エメラルドグリーンの海、突き抜ける青空、照り付ける太陽、目の前に広がる白い砂浜。そんな景色を眺めながら南の島のビーチにあるカフェで仕事が出来たらどんなだろう。そんな夢を現実にしてしまった会社が今回紹介するノースショア株式会社だ。
同社は、東京・麻布十番に居を構え、企業や商品のブランド戦略や広告コミュニケーションのコンサルティング、TVCMを始めとするWebデジタルやポスター等各種コンテンツの企画や制作、スポーツ雑誌の出版、また近年は自社でのサービスやアプリなどの開発までを手がけるクリエイティブブティックだ。
同社は2014年の規模拡大による移転を機に、東京 港区の麻布十番駅直結のオフィスビルという、東京のど真ん中の立地に、ハワイのビーチをイメージしたオフィスを作り上げている。
オフィスの中に一歩足を踏み入れると、そこは南国のハワイ。まさに夢のような空間が広がっていた。今回はその稀有なオフィスを取材してきた。
写真はノースショア株式会社 代表取締役社長 CEO 石井龍氏
「明日、会社行きたくねぇなあ」って、よくあると思うんです。でも、明日からハワイだ!となったら、「うわー、今からワクワクして寝てらんねえよ!」となると思うんですよね。このモチベーションを、働く場所でできたら、クリエイティブな会社として成功するというのが、このオフィスデザインにしている最大の理由です。
(ノースショア株式会社代表取締役CEO 石井龍氏)
自分たちがオフィスで仕事をしていることを忘れさせ、ハワイのリゾートホテルで仕事をしている気分に浸りきれる環境を作ることで、社員のモチベーションを高め、クリエイティビティを最大限発揮してもらおうという意図とのことだ。
そのためにオフィスは、細部まで徹底して、従来のオフィスらしさを取り除き、ハワイのリゾートらしさに満ちたオフィスが作り上げられている。
では、さっそくオフィスツアーに出かけよう。
同社は、南北線/都営大江戸線 麻布十番駅真上のオフィスビルに入居している。地下鉄駅に直結しているエレベーターで9Fに上がる。
駅直結のエレベーターでノースショア株式会社の入居する9Fのフロアに到着。
こちらのエレベーターホールに到着するなり、ビーチをコンセプトにしたアロマが香り、心はハワイに導かれる。既に気分は南国だ。
入口脇にはノースショア石井社長の昨年のイベントポスターが!
毎年夏にオフィスで社員全員がアロハシャツを着て参加する盛大なパーティが開かれているとのこと。実に楽しそうだ。
ハワイ・ワイキキビーチのアウトリガーホテルを模したという入口は本格的で、白い石壁、石畳、砂浜とやしの木で同社に訪れる方を迎える。
ここが東京・麻布十番にあるオフィスビルの9Fであるとはとても思えない。
オフィス全体はクリエイティブモール「アラモアーナ(Alamoana)」と名付けられている。このエリアに入るなりすっかりハワイ気分だ。
エントランス入ってすぐの階段を上る。
左側の壁にはアートペイント。
左手にカフェが見える。
このエリアは会員制のコ・ワーキングスペースにもなっている。
カフェカウンターを正面から。
社員の方やコ・ワーキングスペースを利用している方がコーヒーなどを飲みに立ち寄り、カウンターの方と会話を楽しんでいる。こちらのカフェカウンターは会社の受付を兼ねていて、担当の方が飲み物のサービスも行っている。
カウンターには古びた質感の屋根もついていて、ハワイにあるホテルのプール脇にありそうな雰囲気だ。
このエリアは、コ・ワーキングスペースになっていて、会員の方がちょっと立ち寄って仕事をできる空間になっている。
電源とWifi装備。クチコミで集まったコ・ワーキングスペースは、印刷会社、プログラマー、コンサル業、イベント会社の方など、いろいろな職種の方が集まっているそうだ。
奥の壁はアーティストによるペイントアートが全面に施されている。
やしの木を囲んだドーナツ型のテーブルも、電源完備で、こちらで仕事ok!
