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ビジネスコミュニケーションで変わるビジネスシーン ストレスなく働くためのヒントを産業カウンセラーに聞く!~MICA COCORO代表 宮本実果氏インタビュー~

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MICA COCORO代表 宮本実果(みやもと みか)氏

MICA COCORO代表 宮本実果(みやもと みか)氏



働くことが苦しくなっていませんか? 環境が整っていないのに、制度ばかりが先行してしまっている反動が、逆に職場を働きにくいものにしてしまうことも。ストレスに押しつぶさずに働くにはどうしたらいいのか、産業カウンセラーの宮本実果さんに伺いました。






■働く一人ひとりと向き合う仕事

――宮本さんのお仕事を教えてください。

産業カウンセラーというのは資格の名で、私の仕事は、その資格を活かして、メンタルヘルスやキャリア開発、職場の人間関係の問題や職場環境の問題などに焦点を当てて、働く人、もしくは働ける状態にある方々をカウンセリングしたり、スキルの学習も含めた研修を行うことです。企業から依頼を受けて、セミナーや講師、チーム研修などを通じてチームビルディングのお手伝いもしています。


――個人と企業、両方に対してサポートをしているわけですね。

個人と企業の間に入っていく仕事ですね。個人に対してカウセリングをすると同時に、研修で培った経験を企業にフィードバックし、企業が要望する人材の方向性を個人にフィードバックするというように、行ったり来たりしながら組織を活性化させ、個人の生産性を上げていきます。


――個人と1対1で向き合う仕事が多いのでしょうか?

はい、個人のお客様はもちろん、企業との契約も、団体研修と個人カウンセリングはセットで契約しています。守秘義務がありますので、話した内容はお伝えできませんが、1対1で話して出てくる問題点を企業にフィードバックすることによって、本当に必要な事を個人も企業も把握することが可能です。


――最近では、社内に産業カウンセラーがいる企業もありますね。

上場企業などでは、人事の課長クラスは産業カウンセラーの資格を取得することになっているところも多いです。社内に産業カウンセラーがいれば、気軽に面談を受けられる面もあります。一方で、社員側からすると、会社都合に話を変えられる不安感や話した内容が漏れることを危惧する方が多く、カウンセラーに思っていることを言えないこともあり、社内カウンセラーの利用にはハードルが高い面があるといった話をききます。総合的に考えると、社外のカウンセラーの方が相談しやすいのかもしれません。


――もともとはアナウンサーをしていらっしゃったとか。

私は札幌出身で、会社員を経験し、オーディションや試験を受けてフリーアナウンサーになりました。最初の仕事はSTVラジオ音楽番組のパーソナリティーです。東京ではイベントのMCや、CMのナレーションも経験しました。その後、JR北海道へ入社し、広報に就いたのです。これを機に、NHK「おはよう北海道」の運行情報のコーナーを担当するようになりました。NHKのニュースなどにも出ていたので、朝5時に起きて出社したり、夜もなかなか帰れなかったり、ハードな仕事でした。そういう大企業で働いた経験から、「組織は人」という思いをもつようになり、人材マネジメントへの興味から組織心理学にたどりつき、産業カウンセラーの資格をとりました。



■衰退しているビジネスコミュニケーション

衰退しているビジネスコミュニケーション 宮本実果(みやもと みか)氏


――ご著書「仕事は人間関係が9割」の内容紹介と込めたメッセージ上梓後の反響を教えてください。

実は当初、出版社からは簡単に読めるハウツー的な内容を打診されました。しかし、私は会社の現場の真実を書きたいという思いがあり、編集担当とかなりの時間を使って打合せしました。現場は、学術的な理論だけではうまくいかないことがあります。いくら理想的な人間関係論があっても、現実の上司が変な人だったら通じない。多様性の時代ですから、ハウツーは通じないのです。そして、これからは、考え方はさらに多様化していきます。「女性活用」「外国人雇用」といった表層的なダイバーシティの考え方は、個人の価値観や生き方という深い部分へ変化すると考えます。職場の人間関係は、「どんな人がいるのか」ではなく「どんな考えを持った人がいるのか」が重要です。この本は、それに対応できるビジネスコミュニケーションのあり方について、たくさんの人のカウセリングをしてきた知見をまとめ、役職や立場を超えて共有できるように書きました。そのためか、基本的な事を書いた箇所に対して、「簡単な内容だ」と思う方もいますし、「結局は人間関係だよな」と深く落とし込んだ管理職の方の感想など様々です。


