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膠着化する社内の上下関係に一石!気鋭のコンサルタントが自身の経験から編み出した「ボスマネジメント」とは?~小倉 広氏インタビュー~

経営コンサルタント 小倉広(おぐらひろし)氏

経営コンサルタント 小倉広(おぐらひろし)氏



働き方改革が進む一方、現場では組織の問題が山積しています。そのひとつが「上司と部下の人間関係」。重要な課題であるにも関わらず、明確な行動指針は示されていません。上司が変わらなければ、部下も変われない――そんな膠着状態を部下の側から変えられないかと提案しているのが、経営コンサルタントの小倉広氏。身動きが取れなくなっている企業の現状に物申す「ボスマネジメント」について、お話を伺いました。






■「リーダーシップ不足」で二度もうつ病に


――ご経歴を教えてください。


僕は12年、リクルートで商品企画や情報誌の編集、そして現在の仕事である組織人事コンサルタントをやっていました。その後は、ベンチャー企業の立ち上げに関わって役員になったり、中小企業のオーナー社長になったりと、いろいろな経験をする中で、たくさん考えることがあり、現在のコンサルティング事務所を起こしました。


――ご自身の「リーダーシップ不足」について悩んだこともあったとか。


リクルート時代、29歳で課長になった頃のことですが、部下がついてきてくれず、成績も上がらなくなって、身動きが取れなくなったことがありました。その原因は、僕がいわゆる「指示・命令型」の古いリーダーだったことです。指示した通りに動かないメンバーに、また命令する、というマネジメントでしたから、部下がついてきてくれず、チームの雰囲気は悪くなる一方でした。当然、成果も出ません。リクルートは、みんなが楽しそうに働いている会社ですから、その中で自分のチームだけが苦しんでいる状況に耐えきれなくなり、ついにうつ病になってしまいました。


――辛い思いをされましたね。


その後のベンチャー企業で事業部長時代にも、まったく同じ間違いをしています。パターンはまったく同じで、われながら懲りないというか、学ばないというか、またうつを発症してしまいました。


――指示や命令を出すことは、管理職の普通の仕事ではないかと思いますが。


それは違います。立場を入れ替えて考えてみれば明白ですが、人は誰でも命令されるのが嫌いです。自分で決めたいのです。もちろん、意見が割れた場合の最終決定は上司の仕事ですが、それまでは、意見を交わし話し合う方がはるかに有用です。命令するだけでは人は動きません。かつての僕は、そこに気づけなかったわけです。そうやって苦しんだことが、結果的に今の仕事につながっていることに、運命的なものを感じています。



■挫折を経て見つけた「リーダーシップは人間力」

■挫折を経て見つけた「リーダーシップは人間力」


2度の挫折を経て、さすがに「問題は自分にあるのではないか」と思うようになりました。それを解決したくて、ひたすら本を読む日々が続きました。並行して通院もしていましたが、病院は薬を処方するだけの対症療法です。原因が職場、あるいは自分にあるのなら、対人関係や生き方を変えないかぎり、うつ病は寛解しません。必死になって、人間学の古典をたくさん読みました。代表的なものがアドラー心理学と東洋哲学です。



――猛勉強によって得られたものは。


論語には、「由らしむべし、知らしむべからず」(君主は信頼され、頼りにされなさい。理屈で人を動かすことはできませんよ)という政治原理があります。これは、ギリシャの哲学者アリストテレスが言っている「人を動かす三条件、エトス(信頼)パトス(感情)ロゴス(論理)」と一緒です。また、私の専門であるアドラー心理学にも通じます。アドラー心理学は、あらゆる課題は対人関係の課題であると考え、対人関係を変えることで問題を解決しようという現実的な心理学です。


