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オノマトペで人工知能が進化!? 感性をもつ人工知能が登場する可能性 ~電気通信大学大学院情報理工学研究科教授・電気通信大学人工知能先端研究センター教授 坂本真樹氏インタビュー~

オノマトペで人工知能が進化!? 感性をもつ人工知能が登場する可能性 ~電気通信大学大学院情報理工学研究科教授・電気通信大学人工知能先端研究センター教授 坂本真樹氏インタビュー~

電気通信大学大学院情報理工学研究科教授・電気通信大学人工知能先端研究センター教授坂本真樹(さかもと まき)氏


「仕事のことを考えると胃がキリキリ痛む」「サクッと終わらせて飲みに行こう」など、なにげなく使っている"オノマトペ"。今、人工知能がそんな人間の感性にまつわる領域でも活躍しようとしています。アイドルグループ「仮面女子」とのコラボでも話題になり、テレビコメンテーターとしても活躍中の電気通信大学人工知能先端研究センター教授 坂本真樹氏にお話を伺いました。






■感覚を数値化するオノマトペの研究


――坂本先生の専門研究分野は「オノマトペ」とのことですが。

オノマトペというのは、「ツルツル」「サラサラ」など、人が五感で感じたことを直感的に表現する擬音語・擬態語です。擬音語と擬態語の区別というのは結構曖昧なのですが、たとえば「サラサラした手触り」はどちらだと思いますか?


――手触りは音ではないから、擬態語でしょうか?

じつは、もともとは、歌にもなっている「笹の葉」がたてるサラサラという音からきているから、擬音語なんです。「雨がザーザー降っている」というのも、雨音を聞いてそう思う時もあれば、部屋の中で雨の降り方でそう思うこともありますよね。だから実際の音のあるなしで擬音語・擬態語を区別するのは難しいし、あまり意味がないので、「オノマトペ」という言葉を使うんです。オノマトペは日本独特のものだと思っている人もいますが、お隣の韓国には日本語よりもたくさんのオノマトペがあるんですよ。


――オノマトペの研究というのは、文系の学問ではないのですか。

私はもともと文系なのですが、文献調査よりも、人が言語を話す能力というものや、「ツルツル」とか「サラサラ」という言葉そのものに興味がありました。言葉という社会的現象を研究するのは文系の分野ですが、その研究手法として、理工系の情報技術を使うことにしたわけです。


アンケートなどでは、人の感性を定量化しようとするものがありますね。「触った感じはどうでしたか」「飲んでみてどうでしたか」といった設問に、「好き」「嫌い」、「滑らか」「粗い」のような答えを選ばせたり。でも感覚は数値化しにくいものですから、中には答えるのが難しいこともあります。手触りを表すのに「硬さは2、滑らかさは3」などと表現する人はいませんよね。「スベスベしていました」などと直観的にオノマトペを使って答えるでしょう。そこで、そうした直観的な表現を数値で推定することで、感性を評価する手法になり得ると考えたのです。文系の研究対象に理工系の技術でアプローチするというのが私の独自性ということになります。


――マーケティングなどのビジネスに応用できそうですね。

「ガリガリ君」というアイスがありますが、そんなふうに感覚を効果的に訴求する表現を考えたり、オノマトペの印象にマッチする色を表現するときに使えます。ものづくりの場面でも、「もう少しツルッとさせたい」「もっとサラサラさせたい」などというときに「オノマトペデータ」という数値化データを役立てることができます。


――感覚を数値化できれば、様々な分野に応用できそうですね。

医療分野にも応用できます。「頭がズキズキ痛い」「ガンガン痛い」「喉がヒリヒリする」といった痛みはまさに感覚そのもので、誰でも病院に行くとオノマトペを使います。痛みの感覚を言葉で正確に伝えるのは難しくても、私のシステムを使うと、「ズキズキ」と「ガンガン」の違いを"深さ"の違いとして数値で捉えられたりできるのです。それを他の検査データと結びつけて統計処理したり、関連する比喩で調べたりもできます。患者の主観に寄りそった医療を実現する上で、医師と患者のコミュニケーションをつなぐオノマトペは、とても重要だと思っています。


認知症の初期段階では、質感や鮮度を判断できなくなる症状があります。たとえば「濡れている床」なのか「光っている床」なのかがわからなくなったり、健康な人ならわかる肉や魚の鮮度を判別できなくなるそうなのですが、感覚を数値化することができれば、そうした人の支援にも役立つ技術になります。