――対人コミュニケーションと、ビジネスコミュニケーションの違いは、どこにあるのでしょうか。

感情という部分ですね。対人コミュニケーションというものは、相手から好かれるかどうか、仲良くできるかどうか、今後の関係性を気にします。それに対して、ビジネスコミュニケーションでは、組織としての目的があり、チームの目的を達成させるためのコミュニケーションができればいいのです。ある企業の管理職は、とても優秀な方でしたが、意外にも口下手でした。話すことが苦手でも、成果を目的とした職場でのビジネスコミュニケーションはすばらしく、部下からの信頼が厚い。その逆の方もいます。海外とくらべると、日本には逆の方が多いようです。


――それはなぜ?

組織が人の感情に依存してしまっている部分があるからだと思います。本来あってはいけないことですが、上司に好かれているかどうか、上司からどう思われているかということに人事評価が影響される日本の文化が背景にあるように思います。


――本音を言い合おうとも書かれていますが、本音を言うことは感情につながってしまうのではありませんか。

この本のテーマは、「本音を言い合えればもっとシンプルに働ける」ということです。そもそも、感情をぶつけることが本音ではないのです。ビジネスシーンにおける本音は一つしかありません。「よくするためにはどうすればいいいと思うか」ということです。だから、衝突したり嫌われることをおそれるのではなく、意見を出し合うことが本音を言い合うことになるのです。


――対人コミュニケーションとビジネスコミュニケーションを混同してしまうと、どのような問題が出てくるでしょうか。

制度のほうが重要になってしまうということが起こります。たとえば、女性が活躍できる会社の制度は理解しているけれど、それがなぜ重要なのかは理解していない。問題の背景をつかんでいないような管理職が多いことは問題です。生産性を上げるという本来の目的を理解せずに、制度と生産性を結びつけずに運用しているのです。その状態でマネジメントし、部下を育成しているうちに、大きなギャップを生み出すことになってしまう。



■誤解が多い、働き方改革の現場

誤解が多い、働き方改革の現場 宮本実果(みやもと みか)氏


――今、働き方改革ということが叫ばれています。

制度が改善されることはとてもすばらしいと思いますが、環境を改革することの方が先決ではないかと感じています。本当に働き方改革を進めるのであれば、オフィス環境や職場の人間関係、つまり働く人たちの環境そのものを整備することが必要だと思うのです。 人間は、制度が変わっただけではモチベーションが上がりません。現場の視点から言うと、環境のほうが重要です。目的を達成させるために制度をつくるはずが、制度を使うことが目的になっていて、働き方改革の本来の目的である「生産性の向上」といったことがぼやけてしまっているのではないでしょうか。組織も国も、もっと生産性を高める環境づくりに力を入れていくべきだと感じます。


――手段が目的化してしまっているのですね。

長時間労働禁止とか、時短、働く女性の応援など、いろいろな制度がありますが、どのように理解して、その制度をどう使うのか、現場で理解している人はほとんどいません。特に管理職は、どちらかと言えば自分の評価に関係するから、率先して部下に制度を使わせたり、部下に嫌われないように制度を使うことをむやみに進めたりするケースが多い。管理職本人は、部下に残業させないことが管理職の仕事だと思っているのですが、それは自己満足に過ぎません。嫌われたくないという気持ちが先に立って、手段が目的化されたコミュニケーションになってしまっています。
今回の本で繰り返し「ビジネスコミュニケーション」について書いているのは、組織のあるべき姿が意識されていないことが多く、そうしたことが衰退してしまっているからです。 管理職の皆さんには、「部下はあなたのことを意外とよく見ている」と教えてあげたいです。まず、部下に見られていることを意識することを大前提にしたほうがいいでしょう。上司にゴマすっている姿、日頃の生活態度や服装、話し方など、部下は細かいことをよく見ています。


