタントが見つけた 仕事でもスポーツでも成長し続ける人の壁をうち破る方法」に込めたメッセージは「挑戦しよう」「壁にぶつかっていけよ」というものです。世の中で挫折を経験したことのある人は半分くらい。挫折の経験がない人が半分いるということは半分の人は挑戦していないと言えるかもしれないのです。それではもったいない。今の人生で満足ならそれでいい。何かしら良くしたいと思うのなら新しい世界を夢見て踏み出さないといけないよ。みんな挫折や失敗が怖い。でも失敗のない人生は長い目で見ると失敗だったりする。「踏み出せよ」が大きなメッセージです。そして、踏み出せない原因とか乗り越えられない原因として「6つの壁」があるので、そういう観点から自分の仕事や生き方を点検してみてはどうかといった内容です。


――6つの壁とは?
常識の壁。アクションの壁。スキルの壁。仕事のやりかたの壁。コミュニケーションの壁。情熱の壁。この本は年齢層に関係なくだれにでもウケています。6つの壁の中のどこかに自分の壁が当てはまるので、この本のここが良かったっていうところは、皆バラバラなのです。主婦の方から好評をいただいたこともあります。自分が停滞している原因がきっと見つかります。


――書名が長いですね。京大アメフト部出身・オールジャパン4度選出とありますが?
今のコンサルの手法、考え方の原点が京大アメフト部なのです。京大アメフト部は部員が100人いたとしても経験者はたった5人くらいしかいないチームです。国立大学なのでスポーツ推薦もありません。そういうチームが社会人チームを破って日本一になるということはハードルが高いはずです。それでも社会人を破って日本一になった回数は学生の中で一番多いのです。どうして、そのようになれたか。その鍵は組織づくりにあります。過去の延長線上にない目標をやると決め、その目標達成に見合う姿と現実のギャップを埋めていくアプローチなのですが、自分が思いもしなかった世界に到達できるという経験、人間の力は素晴らしいという経験は今の仕事にとても活きています。



■ただ精神論で戦っていても勝てない

ただ精神論で戦っていても勝てない ペネトラ・コンサルティング株式会社代表取締役 安澤武郎 (やすざわ たけろう)氏


――アメフト選手時代、精神的なストレスはなかったのですか?
そりゃあ、つらいことも多かったです。ただ精神論で戦っていても勝てないのはよくわかっていました。日本一になれるとしたらどんな姿か?ということを具体的に描き、分析し、勝てる可能性を増やしていきました。コンサルでやっていることと同じですが。


――学生ではなく大人の組織を手がけていて思うことはありますか?
大人の組織と言っても幼児性が強いと感じることが多いですね。一言で言うと甘ちゃんです。失敗するとだれかのせいにする、だれかに認めてもらいたい、自分をもっと気にかけてほしい。そういった幼児性が組織の中にあると組織は弱くなるのです。アメフトなどでも、うまくいかなかったときに言い訳が心の中に出てくることはありますよ。でも、言い訳しているうちは伸びない。言い訳をせず、すべて自分の責任として受け止め、自分に何ができるかを考えなくてはダメなのです。隣の選手がまだ弱くて、相手にそこをやられることがある場合、その選手を責めてもダメなんです。その選手にどんなアドバイスができるのか、といった補い合う精神がないと選手としても成長しませんし、ビジネスにおいても成功できない。そこは共通しています。少なくとも今の社会で、もし人生の最後まで成功し続けようとすれば人を教え導く力がなくては良いポジションには就けないし稼ぐこともできません。自分の人生を幸せなものにしたいのであれば、人間についての理解を深め、人に対する影響力を発揮するということは絶対に必要なのです。



■まずは貢献できる仕事を与えること

まずは貢献できる仕事を与えること ペネトラ・コンサルティング株式会社代表取締役 安澤武郎 (やすざわ たけろう)氏


――影響力の使い方を間違っている人が多い?
権力でしか人を動かせない人はいますね。「やりたい」し「できそう」なことがあれば人は動きます。「欲がない」ように見える人であっても、組織の中であれば成長させていくことはできます。「やりたい仕事」よりも「活躍できる仕事」を与えることが重要です。京大アメフト部でも、監督の目利きによって活躍した選手はたくさんいました。監督が、本人は別に希望をしていない。むしろ、「やりたくない」と言っているポジションに抜擢をするということがありました。最初はイヤイヤやっているのですが、向いているポジションなので、やがて活躍できるようになり、活躍できると楽しくなる、というパターンでした。


本人が想像もできないようなことを達成できた経験はとても貴重です。目標を立てるときも、すぐに達成できてしまう目標より、どうやったらいいかわからないと思う目標が自分や組織のステージを引き上げるのですが、そのような目標に対してでも「やってみよう」「できそうだ」と感じられるようになります。実際に「できる」と信じて挑戦し、チームで目標達成に必要なことを1つ1つ知恵を出し合って描いていけば、1人では考えられなかった世界が描けるようになり、実現できたことはたくさんあります。


