(アイリスオーヤマ株式会社 東京アンテナオフィス 受付)
今回は、2018年11日に稼働開始したアイリスグループ東京アンテナオフィスを訪問しました。
アイリスオーヤマ株式会社は、生活用品や家電製品の製造販売を主業務とするメーカーです。家庭用プラスチック製品では業界国内最大手であり、現在は家電製品を主にLED照明や収納、インテリア用品、園芸用品、ペット用品、日用品、資材、食品など多岐にわたる商品を取り扱っています。
今回訪れた東京アンテナオフィス (TAO: Tokyo Antenna Office)は、2018年11月に移転したアイリスグループの新オフィスです。首都圏における法人向けビジネスの営業拠点、全国の関連会社のハブ機能、家電製品の新商品開発拠点に加えて、購買や調達機能も有しています。
話題のABW(Activity Based Working: アクティビティ・ベースド・ワーキング)を採用し、設計・デザイン部門等を除き、執務席は固定席のないフリーアドレス制を採用しているオフィスを今回は紹介していきます。
それでは、さっそく新オフィスに行ってみましょう!
アイリスグループ東京アンテナオフィスが入居したのは、JR浜松町駅の西口再開発で2018年8月に竣工した日本生命浜松町クレアタワーの19階です。都営地下鉄大江戸線・浅草線「大門」駅からは直結。JR山手線・京浜東北線・東京モノレール「浜松町」駅からは徒歩約2分。羽田空港も新幹線もアクセスしやすい、交通至便のエリアです。
日本生命浜松町クレアタワーの19階。1フロア790坪に約150名(2019年3月現在) の社員が働くオフィスに入っていきます。
明るい受付には、見覚えのあるアイリスグループのコーポレートマーク。
スポンサーであるJリーグ ベガルタ仙台、プロ野球 東北楽天ゴールデンイーグルスのユニフォームが飾られています。アイリスオーヤマの本社は宮城県仙台市。同市に本拠を構えるプロスポーツチームと結びつきが強いのも同社の特徴です。
こちらで受付。
受付カウンターのボードにはグループ各社の社名が並び、このオフィスがハブ機能を備えていることがわかります。
取材日は平日の朝一番。受付からガラス越しに、朝礼を行っている様子をうかがうことができました。その後、タッチダウンスペースを中心に、あちこちでスタンディングのミーティングが始まっていたのが印象的です。
まずは、商談室へ。
受付ロビーから左右に分かれた通路沿いに、多くの商談室(会議室)が配置されています。どの部屋もさまざまなテイストで作られていて、会議室に変化をつけたい会社にとっては大変参考になる空間です。
通路沿いに並ぶ商談室(会議室)です。商談や社内打ち合わせにも使われています。
ブラックフレーム、フルハイトのガラスパーティションで仕切られ、シャープでオープンな印象。どれも内装が凝っているので、順に紹介していきましょう。
奥はブリックウォール、右側は黒板にしてチョークアートという「レトロ」を楽しむインテリアです。古い倉庫やアパートが立ち並ぶNYブルックリンをモチーフにしているとのこと。アイアンなど、ヴィンテージ感のある家具と合わせることで男前の空間となっています。
内装は、床から照明までほぼすべてアイリスグループ製品。グループ内でほぼすべて揃ってしまう空間である点が、他の会社では実現できないところ。アイリスグループのユニークさを実感できます。
こちらは最近あちこちで見かけるDIYをモチーフとした空間。
壁は、パーティクルボード張りと、有孔ボードの2種類で構成。パーティクルボードは資料などを自由に壁にピン止めできますし、有孔ボードはフックなどのパーツを付けて、棚を作ったり、工具置きにできたりと、クラフト感満載でワクワクしますね。参加者が立って動きながら話せるよう、ハイテーブルになっていて、メーカー系のベンチャーに良さそうな部屋です。
このオフィスの大きなテーマのひとつが「バイオフィリア」(*1)です。あちこちにグリーンが導入されていますが、こちらもその提案のひとつです。
職場環境に自然を感じさせる空間を取り込み、再現することで、働くひとの健康や成長を促進させる狙いがあります。
*1) 「バイオフィリア (Biophilia)」
人間は自然・生命を好む性質を先天的に持つ、というエドワード・ウィルソンらによって提唱された仮説。Bio(自然・生命)+philia(愛)という造語。そこから、バイオフィリアを意識したオフィスは、自然と調和し、緑をふんだんに取り入れたデザインを指す。バイオフィリック・デザイン。
こちらもバイオフィリアと同じように植物がモチーフの自然志向デザイン。グリーンを取り入れ、黒やブラウンを貴重としたヴィンテージ感のあるモダン要素を組み合わせ、ナチュラルさの中にアクセントが加えられています。
ボタニカルから一転してシャープでミニマルなテイスト。グレートーンで色味が抑えられていますが、シンプルで機能的な現代的なデザイン空間です。ビジネス向きのオシャレな会議室というイメージですね。
こちらも現代的デザインで、ブラックとホワイトとグレーのモノトーン、シャープな直線で構成されています。SF映画の舞台になる宇宙船や都市などを連想させる、近未来的なインテリアになっています。
こちらは個人宅のリビングのような雰囲気です。リラックスでき、居心地の良さが追求されています。仕事とプライベートの境界が曖昧になりつつある最近では、オフィスにこうしたテイストを持ち込む例も多いです。堅苦しさのない会議室で、よりクリエイティブな発想を生むのに良さそうです。
こちらは、北欧モダン調の会議室。床はヘリンボーン柄のフローリングになっています。ポップなカラーの脚にナチュラルな天板のテーブルとチェアが置かれ、リラックスしたダイニングスタイルの雰囲気です。
こちらは、ウェルビーイングをテーマに、スタンディングの打ち合わせもできる部屋です。ハイテーブルにハイスツールが置かれています。オフィスで働く人々が、身体の状態はもちろん、人間関係や働き方、指針綿においても健やかで、人間らしい生活を送れる状態を目指しています。
本当にいろいろなタイプ会議室がありますね!
