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オフィスをリノベーションするメリットとは? 業者選びのコツや事例も紹介

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企業オフィスのリノベーションは、単に改装で社内をキレイにできるだけでなく、社員のモチベーションアップや企業イメージの向上といった効果も期待できます。
本記事では、オフィスをリノベーションする際の注意点や、大手企業のリノベーション成功事例などをまとめました。リノベーションをお考えの方はぜひ参考にしてください。







■オフィスのリノベーションとは? リフォームとの違い

近年は「リノベーション」という言葉をよく耳にしますが、以前より聞かれる「リフォーム」とはどのように違うのでしょうか。


まず「リフォーム」は、壊れた箇所や汚れている箇所の修繕や老朽化した建物の原状回復などを指し、「マイナスの状態からゼロに戻す」という意味合いが強い言葉です。たとえば、屋根や外壁の塗装・壁紙の張り替えなどはリフォームに該当します。それに対し「リノベーション」とは、空間デザインや部屋の機能を見直して、新築の状態以上に価値を高める工事を指します。壁の修繕を例に挙げると、リフォームのように単に壁紙を張り替えるのではなく、耐震性や断熱性といった機能性の向上も加味して行うのが、リノベーションならではの特徴です。


そしてオフィスにおけるリノベーションは、動線を改善して人の流れをスムーズにしたり、照明や窓を高性能なものに変えてよりよい環境にしたりすることで、業務効率や生産性を向上させる目的で行われるケースが大半です。費用相場は工事面積や内装のグレードにもよりますが、1坪あたり約10~30万円だとされています。




■オフィスのリノベーションで得られる効果・メリットとは

オフィスのリノベーションは、業務効率や社員のモチベーション向上などの効果が期待できるほか、中長期的にみれば維持費の削減、企業イメージのアップといったメリットも見込めます。



●業務効率向上


働き方に合わせた最適なリノベーションは、社員の業務効率向上に効果があります。


オフィスの構造やデスクレイアウトを物理的に変えれば、普段の移動においても無駄な動きが減るほか、部署間も自由に行き来しやすくなるでしょう。 また、社員の共有スペースを新たに設けたり、決まった座席を設けないフリーアドレス制を取り入れたりすれば、部署の垣根を超えた社員同士のコミュニケーションを活性化できるといったメリットも生まれます。


関連記事:「フリーアドレスのオフィスとは? メリット・デメリットや成功のポイント」



さらに、オフィス内の「色」を変えるだけでも社員の生産性を大きく上げられるため、空間のカラーデザインを見直すのも効果的です。クリエイティブ系の業種であれば、オフィス内に発想力や創造性を高める効果がある「青」を多く取り入れ、大勢が集まる会議室や応接室には、気持ちを落ち着け意見をまとまりやすくしてくれる「グレー」や「茶」を取り入れるとよいでしょう。色が持つ心理的効果をうまく活用すれば、低いコストで高いパフォーマンスを得ることも、夢ではありません。



●経費削減


築年数の古いオフィス物件だと、新築時に比べ建材が劣化していたり、もともと質の低い建材を使用していたりするため、オフィスの断熱効果が低いことがほとんどです。断熱効果が低ければ、夏の暑さも冬の寒さもしのげないため冷暖房費が高額になりやすく、余計に経費がかさんでしまいます。リノベーションにより窓や電気を機能性の高いものに変えたり、空間設計を見直して空調効率を改善したりすれば、電気代や冷暖房費といった経費を大幅に削減できます。


もちろん、築年数の浅い物件に移転する選択肢もありますが、オフィス移転だと引越し代や新オフィスの賃貸契約に関する敷金・礼金のほか、内装工事費用、旧オフィスの原状回復費用などさまざまな費用が発生します。その点、リノベーションであれば、引越し代や新物件の契約に必要な初期費用などを節約できるため、移転に比べてコストを削減できます。



●企業ブランディング


企業のオフィスは、取引先の担当者や就活生など社外の人々に対して、企業の理念やビジョンを伝えるための発信拠点でもあります。


オフィスを初めて訪れた時の印象というのはそのまま企業のイメージとして定着しやすいものですが、従来は会社のオフィスの内装といえば、白を基調とした無機質な空間にデスクを配置した画一的なデザインが一般的で、企業のイメージなどはあまり考慮されていなかったため、会社の印象を訪問者に根付かせることが困難でした。


