こんにちは!「みんなの仕事場」です。
上の写真のようなファミレス席タイプのミーティングスペースを見たことはありませんか? 今回はイマドキのオフィスに続々と増えつつあるオフィス内「ファミレス席」を大特集しました!
※今回の記事の写真は、「みんなの仕事場」で過去に取材したオフィスの写真をまとめています。もし気になったオフィスがあれば、リンクしてある記事も是非ご覧ください!
「@cosme(アットコスメ)を運営する株式会社アイスタイルのオフィスは、オープンでコミュニケーション豊かな空間(オフィス訪問[1])」より
オフィスを取材すると2回に1回以上は見かけるオフィス内「ファミレス席」。社内用ミーティングスペースとして使われていることが多く、どちらの取材先でも尋ねると一様に、社員の皆さんに人気とのこと。「ファミレス席」を使ってのミーティング(社内コミュニケーション)は、かなり活発になるとか。
ファミレスにあるようなコンパクトなソファ・テーブルのミーティングスペースは、もはやオフィスの必須スペースとなりつつあるのではないかと思えるほどの浸透ぶりなのです。
そこでオフィス内「ファミレス席」タイプのミーティングスペースについて、その人気のポイント、寸法図解、機能性、「みんなの仕事場」取材先の事例などを特集します。
「「モッピー」「モバトク」「お財布.com」を運営する株式会社セレスのオフィスは南青山にあるNYブルックリンスタイル! (オフィス訪問[1])」より
慢性的な会議室不足で、社内用会議スペースの予約の取り合いになって、なかなか取れないという話をよく聞きます。会議室を増やしたいものの、空きスペースがないと、そのために執務スペースを削らねばならず、簡単には会議室は増やせないのが悩みどころです。
でも、ファミレス席なら、4人掛けを想定すれば、コンパクトなタイプであれば、200x160cm程度のスペースがあれば置けるものがあります。個室会議室なら少なくとも300x200cm程度は必要になりますので、執務スペース内の空き場所に、比較的簡単に設置できる省スペースさが人気のポイントなのです。
「内田洋行のおしゃれオフィスは、働き方変革の工夫のカタマリ!営業部のグループ/フリーアドレスの使い分けに秘訣アリ (オフィス訪問)」より
ファミレス席と同じ広さの個室会議室なら、極端に狭いので狭苦しいと感じてしまうところです。その点、ファミレス席なら席の上部が空いているので、開放感があるのが人気のポイントです。
また、執務スペース内に置いても、上方の視界を遮らないので、イマドキのパーティション無しのオープンなオフィスにマッチします。窓際に設置する場合も多いですが、会議室と違って、窓上半分は室内に向かって遮られることがなく、執務スペース内から窓の景色が見られるなどオープンさが保たれるのも良いところです。
ちなみに、オープンなミーティングスペースのため、人事等、守秘性が必要な会議はファミレス席には向きませんが、それ以外の会議であれば、ファミレス席で対応できることが多いようです。守秘性が必要な会議は会議室、それ以外はファミレス席と使い分けすることで会議室の混雑も緩和できます。
「トラック買取・販売サイト「トラック王国」で業界にイノベーションを起こす ネントリーズ株式会社を訪ねてきました(ネントリーズ株式会社 オフィス訪問[1])」より
オープンさのあるファミレス席ですが、個室ではないものの、その多くは、座ると頭が隠れる程度の背もたれの高さ (70~100cm程度)にすることで、個室感も持たせることに成功しています。オープンで開放感があり、個室じゃないけど使ってみると個室感がある、というセミクローズドさも魅力です。
「数々のデザイナーズオフィスをプロデュースする株式会社ヴィスの東京本社オフィス見学ガイド~注目ポイントPickUp!~(オフィス訪問[1])」より
ファミレス席は、多くの会社では、空いていれば予約なしで使えるようにしていることが多いです。席の上部がオープンなので使っているかどうかも分かり、空いていれば、打ち合わせしたいときにすぐに使えるというのが人気のポイントです。「今すぐ打ち合わせしたいのに、会議室が取れないから会議できない」というストレスから解放されることも人気の理由かも。
「ガヤガヤ・ゆるゆる・コツコツ・ふむふむ・ワクワク空間?!プラスの新コンセプトオフィスに行ってきました」より
ファミレス席は、ほぼ必ず片側が壁(または窓)になります。4~6人用のファミレス席の場合、奥側に座るには、入口側から順に座りながら横にずれて入らなければなりません。これが不思議とワクワクします。まるで、洞窟やカマクラのような、狭い空間に入っていく行為が、子供のころの秘密基地に入るときのワクワク感を呼び覚ますようで、ここがファミレス席の不思議なところです。
「即戦力採用のTV CMで有名なビズリーチのオフィスにおしゃれなカフェが出来たと聞いて訪問してきました (株式会社ビズリーチ オフィス訪問[1])」より