ハイビスカスやモンステラ柄のソファがかわいい。
こちらには大きめのソファースペース。
屋外用の人工ラタンソファでリゾート感が盛り上がる。
窓際のエリアはデスクカウンターになっていて、仕事をしたり、コーヒーを飲んだり。景色が良いので人気のエリア。
同社のオフィスは、ハワイのリゾートホテルにやって来た気分をキープしてもらえるよう、細心の注意を払って設計されている。
テーブルや植物がハワイらしいだけではない。従来のオフィス感が感じられないよう、徹底してオフィスっぽいカラーを排除している。
例えば、本記事のオフィス内の写真に写っている天井を見てほしい。
ベースとなる天井パネルのカラーはホワイトではなく、クリーム色に塗装されている(場所によってはブラウン)。そこにブラウンカラーのツインラインがアクセントに仕上げていて、来訪者がフロアを見渡したり、椅子に座って見上げた時にも、ハワイのリゾートホテルにいるかのような気分が続くような仕上がりがなされている。細部まで趣向を凝らした出来栄えだ。
どうしてここまで徹底してハワイのようなオフィスを作り上げたのか? 同社石井社長に尋ねたインタビューはこちら(↓)。
ノースショア株式会社 石井社長インタビュー ~僕がここにクリエイターの楽園を作った理由~(ノースショア株式会社 オフィス訪問[2])
このオープンエリアの奥が、コ・ワーキングスペースの専用個室エリアになっている。
中に入ると、
パーティションで区切られて、各人に専用デスクと専用ロッカーが用意されている。
木目調の家具で徹底してオフィスっぽさが取り除かれている。
床は竹を模した織目のフロアタイルで、リゾートホテル内のビジネスセンターの雰囲気だ。
この専用個室エリアの脇の道を奥に進むと、会議室や映像編集ルームなどが配置されている。
まるでリゾートホテルのスイートルームの一室のような雰囲気だが、ここが映像編集ルーム。
こちらで多くの有名企業のTVCM等を編集したり、クライアントを招いて試写などをしているという。こんなワクワクする雰囲気のところで編集すると、さぞ雰囲気のある映像が作れそうだ。
奥から撮影。
大型モニターが設置されている。
9Fのフロアには会議室が多く設置されていて、こちらもその一つ。
こちらのテーブルとチェアはIKEA。家具は、手触り、雰囲気の良いものを選んでいるとのこと。デザインや機能を満たしつつ、リーズナブルにできるところはきちんと押さえている。
天井を見上げると、
天井パネルはブラックに塗装され、シーリングファン付き。
極め付きは、照明パネルにハイビスカスのシルエット。
完全にホテルの一室である。おもてなし感がすごい。
この辺りは会議室が多い。
壁も床もドアもくまなくデザインされており、オフィスにいる気がまったくしない。リゾートホテルにいるかのようだ。
部屋ごとに雰囲気を変えてある。
こちらは明るいカラーリング。
こちらの会議室に入ってみると、
床はグリーンの毛足の長いじゅうたんで、森のイメージ。
奥の壁は九官鳥のイラストの繰り返しパターンで、密林に迷い込んでしまったかのよう。この部屋は、南国の熱帯夜のイメージかもしれない。
こちらの天井パネルもブラックに塗装。
照明はモンステラ柄。
この照明デザインはオフィスでは見たことがなく、カッコイイ。
オフィスは8Fにもある。案内されて8Fに進んでいく。
8Fのエントランスを入ったところからフロア全景。
こちらは同社で働く社員の方たちのメインのワークスペースとなっている。
こちらのフロアはエントランスからウッドデッキが広がり、その先に砂浜がある。
ハンモックが二つぶら下がっている。
これは飾りではなく、社員には人気で、よく使われているという。ハンモックに座って、ゆらゆらと揺れているとアイデアを考えるのにいいとか。
砂浜エリアは天井パネルを外してスケルトン化して開放感ある作りになっている。
対してワークエリアは、仕事がしやすいよう天井パネルを残すゾーニングがされている。写真はその境界(天井パネルがある領域とない領域の境目)を見上げて撮影したもの。何とここにダークウッドの横格子が組まれている。こんな仕上げ見たことない。スケルトン化した天井はえてして無機質な外観になりやすいが、そこをウッドの横格子でリゾート感が保たれるように作り込んでいる。
砂浜の奥には、ボックスシート型打ち合わせスペース。