――意識していない管理職が多そうですね。

働く人の側からすると、制度だけが急に導入されても、環境が整備されていなければ、家に仕事を持ち帰ったり、早朝出勤したり、と別の時間に働かなくてはいけなくなる悪循環も生まれてしまうのです。
たとえば働く女性が妊娠をした場合です。一口に妊娠・出産と言っても、その大変さは人によって違いますよね。中には普段とあまり変わらないという人もいれば、とても辛い人もいます。その状態になってみないとわからないものなのに、産休・育休の制度はひとつです。働く人一人ひとりが、制度によってではなく、能力や環境によって結果が出せばいいはずなのに、制度ばかり優先しているから、能力があるのに正社員から格下げになってしまうようなことも起きる。収入が下がったら生活も変わってしまい、もはや同じ働き方はできなくなってしまいます。どうしてそんなことが起きてしまうのか。ある大きな会社では、制度がちゃんとあるにもかかわらず、担当者レベルの暗黙のパワハラが存在しており、それが理由で辞めざるを得なかった人もいました。そんなことがあるので、制度に焦点を当てすぎるのは危険だとすら思っているのです。


――せっかく産休・育休後に職場復帰できる制度があるのに、現実には戻れない職場もありますね。

子どもが必ず健康に生まれてくるとは言いきれないし、出産後に体調を崩してしまうこともあります。前と同じようには働けない方もたくさんいるはずです。産休や育休の期間に家庭にどっぷり入ってしまえば夫婦の関係性も変わってくる。したいこともできなくなり、精神的にも不安定になりますから、育休が明けて、誰もが、さあ働こうという元気なモチベーションをもてるとはかぎらない。モチベーションがあっても、戻ってみると上司も変わり、部門の雰囲気も変わってしまっていて、なかなかついていけない。「元気な赤ちゃん産んでね、待っているよ」とみんなに応援されて、幸せいっぱいに産休に入ったのに、戻ってきたら雰囲気が変わってしまって、不安になり、だんだん会社に行きたくなくなる。そんなことは非常に多く発生しています。現実の職場復帰は、制度はあっても、とても高いハードルがあるのです。


――制度のためにかえって仕事が増える、というようなこともありそうですね。

私が声を大にして言いたいのは、こうした現状を共有することの大切さです。制度に着手する前に、部下や同僚、上司、とにかく全員と「自分はこう思うけどどうしたらいいと思う?」と話し合い、一人ひとりにとってベストな状態は何かということを洗い出し、それを叶えるための制度をつくる。好かれるか、好かれないか、こんなこと言ったらこう思われるのではないだろうかという対人コミュニケーションに立っているかぎり、上司と部下が組織上有効なコミュニケーションをとることはできません。生産性を上げるという目的を忘れずに部下と対面で話して、きっちりと情報や興味、想い、そしてゴールを共有することが大切なのです。


――今後、テレワークの導入などが進むと、ビジネスコミュニケーションのあり方も変わってくるでしょうか。

テレワークであってもビジネスコミュニケーションの重要性は変わりません。コミュニケーションのあり方は部門等によって変わりますから、制度だからと言って、全部門を同じように動かす必要はなく、管理職の決断によって、部門の特質に合わせたりすることが必要になるでしょう。テレワークを導入するチームの管理職が自分のチームの制度の利用法を決めていけばいいのです。在宅勤務をしているメンバーとどうしても顔を合わせなければならないときは、近隣のカフェで待ち合わせてもいい。これは休職をしているメンバーとのコミュニケーションでも同じですね。ただし、その上司が休職している原因であるような場合には、会いに行ってはいけません。



■一人で集中できるパーソナルスペースをオフィスに設けてみては

一人で集中できるパーソナルスペースをオフィスに設けてみては 宮本実果(みやもと みか)氏


――ところで、宮本さんの印象に残っているようなクライアントのオフィスはありますか。

使用目的がわからない謎の部屋があるオフィスや、執務スペースを全部仕切ってしまっていて誰が何をしているのかわからないようなオフィスは、よくないと思いました。会議室の予約のシステムが複雑で、今、誰も使っていないのに使えなかったり、無駄だと思えるオフィスは結構あります。デッドスペースをカフェスペースや集中できる部屋にしたり、部署を越えてみんなで話し合いができる部屋にしたり、そういうものがもっとあってもいいと思います。


――良かったオフィスは?