ファミレス席は、中に入るとお互いすごく近くに座ることになります。
というのも、テーブルとソファの間の間隔がほとんどなく、ソファ座面奥行も浅く作られていて、テーブル奥行も一般的な会議テーブルより浅いのです。そのため、ファミレス席に座ると自動的に向かい合う人同士がすごく近くになる機能を持っています。
ここで、物理的な距離と心理的な距離について、アメリカの文化人類学者エドワード・ホールによるプロセミックス(proxemics)理論(*1)というものがあるのですが、人間同士の心理的距離は4つの物理的距離に分けられるとして、
*1) プロセミックス(proxemics)理論
「かくれた次元」(エドワード・ホール著 Edward Hall, 1966 , 日高・佐藤 訳, 1970, みすず書房)
(1) 370cm以上の間隔を「公衆距離」と呼び、十分に離れていると感じられる距離、
(2) 120~370cmの間隔を「社会的距離」と呼び、立ち話など仕事のやり取りをす距離、
(3) 45~120cmの間隔を「個体距離」と呼び、家族や友達、親しい同僚との距離、
(4) もっと近い45cm以下の間隔を「密接距離」と呼び、内緒話の距離、
としています。
この4つの距離は、昔のアメリカ人を対象とした調査による距離感なので、絶対的な基準ではないのですが、最近の日本のビジネス環境であれば、微妙な違いはあるにせよ、おおよそ理解できる距離感です。相手に対して親近感がわくと、心理的な距離が短くなるとともに、相手との物理的な距離も短くなるという法則でもあります。
一般的な会議室であれば、相手と120cm以上の距離が保たれるため「社会的距離」というビジネス上の付き合いの距離になってしまうのですが、ファミレス席に座ると、自動的に、親しい同僚との距離になる「個体距離」になるということがポイントです。どうもファミレス席というのは親近感湧く距離に参加者を置いてくれて、心理的参加者を少し近づける効果があるようなのです。
「会議室を作るときに参考にしたい、株式会社アイスタイルの打ち合わせスペースづくりのアイデア [オフィス訪問(2)]」より
ファミレス席の多くは、座ると自然と良い姿勢になることが多いです。
というのも、ソファ座面奥行が浅く作られて、背もたれもリクライニングせずほぼ垂直なことから、椅子にピッタリ身体を沿わせて上半身を直立させることになるのです。座面シートも沈み込まないタイプが多く、こちらも良い姿勢を保つのに役立ちます。
そのため、ファミレス席に座ると、だらしない姿勢を取ることが出来ず、自然と前向きの良い姿勢でミーティングに臨めるというわけなのです。
「マッチ箱、ブレストBox、Pitch square?! ディップ株式会社 新オフィスの「日本一コミュニケーションが取りやすい」仕掛けとは(オフィス訪問[2])」より
これはすべてのファミレス席に当てはまりませんが、ファミレス席を景色の良い窓際に置くことで風景を楽しみながら打ち合わせ出来るようにしたりしているオフィスがありました。また、奥側の壁に、ホワイトボードや大型モニターを置いて打ち合わせをしやすくしているケースも多いです。
では、次はファミレス席の寸法を図解していきます!
(「みんなの仕事場」で作成。ファミレス席はいろいろなタイプがあり、「みんなの仕事場」でセレクトした典型的と思われるタイプの寸法を挙げています。)
「みんなの仕事場」にて取材資料を基に検討したところ、ファミレス席の寸法のポイントは次の6点と思われます。
(1) ソファ背もたれ高さ | 70~100cm | 座ると顔が少し~完全に隠れる高さ。(座っても顔が出る60cm程度のタイプも) |
---|---|---|
(2) ソファ座面奥行 | 45cm | ソファとしては浅い奥行で、自動的に相手と近い距離感になる。 |
(3) テーブル奥行 | 70cm | 一般的な会議テーブルより浅く、自動的に相手と近い距離感になる。(図面などを広げるため奥行の深いタイプも) |
(4) ソファ座面高 | 42cm | 一般的なソファより高さがあり、硬めのクッションで、ダイニングチェアや執務チェアに近いため、前向きの良い姿勢になる。 |
(5) 片側が壁 | ほぼ必ず片側が壁(窓)になっており、一方側からしか入ることができない。 | |
(5) テーブルとソファの間の距離 | 0cm | テーブルとソファの間は極端に狭く、ほぼ0cmのため、自動的に相手と近い距離感になる。片側が壁のため、奥に座るには座ったまま移動が必要で、秘密基地ぽさが醸し出される。 |
この6点が相まって、省スペース性、オープンさ、セミクローズドさ、秘密基地ぽさ、距離の近さ、姿勢が良くなる、といった人気のポイントが生まれてくるのではないでしょうか。
では、実際にいろいろなオフィスにあるファミレス席を見て行きたいと思います!
