今回のオフィス取材先は、デザイナーズオフィス事業のリーディングカンパニーとして4000件以上の事例を手掛ける株式会社ヴィスの東京オフィスです。
数多くの先進的なオフィスデザインを生み出す同社。そのオフィスも、デザイナーズオフィスの実例となっています。同社東京オフィスではオフィス見学会も開催されていますので、「みんなの仕事場」の本記事では、進んだオフィスづくりのエッセンスが盛り込まれた同社のオフィスを、注目ポイントを解説しつつ、見学ガイドブック風にご紹介していきます!
優れたオフィスデザインは、企業ブランディングに留まりません。そこで働く社員の皆さんのモチベーションを高め、生産性アップにもつながることが分かってきていますので、見逃せませんよ!
株式会社ヴィスの東京オフィスは、JR山手線・東京モノレール「浜松町駅」から徒歩8分の、汐留シオサイト5区イタリア街の中のビルに入居しています。
このエリアは汐留地区再開発により、歩くだけでイタリアに来たかのような気分が味わえる街区が形成されています。日本国内とはとても思えない風景に、同社オフィス訪問へのわくわく感が高まります。
オフィスの立地は、社員のモチベーションに影響する重要な要素と言われますが、毎日通勤する先がわくわくする街にあるというのは、確かに職場へ向かうときの気分が違いますよね。
ちなみに、最寄駅は「浜松町駅」以外にも、 JR山手線・ゆりかもめ「新橋駅」、都営大江戸線・ゆりかもめ「汐留駅」、都営大江戸線・浅草線「大門駅」、都営三田線「御成門駅」の計5駅で、どの駅からもおおよそ徒歩7~9分の距離となっています。徒歩圏内に主要5駅があるアクセス便利な場所にあります。
こちらのビルの2Fに入居しています。
石畳の広場前に建つこちらの建物は砂岩調タイルの外装で、19世紀ヨーロッパの建物のような風情を醸し出しています。何ともおしゃれですねー。
建物の2Fへエスカレーターで上がると入口です。2階まではオープンなエリアになっています。
こちらのiPad proの受付システムで担当者の方を呼びだします。
受付側から見たオフィス。
全面ガラス張りの中に、リビングスタイルのサロンが広がります。キラキラに明るく高級家具がレイアウトされた風景には、思わずわくわくさせられます。
右手に見えるのは広めに取られたエントランススペースのショールームゾーンです。
こちらのショールームゾーンは、オフィス家具の展示スペースになっています。 月替わりでオフィス家具メーカーをはじめとする各社協力による家具の展示がされています。
デパートのショーウィンドウのようなディスプレイになっていて、外からも注目されますし、オフィスへ見学に来られた方も、最初に注目するベストポイントですね。
ちょうどこの取材時は、WSI (株式会社ワークプレイス ソリューションズ) の取扱商品が展示されていました。スチールケース(Steelcase)のワークチェアや、アルペール(arper)のダイニングチェア、吸音する家具で有名なバジィスペース(BUZZI SPACE)のバジィハブが展示されていますね。これはどれも試してみたくなります。
・ショールームゾーンでの月替わりの家具展示は最新家具に出会えるスポット。
受付を通った後に広がるサロンスペース。
全面ガラス張りの会議室4室に囲まれ、リビング風の空間が広がるサロンエリアです。
ローテーブルにソファ、といった組み合わせや、テーブルにダイニングチェア、ラウンジソファなどがアレンジされたこの空間は、高級ファニチャーショップのような雰囲気です。このオープンな空間に6つのミーティングスペースがデザインされているとのことです。
このエリアは実際に使われていて、社員の方が打ち合わせをしたり、中央のテーブルエリアで集中して仕事をしたりなど活用されているとのこと。
オフィスデザインなのにリビング家具のような展示?!と思われる方もいらっしゃるかもしれません。今、オフィスにリビングのようなソファのミーティングスペースや、カフェテーブルを取り入れることが人気になっています。
一昔前まで、オフィス内でソファといえば黒の革張り応接ソファしかありませんでした。しかし、今のオフィスに導入されているソファは応接用途ではなく社員用なのが大きな違いです。
ソファのような柔らかい安楽椅子としての椅子は、「ソフトシーティング」と言われますが、従来の会議室とは異なり、座る人をリラックスさせる効果があります。そこで、アイデア出しの会議をソファスペースで行うことで、会議の参加者がリラックスしていつもと違うアイデアを出せるようにするなど、新しい使い方がされています。