セミナールームを取引先などにも解放しているクライアント企業があり、自社の研修だけではなく、他社も出入りできることでいろいろな風が入ってきて、常に活気があったので、感心しました。


――宮本さんご自身は、本の執筆などどのような環境で仕事に集中していますか?

集中したいので、なるべく一人になれる場所であることが大事です。体育座りしたり、腕を振り回したり、ストレッチしたり、ウーとかアーとか独りごとも言いますから、誰かに見られたら恥ずかしいので(笑)。働く環境に、そういったパーソナルスペースを設けているようなオフィスがあったらいいなと思いますね。


――最後に、経営者や従業員を問わず働く人々に伝えたいメッセージやアドバイスを教えてください。

今後は、ありきたりの集合研修では職場はなかなか改善できないと思います。私が個人に焦点を当てた活動をしているのは、個人のほうが改善のハードルが低いからです。そもそも、自分が何かおかしいと自分で判断できる人は放っておいてもカウンセリングに来るし、自分でどんどん外に出て勉強もします。本当に問題なのは、そういうことを自分で判断できない人をどう教育するかということです。自分はストレスを感じていないと思う人のカウンセリングや、何を学んだらいいかわからないような人たちに適した環境をつくることが、これからの経営には必要だと思います。



■お気入りの記事はこれ!


――「みんなの仕事場」をご覧になって、お気に入りのコンテンツ、記事はありますか?

ファミレス席の記事は興味深く読みました。カウンセリングは相手に対して45度の位置で座ると対象者が話しやすいと言われているのですが、向き合って行うビジネスコミュニケーションも、相手との距離が大事だということがわかりました。


【参考】

イマドキのオフィスには必須かも?!オフィス内「ファミレス席」大研究【前編】newwindow
イマドキのオフィスには必須かも?!オフィス内「ファミレス席」大研究【後編】newwindow




お気入りの記事はこれ!宮本実果(みやもと みか)氏





ストレスなく働くためには、本来のビジネスコミュニケーションの目的が大切で、多くの人がそれをコミュニケーションスキルと混同してしまっているということがわかりました。人間関係も含めて働く環境の整備をしていけば、毎日気持ちよく仕事ができることができるようになるでしょう




プロフィール


宮本実果(みやもと みか)

産業カウンセラー/MICA COCORO代表
一般社団法人日本産業カウンセラー協会正会員 (2006年3月~現在)


会社員10年、産業カウンセラーとして12年のキャリア。専門学校職員、フリーアナウンサー(ラジオ・TV番組、TVCM、ナレーション、イベントMCなど実績多数)、鉄道企業本社広報を経て、働きながら大学へ編入学、産業組織心理学を学び、卒業。産業カウンセラー資格を取得し、都内のコンサルティング企業にて人材開発コンサルタントとして勤務。退職後、一般社団法人日本産業カウンセラー協会神奈川支部CS事業部、起業家セミナー講師、WEB相談サイトでの実績を積み、2007年6月MICA COCOROを開業。開業以来、年間最大600件、延べ6,500件以上の個人セッションを実施するほか、経営者向けのセミナーや企業研修、大学生向けのキャリアセミナー、ビジネスパーソンの人材育成講座なども行っている。2016年3月より、大学院へ入学し、組織における「管理職と一般社員の個人のチームワーク能力」について研究し、2018年3月修士課程修了。経営学修士(MBA)を取得。自らが学び続けることを体現している。

MICA COCOROnewwindow」[外部リンク]



著書

仕事は人間関係が9割newwindow」(クロスメディア・パブシッリング)[外部リンク]








編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
取材日:2018年4月9日




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