イエローとブルーのシェブロン柄のソファがリゾート気分を盛り上げる。
先ほどのデッキエリアには、ソファがいくつも置かれ、休憩や、ちょっとした打ち合わせに使われている。
左手に見えるサーフボードは実際に社内のサーフィン部で使っているもの。
デッキエリアの前が石畳風になるワークエリア。
天井にグリーンが見える。ここには、なんと、
ホットドッグを移動販売しているようなケータリングバンを模した会議室がオフィスフロアの真ん中に鎮座する。
ここだけ雰囲気が違い、天井はスケルトンに改造して、ブラックとグリーンを配して、まるで、大きく枝を広げるモンキーポッドツリーの下にいるかのようだ。バンを照らすスポットライトはさしずめ木漏れ日だろうか。
ここは会議室として使えるように作られている。手前のカウンターは立ち会議に使えるテーブルになっている。
中をのぞくと、
長ソファによる会議室になっている。
このバンのフロントには、ちゃんとハンドルもついた運転席が作られている。
うわー、ワクワクする。これは、まさに子供のころ夢見た秘密基地だ。
ディテールの仕上げがすごい。
このバン型会議室の周囲がワークエリアになっている。
フロアの奥のほうはデザイナーやプログラマーの執務エリアだ。
こちらはこれから入る社員の方向けの島。デスクは肌触りを重視して木製(IKEA)。
床を見ると、石畳のエリアから、水色のエリアに切り替わっている。
水色のエリアは「海」。
エントランスから、デッキ⇒砂浜/石畳⇒海(水色)、というゾーニングがされている。
海をイメージしたライトブルーカラーのゾーンには、立ち会議スペース。
エリアを仕切るブルーのパネルは全面が水色のホワイトボードで、打ち合わせに便利。
ハイテーブルはオリジナル。ノートPC用に電源コンセントが装備。
オフィス内はどこもそうなのだが、テーブルには必ず電源がつけられ、配線ケーブルは床下を通しており、とてもスマートに仕上がっている。
立ち会議スペース近くには、3室の集中スペース。
中をのぞいてみると、
ソファが配置。ここで休憩も可能。
以上でノースショア株式会社のオフィスツアーは終了になる。
皆さんの想像以上のハワイ感だったのではないだろうか。
ここでインタビューから石井社長の言葉を引用する。
仕事で大切にしているのは、ワクワクするモチベーションをどれだけ出せるか、です。
どんなに優秀なクリエイターの人でも環境がポジティブか、ネガティブかで発揮できる力は変わってしまうと思うんですね。
逆に、能力がこれからという人でも、環境の良し悪しによって非常に伸びたりすると思うので、やはり働く場所が良い環境であることは重要だと思います。
1mmでも1%でも前向きな考え方が生まれる場所が良いと思っています。
(ノースショア株式会社代表取締役CEO 石井龍氏)
こうした強い想いが、このオフィスらしからぬ、まるでハワイのようなオフィスを作り上げたということが分かる。従来のオフィスらしさを徹底的に排除して、東京にいながらにして、まるでハワイにいるかのような感覚になれる、クリエイターの楽園となるべき空間を作り上げたのだ。そして、同社はこのワークスペース(アラモアーナ)を拠点に日々、革新的なクリエイティブを日々生み出している。
「働く」ための最適な空間は、企業の文化や必要性ごとに100の企業があれば100の形があるべきということを象徴するようなワークスペースだった。
企業や商品のブランド戦略など広告コミュニケーションプランのコンサルティング。TVCM、WEB MOVIEなど、プロモーション映像の企画制作。デジタル制作、グラフィックデザインの企画制作等を行う、クリエイターズブティックカンパニー。
一貫性のあるオフィスデザインを軸にデザイナーズオフィス事業のリーディングカンパニーとして約3500件の事例を手掛ける株式会社ヴィス。オフィスデザインの事例やお客様の声など、オフィスデザインに関するコンテンツを多数掲載。
編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
取材日:2017年3月10日
2016年11月17日のリニューアル前の旧コンテンツは
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