――2冊目の著書について教えてください。
「ひとつ上の思考力」のメッセージは「ちゃんと考えながら仕事しましょう」です。刃こぼれした古びた斧で木を切っている木こりに「この斧では切れ味が悪いから、きちんと研いでから切ればいいのではないか」とアドバイスすると「木を切るのが忙しくて、斧を研ぐ暇なんかないよ」と言ったという、よく引用される逸話があります。急がば回れということに近いですね。



■多くの人は答えを欲しがります。でも。

多くの人は答えを欲しがります。でも。 ペネトラ・コンサルティング株式会社代表取締役 安澤武郎 (やすざわ たけろう)氏


――明らかに刃を研いでから木を切った方がいいはずなのに。
多くの人は答えを欲しがります。でも解き方、考え方を身につけた方が結局は早い。それによって日々の仕事は積み重なって実力がついていきます。実務をこなすのに忙しくて自分の姿を振り返ったりする余白がないのもわかります。ですが、無理矢理にでも2割くらい余白をとって生きた方がより生産的に生きられます。周囲で仕事ができる人がいるとすれば、その人はきっとそういう余白を確保しているはずです。


――タスク管理にも同じことが言えますか?
タスク管理そのものです。仕事に追われている人ほど、タスク管理をしている時間がもったいないと考えるようです。まるで先ほどの木こりのように。たとえば時間を取ってタスクを書き出すことで、漠然とした不安はなくなり、頭を切り替えたり、思い出したりという無駄な時間も減らせ、仕事が楽になるのです。これは時間管理と表裏一体です。時間がないという人は時間管理をしていないから時間がないのです。


――でも自分では気づかない?
思い違いに気づかない人には強制的に実行してもらって、体験としてやってよかったと実感してもらえばいい。当たり前にやっている人にとっては「タスク管理などだれでもできるだろう」と思えますが、できない人はできない。最初は上司などが一緒にしてあげることがポイントです。共同作業にすると距離も縮まりますし。


――著書の執筆などに集中して取り組みたいときはどちらで?
構想を練るのが8割~9割で、おもに電車の中とか歩いているときとか、カフェなどで。書く時間は1割くらいなんですよ。考えたことを蓄積しておいて、書くときには短時間で一気に書いてしまいます。現場でコンサルをしているときに書きたいことを思いつくことがあります。また、複数の会社のコンサルを同時並行で行うと脳が刺激をされて発想が広がることを感じますね。あとアイデアを得るために、忙しくてもなるべく人に会うようにしています。


――オフィス環境について工夫してうまくいったことがあれば教えてください。
仕事が終了するときにデスクの上を全部片付けてキレイにして終えるようにしています。0リセットです。なぜなら、毎回どんな仕事も初心で始めることにしたいからです。しかも、毎日繰り返し取り出すので、取り出すのが早くなります。整理整頓できて生産性が高くなるということです。人生の中で物を探す時間を計算してみると膨大な時間になることがわかるでしょう。それを予防するのに0リセットをやってみるといいですよ。


――断捨離ということですか?
そうです。デスクをきれいにすればムダな時間も減りますよ。一気にきれいにできないなら、「今日はこの範囲」と決めてやる。今日は机の一番上の引き出しと決めたら、まず一番上の引き出しの中身を全部出す。そして要るものと要らないものを分けて、要らないものは捨てる。次は二段目の引き出しと、徐々に整理していけばいいのです。パソコンの中身についても無造作に保存しているファイルがどんどん増え、必要な資料を見つけるのに時間がかかっている人がいますが、時間がもったいないですよね。そんな人は番号をふったりするなど工夫して整理するべきですね。


――これからのオフィス環境に求められるものは何だとお考えですか?
余白だと考えます。自分を振り返る余裕が必要だと言いましたが、思考の余白も大事ですし、時間の余白も大事です。同じようにスペースにも余白が大事です。余白の時間を過ごすスペースがじつは大事。AI時代ですので、今まで以上に自分で将来を思い描く能力が必要とされています。いかに妄想、想像してイメージを描くかが仕事の中にも求められているのです。そういったことがしやすい場所が必要です。発想を生み出す物理的な場が必要なのではないかと思っています。また、新しいアイデアを生み出すには人と会うのが大切です。異分野の人との接触が必要なのです。昔の家庭に縁側があったように、人と人とが出会い偶然会話してしまうような場が必要で、たとえばバーカウンターなど縁側的要素をオフィスの中に組み込むことが必要だと思いますね。