つまり、リーダーシップを支えるのは人間関係であり、それを担保するためにはリーダーの「人間力」、もっと大きな言い方をすれば「生き方」が必要だということを学んだわけです。人間力は、人との関係性を維持するための「土台」であり、「器」です。人間力を言葉にするのは難しく、ともすれば陳腐になってしまいますが、儒教の教義には「五常(仁・義・礼・智・信)」という徳目があります。リーダーは、五常に表現されるような人間力を兼ね備え、その土台の上に能力を載せて発揮しなければ安定しません。貧弱な人間力の上に高い能力を載せても機能しない、ということです。これらの知識を掘り下げ、実践しようともがくうちに、いつのまにか、それを伝えることが僕の仕事になったと思っています。


――人間関係の「土台」としての人間力の重要性に気づかれたのですね。


たとえあり余るような能力があっても、土台となる人間力が小さいとバランスを取れず、うまく動けません。当時の僕は、MBA的な組織学・経営学によって、リーダーとしての職を全うできると思っていました。いかに効率的に部下を動かすか、というマネジメントですね。でも、それは間違っていた。まず、土台になる人間力を高め、能力はその上に置かなければいけなかったんです。頭でっかちだったんでしょうね。上司として変な指示は出していないつもりでも、部下はついてこなかった。人間力がなかったわけです。


――なるほど。


内村鑑三の「代表的日本人」という本に出てくる西郷隆盛像にも、人間力が現れています。西郷隆盛は、ある意味クレイジーなキャラクターですが、周囲の人への深い思いやりという根っこがあるからこそ、あれほどまでに人々がついてきたんです。


――上司に人間力があれば、部下は自ずとついてくる。


トップ自ら部下を罵倒しまくっていても、成長している企業はあります。軍隊式の号令一下で社員全員が動く。部下は毎日、何を言われるかとビクビクしながら働いているような会社です。確かに業績は向上しているかもしれませんが、そういったタイプの会社が長く続くとは思えません。従業員が耐えられずに辞めてしまい、会社としての屋台骨が崩れてしまうのではないかと思います。結局、人間力でチームを引っ張っていく形でなければ続かないのです。



■大企業に蔓延する「人材の無駄遣い」

■大企業に蔓延する「人材の無駄遣い」


――先進諸国の中で、日本のホワイトカラーの生産性が低いのはなぜでしょうか。


いろいろな見方があると思いますが、僕が思う原因は、まず第一に「人材の無駄遣いが多すぎること」、そして第二に「任せる技術がないこと」です。


――人材の無駄遣いとは。


たとえば、僕のところに相談に来る大企業の多くが、形式的な打合せを好みます。セミナーの打合せであれば、担当者1人と、せいぜい直属上司が来れば十分です。それなのに、ぞろぞろと5人も6人も管理職の方がやってくるわけです。形としては確かに礼を尽くしていただいているのですが、まったくもって生産性が低い。おそらくこれを他の仕事でもやっているのだろうな、と推測してしまいます。本来は一人でできるはずの仕事を、5人6人でやって体裁だけ整えているのでは、生産性どころではないだろう、と思うのです。もっとやるべき仕事があるのではないか、といつも思います。


――担当者に任せられないのですね。


それが第二の「任せる技術がないこと」です。打合せに来た60前後の男性部長が、同行している40代女性課長に挨拶程度しかさせず、全部自分で説明をする。そして「キミも少しは話しなさい」などと言う。おそらく部長が話した内容は、能力ある女性課長一人で十二分に説明可能なはず。これでは人は育たない、生産性は上がらない、と思いますね。


これも結局、リーダーシップの問題に帰結します。上司が「任せる」ことの大切さを理解していないんですね。任せられないということは、部下を信頼していないということです。当然、任せてもらえない部下も上司を信頼しません。そんな相互不信の中で生産性が高まり、人が育つとはとうてい思えない。生産性が下がる問題の根がそこにあるわけです。


――仕事を任せられないのは、どこに問題があるとお考えでしょう。


やはり業績との関係性が高いと思います。右肩上がりでない企業では、人員数に余裕があるから、上司が部下に仕事を任せることを躊躇します。「自分でやった方が早い」と思ってしまう。僕が新卒で入ったリクルートは、一貫して急成長を続けていた企業です。右肩上がりの業績と人員不足から、仕事は山のようにありました。否応なく仕事を任せざるを得ない状況から人が育ち、さらに業績が上がる。リクルートではその好循環が回っていました。そして、それを支えるコミュニケーションレベルの高さがあったわけです。なかなかそこまで行きませんが。



