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会議室を作るときに参考にしたい、株式会社アイスタイルの打ち合わせスペースづくりのアイデア [オフィス訪問(2)]

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※写真は、株式会社アイスタイルのオープンミーティングスペースにあるテーブル。


■オフィスワークの生産性は、社内および社外とのコミュニケーションがカギ

ITの普及が進み、現代のオフィスワークの生産性は、社内および社外とのコミュニケーションがカギを握るようになってきている。数年前に刊行された『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』(2015年3月号) にも、オフィス内コミュニケーションの重要性を、社員の行動計測から実証して、オフィス設計でコミュニケーション促進し生産性を上げた事例の記事が掲載されるなど、従来の感覚的な話に留まらない研究が進んでいる(*1)


*1) 「仕事場の価値は多様な出会いにある」ベン・ウェイバー Ben Waber, ジェニファー・マグノルフィ Jennifer Magnolfi, グリッグ・リンゼー Greg Lindsay, 辻 仁子/訳, 『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2015年3月号, p24, ダイヤモンド社



■コミュニケーションを促進すべきポイントは事業タイプごとに異なる

興味深いのは、生産性を上げるためのコミュニケーションを促進すべきポイントが事業タイプごとに異なるということだ。前出の記事内(*1)では、いくつかの例が挙げられている。


あるコールセンターは仕事場に隣接するチームの休憩スペースを拡充して、休憩中にグループ内で知識を自然に共有するようになることで生産性が飛躍的に上がった例があるのに対して、ある海外の大手家具メーカーでは、フリーアドレスにより異なるグループの社員同士の交流が進むようにしたところ交流は増加したがチームのコミュニケーションは減少して生産性が低下した例が挙げられている。



ともすると経営陣は、ソーシャルな広い空間をつくっただけで大きな結果を期待しがちである。しかし、話はそれほど単純ではない。企業は空間の変更に取りかかる前に、達成しようとしている目標を理解していなければならない。それは生産性の改善だろうか、あるいは創造性の向上だろうか。


(中略)

目標が異なれば、最も有意義な交流の種類は変化する。だが一貫して言えるのは、交流そのものに、我々が思うよりもはるかに大きな価値があるということである。


(*1 前記事より)



以上で見られるように、コミュニケーションスペースを作れば社内コミュニケーション問題が解決!とは単純には言えないことも確かだ。他方、ビジネスはますますスピードアップし、従来よりも社内・社外との打ち合わせの必要性が増している。「打ち合わせスペースをもっと作ってほしい」と社内から声が上がり、限られたスペースの中でどのようにコミュニケーションスペースを増やすかということが、多くの企業の総務担当者の共通の悩みではないか。



そこで、コミュニケーションのどの領域を促進すべきかは企業の実情ごとに考えるとしても、オフィスでミーティングをする場所としての「会議室」を作るにあたり、参考になる作り方の例があると役に立つのではないだろうか。


前回、「@cosme(アットコスメ)を運営する株式会社アイスタイルのオフィスは、オープンでコミュニケーション豊かな空間(オフィス訪問[1])」の記事で同社のオフィスを取材・紹介したのだが、同社は女性比率が高いこともあり、社内コミュニケーションが活発で、コミュニケーションのタイプに合わせて柔軟に選べるミーティングスペース(会議室)を社内に多く作って活用されていた。


そこで、同社のミーティングスペース(会議室)を、「みんなの仕事場」で分類したのが以下の表だ。


■株式会社アイスタイルのミーティングスペースを分類

※本表は「みんなの仕事場」作成


ミーティングスペース オープン度 用途 メモ
オープンミーティングスペース フルオープン 社内 執務スペース近くにあり、誰が何を話しているか聞こえる。ホワイトボードも見える。話にも入れる。
ファミレススペース セミオープン 社内 誰が集まっているかはわかる。近くを通ると話は聞こえるが、話には入りにくい。
社内用会議室 セミクローズ 基本社内 透明な大きなガラス窓で、会議室に誰がいるかは前を通ると目に入る。声は聞こえない。中には入れない。
来客用会議室 クローズ 社外 曇りガラスで、人がいるのは分かるが、誰が何を話しているかはわからない。

※本表は「みんなの仕事場」作成。ミーティングスペース名の「社内用会議室」や「来客用会議室」は同社の正式名称ではなく、この記事内での説明用の表記。



同社のミーティングスペース(会議室)は、執務スペース近くに作られた完全オープンな「オープンミーティングスペース」から、完全に個室になった「来客用会議室」まで幅広く用意されている。中でも社内用のミーティングスペースへのウェイトが高く、それらがオープンに作られていることが分かるだろう。