同じタイプの会議室が並んでいるより、部屋ごとに気分を変えることができる、というメリットがありそうです。
では、オフィス室内に入っていきましょう。
1フロア790坪(2,612平方メートル)の無柱空間。広大なスペースのほぼ全体を見渡すことができます(広すぎて、反対側はよく見えませんが......)。
こちらの東京アンテナオフィスは、先ほどの商談室も含めて、「オールアイリスだけでオフィスを作れる」アイリスグループならではの、働き方改革オフィスのショールームも兼ねています。
写真では奥の方、フロア中央あたりに見えるウッディなタッチダウンスペースが、受付から見えた場所で、その両サイドに、さまざまな執務エリアが設けられています。右手は会議室などの機能性空間が配置され、アイリスグループ製品の展示スペースも少し見えています。
その展示スペースのご紹介からいきましょう。
オフィス内に2カ所、写真のようにアイリスグループのさまざまな製品を展示するスペースが設けられています。
こちらは家電など、一般消費者向け製品群の展示スペース。
冷蔵庫から洗濯機、大型テレビ、掃除機などなど、家庭向けの製品が揃っています。
こちらは、ビジネス向け製品の展示スペース。カーペットや人工芝、照明などが展示されていますが、アイリスグループでは、内装建材から内装設備、照明・空調・床材、什器など、建築現場を多様にサポートしています。
ここ東京アンテナオフィスでは、最近話題のABW(Activity Based Working: アクティビティ・ベースド・ワーキング)を採用されています(一部固定席もあります)。
さまざまなタイプの執務席がフロア内に用意されていて、社員一人ひとりが仕事をしやすい環境を自由に選んで働けるようになっています。
また、執務エリアは以下のエリアに分けられています。
窓際に配置され、太陽の光を浴びながら仕事ができるエリア。主に1人で仕事をするソロワーク用。集中席などが配置されている。
心身の健康にフォーカスしたエリア。上下昇降デスクで立って仕事できたり、本物の植物を目の前に働ける「バイオフィリア・デスク」などを設置。
デザイン職、設計職などの専門性の高い部署向けに固定席を配置しているエリア。
部署ミーティングできるエリアや商談室。
グループ各社の東京ハブ機能として、各地からの出張者の来訪も多く、出張者が座ったり、立ったままで手早く作業できるスペース。
リラックスしてコミュニケーションするエリアで、デザインチームや開発チームの近くに設置。
ラウンジやカフェなど。
ほかに、休憩室もあるとのこと。
では、それぞれのエリアを見て行きましょう。
先ほどの会議室でもテーマになっていたウェルビーイングは、執務エリア全体で意識されており、オフィスにいながらにして外の太陽光を感じられるような作りになっています。中でもウィンドウフロントエリアは、窓際にソロワーク用のデスクを配置して、太陽の光を浴びながら仕事ができるように作られたエリアです。
ソロワーク(1人仕事)用なので、集中席になっています。
企画書の作成などを集中して取り組みたい作業があるときは、もってこいの場所ですね。煮詰まってしまうことも少なそう。デスク前のパネルは吸音性のある素材が使われています。
こちらもウィンドウフロントエリアですが、窓に向かっているパターン。19階からの眺望を目の前に仕事ができます。ここも、側面に吸音性のあるパネルで仕切られています。
こちらは同じエリアですが、前の2つよりもオープンなカウンター席になっています。
フロア中央を振り返ります。
右側がウィンドウフロントエリアで、フロアの内側にはフリーコミュニケーションエリアとしての執務デスクが設けられています。
働く人の心身の健康にフォーカスしたエリアがウェルエリアです。
上下昇降デスクで、立って仕事をすることができたり、本物の植物を目の前に眺めながら仕事ができる「バイオフィリア・デスク」などもあります。
こちらがオリジナルのバイオフィリア・デスクです。
オフィスのテーマのひとつ「バイオフィリア」(*1)のもと、本物のグリーンを目の前に仕事をできる席です。デスクはガス圧昇降式になっており、スタンディングで使用することも可能です。グリーンは、心身をリラックスさせ、集中力を高めるだけではなく、緩やかに視界をさえぎってくれる、パーティションの役割も果たしています。