■身体をもたない人工知能が「空気」を読むようになる日

身体をもたない人工知能が「空気」を読むようになる日


――先生の本では、「人工知能は空気を読むのが苦手」と書いていますが。

オノマトペとはまた別になりますが、人と共存するような人工知能の研究も行っています。


今、機械翻訳などの分野では、人工知能の精度はかなり向上しています。まだ文脈までは理解できないと言われていますが、膨大な文章のデータを学習していけば、いずれ、前後の文章のつながりから文脈を理解できるようになるかもしれません。たとえば「道路を歩くならいいけれど」という文章があったとして、どんな文章ならそこに結びつけられるかということは、学習させることができます。


でも、本当の意味で人と共存し、人の役に立つ人工知能ということを考えると、人のコミュニケーションの中に自然に入ってくるようなものができないかぎり、しょせんただの検索機械にすぎません。人と共存していくなら、人工知能も「空気感」というものを理解できなければならないと思うのです。


「この場の空気感では、こんな表現が適している」「この相手に対しては、こんな表現をしたほうがいい」ということは、その空気の中で学習していかなければなりません。たとえば「面接会場のピリッと緊張した空気」というような感覚は、身体のある人間が感覚で感じとっているものです。人工知能は身体を持っていませんから、そのような感覚をもつことは難しいのですね。


――人間のようにオノマトペを使いこなせる人工知能が実現したら、面白いですね。

この研究ではオノマトペを使っていないのですが、触覚をもたない人工知能と、触覚を感知できるロボット技術と組み合わせることができるようになるかもしれません。こういう触覚のものは「ふわふわ」、こういう触覚のものは「つるつる」だと教えてやれば、人工知能も学習できるようになるかもしれませんね。



■絵を見て、歌詞を創造できる人工知能の誕生

絵を見て、歌詞を創造できる人工知能の誕生


――2017年には、アイドルグループ「仮面女子」の楽曲を作詞したことが話題になりました。

大学の特許技術を紹介する「イノベーションジャパン」というイベントが2016年夏にあり、レポーター役として仮面女子さんが私のブースに立ち寄ってくれたんです。大学で授業も受けてくれて、何かコラボレーションをという話になったとき、言葉の研究をしているので、作詞をすることにしたわけです。文章から感性情報を抽出して色などに変換するような技術はすでにできていましたので、それを逆に使って、仮面女子さんが描いたカラフルな絵から詞を作ったら面白いということになりました。それでできたのが「電☆アドベンチャー」という楽曲です。




星、見つけよう!!まぶしい世界 三日月に響け

ブルーの川をきらり染める 黄金(こがね)がブルーに照らす時

白い川と落ち合うバラード 初夏のりんごが憧れそうで

オレンジ咲いてひらひら 若い星を運ぼう

デビューで咲こうラブストーリー 月夜のふと影に

(一部)


作詞には、正解も不正解もありません。人工知能が作った文章は、何となくおかしいところもあるけれど、入れた写真や絵となんとなくイメージが合っていて、「なるほど、そんな感じかな」と思ってしまったりするのが面白いところだと思います。


最初にできた歌詞には、事務所がチェックして、アイドルとしてふさわしくないとNGになってしまったワードもありました。記者発表イベントをしたときに、それが「僕のクルミがはちきれそうで」というフレーズだったことを明かしたら、記者が一斉にニヤッとして、「それは下ネタですね」と言いました。でも、人工知能には下ネタというものを教えていませんので、それはやはり人間の勝手な想像にすぎません。そんなことも面白おかしく取り上げられました。


その後、元になる画像に何が映っているかを認識する技術を加え、膨大な歌詞を学習させることによって、作詞の精度もさらに上がって、より詩的で歌詞っぽい表現ができるようになって、この4月に開催された「第3回 AI・人工知能 EXPO」にも出展しました。



■感性を持ち、人間と共存する汎用AIへ

感性を持ち、人間と共存する汎用AIへ


――今後、感性にかかわるような領域も、人工知能と無縁ではなくなるのですね。

人間のコミュニケーションの中に自然に人工知能が入ってくるようになれば、とても物知りですから、いろんなこと教えてくれるようになるでしょう。人間同士が喧嘩になりそうになったら、その空気を察知して仲裁してくれるようなことも実現するかもしれません。人の感性が理解できれば、ものづくりのお手伝いもできるようになります。


「これは感性を持っている」と人が感じるレベルの人工知能の実現は、そんなに遠いことではないと思います。「作詞ができる人工知能」というだけで、人は「感性を持っている」と感じるのですから。でも実際は人がそう思うだけで、本当に人工知能が感性を持っているわけではありません。