注目ポイントは、オフィスに「リラックス」を導入するのにソファスペースやカフェテーブルはとても効果的ということです。PCとインターネットの普及でオフィスワーカーはますますナレッジワーカーとして機能するようになってきていますので、書類の作成「量」が重要ではなく、アイデアやソリューションという「質」が求められる時代にあった新しいオフィス家具と言えます。
もちろん、ソファで、社員が休憩して気分転換してもらって能率を上げてもらうといったことや、気の合う仲間とコーヒーを飲んで雑談をしてコミュニケーションを取ったりなどにもぴったりで、多目的に使えることもあり、ソファスペースをオフィス内に設置する企業が増えているのです。
また、このサロンスペースには、きちんとした会議室や、少しリラックスしたカフェテーブルによる打ち合わせコーナー、ソファによるさらにリラックスした打ち合わせコーナーなど、リラックス度合いが異なる打ち合わせスペースを取り揃えています。実際に、それぞれに座って話してみると、椅子の違いでリラックス度合いが変わることが実感できるはずです。リラックス度合いが変わると、それによって気分が変わり、打ち合わせの雰囲気も変わるというのも感じられるので、ここは見学の際にいろいろ使い試してみることをオススメのエリアです。
・ソファなどのリラックスしたミーティングスペースで、打ち合わせの雰囲気が変わるミーティング体験。
・いろいろなタイプのソファや、カフェテーブルとチェアなどがあるので、実際に試してみて、使い勝手を体験。いろいろ座って試すと自社にピッタリのものが見つかる可能性大!
こちらはサロンを奥の方から撮影。
中央付近に木を中心としたラウンドテーブルに、Yチェアが置かれています。真正面奥にはテレビ会議ができる大型モニターも。
違う角度でも1枚。いい家具だらけ。
高級家具店と同レベルの質の高いデザイン家具が、オフィスに使う想定でチョイスされているので、どの家具もオフィスで使い勝手が良いものです。
こんなところにルンバが。
このサロンを掃除してくれているとのこと。
では、サロンエリアに配置された会議室4室を紹介していきましよう。
東西の文豪の名前が綴られた会議室はどれも個性的にデザインされています。
こちらが一番大きな会議室、ヘミングウェイ。
ダークウッドの突板天板に、カンチレバータイプの会議チェアで、エグゼクティブの打ち合わせなどを中心にじっくりと腰を据えたタイプの会議に向くデザインです。
柱の処理が石張りで仕上げられています。ここも要チェック!
各会議室で床と壁の仕上げがサンプルになっているのです。
こちらは壁が柄物の壁紙に、床はダークなフローリング仕上げ。
椅子はトラディショナルなタイプでイギリスの家庭の雰囲気でしょうか。
こちらはグリーンのビビッドなカラーのテーブルに、いろいろなタイプの椅子。例えば、一番こちら側から、ヴィトラのスタンダードSP、ベジタル、ティップトン、ですね。椅子もいろいろ座り比べて欲しい要チェックポイントです。
壁は塗り壁、床はフローリング仕上げ。
こちらも荒々しい堅固な雰囲気の左官壁に、スチールのひんやりとした感じの天板テーブルという面白い組み合わせの会議室になっています。
以上でサロンエリアになります。次は執務エリアに入っていきましょう。
こちらにも仕掛けや見どころがいっぱいです。
執務エリアに入ったところから全景。
先ほどのサロンスペースも含め全体で250坪の広さで、約100名の方がこちらのフロアで働いています。
フリーアドレス制になっており、私物は通路にあるパーソナルロッカーにしまいます。ロッカー扉につけられた社員のポートレート写真も要チェックです。通常は、ロッカー扉に使用者のネームプレートをつけるだけなので、事務的に感じられることが多いですが、ポートレート写真付のネームプレートにすることで、見た目もスタイリッシュなロッカーになるのがビックリで、これなら通路にあっても違和感ありません。それに、こんなにカッコイイ写真のついたロッカーなら愛着も湧きますね!(写真をアップでお見せできないのが残念ですが。。) ちなみに、ロッカー扉のメール投入口は、個人宛の書類を本人不在時にも入れておけて、取っ手も兼ねているのでとても機能的です。
大きな注目ポイントは、パーソナルロッカーの側面と上面を木目調パネルでカバーしているところです。スチール製のロッカーをそのままフロアに置くと事務的な感じがぬぐえないのですが、木目調パネルでカバーすることにより、途端に柔らかな印象になり、家具の雰囲気が出てきます。また、ロッカー上面をテーブル風に使って立ち会議をしたりできる空間に変わるのもメリットです。オフィス家具メーカーからも同様な木目調の側板・天板パネルをオプションとしてラインナップされることが多くなりました。