――大きい企業ですと、同じ会社にいながら顔を合わせることのない人もいますよね。
そうですね。他の部署とも交流し、会話することがポイントなのです。思考に余白がないと声もかけないでしょう。時間に余白がないと声をかけられても返せないし会話も続かない。



■もっともっと深く考えて欲しい

もっともっと深く考えて欲しい ペネトラ・コンサルティング株式会社代表取締役 安澤武郎 (やすざわ たけろう)氏


――経営者や従業員を問わず、働く人々に伝えたいメッセージやアドバイスを教えてください。
何のために働いているのか、自分の思い描いたように生きようとか幸せになろうとか、本来の目的があるはずです。そのためには、どんな仕事人生になればいいのか、自分のミッションと今の仕事のつながりをもっともっと深く考えて欲しいですね。例えば、「家族を幸せにしたい」というミッションを持っている父親だとしましょう。子育てにいいて重要なことには、「親が活き活きといきていること」「自分の仕事にプライドを持って生きていること」があります。「家庭を大事にする」と言って仕事をおざなりにすれば、おそらく家庭もうまくいきません。人生の各要素は複雑に絡み合っており、働くことなしに幸せになれる人はいないでしょう。


――若い層へのアドバイスは?
若い人の抱えるジレンマには「認めてほしい」ということと「自由にやりたい」ということとがあると思います。自由にやりたいということは、「見ないでくれ」ということに近い。でも認めてほしいということは、「見てくれ」ということじゃないですか。未熟な上司からすれば、見て欲しいの?見て欲しくないの?どっち?となってしまう。若い人は、絶対的な実力をつけて、まずは周囲に認めさせる。そうすれば自由にできる、というステップを分かって欲しいと思います。社会には、実力をつければ、それに比例して自由に仕事ができるというシンプルな法則があるのです。その順番を上司も理解した上で指導するのがいいと思います。


アスクル家具ショールームにて、著書とともに撮影

(アスクル家具ショールームにて、著書とともに撮影)



■お気に入り記事はこれ!

――「みんなの仕事場」をご覧になってお気に入りのコンテンツを教えてください。
オフィス訪問の「ストライプインターナショナル」さんの記事がいいですね。まず、オフィスの第一印象がいいと思いました。交流が生まれるバーカウンターもあるし、ボーっとできるスペース、余白もありますし。ジグザグになっているところもいいですね。組織のことを勉強されていると感じさせるオフィスです。記事を見てあのオフィスが欲しいと思いました。


また、記事としても、掘り下げ方がすばらしいと思います。私のクライアントは老舗の企業が多く、まだオフィスを変えることに目が向いていないのです。「オフィスを変えるといいアイデアも出てくる」と提案してもピンとくる人が少ないのです。そんなクライアントに「みんなの仕事場にこんな記事がありますよ」と見せてあげると断然イメージしやすくなりますよね。写真だけではなく背景にあるコンセプトがわかりやすいですし。私もあの記事を使ってお客様に提案しようと思います。事例が1つではなく複数あるのもいいですね。浅くも深くも勉強できると思いました。



【参考】「フロア中央に未来妄想室のある風通しのいいオフィス。歌舞伎座タワー18階 ストライプインターナショナルの東京本部に行ってきました(オフィス訪問[1])

【参考】株式会社ストライプインターナショナル取材記事






忙しい日々の中、余白の重要性を認識している人は少ないようです。毎日時間に追われ、与えられた日々の業務をこなすだけで精一杯。そんな人は一度、余白をキーワードに、自分の思考、働き方、時間を使い方を振り返ってみてはどうでしょうか。






プロフィール

安澤武郎 (やすざわ たけろう)

事業変革パートナー。ペネトラ・コンサルティング株式会社代表取締役。一級建築士。

1974年滋賀県生まれ。京都大学工学部卒業後、鹿島建設に勤務。大学時代はアメリカンフットボールで学生日本一を2回経験。オールジャパンに4度選出。2012年に独立。ペネトラ・コンサルティング株式会社を設立。組織変革コンサルタントとして活躍中。



著書

京大アメフト部出身、オールジャパン4度選出の組織変革コンサルタントが見つけた 仕事でもスポーツでも成長し続ける人の「壁をうち破る方法」newwindow」(ディスカバー・トゥエンティワン) [外部リンク]


ひとつ上の思考力newwindow」(クロスメディア・パブリッシング) [外部リンク]







写真撮影場所

アスクル 豊洲 家具ショールームnewwindow

最寄駅: 東京メトロ有楽町線「豊洲駅」 1C出口より徒歩3分 オープン時間: 午前10時~午後5時(土・日・祝日・年末年始・お盆等を除く)
※見学は要予約です (電話またはウェブフォームより受付)





編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
取材日:2017年12月27日




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