■ダメな上司に寄り添う技術としての「ボスマネジメント」

■ダメな上司に寄り添う技術としての「ボスマネジメント」


――生産性を阻害しているのは、上司の存在なのですね。


"困った上司"にもいろいろなタイプがありますが、多くは部下のやる気を奪うことで労働生産性を下げる元凶になっています。かつて、企業と従業員との関係は、「愛社精神」「ロイヤリティ」で語られていました。今はそういう関係ではなく、お互いが対等に信頼し合って仕事を進めることが求められています。


それを実現できれば、上司も部下もハッピーになれますが、なかなかそうはいかない。その原因は、多くの場合、上司にあります。仕事を部下に任せられない、任せられないから部下が育たない、育たないから叱咤する。部下の立場で見れば、上司を信頼しないから指示を守らない。それでは仕事が回らない。そんな悪循環があります。


――そこで、部下の側から上司に働きかける「ボスマネジメント」が必要になるわけですね。


"困った上司"は、大抵、どの会社にもいて、部下は辟易しています。まず第一に、かつて僕もそうだった「指示・命令型」の上司。第二に、「現場の判断で適当に」と言って責任を取らない「優柔不断型」の上司。第三に、「君に任せるよ」といっておきながら、最終段階になって「違う。これじゃない」と強制リセットをかける「ちゃぶ台返し型」の上司です。


――「あるある」ですね(笑)。


当初、僕は、それぞれ3パターンの上司別に部下側へ対して対処法を発信していたのですが、最近では、基本はどれも同じことだと思うようになりました。要は、部下が上司から信頼される部下になることが先決だ、ということです。


――具体的にはどうしたらいいでしょう。


僕の専門分野の一つであるリーダーシップでいつもお伝えしていることがあります。リーダーシップとは、人を動かす影響力である、ということ。そして、人を動かす力の源は信頼だということです。これは、先に述べた孔子やアリストテレスが二千五百年前から言っていることとまったく同じです。


古今東西、人間の根本は変わらない。人は自分が信頼している人の言葉を信じるのです。ですから上司は部下から信頼されて初めて影響力=リーダーシップを発揮できる。それは、ボスマネジメントにおいても同様です。部下が上司に変わってもらいたければ、部下が上司から信頼されなければならない。そこから始まるのです。


――ひとつの自己防衛策でもありますね。


企業でチームメンバーと面談してみると、「上司が嫌い」「上司が悪い」という話は山のように出てきます。しかし、上司の悪口は言うが、自分から何かを変えようとはしていない人がほとんどです。アドラー心理学では、この状況を「悪いあの人」「かわいそうな私」という文脈で、神経症的な症状だと考えます。では健全な人はどう考えるか。「これからどうする?」と考えるのです。では、どうするか?そこで私が提言しているのが「まずは自分が上司から信頼されるようにする」「その後で上司に提言する」という2つのステップなのです。


「ボスマネジメント」は、「上司をコントロールする」というよりも、上司と共に自分のチームを良いチームへ変えていくという、足下の変革です。理不尽な状況であっても、上司から信頼してもらえれば、いろいろなことが変わるかもしれない。それを狙いましょうということです。



■「1on1ミーティング」によって閉塞状況を打開する

■「1on1ミーティング」によって閉塞状況を打開する


――日本のビジネスパーソンの働き方は、今後どのように変わっていくと思いますか。


企業の上司と部下との関係が変わることは、なかなかないでしょうね。とくに大企業には、本来であれば経営を任せてもいいような40〜50代の優秀な人材に、使い走りさせているような風土がいまだに残っていますから。そのような扱いをされている当人も、大企業ならではの待遇の良さがあるから文句を言わない。まさに「飼い慣らされて」いる状態です。これでは、とても日本経済の将来に希望を持つことなどできません。


