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経営者に聞く!

精神論を捨て、行動量を減らす。「スタートアップの常識」の逆を行く20歳の起業家のビジネス論 ~フォーチュンファクトリー株式会社  代表 坂内 綾花氏インタビュー

フォーチュンファクトリー株式会社 代表 坂内 綾花さん

フォーチュンファクトリー株式会社 代表 坂内 綾花さん



働き方が多様化する中、「起業」という道を選ぶ人も増えています。しかし、「起業したら寝ないで仕事しなければ成功しない」「精神力や我慢が必要」などというステレオタイプな考え方は、もう捨て去るべきかもしれません。「8時間はしっかり寝る」「やりたくないことはやらない」というスタイルを貫いて事業拡大している、なんと若干20歳の起業家、フォーチュンファクトリー株式会社の代表、坂内綾花さんにお話を伺いました。



■18才で起業、「中身のわからない通販」というユニークなビジネスモデル



――起業するまでは何をしていたのですか?


中学卒業後、専門学校への進学のために新潟から東京へ引っ越しましたが、専門学校は自分が目指していたことと違っていることに気づき、すぐに退学しました。その後は飲食店などでアルバイトをしながら生活していました。


具体的に起業を考えたのは17才のときです。バイト先で出会ったお客様に「起業しやすい環境が整ってきているので、早くからチャレンジした方がいい」と促されました。



――そしてたどり着いたビジネスモデルが、とてもユニークな「フォーチュンボックス」だったのですね。


具体的に本を読んだり、やりたいことを考えて、過去の自分の体験から「中身は秘密の"謎の箱"フォーチュンボックスを売る」というビジネスモデルにたどり着きました。


「フォーチュンボックス」というのは、「何が入っているかわからない箱」です。通販で注文いただいてから、ご自宅に届いて開けるまで、中身がわからない通販(フォーチュン通販、ミステリー通販)で、実家からの仕送りを開けるときの楽しみや、福袋を開けるときの楽しみをヒントに企画しました。


箱の中には私が選んだ全国の物産や高級生活雑貨などが入っていますが、お客様は何が入っているか、わからないですし、中身を選ぶことはできません。「何が入っているかわからない楽しみ」「お得さ」「新しい出会い」、そして、何より「送られてくる製品の品質の高さ」を提供するのが「フォーチュンボックス」の良さだと思っています。



――失礼ながら、中身がわからないものを購入する人がそんなにいるのでしょうか。


すでに2,800個以上をお買い上げいただいています(2019年6月15日時点)。中身が秘密ということを逆に楽んでもらっています。選択肢が多い中であえて「選ばないことを選ぶ」というか、自分で選ばないでいいという価値が、皆様に受け入れられていると思います。



――アイデアを思いついて、すぐに起業したのですか?


いいえ。まったく知識もなく、売る物もない状態でしたので、まずはひたすら準備しようと思いました。


ビジネスモデルが決まってからは、勉強をかねて、浅草の物産店でアルバイトを始めました。店長さんや近隣のお店の人にいろんなことを教えてもらい、全国の物産やビジネスの知識を増やしていきました。


ただ言われたことをするだけではなく、自分で考えたこと、本などで勉強したことを実践するために、こちらから売り方の提案、集客キャンペーンの提案などもしました。積極的に聞き入れていただけて、キャンペーンの反響などがダイレクトに返ってきたのはありがたかったですし、お客様が楽しそうにしてくださったことが自信につながりました。



――ほかにはどんな準備を?


「起業入門」のような本を数冊読んで、起業までにやるべきことをすべてリストアップしました。起業前にできることは全部先にやっておいて、できるだけ起業後にやることを減らしておこうと思って準備したのです。たとえば、マスコミ向けに情報を発信するプレスリリースなどは起業前に準備しておき、販売開始日、価格などさえ記入したらいつでも配信できるようにしておきました。「フォーチュンボックス」の販売ページも、起業前にほとんど完成していました。


起業や経営の勉強と同時にアルバイトをしながらの準備でしたので、1年近くかかりましたが、その分、アルバイトを辞めた翌週には起業して、すぐにクラウドファンディングが始まって売上がある状態になりましたので、ありがたかったです。



■学びは、失敗からではなく、成功からこそ得られる

フォーチュンファクトリー株式会社 代表 坂内 綾花さん



――クラウドファンディングは、応援してくれる知人が大勢いないと成功しないと言われます。助けてくれる人は多かったのですか?