・高さを1m程度のローキャビネットで、壁際以外のフロア内に収納スペースを確保しつつ、広さを感じさせる空間づくりを目で見て確認。
・ロッカー上面と側面を木目調パネルでカバーすることで、オフィス内が柔らかな雰囲気になるところも要チェック。
・ローキャビネット前で立ち話してみると、意外と話しやすいという体験。
こちらは執務デスクです。同社のオリジナルモデルで、フリーアドレス型、ダーク木目調になっています。ダーク木目調のデスクは空間が締まりますね。デスクの足元にはファイルやカバンを置ける収納棚がついています。デスク中央に配線用スリットがあるのでスッキリ配線。
こちらはオフィス用電話機 (NEC UNIVERGE Digital Phone DT300シリーズ)。 注目ポイントは側面のウッドパネル。電話機自体は一般的なオフィス用ですが、標準仕様のシルバーパネルに替えてウッドのサイドパネルオプションをつけることで、ぐっとオシャレに。
電話の配線もデスク中央部のスリットから、デスク内部のトレーを通しているのでスッキリ。
反対側から執務スペース全景
落ち着いた雰囲気ですねー。
窓際のほうを見てみましょう。こちらにもいろいろとオフィスに取り入れたい設備が作られていますよ!
窓際に造作のデスクが設けられ、集中して仕事をする集中スペースが設けられています。こちらのチェアは気分が変わるよう、執務用とは別にダイニングチェアが置かれています。イームズのダイニングチェアDCMですね。ミッドセンチュリーの名作です。
こんな感じで仕事ができます。
このエリアは締め切るのではなく、執務エリアより床面を一段高くして高低差をつけることで、間仕切りなしで、空間の仕切りを作っています。フロアの開放感を保持しつつゾーニングするテクニックですね。
集中スペースと執務エリアの境目には、スタイリッシュなUSMハラーキャビネットで間仕切りと収納を兼ねた収納棚を配置しています。USMハラーの収納はいつ見てもスタイリッシュですね!
こちらのオフィスは収納が目立ちませんが、何気にローキャビネットは執務フロア内に数多く配置されていますので、かなりの収納力が確保されています。ここも要チェックポイントです。
・窓際の柱に囲まれたエリアは、もともと執務スペースに使いづらいところや、集中スペースにして空間を有効活用しているところがポイント。
・床面高さを変えることで、間仕切りを使わず、開放感を保ちながらゾーニングするテクニック。
・集中スペースのチェアは、執務チェアとは異なるダイニングチェアを導入することで使う人に気分転換させるワザ。
こちらは窓際を使った打ち合わせスペースで、ファミレス型のソファスペースになっています。社内でも人気のミーティングスペースで、個室的に使う場合もあるとのこと。
こちらのファミレス型打ち合わせスペースは、床を一段高くしてフロアが見渡せる向きに作っているので、眺めが良く、心理的に引き付けられる場所になっています。ファミレス席の形もコの字になっているので、よりカジュアルにミーティングへ参加しやすく、横並びコミュニケーションでさらにディスカッションをしやすい作りになっています。また、ファミレス型スペース上には特徴的なペンダントライトが吊り下がっていることにより、執務エリアとは違うことを示すサインにもなっています。
・ファミレス型打ち合わせスペースに座ってみて、気分が変わることを実感。
オフィスフロア内の柱というのは目立つものです。
柱をこうして飾り棚にすることでインテリアになります。ちなみに、棚にあるモニターは大阪オフィスと名古屋オフィスを常時映しているとのこと。向こうではこちらが映っているのです。拠点間の一体感を高める仕掛けですね。
カフェカウンターです。コーヒーなどの飲み物が用意されています。
カウンター上にあるグリーンが印象的なデザインになっています。
遠くから見ても、「ん?あそこはなんだ?カフェか!」と注目され、すぐにその機能が分かる効果的なサインになっています。
こちらに社員の方はコーヒーを飲みに集まり、そこで会話が生まれます。オフィス内のカフェは、コーヒーを飲みに集まってきたときに、留まり、偶発的な社員間のコミュニケーションを生むための場所として重要なのです。
・遠くからもそこにカフェがあることが分かる印象的なサイン。
・人が集まってくるカフェデザイン。