こちらは円形のバイオフィリア・デスク。かなり大きなグリーンの鉢が埋め込まれています。
エキスパートエリアは、デザイン職、設計職といった専門性の高い部署向けの固定席エリアです。
写真奥がエキスパートエリアになりますが、社外秘のサンプルや設計書など多数なので、遠くから撮影しています。アイリスオーヤマの家電などの開発がこちらでも行われています。
専門性が高いためにフリーアドレスではなく、固定席になっていますが、デスクは上下昇降デスクが使われています。
ここで、フロアのあちこちに置かれていた丸テーブルを紹介しておきましょう。
これはアイリスオーヤマ・オリジナルのミーティングテーブルで、スタンディングミーティング用のテーブルになっています。全国のアイリスグループのオフィスや工場にこの丸テーブルがあり、日々の社内打ち合わせには欠かせないものになっています。
「何か相談事がある時には、すぐに上司や同僚、関係部署のメンバーがこの丸テーブルを囲みます」とのこと。この丸テーブルこそが、アイリスグループの事業展開の速さの源になっているのかもしれません。
大型モニターと合わせて置かれているテーブルもいくつもありました。モニターには資料を表示したり、他拠点とのテレビ会議といった緊密な連携に使われます。
打合せ風景の様子です。3~5人が囲んで話すのにちょうど良いサイズですね。テーブルに、図面や製品を置くこともできます。
ソファエリアは、リラックスしてコミュニケーションできるエリアです。デザインや開発チームの近くに設置されていました。
後ろはエキスパートエリア(専門職の働く固定席のエリア)。ソファにもたれてリラックスして話せる場所になっています。
リームワークエリアは、フロアのメインとなる執務スペースで、フリーアドレス制。コミュニケーションを自在にとりながら仕事ができるようになっており、いろいろなタイプのデスクや、オープンなミーティング環境が用意されています。
4人島
こちらは4人島の執務席。フリーアドレスですから1人でも使えますが、チームメンバーと打ち合わせしながらの仕事にも向いているスペースです。
ロングデスクの島
こちらは8人島。さらに多人数のチームで使うこともできますし、ソロワークでも使えます。
あえて整然とデスクを並べず、ジグザグにいろいろなタイプのデスクの島がオフィスに配置されています。フロア内のデスク周囲の通路を歩いてコミュニケーションができる狙いです。
ジグザグのデスクは一部のオフィスで行われていますが、このようにすると、ちょっとした会話が生まれやすいと言われています。
通路と執務スペースが整然とわかれている場合、執務スペースにいる人に話に行くには、通路から執務スペース内にわざわざ入っていって話しかける形になりがちです。ジグザグのデスク配置にして、ジグザグの通路の周りにデスクがある配置にすると、何かの用で通路を歩いているときにも、「あ、ちょうど営業のAさんがいるから、あの件について話しておこう」みたいにデスク脇を通る時に気軽に話しかけられるというわけです。
コミュニケーション促進のための話しかけられやすい配置とも言えるため、話しかけてもOKのときは、こうしたデスクに座り、話しかけられたくないときは集中席で仕事をするといった使い分けをされることが多く、こちらのオフィスはそのように設計されています。
少人数用のミーティングテーブル
執務デスクの島の近くには、打ち合わせができるテーブル席がありました。デスク近くにあれば、「ちょっとそこで話そう」とできるのがいいですね。
ファミレス席
ファミレス席もあちこちに配置されていました。
吸音性のあるパネルで囲まれており、ミーティングに集中できます。このパネルの高さは、座るとちょうど目線が隠れるようになっています。
別な場所にあったファミレス席です。
ハイカウンター席
こちらのスペースでは立って打ち合わせすることもできます。
ちょっとしたことは、わざわざ座らず、スタンディングミーティングで済ませると、会議の短時間化につながるんですよね。
こちらもハイカウンター席ですが、執務席になっています。
ハイチェアに座って仕事をすると、フロアを見渡したり、気分を変えて仕事ができるのです。ABWらしく、いろいろな働く場所が用意されていますね!