いいえ。私は人付き合いをほとんどしませんので、同年代の友人もかなり少ない方だと思います。とくに人脈もなく、SNSのフォロワーも数名というような状態でのスタートでしたので、どうしたらこんな私のクラウドファンディングを応援してもらえるか、真剣に考えました。


私たちは知らない人からでも商品を購入することはあります。ですから、やはり一定以上の価値や安定感を感じてもらえれば支援していただけると考えて取り組みました。


結果は362名のお客様に支援していただけて、「CAMPFIRE AWARD 2017 灯火賞」を受賞させていただきました。


私のような無知で未熟な者でも、1年間それなりに準備してくることで、それなりに何かを達成できるのだという自信になりました。



――失敗したときのことは考えなかった?


考えました。ですから、できるだけの準備をして、極力、失敗を回避しようとしました。


よく「失敗からの学びも大切」だと言われますし、私も実際に言われたこともありますが、それは少し違うと思っています。大切なのは、成功からの学びのはずではないでしょうか。


かりに、準備不足で無謀なチャレンジをしたら、すぐに失敗できると思いますが、そこから学べることは少なく、本などを読めば書いてあるようなこと知恵すら得られないと思いました。


私のような能力が低い起業家にとっては、そういう細かい失敗すら致命傷になります。もちろん、日々、小さなミスはしていますが、そこから導ける再発防止のためのルールを細かく「自分ルール」として設定しています。


とにかくできるだけ失敗を避けないと、貴重な経営資源である時間やお金、体力、気力がどんどん奪われています。


世の中にはすでに起業した人が無数にいて、失敗談も成功談もたくさんあって、"失敗代行"ではないですが、すでに私の代わりに失敗してくださっていると解釈しています。それを活かした方がいいと思いました。


また、「成功談」とされるものはあふれていますが、本当に大切な成功のためのノウハウや本質は、じつは多くのケースで、隠されていると思います。当事者が隠すつもりはなくても、ついつい聞こえのいい美談のようなものに集約されてしまって、本当に大切な細かいポイント、成功のためのキーファクターは隠されているのです。



――1年目で売上1,000万円超と、みごと成功をおさめられました。


本当に感謝したいです。現状はクラウドファンディングや自社通販サイトでの売上が約9割です。あとはBtoBとして卸販売などの売上です。


約1年間で5つのクラウドファンディングサイトを利用して、合計15回のクラウドファンディングを実施しましたし、さまざまな経験値をノウハウとして獲得することができました。



――全部ひとりでそこまでやるのは、かなり大変なのでは?


実際には、自分で作ったフォーマットを使いながらページを作りますし、販売する商品を選ぶときの基準などもあらかじめ作っておきましたので、迷ったりすることなく進められました。


先ほども言いましたが、プレスリリースも「型」を作っておきましたので、ほとんど穴埋めするだけですぐに配信サービスを利用できました。その効果でいくつかのメディアにも出演させてもらいました。


当社くらいのビジネスの規模であれば、さほど能力は必要なくて、こういう準備をやるかどうかで成功確率に差が出るのではないかと思っています。私など、能力で勝負しても負けは見えていますから。


もちろん、自分でできないところはすぐに外部の人に依頼しています。



――睡眠時間などもきちんと確保しているとか。


私は十分に寝ないと力が発揮できません。ただでさえ低い能力しか持っていないのに、それすらまともに発揮できなければ、お客様に喜んでもらうための活動、たとえばクオリティーは高いのにほとんど知名度がない商品、手に入りにくい商品を見つけ出してくることなどはできなくなってしまいます。