・集まってきたときに、留まって話ができる環境づくり。
カフェの奥には、デザイナーの方が執務しているエリアがあります。
カフェの裏手を見てみましょう。
先ほどのカフェの裏手。奥がデザイナー執務エリア。
社内カフェはオフィスフロアの真ん中に置かれていて皆がこちらに集まって来るマグネットエリアとして作られています。
ちなみに、写真左下のミーティングテーブルとチェアは、カフェ脇で話ができるように置かれているもの。透明なチェアは、カルテル(Kartell)社のルイ ゴースト(Luis Ghost)。
手前にあるデスクは上下昇降デスクですね。健康面の観点から考慮し一部エリアで導入されているとのこと。
奥の壁には、メラミンという家具や造作物でよく使用される素材が大きめのサイズで貼られていて、実際に近いサイズで木目の柄や色合いを確認できるようになっています。
建材各社のサンプルや資料が収納された本棚と、奥と手前の収納を兼ねたカウンターは図面を広げたりサンプルをカットできるような作業スペースになっています。
こちらは執務スペースでも明るい色合いで作られています。デスクもナチュラル木目調。
チェア張地もベージュカラー。デスクはダーク木目調のものと同じヴィスオリジナルモデルで色違いです。色だけでかなり印象が変わりますね。
以前ならデスクの色はホワイトかグレーとほぼ決まっていましたが、いまどきはちょっとリビングテイストを入れて、デスク天板を木目調にするオフィスが増えています。
その時に迷うのはシックなダーク系で行くか、明るいナチュラル系でいくかというところです。デスク単体はオフィス家具のショールームで確認できることが多いのですが、実際にそれでフロア全体を作ってみると意外に印象が違うものです。
しかも、机をダーク木目調にすれば、収納棚やサイドキャビネット等も必然的にダーク系になりますので、オフィス全体の印象はかなり変わります。ナチュラルを選んだ場合も同様で、写真でもわかりますように、収納棚はナチュラル木目調、サイドキャビネットはホワイトでコーディネートされています。かなり印象が違うと感じられるのではないでしょうか。
オフィスデザインは、机だけでなく収納も含め、すべてでコーディネートされていますので、こちらのオフィスでは、ダーク木目調デスクを使ってコーディネートしたエリアと、ナチュラル木目調デスクを使ってコーディネートしたエリアの両方を、実際に見て確認できるように作られているんです。
・ダーク木目調デスクとナチュラル木目調デスクでオフィス全体の雰囲気が変わるところ。
女性のための休憩個室も用意されています。
こちらはコートラックやストックルームエリアへの壁ですが、机の高さ、椅子座面の高さ、身長、ライトの高さなどインテリアデザインの勉強になるようイラストが描かれています。デザイン会社さんらしいですね!
最後に執務チェアのご紹介です。執務用には、岡村製作所のバロンチェアと、ハーマンミラーのセイルチェアの2種類が主に使われています。
こちらはブラック。
明るいベージュ。
こちらは背面がグレー。
背面がホワイト
どちらの椅子もカッコイイですねー。
優れたチェアは見た目だけでなく、座り心地も優れているのがいいんですよね。
以上で、ヴィス東京オフィスの見学ガイドはおしまいです。
ウェブ上でご案内してみましたが、見どころいっぱいでしたよね。オフィスづくりは年々進化していますので、読者の皆様のオフィスでも、こうしたテクニックを導入することで使いやすく過ごしやすい環境になっていくのではないでしょうか。
一貫性のあるオフィスデザインを軸にデザイナーズオフィス事業のリーディングカンパニーとして約4000件の事例を手掛ける株式会社ヴィス。オフィスデザインの事例やお客様の声など、オフィスデザインに関するコンテンツを多数掲載。
≪お知らせ≫
※同社では、東京オフィス見学会を開催されているとのこと。以下の同社サイトページから見学会にウェブでお申し込みできます(対象は法人企業様、独立開業をお考えの方)。
企業向けオフィス見学会「東京オフィス見学会」(株式会社ヴィスのページ)
編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
取材日:2017年3月30日
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2016年11月17日のリニューアル前の旧コンテンツは
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