――悲観的ですね。


多くの大企業では、従業員には情熱も才能もないと思っている。だから40代にもなった社員を「若手」などと呼んで、使い走りをさせているんです。お互いに、もう気づいてもいい。非常ベルは鳴っているのに、現実はついてきていません。早く手当てをしないと本当に大変なことになるという危惧を持っています。


――どのように手当てをすればいいのでしょう。


上司と部下が意思疎通できるような場を作ることができれば、まだ希望はあります。今、僕が勧めているのは「1on1ミーティング」というコミュニケーション手法です。上司と部下が1対1で定期的にミーティングして、部下は仕事で経験したことや悩みを上司に伝えて内省し、上司は部下が成長するためのアドバイスを与えて、気づきを促します。多数で行う会議や、一方的な査定ではなく、お互いが自然体で話すことのできる場を定期的に設けることで、部下が成長し、社内のコミュニケーションが活性化することを期待できます。


この1on1ミーティングは、Yahoo、Google、Intel、Greeといった先進企業にすでに導入されています。中でもYahooでは、「部下の才能と情熱を解き放つ」という人材育成のコンセプトのもとに「1on1」を取り入れ、毎週〜隔週で1回以上、上司と部下が約30分の話し合いを7年間にも渡って継続し、大きな成果をあげています。


――先進企業の柔軟さを見習わなければなりませんね。


効果をあげるには、上司の側が1on1に必要となるスキルとマインドを学ぶことが必要です。スキルを伴わない1on1は、逆に「パワハラ面接」になってしまうリスクがあります。古いタイプの管理者は、部下を追いつめ、締め上げることを仕事だと思っていますから、実際にそういうケースも多いと想像しています。そんな事態を避けるために、上司は面接技術を勉強して身につけてほしいですね。




■お気に入りの記事はこれ!


――「アスクル みんなの仕事」でお気に入りの記事を教えてください。


机の幅の話は面白いですね。160×80というのは僕の机と同じ寸法です。カテゴリとしてはライティングデスクに入るんでしょうけど、表面に木目の凸凹が出ていてメモが取れないんです(笑)。でも、それが気に入って使っています。仕事の環境はとても大事なものだから、自分で納得できる、愛着の持てるものを使いたいですね。


【参考】
オフィスデスク実験:幅 80cm ~ 140cm で使い方はどう変わる?実地シミュレーション




小倉広(おぐらひろし)氏

経営コンサルタント 小倉広(おぐらひろし)氏








柔らかい語り口の中に、確固たる信念を感じさせるお話をいただきました。小倉氏ご自身の挫折経験から生まれた独自のリーダーシップ論は、説得力を持って迫ってくるものです。「自分は一コンサルタントに過ぎないから」と言いながら、日本的企業風土に対する危機感を強く感じるお話に、身の引き締まる思いをしました。おそらくクライアントであろう企業の欠点を的確に突く小倉氏の視点に、一種の「反骨精神」のようなものを感じました。







プロフィール


小倉広(おぐらひろし)

組織人事コンサルタント、企業研修講師、アドラー派の心理カウンセラー、ビジネス書作家。三菱UFJリサーチ&コンサルティング講師、SMBCコンサルティング講師、リクルートマネジメントスクール講師。
大学卒業後、株式会社リクルート入社。企画室、編集部、組織人事コンサルティング室課長など、主に企画畑で11年半を過ごす。その後ソースネクスト株式会社(現・東証一部上場)常務取締役、コンサルティング会社代表取締役などを経て現職。一連の経験を通じて「リーダーシップとは生き様そのものである」との考えに至り、「人間力を高める」人間塾を主宰。「人生学」の探求および普及活動を行っている。また、20年間のコンサルタントとしてのプロジェクト・マネジメント経験をもとに「対立を合意へ導く」コンセンサスビルディング技術を確立。同技術の研究および普及活動を続けている。



著書

アルフレッド・アドラー人生に革命が起きる100の言葉(ダイヤモンド社)』[外部リンク]


僕はこうして、苦しい働き方から抜け出した。(WAVE出版)』[外部リンク]


任せる技術(日本経済新聞出版社)』[外部リンク]
他多数









編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
取材日:2018年9月11日




         

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