起業家だからと言って、体力や気力を限界まで使う必要はないと思います。自分の健康や、街で困っている人を見かけたときに手助けするような、ちょっとした親切をするくらいの気持ちや時間の余裕まで犠牲にすることはないと思います。



――精神力や根性に頼らず、合理的に行動する。スタートアップとしては理想的ですね。


私は精神力が強くないと自覚していますので、そういうものに頼ることはできません。根性論などに影響されたくないんです。合理的と言うよりも、行動量を減らして、その分、情報収集と思考のために時間を使っています。


能力が高い人はやみくもに行動量を増やすのもいいかもしれませんが、私にはそういうことは不可能です。自分なりのやり方で無理なくなっていきたいです。


嫌なことを避けるようにしないと、ただでさえ少ない気力を削ってしまいます。万が一事業が嫌いになってしまったりしたら、本末転倒です。



■成功を現実のものにした、徹底的な「行動量」の削減

全国を回って商品探しを続ける坂内さん(※)

全国を回って商品探しを続ける坂内さん(※)



――行動量を減らすといっても、嫌なことをすべて避けて通るのは難しくないですか?


もっと難易度が高いビジネスなら、精神力、人間力なども必要なのかもしれません。ですが、既存のビジネスモデルでの起業、つまりスモールビジネスや、私のビジネスモデルのように、スモールビジネスとスタートアップとの中間レベルの難易度であれば、精神力とか人間力といった要素は、さほど必要ではない気もしています。かりに一度は嫌な思いをしても、その経験を二度としなくていいように「自分ルール」にしていきます。


「嫌なことも我慢するのが大人」だとしたら、その考えを変えていったらいいと思います。



――行動量を減らしてしまうと、ビジネスの成長が遅くなりませんか?


やってみてわかったのですが、私のビジネスモデルはかなり利益率が低いのです。ですので、このままの業態では他社が参入することは難しいと思っています。そのため、少々ゆっくり成長していっても問題ないとは判断しています。


それでも、繰り返し購入してくださるお客様も増え、1年目で年商は1,000万円を超え、2年目の現在は2,500万円程度までには成長してきています。


この数字が遅いか早いかはわかりませんが、無駄なことをしないためにも事前によく考えて行動量を減らしていかないと、この結果は出ていないと思います。



――行動しなければ得られないような情報もあるのでは?


もちろん、実際に事業を始めてからわかったことも多いです。お客様の本音、インサイトや、取引先の本音など、事業の発展のためには欠かせない情報を手に入れることができました。そういう価値ある情報を大切にするためにも、入ってくる情報量をむやみに増やさないようにすることも大切だと思います。


また、私たちは情報はいくらでも手に入れられます。自分でやってみてわかる情報も、所詮それらの一つにすぎません。自分で経験した情報を過大評価する必要はないと思います。 情報や行動を増やすのではなく、むしろ厳選することで減らすことが継続できている理由かもしれません。



――情報や行動の量を減らすための具体的な工夫を教えてください。


まず、人には極力会いません。「会いませんか?」「お話がしてみたいです」というようなお誘いもときどきいただくのですが、今のところ、例外なくすべてお断りしています。


私の事業のステージでは、人に会うことは重要ではありません。その時間があるなら、お客様に喜んでもらえる商品探しやメーカーさんとの新商品の企画など、ビジネスのKFS(成功要因)の獲得のために時間を使いたいです。


そのためにも、自分の思いを文章にして、公式サイトや「note」などで公開しています。自分の生の声で説明するのではなく、「こちらを読んでください」というだけで済むようにしています。これも働く時間の削減には有効です。


また、考える時間を減らすために、フレームワークを活用して、「何を考えるのかを考えるための時間」がかからないようにしています。


自分の苦手なことを得意な人に任せるために、在宅ワーカーさんにお仕事を依頼したり、アウトソーシングもできるだけ活用しています。


さらに、前述のような「自分ルール」を細かく設定して、同じ失敗を避けてたり、行動する前に迷うことを防いでいます。そうすると行動の質も上がっていきます。


そして、ひたすら睡眠をしっかり取るようにしています(笑)。



――徹底していますね。


そうでしょうか。私のような未熟な起業家が無駄を避けるのは普通だと思いますし、まだまだ無駄な行動があると思っています。


今の私のレベルでは説得力ないですが、これから起業しようという若い人には参考になるのではないかと思います。メーカーの社長さんなどのお話を聞いていると、昔とくらべて、今は精神論に頼ってなんとかやっていける時代でもないような気がするんです。