カウンターの側面にはソファ席がありました。リラックスして話したりするときには、すぐにソファ席に移動できます。
アイリスグループ東京は、全国各地からの出張者が来訪することも多く、グループ各社のハブとしての機能でもあります。タッチダウンエリアは、そうした出張者が座ったり、立ったままで手早く作業するためのスペースです。
フロア中央部にあり、うねるような流れのある印象的なデスク。こちらは暖色系の照明、床はフローリング、デスクは木目調と温かみのある空間に仕上げられています。出張してきた人がこちらで仕事できる場所になっています。
座り席とスタンディングがシームレスに組み合わさっているんですね!
カッコイイ。
タッチダウンスペースはフロアの中央にあるため、演台もあり、ホールとしての役割もあります。今日も朝一番の訪問時間には朝礼が行われていました。
リラックスワークエエリアは、ラウンジやカフェなどです。
こちらが社内カフェ。後半で詳しく紹介します。
こちらは、チームワークエリア(フリーコミュニケーションエリア)の中に作られた、リラックスして話せるカジュアルなスペースです。
こちらもソファ席。ビビッドなカラーの丸いソファがポイントになっています。
ほかにもいろいろなスペースがあり、とても多彩な雰囲気でした。
複合機エリアは吸音性のあるパネルに囲まれており、騒音が仕事の邪魔をしないように工夫されています。ゴミ箱や文具などもこちらに集約されています。
こちらは大人数用の会議室。大型スクリーンに画像や映像を映せます。執務エリアとの境は全面透過ガラスで、会議室といってもオープンな雰囲気です。
執務エリアの大半はフリーアドレスのため、社員の皆さんはこのロッカーに私物をしまいます。
建物壁側にはハイキャビネットも設置されており、書類が格納されています。とはいえ、今回の移転に伴って大幅にペーパーレスを進められたため、実際に収納されている分量はかなり少なめとのこと。
さて、このオフィスフロアの照明は、アイリスオーヤマ製の調光・調色できるLED照明が使われています。
この照明による興味深い取り組みを紹介しましょう。
新オフィスは、サーカディアンリズム(*2)を意識した働き方ができるように設計されています。
ウィンドウフロントエリアをはじめ、太陽の光を浴びられるように空間が作られているのもその一環ですが、窓際だけでなく、オフィス照明全体が、サーカディアンリズムを整えるように調光・調色する設定になっているのです。
*2) 「サーカディアンリズム」
「光・温度などの外界の周期的変化を排除した状態で生物にみられる生理活動や行動のほぼ一日周期の変動。概日リズム。」(三省堂「大辞林(第三版)」) 体内時計とも言われ、そのリズムは昼夜などの明暗の刺激でリセットされるが、人工照明の下、昼夜と異なるリズムで明暗の刺激を受けているとそのリズムに狂いが生じると言われる。典型的なものに、時差ぼけがある。
それが無線照明制御システム「ライコネックス」で、LED照明の明るさや光色の調整、点灯を自在に制御できます。青白い光の朝から明るい昼へ、そして夕方になるにつれ暖色系に変わり、明るさも抑えられるというように、働き方に合わせて光環境が自在に設定できるのです。
お願いして、デモンストレーションを見せていただきました。
朝の照明。白みが強いですね。
午後の照明。だんだん暖色系に変わってきました。
これが夜。暖色の照明になっています。
残念ながら、写真では少しわかりにくいかもしれませんが、この照明の下で仕事をすると、かなり影響されるのではないかと感じられましたよ。
では、次に社内カフェに行ってみましょう。
こちらが入口。社内カフェはセミナーなどのイベントにも使われるそう。
全景です。明るくリラックスできそうな空間ですね。
手前はテーブル席、窓際はカウンター席になっています。素敵な眺望を楽しみながらランチができます。うらやましいですね。
ファミレス型の席もありました。仕事の合間のコーヒータイムにも良さそうです。
こちらでオフィスは一周しました。
ABWを採用し、さまざまな働き方ができる空間が作られていたのが印象的です。
次の記事では、様々な顔をもつこのオフィスとアイリスグループの事業戦略の関係や、同社ならではのオフィスコンセプトなどについて、アイリスチトセ 取締役マーケティング本部長の大山紘平氏に伺っています。ぜひご一読ください。
1958年創業、1971年に株式会社化、1991年に現社名へ改称。家庭用プラスチック製半透明収納ケースの爆発的なヒットにより成長し、現在は家電製品を主にLED照明や収納、インテリア用品、園芸用品、ペット用品、日用品、資材、食品などを取り扱い、毎年1000点もの新商品やモデルチェンジ品を生み出している。
編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
取材日:2019年3月12日
2016年11月17日のリニューアル前の旧コンテンツは
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