哲学的に考えてみれば、たとえ人間同士であっても、相手がもっている感情は想像の中にしかないわけですから、相手が本当に感情を持っているかどうかはわからないわけです。それと同じことではないでしょうか。


本当の意味で感性を備えた人工知能を作ることは、意識を持つ人工知能と同じように簡単なことではないと思いますが、これから人工知能がどんどん自然な存在にはなっていくことは確かだと思います。人工知能は特殊なものではなく、当たり前のものになっていくでしょう。


――いわゆる汎用AIの研究ということですね。

電気通信大学の人工知能先端研究センターは、囲碁やチェスのようなゲームや、自動車の運転のような特定の領域に役立つ特化型のAIを超えて、人間のように感覚や知覚を備え、言葉で表現できるような汎用AIを目指しています。オノマトペは人間の五感を横断的に扱えるものですから、私もそのコアメンバーのひとりとして、人工知能が知覚や言語能力を獲得していくことに貢献していきたいと思っています。



■人工知能を恐れる必要はない

人工知能を恐れる必要はない

――「人工知能時代の就職活動」は、就活本という切り口で、これからの人工知能時代の働き方について説いています。

人工知能時代を迎えて、「どうなってしまうのだろう」と不安になる人がたくさんいます。「子どもにはどんな習いごとをさせるべきか」などという相談を受けることもあります。すべての仕事が人工知能にとって代わるわけではありませんが、かなりの部分で人工知能が代行することになるでしょう。そこで、大学教師として毎年行っている就職指導や進路指導の経験から、就活本という切り口で、実際のところを書いてみようと思ったのです。


――学生さんの反響はいかがでしたか。

電気通信大学の学生は理工系なので、仕事の選択肢はむしろ増える面もありますが、理工系であってもウカウカしてはいられません。たとえばSEの仕事にしても、「今までのレベルでは人工知能に仕事をとられちゃうかもしれないよ」とか、「人間としていろいろな方面に能力を広げた方がいいよ」とアドバイスをしていますが、同感してくれていると思います。


――「人間はもっと創造的な仕事を」といわれても、何をしたらいいのかわからない人は多いと思います。

これから必要になるのは、人工知能を活用できる能力、嫌がらずおそれずに便利に使っていく能力です。皆さん、今ではスマホを使うのに危機感や脅威を感じたりはしませんよね。同じように人工知能も便利に使えばいいのです。人工知能はこれが得意、人間はこれの方が得意、という特性を覚えて、棲み分けながら使っていけばいいのではないでしょうか。


作詞のように、人間しかできないと思われていた創造的活動をできる人工知能を作ったりすると、「そんなことまでさせるなんて」と言われたりすることもあります。でも、それを使って想像を膨ませることができるのが、人間が優れているところなんです。人工知能に手伝ってもらって想像を膨らませ、より創造的な仕事をしていく。人間の活動はすべて創造的なものなのですから、気負わずに、便利に使いながらやりたいことをやっていけばいいと思います。



■お気に入りの記事はこれ!

お気に入りの記事はこれ!


――みんなの仕事場で面白いと思われた記事を教えてください。

LINEさんのオフィスが素敵ですね!「研究室をこんなふうにできたらいいな」と思いながら記事を読みました。


【参考】

LINE株式会社 新オフィス訪問 ~1か所に集約移転、更なる"WOW"を創出するオフィスとは?!~【前編】(オフィス訪問[1])newwindow





近い将来、「明日は休むから、この仕事全部終わらせておいて」とAI君に頼む日が来るかもしれませんね。落ち込んでいるあなたを察して、「元気出して、そんな時にはこれをするといいよ」とアドバイスしてくれる人工知能も夢ではなさそうです。人工知能に脅威を感じるのではなく、仕事の苦労を軽減させてくれる便利な仲間が増えることを歓迎しなくてはいけないのでしょう。





プロフィール


坂本 真樹(さかもと まき)

電気通信大学大学院情報理工学研究科教授・電気通信大学人工知能先端研究センター教授
1998年3月東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程修了(博士(学術))。1998年4月同専攻助手、2000年4月電気通信大学電気通信学部講師、准教授を経て、2015年4月同大大学院情報理工学研究科教授。2016年8月同大人工知能先端研究センター教授を兼務。 2016年10月よりオスカープロモーション所属(業務提携)。人工知能学会、情報処理学会、認知科学会、VR学会、感性工学会、広告学会等各会員。



著書

坂本真樹先生が教える 人工知能がほぼほぼわかる本newwindow」(オーム社)[外部リンク]

坂本真樹と考える どうする? 人工知能時代の就職活動newwindow」(エクシア出版)[外部リンク]








編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
取材日:2018年4月18日




         

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