しかし、オフィスのリノベーションによって自社のコーポレートカラーを取り入れたり、間仕切りのない開放的な執務スペースを設けたりなど、空間デザインによって企業の個性やビジョンを体現すれば、来訪者に好印象を与えることが期待できます。さらに、新しくなったオフィスの写真をホームページなどで発信すれば、先進的なイメージを抱かれやすくなるため、見込み顧客や優秀な人材へのアピールにもつながるでしょう。



●社員のモチベーション向上


オフィスが快適でおしゃれな空間に生まれ変われば、社員のモチベーションもアップします。断熱性が低く空調効率が悪いオフィスでは室温が外気温に左右され、暑さや寒さをしのげないため、仕事に集中することが困難です。しかし、リノベーションによって断熱性や空調効率を改善しオフィスの快適性が高まれば社員のストレスが軽減され、集中して業務に取り組むことができます。


また、休憩スペースや集中スペースの設置や社内レイアウトの改善や配色の見直しを行えば、社員の働きやすさも大きく向上します。一人ひとりの生産性アップにも効果的なため、会社全体の業績も向上する可能性があります。そして社員にとって働きやすいオフィスが実現すれば、社員の会社に対する愛着を育むことにもつながり、離職率の低下も見込めるでしょう。



■リノベーションの種類

オフィスのリノベーションにはフルリノベーション・ポイントリノベーション・スケルトンの3種類があります。ここではそれぞれの特徴とメリットやデメリットをまとめています。



●フルリノベーション


柱や梁といった建物の構造部分だけを残し、それ以外の内装や設備のほとんどを一新する大がかりなリノベーションです。工事範囲は建物のほぼ全体に及び、耐震補強なども行われます。また、排水管も新しくするため、トイレや給湯室といった水回りを含む大幅な間取りの変更も可能です。


ゼロからデザインや設計を始めるため、工事の自由度が高く理想のオフィスを実現しやすい一方、工事範囲が広い分、部分的なリノベーションと比べると要する時間も費用も多くかかります。建物の老朽化が進み修繕箇所があちこちにある場合や、間取りを大きく変更したい場合に適しています。



●ポイントリノベーション


内装から設備までオフィス全体を工事するフルリノベーションに対し、床や壁だけの修繕、一部間取りの変更など、部分的な改修を行うのがポイントリノベーションです。費用は工事面積や水回りの変更の有無、使用する建材の種類などによって大きく変わりますが、工事範囲が限定されるため費用も期間も抑えられるメリットがあります。ただし、あえて一部分のみのデザインを変えて空間のアクセントとする場合を除き、工事しない部分との統一感を意識した設計が必要です。



●スケルトン


スケルトンとは、天井や壁・床などの内装をまるまる除去して躯体(骨組み)だけにするリノベーションの方法です。内装に頼らず建物そのものの魅力が感じられるほか、照明や空調設備などの設備、空間レイアウトもゼロから設計できるため、自由にカスタマイズできるのもメリットです。


また、デザイナーズ物件のようなモダンな印象を与えることから、就職先選びでオフィスのおしゃれさを重視する若年層の人材を集めやすく、ベンチャー企業などが採用するケースが少なくありません。しかしながら、天井や壁には断熱材や吸音材の役割を担っていることが多く、天井を取り払うことで空調が効きづらくなったり、音が反響しやすくなったりする可能性があります。リノベーション後の空調管理や音漏れなどについては、あらかじめ対策を検討しておきましょう。




■オフィスリノベーション工期の目安

工期は工事範囲によって異なり、フルリノベーションやスケルトンであれば1~3か月、ポイントリノベーションであれば3日〜3週間程度が目安です。工事が長期に及ぶ場合、休業日に工事を行うなどスケジュールを工夫すれば通常通り営業を続けることもできますが、その分、全体の工期が長引くことになるため、繁忙期と重ならない時期に依頼するなど前もって計画を立てておく必要があります。また、業者に問い合わせをしてから着工するまでのデザインや設計にはおおよそ2か月を要するため、工事期間だけでなく計画期間も考慮して早めに依頼することが大切です。




■オフィスリノベーションにおける注意点

オフィスリノベーションにおいて失敗しないためには、どのようなポイントを押さえておけばよいのでしょうか。



●目的を明確にする


まず、リノベーションの目的を明確にしておくことが重要です。目的が利便性の向上なのか、コミュニケーションの活性化なのかなど、企業が抱えている課題によって最適なレイアウトやコストをかける部分の優先順位も変わってくるからです。