本記事では、同社のミーティングスペースを見て回りながら、そのどこが参考になるのか、「みんなの仕事場」運営事務局による解説を加えていきたい。


(※解説部分については、株式会社アイスタイルの見解ではなく、「みんなの仕事場」による解釈。)



■[オープンミーティングスペース]

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こちらがオープンミーティングスペース

執務デスク付近の建物中央側の通路に多く配置されており、ちょっとした打ち合わせや作業をする場所になっている。予約優先だが、立ち話から座って話すなどの使い方もされる。


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打合せ風景。割合と近い距離感でミーティングスペースが作られていることが分かる。通路沿いなので、通る人は誰が何を話しているのか分かり、社内にはオープンな環境だ


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特注のホワイトボード。ポイントは座って書ける高さと幅であること。またキャスター付で移動も簡単。


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ミーティング用チェアはヴィトラ(Vitra)社ティップトン(Tip Ton)
9度の前傾姿勢を取れたり、ロッキングチェアのようにユラユラと前後に揺らすことができる。



[解説]

・簡易なミーティングスペースを執務スペース近くにたくさん作る。

社内には少数の関係者でちょっと打ち合わせをすればスムーズに進むことが多く存在する。わざわざ執務エリアから離れたところにある会議室を取って会議をするのではなく、執務スペース近くに小さなミーティング用の場所を数多く用意して社員間のコミュニケーションを密にとれるようにするのはとても効率的なアイデアだ。


・簡易なミーティングは皆が見聞きできるようなオープンな場所でする。

オープンミーティングスペースが徹底してオープンで通路沿いに作られているのは、参加していない社員もそこでの話を見聞きできるようにするためだ。ちょっとしたミーティングですむようになると、小さなミーティングを中心に案件が進んでいくので、全体的な情報共有が不足しやすくなる。そこで、打ち合わせ自体は秘密のないオープンな環境で、話していることが周りから見えて聞こえる位置で進めるような非公式な情報共有ができるように作られていると言えるだろう。


・テーブルはあまり大きくないものにして心理的な距離も縮める。

テーブルを大きくするとミーティングメンバー間の距離が離れて心理的距離も遠くなる。そのためテーブルはあまり大きくないものにして、心理的距離も近くで話せるようにする。


・執務スペースとは違うゾーニングでミーティング気分を作る。

執務スペース近くで気軽にミーティングできる分、気持ちを執務モードとは切り替えてミーティングに臨んでもらうため、木調のライトブラウンのフローリングでゾーニングしてリラックス空間にミーティングテーブルを置いている。


・執務モードと気分を切り替えてもらうためにチェアも変える。

ゾーニングだけでなく、さらに執務時とは気持ちを切り替えてもらうために、カラフルで姿勢を変えられる遊び心のあるチェア(例えばティップトン)を用意しておく。前のめりの姿勢が取れたり、前後に体を揺することができるというのは想像以上に気分が変わる。


・ホワイトボードを用意しておく。

ミーティングで話しているうちに生まれたアイデアを書くためにすぐに使えるホワイトボードを用意しておく。


・ホワイトボードは座って書けるようにする。

従来のホワイトボードは立って書くように作られているが、発表する側⇒聞く側という関係性が立つことで生まれてしまう。それを避けるためには、座ってお互いに書きあうようにできることで、ミーティングでフラットな関係が生まれるようにする。


(解説は、「みんなの仕事場」によるもので、株式会社アイスタイルの見解とは異なります。)




■[カフェ前、ライブラリー前のミーティングテーブル]

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こちらはカフェカウンター。コーヒーや自動販売機、水、オフィスグリコなどが用意されている。


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こちらは社内共有のライブラリー。資料などはこちらで調べる。
こうした人が集まるスペース前にもミーティングテーブルは用意して、偶然ここで出会ったときに、座って話せるようにしている


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こちらはセミナールーム。セミナーとして使わないときはミーティングスペースとして開放している



■[会議室前の通路]

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社内用、来客用会議室が並ぶ通路も、人が通れる以上の十分なスペースを確保し、立ち話や、ベンチを用意してちょっとした会話ができるように作られている