ファミレス席はオーダーメイドの造作家具であることが多いのですが、オフィス家具メーカーから市販のユニットも発売されていて、それを利用しているケースもあります。
過去の「みんなの仕事場」の取材の中から、ファミレス席をピックアップしました。
「トラック買取・販売サイト「トラック王国」で業界にイノベーションを起こす ネントリーズ株式会社を訪ねてきました(ネントリーズ株式会社 オフィス訪問[1])」より
座って頭がすっぽり隠れるくらいの高さでクローズド感高めです。
「ガヤガヤ・ゆるゆる・コツコツ・ふむふむ・ワクワク空間?!プラスの新コンセプトオフィスに行ってきました」より
壁をくり抜いたような、オシャレな洞窟型ファミレス席です。
「内田洋行のおしゃれオフィスは、働き方変革の工夫のカタマリ!営業部のグループ/フリーアドレスの使い分けに秘訣アリ (オフィス訪問)」より
ブラック革張りデザインのソファがシックです。
背もたれ高さは低く、オープン度高めです。テーブルは、提案書や図面を広げるために広めに設計されています。大型モニター装備。窓際のファミレス席は素敵ですね。
「働きやすい上質な執務環境が整備されたソネット・メディア・ネットワークス株式会社のオフィス訪問(大崎駅徒歩4分)」より
こちらは大きな洞窟型のファミレス席。奥の壁にホワイトボードがあります。
洞窟風の内面を木目調にしてロッジにいる雰囲気なので、中に入ると気分が盛り上がります。
「数々のデザイナーズオフィスをプロデュースする株式会社ヴィスの東京本社オフィス見学ガイド~注目ポイントPickUp!~(オフィス訪問[1])」より
こちらはコの字型のファミレス席。一段高い位置にあり、オフィス全体を見渡せる作りになっています。
「渋谷駅徒歩7分、画像素材のPIXTA(ピクスタ)のオープンでフラットな新オフィスに行ってきました!(ピクスタ株式会社 オフィス訪問[1])」より
大きな社内カフェの窓際にあるファミレス席。景色の良さが魅力です。
「会議室を作るときに参考にしたい、株式会社アイスタイルの打ち合わせスペースづくりのアイデア [オフィス訪問(2)]」より
幅が広めで、女性なら最大8人まで入れるタイプ。
ファミレス席ユニットの下面に移動用キャスターが装備され、フロア内の移動が可能です。
「働き方改革で会議をスリム化!ストライプインターナショナルの会議はここが違う(オフィス訪問[3])」より
こちらは窓際に、コクヨ株式会社のユニット家具「ブラケッツ (brackets)」で作られたファミレス席。
「男性向け化粧品トップのマンダムがマーケティング青山オフィス(女性7割!)を設けた理由(オフィス訪問[1])」より
窓際の景色の良いところにファミレス席。大型モニター付。
「ここはオフィスじゃない。ハワイだ!イマジネーションが湧く環境づくりのためにここまでする(ノースショア株式会社 オフィス訪問[1])」より
オフィスの中の砂浜(!)の先にあるファミレス席。こちらも明るい窓際でリゾート気分が盛り上がります。
こちらには、オフィス内にバンが(!)。バンの中もファミレス型会議スペースになっているのです。
長くなってきましたので、ここで一旦ページを区切って、後編でもファミレス席の事例を紹介して行きましょう。まだまだ魅力的なファミレス席が出てきます。
「イマドキのオフィスには必須かも?!オフィス内「ファミレス席」大研究【後編】」
編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
作成日:2018年1月30日
≪ご注意≫本記事内容は「みんなの仕事場」運営事務局による考察の結果を参考としてご提供するものであり、結果等を保証するものではありません。また、アスクル株式会社の立場や意見を代表するものではありません。
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