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「戦略的人事部」を組織せよ!属人的な暗黙知を形式化・問題解決するAI「HR君」が人事セクションを変える!~株式会社エクサウィザーズ取締役 粟生万琴氏インタビュー~

「戦略的人事部」を組織せよ!属人的な暗黙知を形式化・問題解決するAI「HR君」が人事セクションを変える!~株式会社エクサウィザーズ取締役 粟生万琴氏インタビュー~

株式会社エクサウィザーズ取締役 粟生 万琴(あおう まこと)氏



広告業界のAdTech(アドテック)、金融業のFinTech(フィンテック)など、既存の産業や事業部門にテクノロジーを導入する戦略的な取り組みが加速しています。


そんな中、新たに注目されているのが、企業の人事部門に人工知能(AI)を導入して、省力化や問題解決につなげようとする「HR Tech」(ヒューマンリソース・テクノロジー)です。人間を相手にする「人事」という仕事を、AIはどう変えてくのでしょうか。いち早く企業への導入実績を上げている株式会社エクサウィザーズの粟生万琴取締役にお話を伺いました。






■なぜ日本企業ではホワイトカラーの生産性が低いのか


――日本の職場の生産性は、先進国の中でもとくに低いといわれていますが、どこに課題があると思われますか。


そうした見解もありますが、ものづくりに主軸を置いた製造業では、日本の生産性は決して低くないと思います。問題はホワイトカラーで、こちらは確かに生産性が低いと言わざるを得ません。なぜそうなるのか。それは、職場が属人的な仕事の手法から成り立っていて、業務分担が不明確であったり、役割定義がキチンとしていなかったりといった弊害を生んでいるからです。さらに、終身型雇用社会の中で、従業員の持っているノウハウが形式化されないまま、個人の能力と経験に基づいて仕事が行われてきたという側面もあります。


――個人の経験に頼りすぎてきたということでしょうか。


組織風土に応じた暗黙知として、日本的なコミュニケーション能力が発揮され、それによって仕事が回ってきたことも確かでしょう。その意味では、暗黙知に含まれるコミュニケーションや、マルチタスクへの対応においては、日本人の能力はむしろ高いといえます。しかし、そこに頼るがゆえに、組織としての効率化が遅れ、結果、労働時間が長くなり、生産性が低いということになってしまうのではないでしょうか。


――そうした問題を解決するためにHRテックが有効というわけですね。しかし目下のところ、まだまだ普及が進んでいない現実もあると思います。導入の壁になるのを阻害する要因は何でしょうか。


テクノロジーの活用という面で、企業の中で一番課題を抱えているのは人事セクションではないではないでしょうか。戦略企画セクションと比較すると、明確に差があります。人事セクションは「人を見て」する仕事が主ですから、どうしても属人的なノウハウを元に採用や評価、人材育成といった業務で忙殺されています。それがテクノロジー導入の最大の障壁になっていると感じますね。人事の皆さんがテクノロジーリテラシー、デジタルリテラシーを上げてくだされば、どれだけ仕事が効率化されるか、どんな時間の使い方があるかという「働き方」を考える余裕ができます。



■4つの機能で暗黙知を形式化・可視化するAI「HR君」

HR君の機能紹介をしてくれた、HR Tech事業部アカウントマネージャー 幸村 友美氏

HR君の機能紹介をしてくれた、HR Tech事業部アカウントマネージャー 幸村 友美氏


――エクサウィザーズのHRテックのシステムを紹介してください。


弊社では、ユーザー様に親しみを持っていただくために「HR君」と名付けました(笑)。その大きな導入目的は、暗黙知で行っていた人事的判断を形式化し、企業の経営戦略、組織戦略に貢献させることにあります。人事部と経営幹部が同じ目線でディスカッションできるようになるのを理想としています。


HR君には、大きく4つの機能が備わっています。


1つめが「パーソナル・アシスタント」。個々の社員のパソコンから情報収集を行う機能です。社員の健康状態や、日報などの業務情報などを収集することで、従業員のモチベーションなどをリアルタイムに分析することができます。


2つめが「HR君アナリティクス」。人事情報だけでなく業務活動状況も含めたデータを、従業員に紐づけて分析し、部局の「エース社員」、つまり、ハイパフォーマーが持っている特徴を分析したり、逆にモチベーションが低下して離職の危機にある社員を割り出して早めに対策を打ったりすることができます。