――行動量と成果が比例しないということがわかりました。


たとえば、受験勉強のように一定の範囲のゴールが存在するときには、行動量を増やす、つまり長時間勉強することが有効だとされていますよね。


起業の場合は、受験勉強などに比べると、ゴールが明確ではありません。ふたを開けてみるとニーズがなかったり、急に競合他社が出てきたり、仕入れが困難になったり、周辺環境の変化によっても目指すゴールも変わるケースが多いのです。


そうすると、やみくもに行動量を増やしても、ゴールから遠ざかってしまうケースが出てきてしまうと思います。



■「起業の常識」は、すべて疑ったほうがいい

フォーチュンファクトリー株式会社 代表 坂内 綾花さん



――これから起業する人へのメッセージはありますか?


商品やサービスの良さ、悪さといった情報は、すぐに伝わっていきます。ですから、お客様の喜びに直接つながることに、資金、時間といった経営資源をどれだけ振り分けられるかが大切だと思っています。そうすれば、いい評判がきちんと広がっていくはずです。


世の中の変化は早くなっていると言われているわりには、今までの常識が続くことを前提とした起業論を抱いている人がまだまだ多い印象です。そういう意味では、起業についてのすべての常識を疑うつもりで勉強していく方がいいと思います。


具体的な手法としては、「みんなの仕事場」のインタビューにも登場されていた田所雅之さんの「起業の科学」という本に、かなり具体的な手法が紹介されています。スタートアップよりの起業を検討している人の参考になると思います。



スタートアップのメンターが過去の自分に向けて書いた教科書 失敗しないための「起業のサイエンス」とは?~株式会社ベーシック チーフストラテジーオフィサー 田所雅之 氏インタビュー~



また、USJ復活の立役者であるマーケターの森岡毅さんの著書は、どれも素晴らしいと思います。



――今後のビジョンは。


しばらくは「フォーチュンボックス」の販売を、メイン事業としてスケールさせていきます。それを加速させる位置づけで、商品開発やプロデュースなどももっと手がけていきたいです。多くの生産者さん、製造業者さんと直接会ってお話しして、価格勝負ではなく、もっと高く売るノウハウが現場に不足していることがわかってきました。生産者さんたちが本来の価値を追求して、もっと高く売れるようにするための支援などをするビジネスも必要とされている気がしますし、興味があります。



――これからも活躍を期待します。


ありがとうございます。無理せず、マイペースで頑張ります。



フォーチュンファクトリー株式会社 代表 坂内 綾花さん

フォーチュンファクトリー株式会社 代表 坂内 綾花さん








まだ20才、たしかにマイペースな印象の坂内綾花さんでした。お話を伺って、こういう若い起業家が、従来の常識に縛られずにしなやかに新しい風を吹かせてくれることを予感させられました。







プロフィール


坂内 綾花(ばんない あやか)

1998年11月生まれ。新潟市出身。中学卒業後、専門学校への進学をきっかけに東京に転居。アルバイトをしながら起業準備をし、2017年3月にフォーチュンファクトリーを設立。「フォーチュンボックス」の企画・販売やオリジナル商品を企画・販売を目指して邁進中。

2017年、「あなたに「謎の箱」が届く!【特別お試し版】フォーチュンボックスお届けプロジェクト」で、「CAMPFIRE AWARD 2017 灯火賞」を受賞。

フォーチュンファクトリー株式会社[外部リンク]

フォーチュンボックス[外部リンク]

坂内綾花さんツイッター[外部リンク]









編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局(※の写真を除く)
取材日:2019年6月1日




         

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