「老朽化が進んでいるから耐震工事も含めてフルリノベーションしたい」「社内コミュニケーションを促進するためミーティングルームを新設したい」など、目的が明確になれば工事の箇所や範囲も決まるため、予算も立てやすくなります。また、実際にオフィスを使うのは社員たちであるため、レイアウトを考える際は経営者の判断だけで進めず、アンケートなどで社員の要望を聞き、可能な範囲で反映させていくとよいでしょう。



●消防法などを確認する


工事を行う際は、消防法や建築基準法などに抵触しないよう、法令を遵守してリノベーションを行わなければなりません。


たとえば、消防法では火災報知器の設置基準が定められているため、間仕切りを設けて部屋を増やすとなると、新たに火災報知器やスプリンクラーなどの消火設備を設置する必要があります。また、天井までの仕切りを作る場合には消防署への届け出が必要です。ほかにも建築基準法では通路の最低幅が決められており、通路の片側のみに部屋がある場合は1200mm以上、通路の両側に部屋がある場合は1600mm以上の幅を確保しなければなりません。


これらの基準が守られていないと、消防検査によって設計のやり直しを求められるので注意してください。



●原状回復を考慮する


賃貸物件の場合、退去時の原状回復は原則です。リノベーションの際に間取りを大胆に変更していれば、原状回復費用は当然高額になるので注意が必要です。また、入居時に設備を撤去していればその設備を退去時に戻さなければならないため、設備の保管費用がかかることも把握しておきましょう。


原状回復の範囲も物件によってさまざまであるため、事前にオーナーに確認を取っておき、原状回復にかかりそうな費用を踏まえて予算を立てることをおすすめします。ほかにも、原状回復を依頼する業者は賃貸契約書で定められていることが大半です。工事には1か月程度を要するため、見積もりにかかる時間も踏まえて遅くとも退去日の2か月前には業者に問い合わせをしておくとよいでしょう。



●費用や工期を確認する


部分的なリノベーションであれば、休業日に音出し工事を行い、平日は社員や来客の邪魔にならない範囲で工事を進められます。あるいは部屋ごとに順番に工事を進めるなど、工夫次第で今のオフィスにいながら業務を継続することも可能です。


しかし、間取りの変更など大掛かりな工事を行う場合、工事が長期化します。オフィスが完成するまでの期間、別に仕事場を確保する必要があるため、その場合はレンタルオフィスやコワーキングスペースなどの利用にかかる初期費用や月額料金を含めて予算を組むようにしましょう。




■リノベーション業者選びのコツ

リノベーション業者にはリフォーム会社や工務店などがありますが、デザイン性を重視する場合は、設計だけを設計事務所に依頼し、工事をリフォーム会社や工務店に頼むことも可能です。また、業者によって得意分野は異なるため、業者のホームページなどで実績を確認し、要望に近いイメージの実績がある業者や、オフィスのリノベーションを多く手がけている業者を探すことをおすすめします。なお、見積もりを取る際には必ず複数社に依頼して条件を比較し、相場と比べて妥当な価格であるかどうかチェックしてください。価格面だけでなく、アフターサービスの充実度や法律面での知識なども踏まえて判断しましょう。




■オフィスリノベーションの成功事例

最後に、オフィスのリノベーションに成功した企業の事例を紹介します。自社のリノベーション計画を立てる際の参考にしてみてください。



●クリエイティブなオフィスで生産性を向上

併設のレンタルスペース「K-LABO STUDIO」

併設のレンタルスペース「K-LABO STUDIO」



ニューヨークの倉庫街ブルックリンのような重厚でカジュアルな雰囲気のインダストリアルデザインを得意とする株式会社CREARTH(クリアース)は2020年8月に新社屋を開設。壁紙を使わずに独自に配合したモルタルを使用しているのが特徴で、固まる前のモルタルを彫刻し、特殊塗装でレンガや石、木を本物そっくりに再現して、部屋ごとに異なる個性を出しています。その他に照明や螺旋階段などにもこだわった新社屋は、インダストリアルデザインのショールームとして利用され、クライアントへの提案が飛躍的に通りやすく契約締結がスムーズになったそうです。


また、求人広告でも反響が大きく、インスタグラムでオフィスの写真を見て、建築が大好きなスタッフからの応募があるなど、採用にも絶大な効果を発揮。現在働いている方も、のびのびとリラックスしながら働けて、常に仕事に対する高揚感があり、パフォーマンスや生産性が上がっているのを実感できます、とオフィスデザインが働き方にも大きな効果をもたらしています。