3つめが「コーチングAI」。ハイパフォーマーの技能をAIが学習し、中堅社員や新入社員が動画を通じてAIから個別のアドバイスを受けられるシステムです。新人の商談RP研修などでいうと、面談の動画をアップすれば、所作や言葉遣いをAIがチェックし、改善すべき点を指摘してくれます。トレーナーの負荷を大幅に軽減し、個々人にあった教育を可能にしてくれます。


最後が「メンタルヘルスAI」というもので、「気分が乗らない」「体調が今ひとつ」といった状況にある社員が、専門医と気軽にチャットで相談できる体制を提供し、セルフチェックを助ける仕組みです。



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これらの機能によって、人材の分析・育成からメンタルヘルスまで、人事セクションの業務をサポートしてくれる人事の右腕役が、HR君です。



■HRテックの成果を、仕事の現場にどう生かすか

HRテックの成果を、仕事の現場にどう生かすか

画像提供: 株式会社エクサウィザース(※)


――ハイパフォーマーの行動パターンを分析できるのが興味深いですね。


例えば、トップセールスマンのAさんがいるとしましょう。そのAさんの日報や勤怠などの業務データを分析して、その行動パターンを把握します。たとえば、受注件数は多いけれども、1日中外回りをしているわけではなく、午前中にルート巡回して、午後は新しいアポ取りや社内の打合せを積極的に行っているというようなことがわかるわけです。そういう「できる人」の行動パターンをメンバーが共有できるよう、人事から現場に提案することは、大きな意味があると思います。


――採用などにはどう活用されるでしょうか。


たとえば、従来の新卒採用では、誠実でまじめ、忍耐力があって長く働ける人、といった評価ポイントで採用を決めていたとします。しかし、10年後、20年後を見すえて、「新規事業や海外戦略でリーダーシップを取れる人材を採る」というふうに会社の方針が変われば、採用基準を変えなければならなくなります。過去の採用パターンを分析して課題を洗い出し、より戦略的な人材採用に向けて舵を切らなければならない。これまで採ってこなかった個性の人材を見出して、採用戦略を転換するということをちゃんとやっている会社は、意外に少ないんですよ。


――具体的な事例はありますか?


ある販売会社(A社)の新卒採用の事例を紹介しますね。まず、この会社のこれまでの採用基準を分析しました。出身大学や筆記試験の結果、インターン経験の有無など、さまざまなファクターごとの採用者数を抽出します。すると、大きなポイントが「言語力」と「A社におけるインターン経験」にあることがわかりました。「ああ、そうか」と思うかもしれませんが、もう少しひもといていくと、いろいろわかることがあったのです。


――というと?


その「インターン経験」についての採用状況を調べてみたら、「インターン経験なし」という応募者より、同じ販社であるB社でインターン経験のある応募者の採用率が低いことがわかったのです。B社というのは、実はA社と同じグループの親会社でした。つまり、「親会社のことを知っている人間は煙たいから、できれば排除したい」というA社人事担当者のバイアスがかかっていたわけです。応募者本人の能力と関係ない採用傾向になってしまっていたわけです。


――なるほど。そういうバイアスは発見しにくいですね。


もうひとつの「言語力」についてもバイアスが発見されました。販売の会社なので、コミュニーケーション能力が高いほど採用される傾向があったのですが、ある一定以上に高い点数をとると、ほとんど採用されていないことがわかったのです。なぜそういうことになったかというと、初期の面談を担当しているのが現場のマネジャーだったため、弁が立ちすぎたり、難しいことを多く言う学生は煙たがり、無意識のフィルターになって、採用を左右していたのです。



■HRテックで、人事部は組織戦略を支える重要セクションになる

HRテックで、人事部は組織戦略を支える重要セクションになる


――HR君は、顕在化していない問題点や成功パターンを発見する手伝いをしてくれるわけですね。


HR君は、単なる「オペレーションを簡略化するツール」ではありません。どの会社でも、人事部には業務データをはじめ膨大な社員データが眠っています。これまでであれば、その蓄積は、限られた人事担当者の暗黙知の中でしか利用されることがありませんでした。組織としての問題点は、この「なんとなくやってきた」ことの中に内包されているのです。そこにAIを利用したHRテックが加わることで、眠っていたデータを可視化し、分析し、その成果を人事セクション全体で活用することで、戦略的な方向性を与えることができるわけです。