会議室前は、話したいと思っていた相手とばったり出くわして話し込むとか、会議時間が終わっても議論が盛り上がって会議室を出ても話し続けるということは経験したことがあるのではないだろうか。そうしたときにこうした話ができるスペースがあるのはありがたい。




[解説]

・オフィス内に人が集まる場所を作る。

オフィス内の社員の偶然の出会いがアイデアを生む。カフェカウンターやライブラリーなど、人を引き付ける場所を作ることが大切。会議室も参加者が召集されることで人を引き付ける場所なので、会議室は分散するよりもこうしてまとまっていることも会議室の出入りで偶然の出会いを作りやすくなる。


・人が集まる場所近くには、立ち話や座り話ができるミーティングスペースを確保しておく。

カフェカウンターやライブラリー、会議室前など、人が集まり出会う場所では、偶然的で(それでいて必要な)会話が生まれるので、ちょっとそこで話そうといった立ち話や座り話ができるような席を用意しておくことも大切。特に会議室前は盲点となりやすいが、出会いや会話が盛り上がる良いポイントとなる。


(解説は、「みんなの仕事場」によるもので、株式会社アイスタイルの見解とは異なります。)




■[ファミレススペース]

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オープンミーティングスペースに並んで、通路沿いには、ファミレスタイプのミーティングスペースも用意されている


同社のファミレススペースは大きめで、4人+4人の計8人が座れる設計になっている。スペースごとにソファの張地の柄を変えて、気分が変わるように作られている。


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増床したフロアにもファミレススペースが作られている。
ファミレスブースは、半個室のような雰囲気があって、オープンすぎず、かといって個室ではなく、ちょうどいい感じがあって、社員に人気のスペースとのこと。




[解説]

・気分がアガル打ち合わせスペースを作る。

オフィス内の打ち合わせスペースだからといって事務的に作る必要はない。社員のアイデアが出たり、いい決定ができるのであれば良いのであるから、そこで打ち合わせがしたくなってしまうような空間づくりというのがポイントだ。

いま新しいオフィスはどこもファミレススペースを作るのが人気だ。その人気の理由ははっきりしないのだが、実際に使うと分かるが、なぜか皆「ワクワク」する。この不思議なワクワク感が今多くのファミレススペースがオフィス内に作られている理由ではないだろうか。同社のファミレススペースはそれぞれソファの張地も変えて、気分が変わるように作られているのもポイントだ。


(解説は、「みんなの仕事場」によるもので、株式会社アイスタイルの見解とは異なります。)




■[社内用会議室]

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こちらは同社の社内用会議室。個室になっているが、大きな窓と窓に筒状のエッジをつけることでオープンな感じを作り出している。


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会議室の中も木製のチェアに、床は木調で柔らかだ。会議室のカラーは各部屋で変えてある。



[解説]

・堅めの会議室とはいえ、大きな窓と木製の椅子でオープンな雰囲気で、気分を柔らかくできる。

オープンなミーティングテーブルではなく、個室で行ったほうが良い内容をするための会議室だが、それでも、オープンであるために大きな窓が取られている。また、椅子も木製で気分を柔らかくする工夫がされている。


(解説は、「みんなの仕事場」によるもので、株式会社アイスタイルの見解とは異なります。)




■[来客用会議室]

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来客用会議室は高級感ある堅めのイメージで作られている。通路側の壁は、全面ガラス張りにしてオープンさがありつつも、ガラス中央付近をすりガラス調の目隠しにして守秘等に配慮している。とはいえ、室内を完全には隠していない。


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来客用会議室はホワイトのイメージで統一されている。チェアはハーマンミラーのセイルチェア。座面のカラーが部屋ごとに変えてある。


一般的な会社の会議室は、クローズドさで言えば、同社の来客用会議室と同じくらいではないか。このようにして見ると、いかに同社が社内でオープンに、コミュニケーションを重視してオフィスづくりをしているかが分かる




■これからのオフィス内のコミュニケーションの一つの形を示唆しているのではないだろうか

コミュニケーションを促進するために、話をしたいときにすぐできる場所を多く作り、お互いに会話していることがオープンに見る/見られるという関係性を社内に作りあげていると言える。これからのオフィス内のコミュニケーションの一つの形を示唆しているのではないだろうか。








取材先

株式会社アイスタイル

美容系総合ポータルサイトとしては国内最大規模になる「@cosme(アットコスメ)」の企画・運営と、関連広告や販促支援、リサーチ・コンサルティングサービスを提供。東証1部上場。





編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
取材日:2017年3月27日




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