詳しくはこちら
「カフェ風」を超える、真にクリエイティブなオフィスで生産性を向上させる ~株式会社CREARTH(奈良市) 角野浩司氏インタビュー




●価値やアイデアを共創しやすいオフィス

カルビー株式会社のリニューアルオフィス(※)

カルビー株式会社のリニューアルオフィス(※)



コロナ禍を経てオフィスの在り方が見直される中、スナック菓子などの有名メーカー、カルビーが東京・丸の内の本社オフィスを全面リニューアル。2フロアを1フロアに集約し、共感(エンゲージメント)・協働(リレーション)・共創(コラボレーション)をキーワードとし、オフィス勤務者のモバイルワークを原則とするといったニューノーマルの働き方に基づく新たな価値やアイデアが共創しやすい空間を目指しました。


デザインは「掘りだそう、自然の力。」というコーポレートメッセージから、「畑」をモチーフとする案を採用し、作物が実る畑のようにアイデアが生まれるオフィスを目指し、デスクなどの配置を微妙にずらすことで動線を自由にし、人の交差が増えるようにしたり、家具の形や色を統一しないことで大小さまざまな農地が重なりある畑のような豊かなイメージの空間としたり、その他オフィス全体にモチーフが散りばめられ、企業ブランドが表現されています。


詳しくはこちら
カルビーがリニューアルオフィスで示した「ニューノーマルの働き方」~イトーキ 担当デザイナーインタビュー




●コミュニケーションを生み生産性アップ

コクヨの品川オフィス「THE CAMPUS」COMMONS(※)

コクヨの品川オフィス「THE CAMPUS」COMMONS(※)



コロナ禍でリモートワークの定着からオフィスを縮小したりなくしたりする企業もある中、オフィスをチームビルディングの場として捉え直し、対面だからこそ生まれるコミュニケーションに重点を置いてオフィス作りを実施しているのがコクヨです。品川にある築40年の建物をリノベーションしたライブオフィス「THE CAMPUS」は、5フロアそれぞれにさまざまな機能を設けています。


「集う」がテーマの8階は、ディスカッションなどを行う共有スペース、7階は「試す」をテーマとした専門的な業務や検証ができるフロア、6階は若手がマネージャーに気軽に相談できる場やキッチンを設けた「育む」フロア、5階がリフレッシュのための「整う」フロア、そして4階が個人で占有できるワークポットなどを並べた「捗る」フロアです。


至るところにコミュニケーションのポイントが設けられているほか、7〜5階を中階段で移動できるようにし、交流が生まれやすいオフィス構造となっています。


詳しくはこちら
コクヨのリノベーションした品川オフィス「THE CAMPUS」の多様な働き方の鍵を握る、ファシリティマネ-ジャーの新しい役割




●多拠点で働く時代の「人とつながる、住めるオフィス」

増築部を解体して生まれた「SANGO」の屋上パブリックスペース(※)

増築部を解体して生まれた「SANGO」の屋上パブリックスペース(※)



日本橋馬喰町にある「SANGO」は、ファッション系の問屋ビルを全面リノベーションして、"住めるオフィス"として勝亦丸山建築計画が手がけたSOHOとシェアハウスの機能を組み合わせた生活機能共有型SOHOです。フリーランスや個人事業主、スタートアップの人は、人とつながるパブリックスペースがある住まいが適しているとの考えから設計され、1階は店舗活用、2~4階が生活機能共有SOHOの賃貸物件、5階は入居者専用のルーフトップとキッチンとなっています。UR都市機構と連携したプロジェクトで、パブリックスペースで入居者と地域の人々が緩やかにつながりながら暮らすことができます。


詳しくはこちら
多拠点で働く時代の「人とつながる、住めるオフィス」




■おわりに

リノベーションにはさまざまな方法があり、その費用や工数も目的によって大きく変わるため、業者選びは慎重に行う必要があります。


アスクルオフィスづくりサービスでも、デザイン、内装工事、施工管理まで、オフィスの移転・改装をトータルサポートしています。国内外の有名オフィス家具メーカーから自社オリジナルのまで様々な家具を取り扱っており、コストバランスを考慮した最適なプランを提案します。リノベーションを計画している方はぜひ検討してみてください。



「アスクルオフィスづくりサービス」
https://www.askul.co.jp/f/services/furniture/construction/moving.html/




編集・文・画像:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局(※の画像を除く) 
制作日:2022年10月20日

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