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第二回 オフィス訪問 ジョバンノーニ・デザイン社

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三井直彦の欧州快勤レポート

ジョバンノーニ・デザイン社 (GIOVANNONI DESIGN S.r.l )

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ミラノのタービン試験塔の改装

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イタリアの90年代のデザイン史において大きなムーブメントを作ったスーパーデザイナー、ステーファノ・ジョヴァンノーニ。彼とエリーザ夫人の住居兼スタジオは、ミラノ中心西部、通称トルトーナ地区、スタンダル通りとサヴォーナ通りの作る角地にある。住居兼スタジオと言っても、1940年代に建てられた、塔付きのタービン試験棟を一棟丸々買い取って改装したものであるので、それは日本の感覚からいえば中規模の消防署といった面持ちである。


イタリアの中部、地中海に面する港町、ラ・スペッツィア出身のステーファノ・ジョヴァンノーニはフィレンツェ大学の建築学部を卒業し事務所を開設。その後拠点をミラノに移し、その頃アンドレア・ブランジの事務所で働いていたエリーザ・ガルガーニと出会い結婚、その後、現在に至るまで彼らのデザイン会社であるGiovannoni Design s.r.l. を共に運営する。途中、彼のキャリアを一気に世界的なレベルに押し上げたのは、何と言っても、90年前後のALESSI社との協働で誕生した、一連のキッチンウエアのデザインである。



ALESSIとジョヴァンノーニの成功

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それまで、シリアスな金属やガラス製が主であったキッチンウエアの世界に、ジョヴァンノーニは、ポップなグラフィックアイコンとカラフルで透明感のあるプラスチックを大胆に導入した。このデザイン界のパラダイムシフトは大きな成功を収め、ALESSIの商品群は高いブランドイメージを維持すると同時に、広くマスマーケットを捉えた。結果、ALESSIに世界的な認知と大きな収益をもたらし、同時にデザイナー、ステーファノ・ジョヴァンノーニをスーパーデザイナーの地位にまで押し上げた。


ミラノ・サローネと呼ばれるミラノの国際家具見本市においてフォーリ・サローネ(場外展示)の拠点として有名なトルトーナ地区には、今やおしゃれなスタジオが数多く軒を連ねる。しかし少し前までは、すでに役割を終えた工場の集まる寂しいエリアであった。実際、ジョバンノーニ夫妻がここでこのタービン試験棟を見つけた当時、彼らいわく"二束三文の廃屋"であったそうで、内部は廃水と古びた計測装置と錆びた水路管で占められていたという。その朽ちた建築を夫妻は完全にコンバーションし、今の職住一体型の現代的な空間に仕立て上げた。



天井高10メートル

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1・2階は巨大な展示空間、3階はGivannoni Design s.r.l. のスタジオ、4階は夫妻の住居、屋上には緑化された庭園、気になる塔の中には、住居部分の延長と給仕人の為のスペースがある。また地下部分にはタービン試験棟時代の水路を生かした、プールSPA施設がある。 地上階からアプローチする1・2階のスペースは10メートルに及ぶ天井高を生かし、展示空間として使用されている。毎年ミラノサローネの時期には、有名企業に貸し出され一般に公開されているから、ここがジョヴァンノーニ夫妻の所有の空間であることを知らずに訪れている人も多いはずである。


3階部分、Giovannoni Design S.r.l.のスタジオは白く統一された床・壁・天井、造作家具、大きなガラス面から構成される。この無機質な質感を背景に、ここで生み出されているポップなデザイン達は楽しく浮かび上がる。このフロアーはデザインスタッフのタスクスペース、会議スペース、受付及び秘書スペース、エリーザ夫人のデスク、その他のサービススペースから成る。メインのタスクスペースの両サイドの壁際にデザイナースタッフのデスクが配置され、それを挟む形で大きな模型制作やデザイン確認を行うための大きな作業テーブルある。ここで実寸モデルを使ったデザインチェックとその修正が、よどみなく行われる。ジョヴァンノーニ夫妻は一日の多くの時間をこのフロアで過ごす。



ミニマリスティックな居住空間

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4階と屋上の庭園は夫妻と2人の子供たちの居住スペースであるが、3階のデザインスタジオと同様なミニマリステックな空間言語でまとめられている。中庭に面する大きなリビングにはフランス人の彫刻家が作った木彫りのテーブルや、エットーレ・ソットサスのオリジナル家具、イタリア製の斬新な照明器具などが目を引く。大きめのキッチンは、自他共に認める魚料理好きのステーファノが、巨大な魚を捌く自分自身の手料理のために念入りに設計した。リビングの反対側の建物外周に沿うように配された廊下からは、それぞれの個室にアクセスすることができ、それら個室は廊下と中庭から外光を得る。大きめの浴室には自身がデザインしたバス家具が置かれている。屋上の庭園は多くの植栽が置かれ、この階下にこれまで見てきた無機的な空間が広がっていることをほとんど忘れさせる。


職住一体型の全てがそろった理想の空間、この"ジョヴァンノーニの城"で夫妻の日常は新しいデザインの創造に費やされる。しかし、この彼らの"城"で最も意外なことは、ステーファノ・ジョヴァンノーニ本人が、個室もデスクも、自分専用のスペースを一切持っていないことではなかろうか。エリーザ夫人によると、彼は一か所に留まることを嫌うそうで、この城のあちこちを渡り歩いているということである。






  • [会社概要]
  • Giovannoni Design S.r.l
  • Address : Via Standhal 35, 20144 Milano, Italy
  • Tel : +39 02 48703495
  • Fax : +39 02 48701141
  • URL: http://www.stefanogiovannoni.it/
  • E-mail : studio@stefanogiovannoni.it
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  • [コラムニスト紹介]
  • 三井 直彦(みつい なおひこ)
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  • トライアンフ・デザイン・アンド・コンサルティング社代表
  • 建築家・デザイナー・ビジネスコンサルタント
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  • 1968年東京に生まれる。1993年イタリア政府給費奨学生として渡伊、その後1996年よりマリオ・ベリーニ事務所、2000年より同事務所取締役を経て、2005年トライアンフ・デザイン・アンド・コンサルティング社設立、同社代表として現在に至る。東京芸術大学美術研究科建築系大学院修了。ミラノ在住。




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