――戦略的な人事ということですね。


たとえば、営業実績的にハイパフォーマーと大きく乖離するメンバーがいたとします。人事部に戦略的な視座があれば、そういったメンバーを対象に、トップセールスの成功パターンをコーチングしたり、個々の行動データを照会して、パターンに対応した研修プログラムを作ったりするなど、画一的で漫然とした営業マン教育から一歩踏み出すことができます。


あるいは採用面談にAIを導入して、面談の内容をデータ化・可視化すれば、採用担当者のバイアスが明らかになり、ひいては自社の採用の傾向が可視化され、課題を発見することができます。 こうしたことがHRテック導入の利点ですが、そこまでご理解をいただいた上で、テクノロジーの活用を考えれば、人事の仕事は大きく変わります。そのような視点は、日々の業務に忙殺されていては生まれません。任せられるところはAIに任せて、そこから生まれた時間で考えればいいのです。


――そこで導入の壁になるのが、先ほど指摘された人事担当者のデジタルリテラシーなのですね。


人事担当者は、人事管理システムや給与システムなどのような「ツールとしてのIT」は日常的に使っていますが、道具の使い方に精通しているだけで、リテラシーにはつながっていません。人事担当者は、端的に、こなさなければいけない仕事が多すぎるんです。新規採用が終わったら評価の季節になり、研修があり、中途採用があり、気がつくと1年経っていて、常に目の前の業務に忙殺されている。新しいテクノロジーを勉強する暇などなく、リテラシーも上がらないのですね。リーダーシップ研修やキャリアカウンセリングなどの勉強をするように、デジタルやITのことも勉強して、仕事の進め方や働き方の改善を考えていただきたいです。


――HRテックによって自分の職分が侵され、仕事が減ってしまうと思う人事担当者もいるのではないでしょうか。


逆です。HRテックの助けで業務を効率化することによって、人事担当者はこれまで追われていた毎日の生産性の低い業務から解放されて、新しい視点で人材活用を考える時間を確保できます。例えばその時間、社内の各署にヒアリングをして、それぞれの要望や問題点を抽出できれば、関係するデータをAIにかけて分析し、現場の要求に沿った人材の採用、教育、活用、評価につながっていくと思います。あるいは人事と戦略企画セクションとの間にパイプができれば、ともに長期的な展望に立って人材戦略を考えることができます。その過程で、人事部門のデジタルリテラシーも高まっていく。いいことばかりだと思います。


私たちは、そういう、強い人事、戦略的な人事に変革するためにAIを使っていただきたいと考えています。HRテックによって、ある意味「地味」で「主役ではない」印象だった人事セクションは、組織戦略の中核をなす最重要部門に生まれ変わる可能性を持っているのです。これは、ひとつには人事の方たちの働き方を変えることでもあり、戦略的人事のサポートを受ける全社員の働き方が変わることでもあります。



■お気に入りの記事はこれ!


――「アスクル みんなの仕事」でお気に入りの記事を教えてください。


元グーグルの人事担当、ピョートル・フェリクス・グジバチ氏のインタビューがとても印象的でした。「笑いながら仕事をした方が良いアウトプットを得られる」というお考えには大賛成です。そこを基本にしたいと私も思います。顔の口角を少し上げるだけでも仕事の効率が違う、という話も聞いたことがあって、大切なことなんだなぁと。


【参考】

笑いながらでも仕事はできる!疲れない働き方から生まれる良質なアウトプット 元グーグル人事担当者に聞く、強い心を保つための自分の「軸」の作り方newwindow


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人事の業務を効率化し、また、採用や人材配置などで大きな力を発揮するHRテックは、今後ますます日本でも広がりを見せていくことになるでしょう。こうした新しいテクノロジーは、今、ほとんどの会社で模索されている働き方改革と深いかかわりがあります。人事セクションにとって、働き方を変えるための大きな武器になるのではないでしょうか。





プロフィール


粟生 万琴(あおう まこと)

三重県出身。13歳の時にプログラミングと出会い、成人後はシステムエンジニア、総合人材サービス会社勤務を経て2016年、エクサウィザーズの創業と同時に参画。人工知能の普及と、これを活用した社会課題・産業課題の解決に取り組む。HR Tech事業はその柱であり、AIシステム「HR君」は、多数の従業員を抱える大企業を中心に導入実績を上げつつある。現在、同社取締役。



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画像提供: 株式会社エクサウィザース(※)

株式会社エクサウィザーズ[外部リンク]









編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局(※印の画像を除く)
取材日:2018年6月26日




         

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